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VILTROX AF 135mm F1.8 LAB レンズレビュー完全版

このページでは「VILTROX AF 135mm F1.8 LAB」のレビューを掲載しています。

製品提供について

このレビューは映像嵐株式会社より無償提供された製品を使用しています。
金銭の授受やレビュー内容の指示は一切ないことを最初に明言しておきます。購入した製品ではないことに対する無意識のバイアスは否定できませんが、できるだけ客観的な評価を心がけています。

VILTROX AF 135mm F1.8 LABのレビュー一覧

レンズの評価

ポイント 評価 コメント
価格 純正の半値以下
サイズ 競合製品と比べて適度
重量 競合製品と比べて非常に重い
操作性 絞りリングの操作性が独特
AF性能 爆速ではないが良好
解像性能 極めて良好
ボケ 口径食以外は問題無し
色収差 とても良好
歪曲収差 軽微な糸巻き型
コマ収差・非点収差 軽微な影響
周辺減光 適度な影響、F2.8で解消
逆光耐性 日本メーカーに負けず劣らず
満足度 重量を愛情でカバーできれば高コスパ

評価:

レンズの評価

重量を愛情でカバーできればコストパフォーマンス抜群の光学性能

最初は「高品質・高性能のVILTROX LABシリーズ」を疑っていたものの、考えを改めざるを得ない結果となりました。レンズ重量と絞りリングの操作性に慣れは必要ですが、光学性能は極めて良好。これと言った弱点もなく、VILTROXの最高級ラインらしい結果を得ることができます。

Plenaとの価格差を考えると、検討する価値のあるサードパーティ製の135mm F1.8。カメラとの互換性や信頼性を最重要とする場合は腹をくくってPlenaを選ぶしかありませんが、それ以外の場合はVILTROXで事足りる場合が多いはず。

Initially skeptical of the “high-quality, high-performance VILTROX LAB series,” I was forced to reconsider my opinion. While some time is needed to get accustomed to the lens weight and aperture ring operation, the optical performance is exceptionally excellent. There are no notable weaknesses, and the results are befitting of VILTROX's top-of-the-line series.

Considering the price difference with Plena, this is a third-party 135mm F1.8 lens worth considering. If camera compatibility and reliability are your top priorities, you'll have to go with Plena, but for most other cases, VILTROX should suffice.

まえがき

VILTROXの新シリーズ「LAB」ラインのレンズとして最初に登場した製品。VILTROXブランドの最高級ラインとして、高画質・高規格が特徴。

同時に、VILTROXレンズの単焦点レンズとしては最も長い焦点距離をF1.8の大口径でカバー。「135mm F1.8」はカメラメーカー各社が純正品としてレンズを販売していますが、比較してVILTROXは非常に低価格で導入しやすい。

価格面で主なライバルはサムヤン「AF 135mm F1.8 FE」ですが、小型軽量・低価格に舵を切っている製品。大きく重く、やや高価なVILTROXが光学性能などでどのようなアドバンテージを備えているのか、今後のレビューで見ていきたいと思います。

主な仕様

ミラーレス用の135mm F1.8としては重量級の1.235g。競合他社は軒並み1kg以下に抑えられ、特にサムヤンの772gと比べると無視できない重量差があります。

AFの駆動方式はVILTROX独自のHyperVCMを採用。ボイスコイル駆動のリニアモーターで、滑らかな動作を実現しています。

発売日 2024.11.7
レンズマウント E/Z
対応センサー フルサイズ
焦点距離 135mm
レンズ構成 9群14枚
EDレンズ 4枚
高屈折率レンズ 2枚
開放絞り F1.8
最小絞り F16
絞り羽根 11枚
最短撮影距離 72cm
最大撮影倍率 0.25倍
フィルター径 82mm
手振れ補正 -
テレコン -
コーティング HDナノマルチコート
サイズ 93.0×145.7mm E-mount
重量 1235g E-mount
1265g Z-mount
防塵防滴 対応
AF VCM
絞りリング クリック解除対応
その他のコントロール Fnボタン×2
OLEDパネル
AF/MF
フォーカスリミッター
USB-Cポート

価格のチェック

通常価格は約15万円。季節セールなどではもう少し安くなります。
サムヤンの競合製品が(安い時に)10万円前後で入手できることを考えるとやや高め。そのぶん画質や操作性、機能性の高さを期待したいところ。

また、サムヤンはソニーEマウント用のみであり、ニコンZマウント用はありません。「NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena」が35万円以上であることを考えると、VILTROXは半値以下。ニコンZマウントでは最も導入しやすい135mm F1.8となっています。

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

これまでのVILTROX製品は白を基調としたデザインの箱でしたが、LABシリーズは重厚感のある黒を基調としたデザイン。外箱に余分な装飾は無く、高級感のある見栄え。

レンズ本体のほか、レンズフードやポーチ、保証書などが付属します。

外観

外装の大部分はプラスチック製ながら頑丈な作り。金属外装のVILTROXレンズと比べると質感は劣るものの、レンズ軽量化のためと考えると許容範囲内。フォーカスリングは表面にゴムカバーを備え、絞りリングはプラスチック製に滑り止めの切込み。
(追記:マウント周辺は金属外装のようです。また、シャーシはマグネシウム合金製である模様)

レンズを前後に倒すと「カタカタ」と音がしますが、これは通電していない時にボイスコイルモータ駆動のフォーカスレンズが固定されていないため。他社でよく見る仕様であり、特に不思議なことではありません。

コントロール以外の意匠は最小限。側面に「LAB」のバッヂを配置しているのみ。マウント付近にはシリアルナンバーなどのシールが張り付けられています。

ハンズオン

前述したように、重量は1.2Kg超と非常に重い。さらにミラーレスカメラの中では重めのZカメラ(Z8など)と組み合わせると、かなり重たく感じます。質感は良好ですが、それよりも重量感に強い印象を受ける。長時間の手持ち撮影は不可能でないものの、出来れば避けたい重さです。

前玉・後玉

135mm F1.8としては一般的な82mm円形フィルターに対応。特に記載はありませんが、他のVILTROXレンズと同じであれば、撥水・撥油性のあるコーティングが施されているはず。とはいえ、ダメージが予想されるシーンは保護フィルターを装着しておいたほうが良いでしょう。

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金属製のレンズマウントはレンズ本体に5本のビスで固定されています。マウント周辺には防塵防滴用のシーリングが施され、さらにファームウェアアップデート用のUSB-Cポートあり。

フォーカスリング

適度な幅のゴム製フォーカスリングを搭載。
回転の抵抗感はソニーと同程度で、やや緩め。バイワイヤですが応答性は良好で遅延は目立ちません。

ピント位置の移動速度はリングの回転速度に依存。素早く回転する場合、ピント全域を約100度のストロークで操作できます。逆にゆっくり回転させると、(ピントの全域の移動に)何回転も必要なほど微調整が可能。

コントロールリング

ソニーEマウント用としては珍しい無印の絞りリング。ニコン用ではNIKKOR Zになるコントロールリングとして割り当てられています。ボディ側のカスタマイズに対応しており、絞りリングとして利用したり、露出補正、ISO感度の設定変更にも利用可能。

問題なければ絞りリングとして利用したいところですが…。一般的な絞りリングは「1クリック=1/3step」の目盛り付きで動作しますが、このレンズは何も記載されていません。操作性に癖があります。

リング操作時のレスポンスは「ノンリニア」となっており、回転速度によって動作が異なります。ゆっくり回転すると絞りが1/3段変化するために何回もクリックが必要、逆に素早く操作すると1クリックで1/3段変化します。これが非常に分かりづらい。

側面のスイッチで「クリック/デクリック」を切り替えることができます。基本は動画撮影時に滑らかな絞り操作で使うことになると思います。静止画の場合はオフ推奨と感じる人が多いかもしれません。

スイッチ類

側面と上面に配置されたFnボタン、AF/MFスイッチ、フォーカスリミッター、クリック切替スイッチを搭載。ニコン用では必要ありませんが、ソニー用は絞りリングのAポジション固定スイッチが欲しかったところ。

Fnボタンは後述する専用アプリでのカスタマイズでVILTROX独自の機能として利用可能。ニコンのL-Fn1・L-Fn2として利用することもできます。

情報パネル

AF 16mm F1.8 FE あたりから導入が始まった情報パネルを搭載。絞り値・ピント位置を同時に表示できるほか、Fnボタンの動作状況も確認可能。NIKKOR Zのパネルよりも機能的。

面白い機能として、起動時のロゴを任意の画像に差し替えることができます。(スマートフォンアプリ経由)

レンズフード

円筒形のしっかりとしたプラスチック製レンズフード。先端には衝撃保護用のゴムカバーを備え、内側には反射を抑えるフェルト生地が張り付けられています。VILTROX製のフードとしては最も気合いの入った造り。NIKKOR Zや日本メーカーのフードよりも取り付けがスムーズではないものの許容範囲内。

フードを装着すると、レンズの全長が1.5倍くらいになります。フィルター操作窓がないので、C-PLや可変NDの操作は難しい。

逆さ付けに対応していますが、フード内径がレンズ本体のフォーカスリング外形とほぼ同じ。干渉しやすく、取り外すときに少し苦労します。

VILTROX Lens App

AndroidとiOSに対応。レンズがBluetooth接続に対応しており、スマートフォンと連携することでアプリによるカスタマイズが可能となります。画期的ですが、レンズが通電状態でないと接続できない点に注意。

135mm F1.8 Zでは、フォーカスリングの校正やFnボタンのカスタマイズ、情報パネルのカスタマイズに対応。また、最新ファームウェアにアップデートすることも可能となっています。

装着例

Z8に装着。レンズは重いし、ボディも重い。一眼レフカメラで135mm F1.8を扱っている感覚。過去に「α7R IV + Samyang AF 135mm F1.8 FE」をレビューしましたが、今回の組み合わせよりも遥かに軽量。1.2kgのレンズを常用できるかどうかはよく考えたほうが良いでしょう。

ただし、Z8のしっかりとしたグリップと良好な重心で、撮影時にバランスが悪いと感じることはありませんでした。

AF・MF

フォーカススピード

VILTROX独自のHyperVCM駆動で動作。必要十分のAF速度で動作しますが、電光石火でも爆速でもありません。状況によってはフォーカスリミッターが役に立つと思います。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

135mm F1.8としては一般的な撮影距離ですが、フォーカスブリージングは強め。ピント位置によって画角の変化が大きいため、特にフレーム隅にピントを合わせる時に苦労する可能性あり。ただ、F1.8からシャープなレンズなので、低照度・低コントラスト以外で問題に遭遇する機会は少ない。

精度

Z8との組み合わせで大きな問題はありません。
もともと被写界深度の浅いレンズなので、カメラ側の軽微な問題(被写体検出が外れたり、応答が遅れたり)に敏感です。さらに、AFが電光石火とは言えないので、近距離で不規則に動く被写体は適していません。

MF

前述したようにノンリニアレスポンスのフォーカスリングは微調整が簡単。素早く操作するとストロークがかなり短くなるので、ざっくりとしたピント合わせも可能。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Z8
  • 交換レンズ:VILTROX AF 135mm F1.8 LAB
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

F1.8からフレーム全域で非常に優れた解像性能を発揮。中央はF1.8からテスト環境で測定できる上限値に近い結果が得られ、フレーム周辺や隅も非常に良好。さらにF2.8-F4まで絞ることで中央に近い結果を得ることができます。

中央

軸上色収差や球面収差が見られない、非常に優れた結果。回折の影響が出始めるまで被写界深度の調整のみで利用すると良い感じ。国内の高級レンズと見比べても遜色のない結果。

周辺

中央とほぼ同じ結果ですが、F1.8の結果が僅かにソフト。F2.8まで絞ると中央と見比べても差がありません。

四隅

周辺とほぼ同じか、少し暗くて僅かにソフト。倍率色収差は良く抑えています。F2.8-4まで絞れば非常に優れた結果。

数値確認

Center Mid Corner
F1.8 4613 3996 3865
F2.0 4748 4119 4041
F2.8 4603 3917 4362
F4.0 4706 4605 4399
F5.6 4668 4584 4399
F8.0 4150 4624 4325
F11 3977 4175 3750
F16 3656 3501 3471

比較

サムヤン II型と一眼レフ用シグマの135mmと比べてみると、全体的に良好な結果。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2025.4.8 晴れ 風強め(ストーンバッグで対応)
  • カメラ:Z8
  • レンズ:VILTROX AF 135mm F1.8 Lab
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:BF BaFang BFC-01A
  • 露出:絞り優先AE ISO 100
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ

テスト結果

中央

絞り開放から非常にシャープでコントラストも良好。絞りによる解像性能の変化は少なく、被写界深度や露出の調整に専念できます。競合するサムヤンAF 135mm F1.8 FE と比べて、F1.8から高コントラスト・高解像が特徴的。

周辺

中央と同じく、絞りによる変化はほとんどありません。

四隅

フレーム隅は周辺減光の影響があるものの、解像性能はF1.8から非常に良好。絞りによる変化はほぼありません。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

ピント位置に関わらず、フレーム全体にピントが合っているようです。像面湾曲の影響は軽微と考えて問題ありません。チャートテストのような近距離でも像面湾曲の影響は目立ちません。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

皆無、とはいかないものの、大きく拡大して僅かな色収差が確認できるかどうか。実写で問題となる可能性は極めて低く、優れた補正状態と言えるでしょう。絞り値全域で問題無し。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

ピント面前後の色収差が「皆無」とは言えないものの、厳しい状況でもほぼ目立ちません。極めて良好な補正状態。シグマ「135mm F1.8 DG HSM」よりも少し良好であり、文句無し。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

軽微な糸巻き型の歪曲収差ですが、実写ではほぼ目立ちません。必要に応じてレンズプロファイルの補正を利用することが出来ます。(Adobe Camera RAW)

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

点像の僅かな変形が見られるものの、大きく拡大しない限り分からない程度。良好な補正状態です。

球面収差

前後に偏りのない良好な補正状態です。ボケの縁取りは目立たず、色収差も良く抑えられています。シグマ135mm DG HSMよりもニュートラル。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

球面収差が良好に補正されているため、とてもニュートラルなボケ描写。前後に偏りがないぶん、滲むように柔らかいボケ質ではありません。しかし、悪目立ちする要素がないので問題はありません。

前ボケ

質感は後ボケとほぼ同じ。色収差も良く抑えられているので、ブラインドテストで見分けるのは難しいと思います。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

口径食の影響こそあるものの、非常に綺麗な玉ボケ。色収差が皆無で、フレーム隅も良好な状態。隅はラグビーボール状に変形していますが、F2.8まで絞るとほぼ解消。絞り羽根が多いので、玉ボケが角ばる心配もありません。

ボケ実写

近距離

「135mm F1.8」の浅い被写界深度もあり、背景は輪郭が分からないほど大きくぼかすことが出来ます。ボケの質感を議論するのは難しいですが、ピント面直前直後も滑らかな描写に見えます。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F1.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。135mm F1.8らしく、全身をフレームに入れても背景から分離することが可能。この際のボケは滑らかで綺麗。ピント面から背景ボケへの推移に大きな問題はなく、フレーム隅まで悪目立ちしない描写。

敢えて言えば、フレーム隅に騒がしい描写の「兆候」が見られるものの、それが問題と感じるほど酷くなることはありません。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

F1.8の絞り開放で周辺減光が発生。極端な影響ではなく、雰囲気作りにちょうど良いくらい。とはいえ、フラットな光量の背景では目立つ場合があり、この際はF2.8まで絞るとほぼ解消します。

無限遠

最短撮影距離よりもやや目立つ周辺減光が発生。カメラ側の補正で対応できる範囲内ですが、気になる場合はF2.8まで絞ると解消します。

逆光耐性・光条

中央

VILTROX初期のAFレンズは逆光時に目立つフレアが発生していたものですが…。このレンズは比較的良好にフレアを抑えています。フレアが皆無とは言えないものの、ゴーストが良く抑えられているので、逆光シーンで味付け程度のフレアとして楽しむことができると思います。

フレアの抑制はシグマ135mm F1.8 DG HSMのほうが良好。ゴーストの抑制はVILTROXのほうが良好。

光源がフレーム隅にある場合、フレア・ゴースト共に良く抑えられています。問題は全くありません。

光条

F5.6付近から光条が発生し始め、F8-11でシャープな描写。ベストはF16ですが、解像性能とのバランスを優先するならF10付近でも十分。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • Z 135mm F1.8 Plena よりも大幅に安い
  • 防塵防滴
  • 機能的な情報パネル
  • Bluetooth接続でのカスタマイズに対応
  • 撮影距離に関わらずF1.8から高解像
  • 軸上色収差の補正が極めて良好
  • 倍率色収差の補正が非常に良好
  • 像面湾曲の問題無し
  • 歪曲収差が軽微
  • コマ収差が軽微
  • 球面収差の補正状態がほぼ完璧
  • ニュートラルで使いやすいボケ
  • 玉ボケに軽微な口径食
  • 絞ると綺麗な光条

光学性能について、これと言った欠点がなく、非常に使いやすいレンズ。F1.8の絞り開放から安心して使うことができ、絞りの調節は被写界深度を意識する時だけ。大口径レンズでありがちな色収差も良く補正されており、逆光時のフレアやゴーストも良く抑えられています。

悪かったところ

ココに注意

  • ミラーレス用の135mm F1.8としては非常に重い
  • VCM駆動のフォーカスユニットが(電源オフ時に)固定できない
  • 一般的ではない絞りリングの操作性
  • レンズフード逆さ付けが窮屈
  • ミラーレス用レンズとしてはAFが速いとは言えない
  • 周辺減光がやや目立つ

最も注意したいのはレンズの重量。1kg未満に抑えた競合製品が多い中、1.2kgの重量はかなり目立ちます。特にこのようなレンズを組み合わせる重めのカメラ(今回はZ8)と合わせると、総重量が2kgを超えるのが辛い。長時間の手持ち撮影が多いのであれば、よく考えたいポイント。

AFに関して大きな問題はありませんが、ミラーレス用レンズでよく見る爆速AFは期待しないほうが良いでしょう。多くの撮影で動体追従に十分な速度ですが、素早く動く小動物や刹那的なシャッターチャンスでは追い付かない可能性があります。

結論

最初は「高品質・高性能のVILTROX LABシリーズ」を疑っていたものの、考えを改めざるを得ない結果となりました。レンズ重量と絞りリングの操作性に慣れは必要ですが、光学性能は極めて良好。これと言った弱点もなく、VILTROXの最高級ラインらしい結果を得ることができます。

Plenaとの価格差を考えると、検討する価値のあるサードパーティ製の135mm F1.8。カメラとの互換性や信頼性を最重要とする場合は腹をくくってPlenaを選ぶしかありませんが、それ以外の場合はVILTROXで事足りる場合が多いはず。

購入するを悩んでいる人

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

VILTROXの倍以上となるNIKKOR Z Plenaが選択肢に入るのであれば、こちらを買えばいいと思います。ニコン純正品としての互換性や信頼性はサードパーティ製では太刀打ちできません。

とは言え、互換性やPlenaの強み(主に口径食や逆光耐性)を重視しないのであれば、VILTROXのほうがコストパフォーマンスに優れた光学性能と感じることでしょう。

135mm F1.8 DG HSM

EFマウント用・Fマウント用をレンズアダプター経由で利用可能。優れた光学性能の一眼レフ用レンズですが、絞り開放の色収差や球面収差の補正状態はVILTROXのほうがやや良好。今どきの高解像センサーを十分に活かしたいのであれば、VILTROXがより良い選択肢となります。AFの駆動方式もVCM採用のVILTROXがより良い選択肢。

ただし、フィルター(可変NDやC-PL)やレンズ(レデューサー)などに対応したレンズアダプターを利用できる点で一眼レフ用レンズを検討する価値があります。特殊な使い方ですが、複数のミラーレスマウントで運用したい場合も有利。

問題は既に135mm F1.8 DG HSMがディスコンであること。新品在庫も減ってきているので、これから探す場合は中古品となる可能性があります。

競合製品について

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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