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FUJIFILM X100VI 23mm F2.0 II レンズレビュー 完全版

このページではFUJIFILM X100VIに搭載している固定式レンズ「フジノン 23mm F2.0」のレビューを掲載しています。

X100VI 23mm F2のレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
サイズ 非常にコンパクト
操作性 機能的だが誤操作が多い
AF性能 繰り出し式フォーカスが足かせ
解像性能 接写時と絞り開放付近以外は良好
ボケ 大きな問題なし
色収差 良好な補正状態
歪曲収差 皆無
コマ収差・非点収差 F2で目立つ
周辺減光 F2でやや目立つ
逆光耐性 大きな問題なし
満足度 足回りを気にしなければ満足度の高いレンズ

評価:

足回りを気にしなければ満足度の高いレンズ

フォーカス性能に過度な期待をしなければ、X100シリーズの最新モデルとして期待通りの結果が得られるレンズ。特に4000万画素とセンサーシフト式手振れ補正の点から従来機と使い勝手が大きく改善。絞れば4000万画素にも耐えうる結果が得られます。

細部の結果にこだわらなければ、F2から十分な画質であり、幅広いシーンに対応可能。フォーカス性能が足を引っ張ると感じる場合もありますが、ピントを外した写真もご愛敬と言えるかもしれません。価格に見合った結果が欲しい場合はレンズ交換式のより大きな23mmを選んだほうが良いでしょう。

残念ながら、国内における在庫不足の問題はX100Vと同様。購入したくても出来ない状況が続いています。どうしてもX100のコンパクトスタイルで23mmを使いたいのであればX100VIを買うしかないものの、こだわりがないのであれば以下の選択肢も要検討。

If you do not have excessive expectations for focusing performance, this camera delivers the expected results as the latest model in the X100 series. The usability is greatly improved from previous models, especially in terms of 40 megapixels and sensor-shift image stabilization. If you stop down the aperture, you can get results that can withstand 40 megapixels.

If you are not concerned about detailed results, the image quality is sufficient from f/2 and can be used for a wide range of scenes. You may find the focus performance a drag at times, but you may also appreciate the out-of-focus photos. If you want results that are worth the price, you may want to opt for the larger 23mm with interchangeable lenses.

Unfortunately, the problem of lack of stock in Japan is the same as with the X100V. Even if you want to buy it, you are still unable to do so. If you really want to use the 23mm in the compact style of the X100, you will have to buy the X100VI, but if you are not particular about it, you should consider the following options.

X100VI 23mm F2 IIのおさらい

X100VIは2024年3月発売のX100シリーズ最新モデル。搭載しているレンズはX100Vで更新された「FUJINON 23mm F2 II」を継承。レンズ周辺のデザインも同様であり、従来のアクセサリーを利用可能となっています。当然ながら繰り出し式フォーカスも従来通りであり、カメラの防塵防滴を完全なものとするには前部にフィルターを装着する必要があります。

画質関連で最も大きな変化はイメージセンサーが4000万画素まで大幅に向上したこと。従来通りのレンズで4000万画素の高解像に耐えうるのか気になるところ。

  • プレスリリース
  • 商品ページ
  • 仕様表
  • 最新情報まとめ
  • 発売日:
    FUJIFILM X100VI(シルバー):2024年3月28日
    FUJIFILM X100VI(ブラック):2024年3月28日
    FUJIFILM X100VI(Limited Edition):2024年3月下旬
  • 希望小売価格:オープン価格
  • 初値:253,440円
  • B&H:1,599 ドル
  • フォーマット:APS-C
  • イメージセンサー:X-Trans CMOS 5 HR 4000万画素
  • 焦点距離:23mm
  • 絞り値:F2-F16
  • 絞り:9枚羽根
  • レンズ構成:6群8枚(非球面2枚)
  • 最短撮影距離:30cm
  • 最大撮影倍率:不明
  • フィルター径:
  • サイズ(カメラ):128.0×74.8×55.3mm
  • 重量(カメラ):521g
  • 防塵防滴:対応(繰り出し式レンズを保護するアクセサリ装着時)
  • AF:レンズ繰り出し式(アクチュエーターは不明)
  • 手ぶれ補正:センサーシフト式 6.0段
  • その他機能:
    ・NDフィルター:あり(4段分)
    ・レンズシャッター

従来通りNDフィルター搭載で4段分の光量低下が可能。さらにセンサーシフト式の手振れ補正を搭載したことで、手持ち撮影でのスローシャッターが容易となっているのは嬉しいポイント。

価格のチェック

売り出し価格は25万円ちょっと。最近のXシリーズを考慮すると最早驚かない価格設定ですが、X100Vの売り出し価格が16万円だったことを考えると、随分と高嶺の花のような存在となってしまったように見えます。

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

富士フイルムらしい黒を基調としたシンプルなデザインの箱。中には本体のほかに、バッテリーやストラップ、ストラップ金具、説明書が付属。

外観

カメラの話は後日として、レンズ部分はAPS-C用「23mm F2」としてはコンパクト。レンズ交換式システムの「XF23mmF2 R WR」よりも全長が短く、収納性に優れています。外装は全体的に金属製の頑丈な作り。フォーカスリングも金属製で、滑り止めの加工が施されています。

前玉

コンパクトですが、ピント合わせは繰り出し式フォーカスを採用。AF時に光学系が前後へ移動します。無限遠時に内筒がカメラ側へ引っ込み、最短撮影距離では内筒が外装から数ミリ突出します。この仕組みのため、カメラ単体では完全な防塵防滴仕様ではありません。フィルターアダプター経由でフィルターを装着することで外装に「蓋」をして耐候性が完全なものとなります。フィルターサイズは49mm。

レンズにはリーフシャッターと9枚羽根の絞りを搭載。電源オフ時はリーフシャッターが閉じた状態となり、センサーの焼き付きを防ぐ。絞りの動作はレンズ交換式Xシリーズと同じで、初期設定ではシャッター半押し時に設定した絞り値まで絞りが閉じるようになっています。

フォーカスリング

滑り止めのローレット加工が施された金属製フォーカスリングを搭載。適度な抵抗感で滑らかに回転。初期設定ではMFリングとして使用しますが、カスタマイズでフィルムシミュレーションやホワイトバランスの選択にも利用可能。

フォーカス操作時のレスポンスは「ノンリニア」で、回転速度に応じてピント移動量が変化します。ただし、設定メニューから「リニア」設定に変更可能。フォーカス全域のストロークはリニア時に360度以上と長め。ノンリニア時に素早く回転しても180度以上の操作が必要で、正確な操作に適しています。

絞りリング

ボディとレンズの境界線にはF2からF16まで操作でき、Aポジションにも設定できる絞りリングを搭載。全域で1/3段刻みで回転し、クリックの解除はできません。フォーカスリングと隣り合っている配置上、絞り操作時にフォーカスリングを誤操作しやすい。

フィルターアクセサリ

レンズ先端のカバーを外し、別売りのアダプターを装着。この状態で49mmねじ込み式フィルターと専用レンズフードを装着可能。

フィルターを装着することで、前述した繰り出し式フォーカスの光学系を密閉し、保護することができます。レンズ固定式カメラは内部に侵入したゴミの除去が難しいため、できるだけフィルターを装着したまのほうがトラブルに遭遇する確率が低いと思われます。

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NEEWER UV保護フィルター一体型フード

カメラの携帯性を損なわないドーム型のレンズフードに固定されたフィルターを搭載。X100VI純正のかぶせ式レンズキャップを装着することが出来ます。ただし、レンズコーティングの発色に少し癖があり、状況によって結果がマゼンダ寄りとなる場合があります。惜しい。

NEEWER UV保護フィルター一体型フード

JJC製レンズフード

NEEWERと異なり、一般的な角型レンズフード。専用のアダプターリングが付属しており、角型フードの水平を合わせてからネジで固定します。通常のアダプターリングと同じく49mmフィルターに対応。

AF・MF

フォーカススピード

キビキビと動作しますが、レンズ交換式のリニアモーター搭載レンズと比べると遅め。必ずしもスナップ撮影で快適とは言えません。ピント位置の移動距離が短ければ問題ありませんが、近距離から素早く遠距離(またはその逆)に被写体を切り替える際にもたつく印象あり。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

スライドショーには JavaScript が必要です。

レンズ繰り出し式フォーカスという特性上、画角の変化が大きめ。動画のみならず、静止画のAFでも画角の変化が目障りと感じます。(上の参考動画を参照してください。)

精度

このカメラに限った話ではないものの、富士フイルムのAFシステムは遠景におけるピントの山を掴み損ねることがあります。他社で発生しないこともありませんが、特に富士フイルム機は多い印象あり。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:FUJIFILM X100VI
  • 搭載レンズ:FUJINON 23mm F2 II
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 125 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・レンズ補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

絞り開放から4000万画素を最大限に活かせる性能ではありませんが、F4まで絞ると非常にシャープな中央解像が得られます。周辺はF2から良好ですが、絞っても大幅に改善することはありません。四隅はF2でややソフト、F2.8以降は周辺と同程度の結果を得ることが可能。全体的に悪くない結果ではあるものの、「2,600万画素で十分だったのでは?」という印象はあります。

中央

F2から十分良好ですが、細部に関して若干ソフト。絞ると徐々に改善し、F4で高解像センサーを活かせる解像性能が得られます。もしも50mm・70mm換算のクロップを利用するのであれば、F4~F5.6くらいまで絞って撮影するとシャープな結果を得ることができます。

周辺

F2から大きな乱れのない安定した結果。数値を気にせず使うのであれば、F2から実用的と言えるでしょう。F4-5.6で細部にわずかな改善が見られるものの、劇的な向上は無く、中央に追い付くことはありません。

四隅

中央や周辺と比べると軸外収差の影響で画質が少し乱れています。ベストな結果を得たいのであれば、F5.6付近まで絞るのがおススメ。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F2.0 2910 2941 2056
F2.8 3333 3055 2886
F4.0 4429 3274 2850
F5.6 4211 3323 2961
F8.0 3772 3343 3343
F11 3513 3022 2776
F16 2496 2439 2358

実写で確認

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2024/05/22 晴れ
  • カメラ:X100VI
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 125
  • RAW現像
    ・Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・レンズ補正オフ
    ・ノイズ補正オフ

実写で確認

絞り開放は残存する球面収差やコマ収差の影響で少し低コントラストで、細部の描写がイマイチ。F2.8まで絞ると諸収差が収束して画質が改善します。(T値的な)明るさと画質を両立したいのであればF2.8あたりがおススメ。F5.6前後まで絞ると中央がさらに向上しますが、周辺や隅に大きな変化はありません。(収差に関しては収差編でレビュー予定)

中央

絞り開放からほとんど変化しませんが、1段絞るとコントラストがわずかに改善します。さらにF5.6まで絞ると細部のコントラストが少し向上。

周辺

コマ収差か球面収差の影響か、F2はコントラストが低め。F2.8まで絞ると目に見えて改善するので、低照度でもF2.8まで絞ったほうが良いかもしれません。それ以降に大きな変化は無し。細部のコントラストが中央に追い付くことはありません。

四隅

基本的に周辺部と同じ。F2でコマ収差のような影響が見られ、F2.8まで絞ると改善します。それ以降に大きな変化は無し。

XF23mmF1.4 R LM WR + X-S10

2600万画素のX-S10に最新のXF23mmF1.4 R LM WRを装着して撮影した結果が以下のとおり。X100VIテストショットと時期が異なるので厳密な比較ではないものの、パッと見た限りでX100VIの4000万画素に顕著なアドバンテージはありません。

X100VIをよく見ると細部の線がわずかに細かく描写されているものの、コントラストは低め。コンパクトな23mmF2レンズとして悪くない結果ですが、4000万画素が必要だったのかどうかは疑問が残ります(特に周辺や隅)。あくまでも50/70mmクロップの際に役立つものと割り切ったほうが良さそう。

撮影倍率

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り開放でも中央から隅まで被写界深度内に収まっているように見えます。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

完璧な補正状態ではありませんが、実写で悪目立ちしない程度に良く抑えられています。特に問題ありません。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り開放から良好な補正状態です。非常に厳しい環境でも色ずれはほとんど目立ちません。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

Adobe Lightroomにてレンズ補正をオフにした状態で現像。通常と見比べても歪曲収差に大きな変化はないように見えます。光学的に補正されているのか、RAW出力時で既に補正されているのか、詳細は不明。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

F2の絞り開放でやや目立つコマ収差が残存しています。35mm・換算35mmのレンズはコマ収差が残存しているレンズが多く、X100VIも例外ではない模様。1段絞ると大幅に改善しますが、F2では点光源の変形や周辺・隅のコントラスト低下の原因となっている可能性あり。

球面収差

少なくとも近距離では補正状態が完璧とは言えず、前後のボケ質に顕著な差が発生しています。軸上色収差のテスト結果から、フォーカスシフトには顕著な影響がありません。(カメラ側でフォーカスシフトを補正しているのかどうかは不明)

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

ニュートラル寄りですが、わずかに後ボケが滲みやすい傾向。ボケの縁取りが弱く、比較的滑らかな描写を実現しているように見えます。軸上色収差によるわずかな色づきがあるものの、無視できる範囲内。

前ボケ

後ボケと比べるとボケの縁取りが硬く2線ボケの兆候が僅かにあります。とはいえ基本はニュートラルで綺麗な描写。色収差の影響が少ないので、悪目立ちする可能性は低い。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

コンパクトな23mm F2レンズですが、口径食の影響は少なめ。非球面レンズの研磨ムラも良く抑えられています。絞りを閉じても円形を維持しています。

ボケ実写

至近距離

全体的に滑らか。口径食の影響は目立たず、ピント面はコントラストが高い。球面収差の残存する柔らかいボケではありませんが、使い勝手の良い綺麗なボケと言えるでしょう。色収差の影響は目立ちません。

近距離

撮影距離が長くなると、ボケの縁取りが目立ち始めます。また、フレーム周辺は軸外収差の影響で流れるような描写。悪くはありませんが、特別良いとも言えません。周辺が気になる場合はF4まで絞ると落ち着きます。

中距離

近距離と同じ傾向。必要に応じてF2.8-4まで絞ると描写が落ち着く可能性あり。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。バストアップくらいまではまずまず良好ですが、上半身よりも離れて撮影する場合は周辺部のボケから騒がしくなります。撮影距離が長くなるとボケが小さくなるため目立たない可能性あり。ボケの大きさと撮影距離のバランスを見ながら絞りで調整することになると思います。いずれにせよ、色収差が良く抑えられているので、過度に悪目立ちする印象はありません。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

F2の絞り開放で目立つ周辺減光が発生します。過度な影響ではないので、そのまま使っても問題ないと思いますが、気になる場合はレンズ補正を適用しておくのがおススメ。1段絞ると改善しますが、それ以降で劇的には向上しません。あとはカメラ側の補正が必要。

無限遠

最短撮影距離と比べると影響が少し強くなります。やはり場合によっては補正が必要。絞りによる傾向は最短撮影距離と同じ。

逆光耐性・光条

中央

絞り開放付近はフレアが良く抑えられ、ゴーストは僅か。絞るとゴーストがより目立つものの、光源付近以外で大きな影響はありません。

フレアは良く抑えられ、光源周辺以外に影響なし。良好な逆光耐性に見えます。

光条

F11付近で先細りするシャープな光条へ変化。ただし、APS-C 4000万画素のX100VIにとってF11は回折の影響を受けやすく、解像性能とのバランスがとりづらい。F16でさらに光条は目立ちますが、細部のディテールはよりソフトな結果となります。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • APS-C 23mm F2としてはコンパクト
  • 高解像センサーにより実用的なクロップ機能
  • センサーシフト式の手振れ補正
  • 機能的なコントロールリング
  • 絞りリング搭載
  • NDフィルター内蔵
  • アクセサリーが豊富で既存製品と共有可能
  • リーフシャッターによるフラッシュ高速SS同調(メカ使用時)
  • ピント全域で安定感のある画質
  • 像面湾曲の問題無し
  • 色収差の補正状態が良好
  • 歪曲収差の補正状態が良好
  • 接写時に少し柔らかい後ボケ
  • ボケに口径食の影響が少ない
  • 逆光耐性

X100Vの世代で更新された23mm F2 IIは全体的に安定感のある光学性能を発揮。完璧ではないものの、幅広い撮影シーンでまずまずの結果を得ることができます。癖が抑えられているので個性的とは言えませんが、使い勝手は良好。

中央に限って言えば高解像センサーの恩恵を受けるに十分な解像性能を発揮。RAW M/Sクロップでも十分な結果を得ることができます。また、センサーシフト式の手振れ補正により手持ちのスローシャッターに対応しやすくなり、内蔵NDフィルターを活用できる機会も増えています。

悪かったところ

ココに注意

  • APS-Cカメラとしては高価
  • 在庫不足で入手が難しい(2024年夏時点)
  • 完全な防塵防滴にはフィルターが必要
  • コントロールリングと絞りリングの距離が近すぎる
  • 繰り出し式フォーカスの欠点(駆動音・ブリージング)
  • 改善しているが接写時の解像性能は最高ではない
  • F2の隅でコマ収差が目立つ
  • 周辺減光がやや目立つ

世代が変わり、AFシステムに被写体検出が加わったのは非常に大きなポイント。ただし、これはあくまでもAFシステムの話であり、レンズ側のフォーカス性能が対応していなければ意味がありません。この点でX100VIのレンズは不十分であり、繰り出し式フォーカスではAFの応答性や速度には限界があります。刹那的に訪れるシャッターチャンスに対して強いかと言うと、(AFが重要なシーンでは)そうでもありません。特に近距離が厳しい。

光学的な面から指摘すると、開放付近はコマ収差の影響でソフトな画質。絞れば改善するので、4000万画素を活かした結果を得たい場合はF5.6~F8あたりがおススメ。絞って風景や街並みを撮るには十分な結果が得られます。

結論

フォーカス性能に過度な期待をしなければ、X100シリーズの最新モデルとして期待通りの結果が得られるカメラ。特に4000万画素とセンサーシフト式手振れ補正の点から従来機と使い勝手が大きく改善。絞れば4000万画素にも耐えうる結果が得られます。

細部の結果にこだわらなければ、F2から十分な画質であり、幅広いシーンに対応可能。フォーカス性能が足を引っ張ると感じる場合もありますが、ピントを外した写真もご愛敬と言えるかもしれません。価格に見合った結果が欲しい場合はレンズ交換式のより大きな23mmを選んだほうが良いでしょう。

残念ながら、国内における在庫不足の問題はX100Vと同様。購入したくても出来ない状況が続いています。どうしてもX100のコンパクトスタイルで23mmを使いたいのであればX100VIを買うしかないものの、こだわりがないのであれば以下の選択肢も要検討。

購入するを悩んでいる人

センサーシフト式手振れ補正や4000万がsが必要なければ、X100FやX100Vなど旧世代でも問題ないかと思います。とはいえ、X100シリーズは慢性的な在庫不足と高価格化で、旧世代の中古品も高騰しています。高いお金を払って数世代前の中古カメラを買うくらいであれば、X100VIを注文して待つのも一つの手。もちろん、X100F以前の第一世代な23mm F2を使いたいのであれば別ですが…。

X100VIの半値で「XF23mmF1.4 R LM WR」を購入可能。カメラボディを用意する必要がありますが、旧世代のボディでも十分な性能を発揮します。X100VIと比べると大きなレンズですが、まだ許容範囲内。光学性能は非常に良好で、リニアモーター駆動のAFは高速かつ静か。ベストな23mmを探しているのであればコチラがおススメ。

購入早見表

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作例

Flickrにオリジナルデータを公開

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