17種類の交換レンズ用プロテクトフィルターについてレビュー。第三弾となる今回は中望遠レンズを使った遠景解像性能への影響についてチェックしています。
解像性能への影響を確認する
撮影環境とフィルター無の作例
撮影環境
- EOS R5
- SIGMA 70mm F2.8 DG HSM
- Leofoto G4
- Leofoto LS-365C
- RAW
- Adobe Lightroom Classic CC
- マニュアル露出:ISO 100・F8・1/200秒
- ピントを固定して各種フィルターをフィルター無しを撮影
(上の作例はフィルター無し) - 撮影のタイミングで光線状態に少し差があります
Amazonベーシック カメラ用レンズフィルター
ポイント
- 商品ページ
- Amazonでの価格(52mm):¥761
- コーティング:不明
- 撥水撥油:非対応
- 帯電防止:非対応
- フィルターフレーム:-
- 反射率:不明
- 対応フィルター径:52/55/58/62/67/72/77/82mm
- フレームの厚み(装着に突出する部分):4mm
- その他:-
Amazonブランドのプロテクトフィルター。今回テストしているフィルターの中では最も安く、特に82mmのラージサイズでも1000円以下という驚異の値付け。凄いぜAmazon!
ただし気を付けて欲しいのはフィルターとしての性能。「UV」とは記載されているものの、コーティングに関する記述は一切なし。実際、「これコーティングしてないのでは?」と感じるほど高い反射率には注意が必要。最小径が52mmであり、40.5mmや46mmなどには対応していません。
実写確認
以前のレビューでも指摘しているように、他のフィルターと比べて反射率が高く、レンズを通る光の量が少なくなっています。このため、同一露出で撮影した場合に少し暗く写ります。今回は解像性能をチェックしているので、露出アンダーとなる傾向はひとまず置いておきましょう。
実際の作例を確認してみると、フィルター無しと比べて僅かに細部のコントラストが低下していることが分かります。彩度も若干低く見えます。
僅かな違いですが、切れ味は間違いなく落ちています。画像処理次第でなんとでもなる些細な差ですが、高解像なカメラでは画質差が目立つかもしれません。
画質に最も影響があるのはフレーム四隅。フィルター無しと比べて像が乱れ、コントラストとシャープネスが低下しています。全体像からすると微妙な違いですが、クロップして使う場合には気になる画質低下。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
四隅は明らかに画質が低下しています。個人的には使いたくないレベル。
Canon カメラ保護フィルター
ポイント
キヤノン純正のプロテクトフィルターで、マルチコーティング対応のオーソドックスな仕様。このタイプとしては比較的高めの価格設定ですが、「純正」としての値付けかなと。「Made in Japan」ですが、キヤノン製造なのかは不明。多くのキヤノン製レンズに対応していますが、「62mm」や「40.5mm」など、キヤノンレンズに存在しないフィルター径はありません。
実写確認
Amazonフィルターと比べると、細部のコントラストに変化が無いことが分かります。フレーム隅におけるシャープネスやコントラストの低下もありません。本当にじっくり確認して「極僅かに低下しているかな?気のせいかもしれない」と感じる程度。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
ハクバ写真産業 SMC-PRO
ポイント
ハクバのプロテクトフィルターの中では比較的低価格寄りのシリーズ。言ってしまえば梅フィルター。82mmの大口径でも3000円以下で入手可能。仕様上の反射率は上位モデルである「XC-PRO」や「ULTIMA」より高いものの、コンマ2%の差なので驚くほどの差はありません。撥水・撥油特性が必要無ければコストパフォーマンスの高いフィルター。
実写確認
キヤノン純正フィルターと同じくディテールやコントラストの低下はありません。コストパフォーマンスは良好。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
ハクバ写真産業 ULTIMA
ポイント
- 商品ページ
- Amazonでの価格(49mm):¥3,031
(WRでは無い49mmはXC-PROに近い価格) - コーティング:エクストリームコーティング
- 撥水撥油:対応(Amazon.jp限定)
- 帯電防止:-
- フィルターフレーム:
・薄型 - 反射率:0.3%
- 対応フィルター径:37/40.5/43/46/49/52/55/58/62/67/72/77/82mm
- フレームの厚み(装着に突出する部分):3mm
- その他:
・CORNING社が誇る最高品質の光学ガラス
ハクバ最上位のプロテクトフィルター。Amazon.jp限定のWR(撥水・撥油コーティング)対応モデルもあり、価格的にはキヤノン純正・ケンコーZeta・マルミEXUSと同程度。ただし、WR非対応モデルはXC-PROと同程度と比較的安め。
実写確認
コントラストの低下は見られず、キヤノン純正やSMC-PROと同水準です。敢えて言えばSMC-PROよりほんの僅か良く見えます。周辺部や隅までこれと言った画質低下も無く、全く問題ありません。敢えて言えば四隅のコントラストが少し良く見えますが、光線状態の変化である可能性は否めません。どちらにせよ微々たる差です。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
ハクバ写真産業 XC-PRO
ポイント
ハクバ製フィルターでは松竹梅の竹モデル。価格と機能性のバランスが良く、人気が高い。コーティングはULTIMAと同じ「エクストリームコーティング」を採用し、撥水・撥油性も標準装備。使用ガラスがULTIMAと異なる点を除けば、ULTIMA WRよりもコストパフォーマンス高し。
実写確認
コントラストは同社のULTIMAと同等でSMC-PROよりも僅かに良好。周辺部や隅までこれと言った問題はありません。安心して使える水準だと思われます。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
K&F Concept NANO-X
ポイント
カメラバッグや三脚、マウントアダプターなどを幅広く手掛けるカメラ機材メーカーのフィルター。「Nano-X」はK&Fのフィルターでは比較的高価なモデルで採用しているマルチコーティングの名称です。MRCは「multi・resist・coating」を指しており、耐久性や防水性にも優れていると言及。
価格はULTIMA WRやEXUSより少し安く、XC-PROやDHG Superよりも少し高め。
実写確認
コントラストの維持はとても良好。キヤノンやハクバと比べて遜色ありません。ただし、それは中央部の話。四隅に向かってディテールが少しづつ低下し、隅はフィルター無しと比べていくらか差が目に付きます。Amazonフィルターほど悪くありませんが、キヤノンやハクバよりも悪い。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
ケンコー・トキナー PRO1D Lotus
ポイント
プロテクトフィルターとしては定番のケンコー製PRO1Dシリーズ。従来のPRO1Dと比べて耐候性に優れており、撥水・撥油性のコーティングを採用しているほか、硬質アルマイト処理による耐久性の向上を実現、そしてガラス押えバネには腐食耐性処理が施されています。
ちなみにAmazon.jp限定で撥水・撥油特性を持つ「PRO1D NEO」が1000円ほど安く販売されています。耐久性や腐食性が必要無ければPRO1D NEOのほうがおススメ。ただし反射防止のコーティングはLotusのほうが多少良い模様。
また、2020年に「Lotus II」が一部の販売店で販売開始しています。Lotusよりも反射率が抑えられているので要検討。ただし、販売価格はZXやZeta Quint並。
実写確認
コントラストは非常に良好な水準。隅まで良好な画質を維持しています。特にこれと言った問題はありません。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
ケンコー・トキナー Zéta UV L41
ポイント
2009年登場で、まだまだ現役の定番モデル。ケンコー高級プロテクトフィルターとしては比較的歴史の長いシリーズと言えるでしょう。今でこそ一般的となりましたが、反射率0.3%以下と高性能でお世話になったユーザーも多いはず。
当時と比べると競合他社が多くなったこと、さらに同社から「ZX」「Lotus」などが登場したことで若干影が薄くなってしまった感あり。それでも「アッパーミドル」なポジションとして健在。
実写確認
基本的にKenko Lotusと同傾向に見えます。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
ケンコー・トキナー Zeta Quint
ポイント
強化ガラスとジェラルミンフレームを使用した高耐久性が特徴となるプロテクトフィルター。ジェラルミンフレームは衝撃に強く、アルミフレームと比べて変形しにくいのが強み。レンズをぶつけてフィルターが外せなくなった経験がある人は要検討。
さらに撥水・撥油性のあるダストフリーコートを採用してメンテナンス性が高いのもGood。高耐久ながらZetaと同じ超低反射のコーティング「ZR」を使用して片面0.3%以下の反射率に抑えている優れもの。プロテクトフィルターの中では高価な部類ですが、堅牢性が重要ならば検討したいモデル。同じようなコンセプトの「Marumi EXUS Solid」「SIGMA WR-CERAMIC」が存在しますが、Zeta Quintは比較的手ごろな価格設定。
実写確認
Kenko LotusやZeta UVと同じです。強化ガラス使用による解像性能への大きな影響は無さそう。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
ケンコー・トキナー ZX
ポイント
PRO1D・Zetaとは別シリーズの高級フィルター。「フローティングフレームシステム」と呼ばれる独特の構造でフィルターガラスにかかる負荷を軽減して平面性を保ちやすいフィルターに仕上がっているとのこと。コーティングは従来通りの「ZRコート」となっているため、反射率改善にはあまり期待しないほうが良いかも。その辺りは新発売の「Lotus II」のほうが0.2%の超低反射率を実現しています。
独特なフレーム構造のため、一部のレンズと互換性が無い点に気を付ける必要があります。
実写確認
Zeta系と比べて僅かに色のりが悪いようにも見えますが、コーティングは同じはずなので日照条件の僅かな違いである可能性あり。コントラストに大きな違いは見られません。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
マルミ光機 DHG スーパーレンズプロテクト
ポイント
マルミ光機製のフィルターの中では撥水・撥油コーティングに対応した低価格モデル。EXUSのように帯電防止機能はありませんが、WR系で105mmに対応している珍しい国産フィルター。
実写確認
Kenkoやハクバと比べて若干ですがコントラストが低い。さらに四隅へ向かって画質が僅かに低下します。これを買うのであれば、XC-PROのほうが良さそう。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
マルミ光機 EXUS レンズプロテクト
ポイント
撥水・撥油コーティングに加えて帯電防止機能も備わっているマルミ光機の上位フィルター。価格は極端に高いわけでは無く、ハクバ「ULTIMA」やキヤノン純正フィルターと同程度。ちなみに現在は「EXUS Mark II」が登場し、反射率は0.2%まで抑えられ初代より良好となっている模様。ただし、価格はケンコーZX並となっています。
派生モデルとして強化ガラスを使用した「EXUS SOLID」も存在します。反射率はEXUS Mark IIと同じ0.2%を実現しているとのこと。
実写確認
DHG Protectと異なりコントラストの低下は見られません。隅まで画質は良好な状態に見えます。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
マルミ光機 UV
ポイント
- 商品ページ:なし
- Amazonでの価格(49mm):¥900
- コーティング:
- 撥水撥油:-
- 帯電防止:-
- フィルターフレーム:-
- 反射率:不明
- 対応フィルター径:39/40.5/43/46/49/52/55/58/62/67/72/77/82/86mm
- フレームの厚み(装着に突出する部分):5mm
- その他:
・銀塩用フィルター
・MC-UV
銀塩用の比較的古いタイプのプロテクトフィルター。
EXUSやDHG Superのように撥水・撥油コーティングには対応していません。
とは言え、マルチコーティングが施されているので、Amazonベーシックの「単なるガラス板」よりも遥かに良好な結果を期待できます。86mmの大口径まで対応しており、価格を抑えたいのであれば一つの選択肢。
しかし国内ブランドのハクバ「SMC-PRO」が大口径でも低価格・良質なので、敢えてコチラを選ぶ理由はありません。(SMC-PROは82mmまで対応)
実写確認
コントラストと彩度が少し低下していますが、DHG Protectのように隅の画質低下は見られません。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
ニコン ARCREST
ポイント
強化ガラス系のフィルターを除けば最高級のニコン純正プロテクトフィルター。NIKKORレンズにも使用する光学ガラスを使用し、平面研磨やコーティング、フレームシステムなどが強調されています。対応するフィルター径はバリエーションが少ないものの、プロテクトフィルターで失敗したくなければ最有力候補なのは間違いない。
難点は価格設定。最小52mmでも5000円を超え、72?77mmで1万円近い相場。さらに82mmで1万円を超え、95mmはなんと2万円を超えています。フィルターをARCRESTで揃える場合、かなりの出費になることを覚悟しておくべし。
実写確認
フィルター面を感じさせないクリアな写りです。コントラストの低下は無く、隅まで良好な状態を維持。ごk僅かな違いではありますが「高いだけのことはあるな」と感じます。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
シグマ PROTECTER
ポイント
シグマ製プロテクトフィルターは「PROTECTOR」「WR PROTECTOR」「WR CERAMIC PROTECTOR」「WR UV」の4種類があります。全てシグマ製造なのか、OEMなのかは不明。少なくとも「WR CERAMIC」は株式会社オハラから素材を調達していると明言しています。今回は最も手ごろな価格の無印をチョイス。機能性を考慮するとやや高めですが、メーカー純正品としては少し安い。
マルチコーティングやガラス外周の黒塗などに対応しています。撥水・撥油性はありませんが、105mmのフィルター径まで対応しているのは魅力的。(WRやUVも105mmに対応しています)
実写確認
中央でもコントラストやシャープネスの低下があるうえ、四隅がAmazonフィルター以上に荒れています。カメラぶれでは無いと思うのですが…う?む…。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
ソニー VF-49MPAM
ポイント
ソニー純正ながら「Carl Zeiss T*」ブランドのフィルター。ちなみにMade in Japan。機能性を考慮するとキヤノンよりも割高。反射率や撥水・撥油性に関する記載は無く、ツアイスブランドに惹かれない限り買う理由が見つからない。対応するフィルター径も数が少ないです。
実写確認
極僅かなコントラストの低下のみ。フレーム端まで非常に良好な状態を維持しています。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
Waka MC UV フィルタ
ポイント
- 商品ページ
- Amazonでの価格(49mm):¥799
- コーティング:両面16層デジタルマルチコート
- 撥水撥油:対応
- 帯電防止:-
- フィルターフレーム:薄型
- 反射率:0.1%以下
- 対応フィルター径:49/52/55/58/62/67/72/77/82mm
- フレームの厚み(装着に突出する部分):3mm
- その他:
・台湾製16層多層加工光学フィルター
・UVカット
Amazonで入手可能な台湾製プロテクトフィルター。「なんと99%の透過率(反射率0.1%?)」と強気の主張が本当なのか気になるところ。反射率はともかく、両面で16層のデジタルマルチコートを採用し、撥水・撥油性を備えたフィルターとしては非常に安い。フィルター枠は3mmと薄いので超広角レンズでもケラれにくいのは優れたポイント。
実写確認
コントラストは良好で隅まで顕著な画質低下はありません。逆光耐性では見栄えの良い結果となりませんでしたが、解像性能は良好に見えます。
フィルター無しとの比較(左:フィルター無)
まとめ
価格 | WR | 帯電 | 厚 | 反射率 | 対応径 | |
---|---|---|---|---|---|---|
Amazon | ¥761 | - | - | 4mm | 不明 | 52-82 |
Canon | ¥3,060 | - | - | 4mm | 不明 | 43-82 |
SMC-PRO | ¥1,317 | - | - | 3mm | 0.5% | 37-82 |
ULTIMA | ¥3,031 | 対応 | - | 3mm | 0.3% | 37-82 |
XC-PRO | ¥2,201 | 対応 | - | 3mm | 0.3% | 37-82 |
Nano-X | ¥2,888 | 対応 | - | 3mm | 0.4% | 37-95 |
Lotus | ¥3,519 | 対応 | - | 4mm | 0.3-0.5% | 37-95 |
ZetaUV | ¥2,936 | - | - | 4mm | 0.3%以下 | 49-82 |
ZetaQ | ¥4,608 | 対応 | - | 4mm | 0.3%以下 | 37-82 |
ZX | ¥4,673 | 対応 | - | 4mm | 0.3%以下 | 49-95 |
DHG S | ¥2,624 | 対応 | - | 4mm | 不明 | 30-105 |
EXUS | ¥3,081 | 対応 | 対応 | 4mm | 0.3%以下 | 37-82 |
M.UV | ¥900 | - | - | 5mm | 不明 | 39-86 |
ARCREST | ¥5,793 | 対応 | - | 3mm | 0.1% | 52-95 |
SIGMA | ¥1,945 | - | - | 4mm | 不明 | 46-105 |
Sony | ¥3,764 | - | - | 3mm | 不明 | 40.5-82 |
Waka | ¥799 | 対応 | - | 3mm | 0.1% | 49-82 |
一部のフィルターは四隅における画質低下があるものの、基本的に多くのフィルターが問題無い結果となりました。AmazonとSIGMAのプロテクトフィルターは四隅の画質低下が顕著となるので、風景や建築物などでは避けたほうが良さそう。
この分野でコストパフォーマンスが良いのはMarumi UVフィルター。厚枠で問題なければ、大きな画質低下も無く前玉を保護することが可能です。ただし、若干のコントラスト低下が見られるので、ワンランク上のXC-PROやULTIMA、EXUSなどを検討するにも一つの手。
ベストは一番高価なニコンARCRESTですが、本当に微妙な違いなので個人的にはおススメしません。とは言え、金に糸目をつけないのであればコレを買っておけば間違いない。
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