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オリンパス ミラーレス一眼のシャドウ側ダイナミックレンジについて【機材レビュー】

2017カメラグランプリで2冠に輝いたOM-D E-M1 Mark IIにとって初めての新緑シーズンですね。

輝度差の大きいシーンが増えてくる季節ですのでダイナミックレンジが気になる今日この頃。特にセンサーサイズがフルやAPS-Cより小さいマイクロフォーサーズにとってダイナミックレンジはディスアドバンテージとなるポイント。

ハイライト優先のオリンパス

オリンパスはシャドウ部にノイズが多い?

「オリンパスは実効感度が設定ISO感度よりもかなり低い」とはウェブサイトで散見するワード。

知っている人は知っている、知らない人でも「ちょっと暗部にノイズ多いかな?」と感じているのがそれです。よく話題の材料として用いられるのがDxOMarkの実効感度と設定ISO感度のグラフやスコア。

縦軸が「実効感度」で横軸が「カメラで設定するISO感度」。

センサーサイズ毎にDxOスコアが高いカメラを比較掲載。どのカメラも設定ISO感度より実効感度は低めですが、中でもE-M1 Mark IIは1段以上差があります。

実効感度とは設定ISOにおいてセンサーが白飛びする露出を表している指標です。

つまり、同じ露出(絞り値・シャッタースピード、カメラで設定するISO)で撮影した場合に”E-M1 Mark IIで撮ると比較してやや暗く写る”ことを意味しています。(しかし、カメラ内現像や特定の現像ソフトで自動的に画像全体の明度を持ち上げているので普通に使っていると気が付きません。)

これを「高感度性能を良く見せるためにISO感度を詐称している」と罵っているコメントをよく見ますが、これはあくまでも白飛びを防ぐ為にダイナミックレンジをハイライト側に寄せていると言う性質のもの。上のグラフを見ても分かるように、最近のカメラは大なり小なり設定ISO感度より低めですので、オリンパスだけの話ではありません。

一方で実効感度と設定ISO感度の違いが少ないのが、ここ最近のペンタックス。グラフを見てわかるようにD810やEOS 5D Mark IIと比べて実効感度と設定ISO感度の差がまるでありません。K-1からして見ればEOS 5D Mark IVもD810も「実効感度を偽っている」と言えてしまうかもしれませんね。

偽っている云々ではなく、ペンタックスは「他社メーカーよりも基本的に(適正露出で)シャドウ側のダイナミックレンジを重視している」と言う事が出来るものでしょう。深い緑や暗部が黒潰れせず諧調性が優れていると感じるかもしれません。その反面、輝度差があるシーンを適正露出で撮るとハイライトが飛びやすい。

細かく見るとキヤノンEOS 5D Mark IVがややハイライト寄りでニコン D810がシャドウ寄りですね。(ダイナミックレンジがカメラによって違うため、〇〇寄りと言うのは語弊があるかもしれませんが、あくまでメーカーのコンセプトを予想するための言葉として)

カメラメーカーによって傾向には違いがある。特にオリンパスなどマイクロフォーサーズ陣営はハイライト側を優先する傾向が強い。

極端に言えば、キヤノン「高輝度・諧調優先」やニコン「アクティブDライティング」がオリンパスの基本仕様になっていると言えるでしょう。キヤノン・ニコンユーザーならしっくり来るでしょうか?

あまり話にピンとこない方はまず下記のサイトを参考に。グーグルで検索する場合は「高輝度・諧調優先 ノイズ シャドウ」で検索すると参考にできそうなウェブサイトが多く見つかると思います。

参考サイト

E-M1 Mark IIが持つセンサーの基本性能は高い

今回の趣旨とはあまり関係ないポイントですが、「実効感度」毎のノイズ量や色深度を表したグラフがこちら。

スライドショーには JavaScript が必要です。

ラージフォーマットのSONY α6500(APS-C)とあまり差がありませんね。特に感度ノイズ耐性はα6500と差がありません。

三脚使用だとラージフォーマット有利、手持撮影でマイクロフォーサーズに活路

前述したようにISO感度毎のノイズ量に大局的な差はありませんが、マイクロフォーサーズのダイナミックレンジはこのグラフを見てわかるようにちょっと狭い。その差は大きいところで1EV程度。

ラージフォーマットセンサーの優位性はやはり最低感度を使ったダイナミックレンジの広さ。こればっかりはマイクロフォーサーズでは実現できないポイントです。

ただしダイナミックレンジを活かすシーンは、風景撮影のように絞り込んでシャッタースピードが低下するシチュエーションが多い。この場合に手振れを防ぐ為に設定ISO感度を上げる(実効感度も当然上がる)とダイナミックレンジが低下してしまいます。

よって、三脚を使って最低感度を維持できるのであればラージフォーマットとしての優位性が確立します。しかし、手持ち撮影の場合には手ぶれ補正能力の高いオリンパスやパナソニックはISO感度の上昇を防ぎ、フルサイズ・APS-C以下の低ISO感度を維持できる場面ではダイナミックレンジに差はあまり無いと言えるでしょう。(手振れの要因としてシャッターショックやミラーショックも含めています)

実際にPENTAX K-1で撮影していると白飛びに直面することがしばしばある。K-1は一眼カメラの中でもダイナミックレンジが特に広いカメラですが、まあこんなものかなぁという感じ。E-M1 Mark IIと比べて大きな差は出ない印象。

もちろん、この方法は動く被写体に対して有効ではなく、状況に合わせた最低シャッタスピードが決まっている場合にはこの限りではないでしょう。

対策

前述したようにダイナミックレンジはラージフォーマットより狭い。それにも関わらずハイライトを優先する仕様ですので、当然ながらフルサイズやAPS-Cと比べてシャドウにノイズは出やすい。

それではオリンパスでシャドウを優先するためには如何したら良いのか?。

拡張感度「Low」を活用する

E-M1 Mark IIの実効感度グラフを見て分かるように、拡張感度「Low」は設定ISOと実効感度の差が逆転している。

実効感度はISO200時とほぼ一緒にも関わらず、Lowに設定するとシャッタースピードはより遅くなりますよね?これは「センサー感度は一定で、より多くの光をセンサーに当てている」と言う事を意味しています。

つまり、「白飛びしやすいけど、露光時間が増えているのでシャドウの情報量が多い(対応する適正露出で撮った場合)」と言う事。この結果、シャドウのノイズ量が緩和して諧調豊かな暗部を表現する事が可能と言う訳です。

シャドウを優先する場合には「Low」、ハイライトを優先する場合には「常用感度」という使い分けをするのが簡単でしょう。

ただし、この感覚で撮影できるのは「Low」の場合のみ。そのため、暗いシーンにおいてシャッタースピードが制限されやすい。オリンパス機は手ぶれ補正が強力なので、Lowのみでも撮影できるシーンは多いでしょう。しかしこの場合、動体をしっかり止める為にシャッタースピードを維持する場合に使う「ISO AUTO」に適用できないのが辛い。

シャッタースピードを落としたくないときは如何するのか?という時は後述の方法にて。

露出調整+1EVで撮影する

手っ取り早い方法がこれ。

実効感度が1段ちょい低いのであれば、1EVほど露出調整でハイキーに撮影すればチャラになる。ただし、撮影結果をライブビューに反映できるミラーレス一眼でこれを実施するとライブビュー中に問題がある(ハイキーの状態でフレーミングする必要性がある)。

オリンパスの場合、OVFシュミレーションを適用すればファインダーを覗いている限りでは設定を無視してライブビューを使う事は可能。ただし、ミラーレス一眼のメリットを一つ潰して使うことになる。

そして、JPEG出力が1段明るくなるため、そのままでは使い物にならない。RAW現像による後処理が前提の撮影方法という点は注意。

ヒストグラムはあくまでライブビュー中の情報

オリンパスのヒストグラムは白色がフレーム全体、緑色がフレーム中央のパラメータ。左がシャドウで右がハイライト。

シャドウを改善する初めの手段として、ヒストグラムを用いてシャドウを調整(山が左寄りの場合に露出調整で右に寄せる)する方法を取りました。しかし、これでは根本的な解決になっていない事が判明。

例えば、OVFシュミレーション適用中は露出調整をいじってもヒストグラムに変化が無い。これはEVFに表示されている情報をそのままヒストグラムに適用しているだけと言う事を物語っている。よく考えれば、そりゃあそうだよね。

OVFシュミレーションをオフにしたり背面モニターで撮影結果を反映したライブビュー中のヒストグラムは連動する。しかし、それはどのみちJPEG出力時の仕上がり結果となるだけであり、RAW形式で保存される時の情報ではない(実効感度から設定ISOまで増感分も反映されてしまっている)。すなわちシャドウの改善に役立つものでは無い。

前項で述べた「+1EVで撮影する」という話を絡めて使う分には役に立つ。その撮影スタイルに慣れて「これだけ山が右寄りなら大丈夫かな?」と感じることが出来るようになれば使い勝手が良いかもしれません。

「諧調」は使わない方が良い

スーパーコンパネにある「諧調」。これをローキー・ハイキーに設定する事で手軽に明るさを変化させることができる。

ISO固定ならこれを「ローキー」に設定して+1EV程度で撮影すれば「露出調整+1EVで撮影する」の項で述べた時と同様の結果を適正露出で得ることができる。

と初めは思いましたが、よく見るとシャッタースピードや絞り値を優先的に露出へ反映しているだけなので、ボディ内における増感処理を抑えるものでは無かった。(ローキーだけどシャドウを持ち上げている事に変わりはない。と言う事)

ハイライト・シャドウコントロールを活用する

かなり変則的な使い方ですが、設定ISO感度・絞り・シャッタースピードに影響を与えず画像の明るさを変更できる機能。

この機能をマイナス方向で設定すればボディ内の増感処理と相殺することが可能。例えば、全て「-7(中間部を含めて)」に設定した後、露出補正で任意の露出に調整するとISOオートでも実質的にシャドウ優先の撮影が可能。

もちろんハイライトがとても飛びやすい。個人の使い方に合わせてマイナス値を調整すれば好みのポジションにダイナミックレンジを設定できる。ただし、下限値である「-7」に設定して、やっとLow並の実効感度かなという気がする。

-7は下限値であるため、この機能を活用してコントラストを調整する人のにはあまり向いていない方法。さらに注意点は中間を調整できるPEN-FやE-M1 II、E-M5 Mark II(要ファームウェアアップデート)に限られること。中間が調整できないとうまく減感できない。

試してみる

スライドショーには JavaScript が必要です。

  • ISO Low…ISO 64・F5.6・0.62秒
  • ISO 200…ISO 200・F5.6・0.25秒
  • ISO 200(+1.3EV)…ISO 200・F5.6・0.62秒

ISO 200において、ISO Lowのシャッタースピード(0.62秒)に合わせると露出調整で+1.3EVとなる。前述した実効感度の差を考慮すると大体そんな感じですね。ISO 200 +1.3EVにおけるハイライトの飛び方はISO Lowとほぼ一緒。センサーに入る光が同量であるため、あたりまえと言えばあたりまえの結果です。

ちなみに減感処理が面倒なので、撮って出しJPEGに反映できるハイライト・シャドウコントロールを試してみました。しかし、この項目を弄るとコントラストがデフォルトと異なる上に調整がシビアでお勧めできない結果でした。

スライドショーには JavaScript が必要です。

LowがISO 200よりシャドウのノイズに強い反面、やはりハイライトは弱い。

一方でISO 200 +1.3EVで撮影後に1.3EV減感する場合、シャドウのノイズが抑えられてハイライトはLowより粘っている。これはハイライトにおけるダイナミックレンジのポテンシャルにまだ余裕があるからなのか?う?ん、謎い。

高感度のノイズが改善する

興味深いことに、高感度を使ったシャッタースピードを求められるようなシーンでもこれは活用できる。

左:ISO 6400(通常撮影)右:ISO 25600(1.3EV減感)

手前のディテールの差はピント面がずれてしまった為なので無視してください。

ISO 6400における通常の撮影とISO 25600を1.3EV減感のノイズ量はドッコイ。高感度ではダイナミックレンジが特に狭くなりますので、シャドウのノイズが余計に目立っているのかもしれませんね。

さらに、シャッタスピードはISO 6400が1/60秒でISO 25600が1/100秒ですので、減感処理の方が1段前後シャッタースピードを稼ぐことができるという結果になっています。

細かいディテールは若干だがISO 6400に分があるもののノイズ量を考えると減感は大いに魅力的な方法。ISO 25600は極端な例ですが、例えば「ISO 6400の減感でISO 1600よりもノイズが少なくディテールの差は気にならない程度」とも言えます。

左:ISO 1600(通常撮影)右:ISO 6400(1.3EV減感)

この手法で撮影するとD500やX-T2、α6500などの競合揃いのAPS-C機とあまり遜色ないノイズ耐性で、DxOMarkのスコア・グラフ通りのような結果となる(もちろんダイナミックレンジは狭い)。ノイズがマイルドなのでノイズリダクションを適用させ易い点もグッド。

信じられない方は手持ちのE-M1 Mark IIでレッツトライ!

まとめ

  • ハイライトよりシャドウの諧調やノイズを優先する場合には拡張感度 Lowで撮影する
  • ISOオートで上記のような撮影をする場合には+1?2EVほどハイキーで撮影しRAW現像で減感する
  • この方法を使えばノイズを抑えながら1段前後シャッタースピードを稼ぐことができる(ハイライトのダイナミックレンジが狭くなる)
  • シャドウを持ち上げるのは極力避ける

もうちょっとシャドウ側にバランスを置いても良いのでは?と感じるくらいE-M1 Mark IIのハイライトは強い。フラッシュを焚くようなポートレートや物撮り、雪化粧された風景、澄み渡るような青空における諧調表現は得意。その反面、輝度差の大きい風景写真や夜景ではシャドウにノイズが出やすい。

ダイナミックレンジはそこまで狭くないのに、ハイライト偏重のバランスは誤解を生みやすいだろうなぁ…。APS-Cとそこまで差が無くなっているのだから「高輝度優先モード」にしてしまうか「低輝度優先モード」があると便利だよねえ…と感じます。

撮影現場でシャドウ優先を実践するのなら、「Low」で撮るか、+1?2EVほどハイキーで撮影した後に減感する方法が最も単純明快。ハイライト・シャドウコントロールを弄るとコントラストの調整がシビアで思うように行きません。

動く被写体を撮影する場合にも同様の事が言えるので、全体的に適正露出よりも明るめで撮っておくと後処理がし易いでしょう。もちろん、ハイライト側のダイナミックレンジを切り崩しながらシャドウを良くしているのは間違いない。自分の使用環境と睨めっこしながらシャドウ側にダイナミックレンジをどれくらい寄せるのか見極める必要がある。

最も気を付けたいのは撮影後にシャドウを持ち上げる編集や適正露出で明るすぎるからと撮影前にローキーへの調整。狭いシャドウ側のダイナミックレンジをさらに悪化させる原因となるかもしれません。

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