このページでは「TTArtisan AF 40mm F2」のレビューを掲載しています。
製品提供について
このレビューは株式会社 焦点工房より無償提供された製品を使用しています。
金銭の授受やレビュー内容の指示は一切ないことを最初に明言しておきます。購入した製品ではないことに対する無意識のバイアスは否定できませんが、できるだけ客観的な評価を心がけています。
TTArtisan AF 40mm F2のレビュー一覧
- TTArtisan AF 40mm F2 レンズレビュー完全版 2025年9月15日
- TTArtisan AF 40mm F2 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編 2025年8月22日
- TTArtisan AF 40mm F2 レンズレビューVol.5 ボケ編 2025年8月21日
- TTArtisan AF 40mm F2 レンズレビューVol.4 諸収差編 2025年8月18日
- TTArtisan AF 40mm F2 レンズレビューVol.3 遠景解像編 2025年8月17日
- TTArtisan AF 40mm F2 レンズレビューVol.2 解像チャート編 2025年8月10日
- TTArtisan AF 40mm F2 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編 2025年8月8日
レンズの評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | 安いが競合製品が多い | |
サイズ | 40mm F2 としてはコンパクト | |
重量 | 40mm F2としては軽量 | |
操作性 | 絞りリング搭載 | |
AF性能 | 実用十分 | |
解像性能 | 近距離以外は良好 | |
ボケ | 近距離で滑らかな後ボケ | |
色収差 | 良好な補正状態 | |
歪曲収差 | 穏やかな糸巻き型 | |
コマ収差・非点収差 | 完璧ではないが穏やか | |
周辺減光 | 無限遠で目立つ | |
逆光耐性 | 完璧ではないが良好 | |
満足度 | 気軽に使えて堅実な性能 |
評価:
ポイント
気軽に使えて堅実な性能の40mm F2
ソニーE・ニコンZ・ライカL、いずれのマウントでも競合製品が存在しますが、それらのレンズと併せて検討する価値あり。本レンズは頑丈な金属鏡筒と絞りリング、良好な色収差補正などが強み。特にZfなどクラシカルな外観のカメラと相性が良好。
近距離でのパフォーマンス低下や遠景の周辺減光には注意が必要なものの、小型軽量・低価格・適切な光学性能でバランスの良い40mmレンズ。
Sony E, Nikon Z, Leica L—competitive products exist for all these mounts, but this lens is worth considering alongside them. Its strengths include a sturdy metal barrel, aperture ring, and excellent chromatic aberration correction. It pairs particularly well with cameras featuring a classic look, such as the Zf.
While performance at close distances and peripheral light falloff in distant scenes require attention, it remains a well-balanced 40mm lens offering compact size, light weight, affordability, and adequate optical performance.
TTArtisan AF 40mm F2 | |||
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Index
まえがき
- 発売日:2025.8.8
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickr
TTArtisanブランドで9本目となるAFレンズ(フルサイズ用としては3本目)。AFレンズでは比較的珍しい焦点距離「40mm」を採用しつつ、小型軽量ながら「F2」の開放F値を実現。フルサイズ対応ですが、APS-Cと組み合わせても面白い焦点距離・レンズサイズとなっています。
直接競合するのは「NIKKOR Z 40mm f/2」「FE 40mm F2.5 G」「VILTROX AF 40mm F2.5」あたりでしょうか。本製品の価格帯としては珍しい金属鏡筒・金属製フード・絞りリングなど高級感のある作りが特徴的。
主な仕様
6群9枚のレンズ構成には1枚のEDガラスと1枚の非球面レンズ、2枚の高屈折率レンズを使用。MTFを見る限りでは周辺に向かって画質の落ち込みが少なく(Z 40mm F2 比)、安定感のある結果が得られそうですね。
最短撮影距離は0.4mと長く、0.3mを切るニコンやソニーと比べると寄りにくく、0.34mのVILTROXよりも少し長い。小さい被写体のクローズアップには不向きですが、実写でどのような写りとなるのか気になるところ。
レンズマウント | E/Z/L |
対応センサー | フルサイズ |
焦点距離 | 40mm |
レンズ構成 | 6群9枚 |
開放絞り | F2 |
最小絞り | F16 |
絞り羽根 | 7枚 |
最短撮影距離 | 0.4m |
最大撮影倍率 | 不明 |
フィルター径 | 52mm |
手振れ補正 | - |
テレコン | - |
コーティング | 不明 |
サイズ | |
重量 | 167/176g |
防塵防滴 | - |
AF | STM |
絞りリング | クリック付 |
その他のコントロール | - |
付属品 | レンズフード |
価格のチェック
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
TTArtisanではお馴染み、ファブリック調のカバーを張り付けた独特なデザイン。MFレンズはグレーのカバーでしたが、AFレンズはブラックカラー。APS-C用のAFレンズは箱の質感やデザインを一新していましたが、AF 40mm F2では元に戻っており、同社のAF 75mm F2と同じ。
書類を除くと、レンズの付属品はフードとキャップのみ。リアキャップはレンズ更新用のUSBドックとなっているので、紛失しないように気を付けたいところ。
外観
筐体は全体的に金属製のしっかりとした作り。手ごろな価格ながら質感が良く、安っぽさを感じません。前から後ろまでプラスチックパーツを多用している「NIKKOR Z 40mm f/2」と比べると質感は全く異なります。(ニコンも極端に安っぽい作りではありませんが…)
鏡筒のデザインはAF 75mm F2と同じ。レンズは全体的に黒色の塗装が施され、装飾は一切ありません。凝った意匠ではありませんが、一見してTTArtisanと分かるクラシックな外観。
他のTTArtisan AFレンズと同じく、レンズリアキャップに電子接点を搭載。ファームウェアアップデートはレンズにこのキャップを装着して実施します。紛失しないように注意。
ハンズオン
ソニー・ニコンと同じく手のひらサイズの小型軽量サイズ。パンケーキレンズというほど薄くはありませんが、フルサイズ用の単焦点レンズとしてはコンパクトば部類の製品に違いなし。
前玉・後玉
防塵防滴には非対応で、前玉のフッ素コーティング処理は不明。ダメージが予想されるシーンでは保護フィルターを装着しておくと良いでしょう。前面にはレンズのロゴやフィルター径などが白字でプリント。白字は光を反射しやすく、フィルター面へ写りこむ可能性があるので個人的に好みではありません。(もう少しグレーが良かった)
フィルター径は52mm。ニコンの「Z 28mm F2.8」「Z 40mm F2」と同じフィルター径です。
金属製のレンズマウントは4本のネジで固定。防塵防滴用のシーリングはありません。光学系最後尾付近にはフレアカッターがあり、内部は反射を抑えるためのマットブラックな塗装が施されています。
フォーカスリング
金属製のフォーカスリングを搭載。適度に滑らかですが、個人的に期待するよりも抵抗感が弱め。少し緩く感じます。応答性は直線的で、フォーカス移動量は回転速度に依存しません。ピント全域のストロークは約270度と長め。フルマニュアルでピント合わせをするのは手間がかかりますが、微調整としては十分。
ストロークや応答性は良好ですが、フォーカスリング操作時のピント移動は滑らかと言えません。特に拡大して微調整する際に段階的なピント位置の移動が目立ちます。40mm F2で気にするポイントではないかもしれませんが、MFを重視する際は注意。
絞りリング
絞り全域で1/3段刻みのクリック付き絞りリングを搭載。きちんとしたクリック感で滑らかに操作できます。クリックを解除する機能はありません。この価格帯のAFレンズとしては心地よい操作性の絞りリングです。
レンズフード
金属製の花形レンズフードが付属。とてもシンプルなデザイン・形状のフードですが、本体にしっかりと固定でき、脱着は容易。問題はありません。
装着例
Z8に装着。ボディが大きいのでレンズがとても小さく見えます。マウント外形よりもレンズ直径が少し小さく、Z 40mm F2よりも若干小さい印象。全体的なハンドリングはほぼ同じ。小型軽量ボディと組み合わせた際は絞りリングが役に立つと思います。
AF・MF
フォーカススピード
AFはステッピングモーターで動作。滑らかな動作で静かな駆動音。AF速度は電光石火と言えないものの、十分な速度で動きます。近距離で素早く動く動体を追従しない限り不満と感じる場面は少ないはず。フレーム端や隅でも問題なく合焦します。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
画角の変化がゼロとは言えないものの、目立たない程度に抑えられています。
精度
Z8との組み合わせで目立った問題には遭遇していません。接近時に周辺画質が低下するので、AF精度や再現性が低下する可能性あり。
MF
リニアレスポンスで約270度と長いストローク。カメラ側のカスタマイズには対応していないので270度固定。マニュアル操作のみで完結するにはストロークが長すぎます。AF後の微調整として使うことになると思いますが、動作が微妙に滑らかではない点が気になります。(ピント合わせに問題ない程度ですが…)
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:Z8
- 交換レンズ:TTArtisan AF 40mm F2
- パール光学工業株式会社
「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 64 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
NIKKOR Z 40mm f/2 とよく似た傾向。絞り開放では中央でも若干ソフトな画質で、絞ると改善します。フレーム周辺や隅は大幅に低下し、F5.6-F8まで絞ると実用的な画質となる。
至近距離でフレーム周辺や隅に被写体を配置することは少ないと思うので、過度に心配する必要はありません。しかし、そのような場面では十分に絞る必要があります。
中央
最短撮影距離付近では球面収差が少し残っています。滲むような描写でコントラストが低下。F2.8と大幅に改善し、F4で球面収差はほぼ解消。その後に大きな変化はありません。
周辺
中央と比べてさらにソフトな画質。F4まで絞ると大幅に改善します。ただし、細部のディテールが中央並みとなることはありません。
四隅
周辺からさらに画質が低下。絞りによる改善速度も遅く、満足のいく結果を得るにはF8くらいまで絞る必要があります。近距離で四隅の性能を必要とされるシーンは少なく、過度に心配する必要はありません。
数値確認
Center | Mid | Corner | |
F2.0 | 3377 | ||
F2.8 | 3604 | 2702 | |
F4.0 | 4181 | 2976 | 1101 |
F5.6 | 4280 | 3584 | 2064 |
F8.0 | 4304 | 3325 | 2450 |
F11 | 3871 | 3300 | 2576 |
F16 | 3409 | 2871 | 2424 |
比較
傾向はZ 40mm F2とよく似ています。逆にF2.5から驚くほどシャープな結果が得られるFE 40mm F2.5 Gとは雲泥の差。シャープな40mmが欲しい場合、ソニーGは価格差以上の価値があると思います。MFでも良いのならば、NOKTON 40mm F1.4 も面白い選択肢。
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2025.8.8 晴れ 微風
- カメラ:Nikon Z8
- 三脚:SIRUI AM-324
- 雲台:Arca Swiss Z1+
- 露出:ISO 100 絞り優先AE
- RAW:Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネスオフ
・ノイズリダクションオフ
中央
やや低コントラストですがピント面はシャープでしっかりとした描写。色収差も適度に抑えられています。Z 40mm F2 と比べて見劣りしない結果ですが、細部の描写はやや低め。F2.8まで絞るとコントラストが改善、細部の描写はF5.6のピークに向けて徐々に改善します。
周辺
ぱっと見は問題はありませんが、細部を大きく拡大すると非点収差のような像の流れがあります。高解像センサー搭載モデルでベストを尽くすのであれば、F8までしっかりと絞りたいところ。2400万画素であれば、目立つ問題ではないはず。
四隅
大きな乱れはありませんが、コントラストの低下や像の乱れが若干あるように見えます。F4付近でほぼ改善、F5.6-F8でベストの結果が得られます。小型軽量な40mm F2としては健闘。
競合製品と比べて
NIKKOR Z 40mm f/2
ニコンZマウントにおける競合製品は「NIKKOR Z 40mm f/2」。遠景解像のテスト結果はTTArtisanとよく似ています。絞り開放の細部や周辺の結果はNIKKORが少し良好。フレーム隅のコマ収差はNIKKORのほうが少し目立つので、点光源が多い場合はTTArtisanが若干有利となるはず。(とはいえ、TTArtisanのコマ収差も目立ちます)
FE 40mm F2.5 G
ソニーEマウントでの競合製品は「FE 40mm F2.5 G」。
価格差通りの結果が得られます。
絞り開放から全体的にシャープで、TTArtisanをF2.8まで絞った時よりも良好。絞り開放で遠景を撮影する機会が多いのであれば、TTArtisanよりもソニーGを選ぶほうが良好な結果を期待できます。TTArtisanは絞ったとしてもソニーGに追い付くのは難しいように見えます。価格を考慮すると健闘していますが…。
像面湾曲
像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
作例は雲の影響で露出に変動あり。
像面湾曲の観点で確認すると、ピント位置による大きな変化はありません。
- 中央合わせ
- 隅合わせ
- 中央合わせ
- 隅合わせ
- 中央合わせ
- 隅合わせ
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
- 良好な補正
- 倍率色収差あり
実写で確認
完璧な補正状態ではありませんが、過度に目立つこともありません。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
低価格の40mm F2 としては軸上色収差が良く抑えられています。F2の絞り開放から色収差に悩まされるシーンは少ないはず。作例を確認すると分かるように、絞るとピント位置が遠側へシフトしています。これは球面収差の影響によるフォーカスシフトと思われます。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
- 糸巻き型歪曲
- 適切な補正
- 樽型歪曲
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
穏やかな糸巻き型の歪曲収差。Lightroomの手動補正で簡単に修正することができます。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
- 良好な補正状態
- 悪い補正状態
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
絞り開放からF2.8付近まで収差が目立つ形で残存。Z 40mm F2 ほどではないものの、やや目立つ傾向に違いなし。F4-5.6まで絞ると解消します。
球面収差
少なくとも近距離では、前後のボケ質が大きく異なります。後ボケは縁取りが弱く柔らかい質感。逆に前ボケは縁取りが硬い2線ボケの兆候が見られます。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
後ボケ
滲みを伴う柔らかいボケ。ボケの輪郭が溶けるような描写で滑らか。軸上色収差の影響が僅かに残っているものの、無視できる程度。
前ボケ
後ボケとは打って変わって硬めの描写。特に微ボケは2線ボケの兆候があり、状況によって騒がしい描写となる可能性があります。このような場合はF2.8くらいまで絞ると改善します。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
- 影響が強い
- 影響が弱い
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
- 前ボケ
- 後ボケ
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
非球面レンズを使用していますが、低価格のレンズとしては滑らかな玉ボケに見えます。よく見ると同心円状のムラがあるものの、許容範囲内。
隅に向かって口径食があり、猫目状というよりはおにぎり状に変形します。F2.8まで絞るとある程度緩和しますが、完璧ではありません。
ボケ実写
至近距離
背景の輪郭が溶けている柔らかいボケ質。フレーム隅に向かって騒がしくなる兆候は見られるものの、ボケが大きく気になりません。
近距離
撮影距離が少し長くなっても、広い範囲で良好な結果。ただし、フレーム端や隅は玉ボケの変形や縁取りの強調など、完璧とは言えない描写が目立ち始めます。
中距離
さらに撮影距離が長くなると、球面収差が変動したのか硬調な描写に切り替わります。色収差の補正状態が良好で、過度な悪目立ちはしません。ただし、フレーム隅に向かって描写がさらに悪化するので、状況によっては少し絞ったほうが良い可能性あり。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。
フレームに全身・膝上を入れるくらいの撮影距離では背景がざわつきます。しかし、ボケが小さいので全体像で問題無し。上半身・バストアップでボケ質が徐々に改善し、顔のクローズアップで概ね良好。
周辺減光
周辺減光とは?
フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。
- 良好
- 周辺減光
ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
最短撮影距離
絞り開放のF2からF2.8くらいまでやや目立つ程度。カメラ側の補正で修正可能ですが、F4まで絞るとほぼ解消します。
無限遠
最短撮影距離とは打って変わって非常に目立つ。F5.6まで絞ってもフレーム端にしつこい減光が残ります。
逆光耐性・光条
中央
TTArtisanと言えば、逆光時に壊滅的なフレアが発生したものですが…。このレンズは強い光源を正面から受けてもフレア・ゴーストを良く抑えています。完璧とは言えませんが、以前のTTArtisanを知っていると飛躍的に改善していることが分かります。
隅
光源を隅に移動した場合でも、絞り開放付近でフレアの影響あり。ただし、絞るとフレア・ゴーストともに良く抑えています。
光条
F8付近からシャープな光条が発生。さらにF11-F16まで絞ると明瞭で綺麗な光条へと変化。とても良好な描写。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 小型軽量
- 低価格
- 総金属製の良好な作り
- 良好な操作性の絞りリング
- 安定した性能のAF
- 絞ると広い範囲でシャープな結果
- 像面湾曲の問題なし
- 軸上色収差の問題なし
- 倍率色収差の問題なし
- 軽微な糸巻き型歪曲
- 近距離で柔らかい後ボケ
- 適度な逆光耐性
手ごろな価格で小型軽量、そして使いやすい画角を備えた単焦点レンズ。低価格のわりに立派な金属外装と絞りリングを備え、きちんとした光学性能とAF性能を備えています。いずれも完璧とは言えないものの、日常的に使うお散歩レンズとしては十分なパフォーマンス。
悪かったところ
ココに注意
- 防塵防滴に非対応
- AF/MFスイッチやAFLボタンなし
- MF操作時のピント移動が滑らかではない
- 近距離で隅のパフォーマンスが低下しやすい
- フレーム隅でコマ収差が目立つ
- フォーカスシフトの影響あり
- 遠景で周辺減光の影響が目立つ
機能性や操作性は価格を考慮すると許容範囲内。光学系の欠点はいくつかありますが、最も気を付けたいのはコマ収差と周辺減光。Z 40mm F2 ほどではないものの、フレーム隅のコマ収差が目立ちます。これは絞ることで改善可能ですが、周辺減光については絞っても解消しません。
全体的に、価格を考慮すると許容範囲内に収まっています。
結論
ソニーE・ニコンZ・ライカL、いずれのマウントでも競合製品が存在しますが、それらのレンズと併せて検討する価値あり。本レンズは頑丈な金属鏡筒と絞りリング、良好な色収差補正などが強み。特にZfなどクラシカルな外観のカメラと相性が良好。
近距離でのパフォーマンス低下や遠景の周辺減光には注意が必要なものの、小型軽量・低価格・適切な光学性能でバランスの良い40mmレンズ。
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競合製品について
NIKKOR Z 40mm f/2
ニコン純正の40mm F2。TTArtisanと異なり、外装やマウントがプラスチック製ですが、防塵防滴構造で耐候性はより良好。
光学性能はよく似ていますが、接写時の球面収差がやや強め。そのぶん柔らかい後ボケが得られるものの、撮影距離による収差変動が目立ちやすい。また、隅のコマ収差がかなり目立つため、点光源の多いシーンでは少し絞る必要があります、
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FE 40mm F2.5 G
Eマウントにおける競合製品の一つ。
最も高価な小型40mmレンズですが、光学性能は抜群。絞り開放からシャープな結果を得ることができ、近距離でもパフォーマンスの低下がありません。金属鏡筒の頑丈な作りに加え、絞りリングやAFLボタン、防塵防滴仕様など機能性も良好。妥協なき40mmを選ぶとしたらコレ。
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VILTROX AF 40mm F2.5
VILTROX Airシリーズの40mmレンズ。TTArtisanよりも開放F値は高めですが、販売価格は比較して安め。光学性能は接写時でも安定しているものの、ボケはやや硬め。特に玉ボケが発生するような場合の、縁どりの強い描写は要確認。
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