オリンパスの分かりづらい「階調」機能
実はこの事に気が付いたのはここ最近。
パナソニックの「iDレンジコントロール」が思いのほか便利で、オリンパス機でも使ってみたくなった。そこで、どうやって使うのかと探していたら「階調Auto」がそれであることを発見。
分かりづらいネーミングだぜ!
そこで今回は「階調」が写真データにどのような影響を及ぼしているのか検証することにしました。
Index
オリンパスのトーン調整機能
階調とは?
階調とは?
被写体の明るさは暗い部分から明るい部分までなだらかに変化しています。これを階調と言います。明るさの違いが大きいと露出の設定によって、写真は明るい部分が白とびしたり暗い部分が黒くつぶれたりします。露出補正で明るさを調節して写らない部分の階調を出す事はできますが、逆に明るさの側がつぶれたりとんだりしてしまいます。[階調]を使うと階調を保ちながら明るさの調子を変えたり、どちらの部分も自動的に調節して階調を出す事ができます。
他社メーカーで言えばパナソニックの「iDレンジコントロール」、ペンタックスの「ハイライト・シャドウ補正」、ソニー「Dレンジオプティマイザ」、フジフイルム「拡張DR」などと似ています。
白飛びや黒潰れに作用する「見かけのダイナミックレンジを拡張する」機能ですね。
各社似ている機能ですが、特にオリンパスの「階調」機能は「実際の露出設定に影響を与える」と言うポイントがあります。
実写
階調設定値ごとの明るさ比較
- 使用機材:OM-D E-M1 Mark II・M.ZUIKO DIGITAL 12-100mm F4 IS PRO
- 露出設定:絞り優先AE・F4・ISO 200
- 仕上がり設定:Flat
- ハイライト&シャドウコントロール:オフ(各設定値=0)
- JPEG出力
シャッタースピードの結果
Auto | Normal | High | Low | |
シャッタースピード | 1/100 | 1/100 | 1/80 | 1/160 |
ご覧のように設定を変更すると露出に影響を及ぼしてることが分かります。他社のダイナミックレンジ拡張機能と大きく異なるポイントであり、分かりづらい機能ですね。
「あれ?露出が同じなのに、AutoとNoramlの明るさが違うじゃないか」と気が付いた方もいらっしゃるかと思います。そう、オリンパスの階調機能は実際に露出へ影響する上に、「見かけ上のダイナミックレンジ」を拡張するための撮影後に露出を調整しています。
次にJPEGと階調を無効にしたRAW現像を見てみましょう。
階調設定値ごとのJPEGとRAW現像比較
色々と説明する前にまずはそれぞれのJPEGとRAWを見比べてください。
階調Auto
階調Normal
階調High
階調Low
トーン処理が大きい設定と小さい設定がある
如何でしょうか?RAWファイル(トーン処理が施されていないデータ)とJPEG出力に差がある設定値がありますね。
特にトーン処理が目立つのは「Normal」で、その次に「High」。そしてあまり差を感じることが出来ない設定値は「Auto」と「Low」。
露出が同じである諧調AutoとNoramalにおいて、Autoでは無くNormalにトーン補正が適用されてるのは驚きました。
「どの環境でも同じ傾向のトーン処理が適用されるのか?」と言うとそうでも無い。
次に輝度差が大きいシーンを見てみましょう
輝度差が大きい場合の比較
今回は一先ずJPEGとRAW、そしてシャッタースピードの相関関係を一通りご覧ください。
シャッタースピードの結果
Auto | Normal | High | Low | |
シャッタースピード | 1/50 | 1/50 | 1/30 | 1/80 |
階調Auto
階調Noramal
階調High
階調Low
輝度差が大きい場合にはAutoが露出の持ち上げ処理を行う
Noraml・High・Lowがあまり変化しない反面、Autoはシャドウを大きく持ち上げていますね。
一方で、1回目の検証では撮影後の露出調整が大きく入ったNormalに変化なし。ハイライトが多い場合にはトーンのマイナス補正が発生するものの、シャドウが多くてもプラス補正には積極的ではないらしい。露出が同じである諧調Autoの役割と言う事だろうか?
まとめ
今回の検証結果
Auto | Normal | High | Low | ||
輝度差が小さい場合 | 露出差 (Normalを基準として) |
0EV | ー | +1/3~2/3EV | -1/3~2/3EV |
トーン処理 | 補正無 | マイナス補正大 | マイナス補正小 | 補正無 | |
輝度差が大きい場合 (シャドウが多い) |
露出差 (Normalを基準として) |
0EV | ー | +1/3~2/3EV | -1/3~2/3EV |
トーン処理 | プラス補正大 | 補正無 | 補正無 | 補正無 |
- 階調Normal…ヒストグラムの山を中央寄り。ハイライトが多い時にデジタルで露出を落とす傾向。
- 階調High…ヒストグラムの山を露出でハイライト寄りにするためRAWに影響する。デジタルの処理は少ないが白飛び部分をマイナス補正。
- 階調Low…ハイライトの山を露出でシャドウ寄りするためRAWに影響する。デジタルの処理は少ないが黒潰れをプラス補正。
- 階調Auto…露出は諧調Normalと同じためRAWに影響しない。シャドウが多い場合にデジタルで露出/シャドウを持ち上げる傾向。
階調機能の上手な使い方とは?
基本は「Normal」拡張ダイナミックレンジを使いたい場合にAuto
基本は露出が変化しないNormalとAutoの使い分けがベター。
NormalとAutoの関係が他社の拡張ダイナミックレンジのオンオフと同じ。他社と違いシャドウ持ち上げ量に強弱を付けることが出来ないので、微妙な調整はハイライト&シャドウコントロールで調整することとなる。
Autoでシャドウを持ち上げつつ「黒」を引き締める
階調Autoをそのまま使うと不必要に黒を持ち上げすぎて、色褪せてしまう。さらにダイナミックレンジに起因するノイズが見えやすくなるため、シャドウのざらつきが目立ってしまう。
そんな時は「ハイライト&シャドウコントロール」を使ってシャドウの設定を少し下げる。すると、程よく黒色が引き締まり、シャドウのノイズが目立たなくなる。
HighとLowは使い方に注意
露出が変化する階調Highと階調Lowの使い方は難しい。
例えば諧調Lowに設定するとシャッタースピードが速くなるのでシャドウが多い「ローキー」となる。これは「シャドウの画質が良くなる」という訳では無く、単純に「暗く写る」と言うだけ。その一方で露光量が少ないため現像時に「ハイライトが粘る」。
また、階調Highはシャッタースピードが遅くなるので、ハイライトが多い「ハイキー」となる。これは「ハイライトの画質が良くなる」と言う訳では無く、単純に「明るく写る」と言うだけ。その一方で露光量が多いため現像時に「シャドウが粘る」。
とまあややこしい話であり、AutoとNormalよりも難易度が高い。
ダイナミックレンジ・ISO感度との関係
以前に「オリンパスのダイナミックレンジはハイライト寄り」と言う記事を書いた通り、オリンパス機に搭載されているセンサーは「適正露出で撮影するとハイライトが粘り強くシャドウの持ち上げ耐性が低い」
つまり、諧調Autoでシャドウを持ち上げると、自然とDRに起因するノイズが多くなる。
そこで、シャドウの伸びしろが大きい「ISO感度Low(ダイナミックレンジが常用感度よりもシャドウ寄り)」がベターな組み合わせ。さらに、基本的にシャドウの比率が多くなる「階調Low」の場合にもISO感度Lowで画質の向上が期待できる。
一方でトーンを落とす傾向にある階調Nomarlや基本的にハイライトが多くなる諧調Highの場合にはダイナミックレンジがハイライト寄りの常用ISO感度(ISO AutoやISO200?25600)を使った方が良い結果を得ることが出来る。
追記
2023-3-22:現行機は白飛び重視の傾向が弱くなっているので、当てはまらないかもしれません。
あとがき
今更ながら、諧調をチェックするならグレーチャートを印刷して撮影すれば良かったのかと反省。
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