パナソニック「LUMIX S9」のレビュー第一弾を公開。今回は目新しい撮影機能「ハイブリッドズーム」「クロップズーム」についてチェックしています。ワークフローを省略できる、LUMIX S9のコンセプトに沿った便利なズーム機能。
簡単なまとめ
万能とは言えませんが、解像度や画像サイズが最重要ではない場合に面白い機能。やっていることはフル画像からの中央クロップ(+若干のリサイズ)ですが、これを滑らかで自然なズーム操作に混ぜたのは画期的。ワークフローからパソコンでの画像編集を省略するには丁度いい。最小でFHDの解像度があれば十分な場合、記録写真や家族写真でも重宝します。LUMIX S9のコンセプトに合致する便利なズーム機能と言えるでしょう。クロップ前のRAWも保存可能。
Not a panacea, but an interesting feature when resolution and image size are not paramount. What it does is center crop from the full image, but mixing this with a smooth and natural zoom operation is revolutionary. Just right for omitting image editing on the computer from the workflow. It is also useful for documentary and family photos when a minimum FHD resolution is sufficient; it is a useful zoom feature that fits the concept of the LUMIX S9.
Index
LUMIX S9のレビュー一覧
- パナソニック LUMIX S9 レビュー Vol.5 メニュー編
- パナソニック LUMIX S9 レビュー Vol.4 ドライブ編
- パナソニック LUMIX S9 レビュー Vol.3 LUT編
- パナソニック LUMIX S9 レビュー Vol.2 ダイナミックレンジ編
- パナソニック LUMIX S9 レビューVol.1 ハイブリッド・クロップズーム編
- パナソニック LUMIX S9 ハンズオンレビュー 外観や操作性の確認
ハイブリッドズーム
ハイブリッドズームとは
ズームレンズ側の「光学ズーム」とカメラ側の「クロップズーム」を掛け合わせることができる新しいズーム方式。レンズのズームリングを操作することで「光学ズーム」の焦点距離が変化しますが、同時に「クロップズーム」の倍率も連動。
メカニカルなズームリングでクロップズーム倍率も操作できるため、滑らかで自然な操作性と見栄えを実現しています。ただし、スムーズに連動するのはパナソニック製レンズと組み合わせた際と言及しており、シグマやライカ製のレンズで同等の滑らかさを実現できるのか不明。
注意点は作用するのがJPEG出力のみで、RAW出力は光学ズームの焦点距離であること。JPEG出力はクロップズームの倍率に応じてサイズが小さくなります。クロップ時のJPEGサイズは以下の通り。
- L:6000×4000(倍率0.0)
- M:4272×2848(倍率1.1-1.4)
- S:3024×2016(倍率1.5-1.9)
- XS:1920×1280(倍率2.0-3.0)
クロップ倍率の細かい変動に関わらず、画像サイズは固定されています。同じ画像サイズでも倍率高めの場合は画像処理による引き延ばしが発生していると思われ、若干ぼやけた画質となる可能性あり。クロップ倍率はリニアに変動するため、ズーム全域における最初の1/4が「M」、次の1/4が「S」となり、最後の2/4が「XS」となります。
ハイブリッドズームの設定
焦点距離の設定
ハイブリッドズーム中の焦点距離について「(ハイブリッドズーム時の)35mm判換算の焦点距離」か「(レンズの)実焦点距離×倍率」のどちらかで表示が可能。焦点距離を重視する場合には「合成」を、画質や画像サイズを重視するなら「倍率」の表示がおススメ。合成焦点距離表示の場合、通常時は白色の焦点距離表示が黄色になっています。クロップが発生しない広角端、設定次第では広角域でクロップが発生しない焦点距離(後述)では白色表示となる。倍率表示の場合、実焦点距離の横にクロップ倍率が黄色で表示されます。倍率によって画像サイズに変化があるため、画質を重視する場合はこちらのほうが便利。
広角端のクロップズーム
広角側でのクロップズームを制限することができる設定。初期設定はオフですが、これをオンにすることでハイブリッドズームが動作するタイミングを少し遅らせることができます。(参考動画を下部に掲載)
クロップされないズームレンジは、通常のハイブリッドズーム時の「M」に該当する領域。つまり焦点距離全体における1/4が非クロップ領域。残り3/4のズーム域で1.1-3.0倍のクロップがリニアに動作します。
「広角端のクロップズームオフ」に設定するメリットは「広角側のフルサイズ画質」を維持しつつ、ハイブリッドズームのメリットを損なうことなく望遠域を拡張することができること。普段は広角端かその周辺を多用するが、たまに望遠域を使うようなシーンで有効。
下限画像サイズ
画像サイズが小さくなりすぎるのを制限することで、意図しない画質低下を防ぐことが可能。「クロップ倍率の制限」と言い換えることも出来るので、「M=~1.4×」「S=~1.9」「XS=~3.0」となります。当然ながら、制限により望遠側の拡張性は低下します。
記録画像サイズの固定
静止画におけるハイブリッドズームの欠点は画像サイズが低下すること。このままSNSなどコンテンツ素材として使う場合、画像サイズが異なるとリサイズなどの手間が発生します。それならば、画像サイズを固定してしまおうと言うのが本機能の趣旨だと思われます。
固定するのは最高画質ではなく、最低画質のほう。つまり設定しているクロップ倍率の最大値における画像サイズに固定されます。初期設定「XS」であれば1920×1280=2.4MP(FHD)に固定され、広角側でもFHDまでリサイズされます。
使用時の参考動画
画像と文章だけでは分かりづらいと思うので、参考動画を用意しました。使用レンズはLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6。
非使用時(一般的な光学ズーム)
合成焦点距離
前述したように、画面下半分に合成焦点距離(35mm判換算時の焦点距離)が表示されます。
焦点距離×倍率
合成焦点距離の代わりに、実焦点距離とクロップ倍率が表示されます。分かりづらいかもしれませんが、×1.5・×2.0時にJPEGサイズが自動で切り替わっています。
広角端のクロップズームオフ
ズーム全域の広角側1/4(~29mm)ではクロップが発生しません。その後30-60mmの間で3.0×までのハイブリッドズームが動作します。このため、通常のハイブリッドズームよりも倍率が上がる感覚が短く、一定のズーム速度を維持するのが難しい。
下限画像サイズ
画質の比較
センサーに写る被写体のサイズを変えずに光学ズーム・ハイブリッドズームを使用して撮影した作例が以下の通り。画面からクロップする割合は揃えています。
通常
当然ながら光学ズームでは画質に大きな変化がありません(光学性能の偏りはあると思いますが無視できる程度)。
ハイブリッドズーム ()は実焦点距離
Mサイズは遜色なく使うことができるものの、S・XSはサイズ低下が目立ちます。特に4Kモニタでは解像度が小さいと感じるかもしれません。とはいえ、FHDモニタやウェブ用の素材としては十分な解像度に見えます。XSでトリミングやクロップする余裕は無いものの、実用的な画質。
クロップズーム
クロップズームとは
光学ズームとクロップズームが連動しない機能。レンズはズームレンズでも単焦点レンズでも利用可能。従来の「EXテレコン」と異なり、クロップ倍率を滑らかに変動させることでズームレンズのように操作することが可能。注意点はハイブリッドズームのように、レンズのズームリングでクロップ倍率を調整できないこと。ライブビューやカメラのボタン操作でクロップ倍率を操作する必要があります。ライブビュー横のタッチFnバーで操作可能ですが、タッチ操作に失敗することが多く、滑らかで完璧なズーム操作には適していないと感じました。Fnボタンにズーム操作を割り当てたほうが無難。
クロップズーム設定
焦点距離表示設定
理理屈はハイブリッドズームと同じ。
下限画像サイズ
理理屈はハイブリッドズームと同じ。ただし、クロップズームの場合は起点となる実焦点距離を自分で設定することが可能。LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6の場合、20mmでクロップ開始してもいいし、60mmからクロップ開始も可能。
記録画像サイズの固定
はハイブリッドズームと同じように動作します。
ズーム速度
動作確認
白字が動いているときは光学ズーム。黄字が動いているときはクロップズーム。
まとめ
万能とは言えませんが、解像度や画像サイズが最重要ではない場合に面白い機能。やっていることはフル画像からの中央クロップ(+若干のリサイズ)ですが、これを滑らかで自然なズーム操作に混ぜたのは画期的。ワークフローからパソコンでの画像編集を省略するには丁度いい。最小でFHDの解像度があれば十分な場合、記録写真や家族写真でも重宝します。LUMIX S9のコンセプトに合致する便利なズーム機能と言えるでしょう。この機能が最も役立つのは動画撮影時だと思いますが、静止画でもwebやSNS用の撮影であれば十分な画像サイズは確保できます。下限画像サイズに固定してしまえば、サイズのリサイズは不要。画質とのバランスを重視する際はクロップ倍率や広角側のクロップを抑えるなど手段が用意されているのも秀逸。新機能ながらよく考えられています。
参考情報
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