キヤノン「EOS R5 Mark II」のレビュー第三弾 アップスケーリング編を公開。カメラ内で実用的なアップスケーリング処理を可能とする新機能。いくつかの作例やAdobe製品における同等機能との比較を掲載。
簡単なまとめ
使う使わないは別として、画像を拡大する機能としては効果的に見えます。特にトリミングと並行して解像感を維持する処理としては便利。
多くの人が常用するような機能ではありませんが、このような手段を必要としていた人が中にはいることでしょう。大きく引き伸ばす必要がある広告用画像、SNSやブログで利用できる程度の画像サイズを実現するトリミングなどで有効。いずれもカメラで編集・処理を実施する必要性が無い場合は魅力的と感じないかもしれません。しかし、そのような状況では他のカメラに無い便利な機能と言えそうです。
ただし、アップスケーリング処理の元データとなるのはJPEG/HEIF画像のため、これらのシャープネスやノイズリダクション処理によってアップスケーリングの結果が大きく変わってきます。特にディテールを潰しやすいノイズリダクションは効果低めに設定しておいたほうが良いかもしれません。
Whether you use it or not, it seems to be an effective function for enlarging images. It is especially useful for maintaining a sense of resolution in conjunction with cropping.
This is not a function that many people will use regularly, but there are probably people who need this kind of function. It is useful for things like cropping images to the size you need for use on SNS or blogs, or for enlarging images that need to be enlarged.You may not find these functions attractive if you don't need to edit or process images with your camera. However, in such situations, they are convenient functions that other cameras don't have.
However, since the source data for the upscaling process is JPEG/HEIF images, the results of upscaling will vary greatly depending on the sharpness and noise reduction processing applied to these images. In particular, it may be better to set the noise reduction, which tends to flatten out details, to a lower effect level.
アップスケーリングのおさらい
キヤノン EOS R5 Mark II カメラ内アップスケーリング
キヤノン独自のディープラーニング技術をベースとした処理/解析技術を活用することで、カメラ内でのアップスケーリングやニューラルネットワークノイズ低減が可能に。撮影後にクラウドサービスやPCを用いることなく、より高解像度・低ノイズな画像を生成できます。
- 撮影後、縦横の画素数をそれぞれ2倍に変換
- 全画素数を4倍に変換し、約1億7900万画素まで画像の拡大が可能
- 作品展などの大判出力にも対応
- IBISハイレゾ撮影とは異なり1枚の画像で生成
- カメラ内で処理するためPCを介さずそのまま投稿/送信
- トリミングと同時にカメラ内アップスケーリングを行うことも可能
- 解像感を保ちながら生成
- 元画像から逸脱した画像を描写しないようなアルゴリズム
- 対応画像:JPEG/HEIF画像
- 利用できない画像
・RAW/C-RAW画像
・同一機種以外のカメラで撮影された画像
・カメラ内アップスケーリング済みの画像
・動画撮影中静止画記録の静止画
・画像サイズ:L以外
・[静止画クロップ/アスペクト]:フルサイズ以外
・RF-S/EF-Sレンズを使用しクロップされた画像
EOS R5 Mark IIで撮影したLサイズのJPEG・HEIF画像を使用して「解像感を維持しながら」「画像サイズを拡大」する機能。文中で「解像度の向上」「解像感の向上」は言及しておらず、あくまでも違和感のない画像サイズの拡大を目指している機能のようです。
一枚の画像から生成可能となっているので動体撮影でも利用できるのが特徴。また、画像データはJPEGやHEIFを利用するため、ファイルサイズの大きなRAWを記録する必要もありません。カメラ内で処理可能となっている点が特徴。
アマチュアユーザー目線では「RAW現像ソフトで良いのでは?」となりそうですが、撮影後にそのままJPEGの画像データを提供するような業務やSNS用途では便利な機能となるかもしれませんね。
使い方の確認
再生メニューの2ページ目にアップスケーリングの項目が追加されています。
この機能を利用する頻度が高いのであれば、マイメニューに登録しておくと良いでしょう。
アップスケーリングを実施する画像(JPEG/HEIF)を複数選択することができます。この際に処理する合成枚数は表示されますが、処理にかかる推定時間の表示はありません。
ストレージ内の画像をまとめて処理したい場合は「範囲指定」で簡単に選択することが可能。
「トリミングと同時にアップスケーリング」を実施したい場合、トリミング使用時にアップスケーリングをオプションとして選択することが出来ます。(一般的ユーザーで)この機能を効果的に使うとしたら、トリミングとセットとなる可能性が高そう。
動画で確認
撮影シーンやISO感度に関わらず、1枚のアップスケーリング処理で15秒前後。10枚で150秒、100枚で1500秒の処理時間が必要となります。アップスケーリングしたい画像を絞って処理するのがおススメ。
アップスケーリングの効果
風景撮影
- EOS R5 Mark II
- SIGMA 70mm F2.8 DG Macro
- ISO 100 F5.6 1/1250s
縦横の画像サイズが2倍となっているため、トリミング耐性が大幅に改善しています。よく見ると解像度や解像感が「向上」しているわけではありませんが、元の画像サイズほどの見苦しさはありません。以下に二つの画像を1500pxまで引き延ばしたものを比較用に掲載。
風景撮影2
- EOS R5 Mark II
- RF28mm F2.8 STM
- ISO 100 F8 1/13s
アップスケーリングの効果は間違いなくあります。ピクセルシフトマルチショットが不得手とする動きのある被写体でも違和感はほとんどありません(完璧ではない)。
解像チャート
- EOS R5 Mark II
- SIGMA 70mm F2.8 DG Macro
- ISO 100 F5.6 1/6s
コントラストの強い、幾何的な被写体は効果が薄め。アップスケーリングは解像度を向上させる機能ではなく、元の画像データ以上の解像度は得られません。元画像から細部が潰れている領域の復活は出来ないと考えておいたほうが良いでしょう。動物の体毛なども同じ。
高ISO
- EOS R5 Mark II
- EF70-300mm F4-5.6 IS II USM
- ISO 10000 F5.6 1/1000s
- ノイズリダクション 低
元画像の細部がノイズリダクションでつぶれてしまっている場合、アップスケーリングの効果は薄い。アップスケーリング前提の場合、ノイズリダクションはオフか低に設定しておくと良いかもしれませんん。
Adobe製現像ソフトの処理と比較
EOS R5 Mark IIのアップスケーリングと、RAWから解像度強化を実施するAdobe Lightroom Classic生成のJPEG画像を見比べてみました。面白いことに、どちらも画像サイズは通常の縦横2倍。
Lightroomの処理はアップスケーリングと比べると細部が自然な描写。ただし、RAW現像のためかレンズの収差も拡張しているため、状況によっては少しソフトと感じるかもしれません。
アップスケーリングはどこかスマートフォンのような画質にも見えますが、SNSなどですぐ使えそうな画質はこちら。Lightroomは繊細な描写ですが、使うためにはもうひと手間の処理が必要に見えます。
Lightroom有利と感じたのは直線などが多い場合。あくまでもJPEGを利用するアップスケーリングと比べて、RAWの強化は違和感のない拡張が可能。。アップスケーリングをRAW現像に近づけるためには、処理前提のJPEG画質設定(シャープネスやノイズ低減など)が必要と感じました。
高ISOにおける画質差はほとんどありません。どちらも効果が薄い。
まとめ
使う使わないは別として、画像を拡大する機能としては効果的に見えます。特にトリミングと並行して解像感を維持する処理としては便利。多くの人が常用するような機能ではありませんが、このような手段を必要としていた人が中にはいることでしょう。大きく引き伸ばす必要がある広告用画像、SNSやブログで利用できる程度の画像サイズを実現するトリミングなどで有効。
いずれもカメラで編集・処理を実施する必要性が無い場合は魅力的と感じないかもしれません。しかし、そのような状況では他のカメラに無い便利な機能と言えそうです。
ただし、アップスケーリング処理の元データとなるのはJPEG/HEIF画像のため、これらのシャープネスやノイズリダクション処理によってアップスケーリングの結果が大きく変わってきます。特にディテールを潰しやすいノイズリダクションは効果低めに設定しておいたほうが良いかもしれません。
一般ユーザーは使う機会があるか?
おそらく、ほぼないと思います。大幅なトリミングが必要な撮影シーンでは、感度ノイズの処理も同時並行で実施する必要があるシーンも多いはず。画質の調整を施しながら画像サイズを拡大するのであれば、Adobe LightroomやPureRAWなどの現像ソフトがより柔軟性が高く、シーンに合わせた高度な処理が可能となっています。画像サイズの拡大で、あえてカメラ内処理で済ます必要性が高い人は多くないのかなと。
それでも、JPEG/HEIF出力でさっと画像を取り出す必要性がある場合には、選択肢の一つとして使ってみるのもアリだと思います。
参考情報
購入早見表
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