DPReviewがCP+2023のける富士フイルムのインタビュー記事を公開しています。新センサーや新機種について、X100Vが作っても作っても供給不足、GFXやレンズ固定式GFXについて。
DPReview:CP+ 2023: Fujifilm interview - 'Our direction is set, there is no middle ground'
カメラ業界について
- デジタルカメラのコアユーザーは、よりマニアックな層に傾いてきている。需要は比較的維持しているが、様々な理由で変動があったことは確かだ。
- 全体として、2022年は非常に好調な年だった。第5世代のセンサーとプロセッサーの組み合わせで、非常に強力な製品を投入した。
- 2023年を見ても、市場のコアユーザーは愛好家であり、非常に安定した市場を維持している。
- かなり楽観的ですが、業界が違いを生むような面白い製品を開発できるかどうかにかかっている。メーカーが面白い商品を出さないと、平凡な1年になってしまう。
- 我々は、とてもエキサイティングな製品をいくつか発表する予定だ。
2022年は売れ行きが良かったと言及するメーカーは多いものの、2023年は減少傾向と判断している企業が多かったです。しかし、富士フイルムは2023年も堅調な売れ行きを予想しているみたいですね。後述しますが、レンズ固定式カメラであるX100Vもかなり売れている模様。さらにエキサイティングな発表を控えているようなので、今後の動向に注目ですねえ。
フルサイズを導入しなかったことについて
- この決断はビジネスとして非常に良かったと思う。
- GFXシステムは富士フイルムの製品として非常に重要なものになっている。絶対的な画質にこだわっているシステムだ。
- APS-Cシステムは、コンパクトで軽量なボディでいかに画質を実現するかを考えている。方向性は決まっていて、中間はない。これは、我々にとって良い戦略だと思う。
APS-Cに興味を持つユーザーをどのように維持するか?
- 常に意識しているのは、エンドユーザーにどんなメリットを提供できるかということだ。センサーサイズよりも重要なことだ。
- エンドユーザーに利益をもたらす、より良い、新しい提案をできるかどうかということにフォーカスしている。
APS-C / GFX 体制は今のところ功を奏しているようです。競争が激化するフルサイズを避けたことでAPS-Cシステムとしての存在感は非常に大きく、GFXシステムも存在感を増しているように見えます。キヤノンやニコンと言ったライバル会社のAPS-Cミラーレスが登場し始めているものの、レンズラインアップでは遥かに有利と言えそう。また、マイクロフォーサーズが失速気味なので、そのあたりの需要を取り込めるかもしれませんね。
積層型センサー搭載 X-H2Sについて
- DPReviewで金賞を受賞したように、メディアだけでなく販売店やエンドユーザーからも同じような反響がある。
- 野生動物のような速い動きを撮影できるカメラも作れるということが、人々に伝わっているのは大きい。
- 一番大きいのは、販売店があらゆるフォトグラファーにXマウントを薦められることだ。販売店から「Xマウントを勧めない理由はない」という声を聞いている。
積層型センサーの開発秘話
- 新世代の最初のモデルは、常にチャレンジングだ。
- 積層型センサーと新プロセッサーの組み合わせで、高速処理、熱、冷却などの障壁を最適化するのに多くの時間を費やした。
- 我々がターゲットとしているスポーツや報道写真などの市場は、他のカテゴリーよりも高い要求水準がある。
- フォトグラファーやビデオグラファーと何度もフィールドでテストを行った。
積層型センサーと4000万画素センサーの第五世代について
- 現在、第5世代機と第4世代シリーズに現行の2600万画素センサーを搭載しており、素晴らしい画質を実現している。
- 時には、4000万画素がオーバースペックで、2600万画素の方が効果的かもしれない。
X-H2Sのプロユーザーについて
- 知っている範囲では、おそらく10%以上だ。
- 今のところ、報道写真家よりも野生動物写真家の方が多い。
- 報道写真家は、確立されたシステムを必要としている。X-H2Sは、FTP転送を採用しているが、まだ挑戦し始めたばかりだ。
- このカメラは、静止画のみならず動画撮影もこなせるハイブリッドだ。動画志向のターゲットは、プロダクションスタジオではなく、スタートアップや小さな会社、独立系コンテンツクリエイター、シネマクオリティを求めるワンオペユーザーを意識している。
プロがX-H2Sを使う意義
- 純粋な販売面を見れば、セミプロやマニアの方が多く買ってくれる。
- しかし、トッププロに支持を得ることも重要だ。それが目に見える形になっていれば、愛好家にも自信がつく。
X-H2Sは富士フイルム初となる積層型CMOSセンサーを搭載。CFexpressによる実用的な高速連写や歪みを抑えた動画撮影を実現しています。さらにフルサイズの積層型と比べると遥かに安く、購入しやすいハイブリッドカメラとなっているのが魅力的。高ISO感度やハイダイナミックレンジを追求しなければコストパフォーマンスの高い1台と言えそうです。とは言え、レビューサイトによってはAF性能がキヤノンやソニーには追い付いていないと言った見解もあるので、そのあたりは今後のファームウェアアップデートに期待したいところ。
X-H2Sの動画機能について
- 特に色、そして性能が重要だ。トップレベルの画質と性能で、多くのユーザーにとって訴求力のあるカメラに仕上がっている。
- 多くの可能性があり、優れた品質と階調性があり、F-Log2が市場に受け入れられている。
- あるコンテンツクリエイターは、ProResがX-H2Sを購入する最大の理由と述べている。
- このスペックで積層型センサーを搭載し、この価格で購入できることも魅力的だ。
動画はどの程度重要なのか?
- 我々は動画市場に参入したいと考えている。
- コンテンツ制作における動画と静止画の境界線は、どんどん狭くなっている。
- この傾向は今後も続くだろう。イメージング業界で成功するためには、動画面に長けていることがとても重要だ。
Xマウントのラインアップに動画専用機の余地は?
- ハイブリッドカメラが非常によく受け入れられていることから、可能性があると考えている。
- 我々は技術を持っているので、常に可能性を探っている。
他社と同じく市場で拡大する動画撮影の需要はかなり意識しているようです。キヤノンのCinemaEOSやソニーのFXのような動画向けのコントロールレイアウト・センサーを搭載した新機種が登場する可能性もゼロではない模様。
中版デジタルの規模は?
- 我々はその市場だけをターゲットにしてきたわけではない。ハイエンドのフルサイズユーザーもターゲットだ。
- 実はターゲット市場はもっと大きい。当初から、GFXをより柔軟で使いやすく、可能な限り最高の画質を実現できるシステムにしようと考えていた。
- デジタルの世界でも中判は復活する。
GFXユーザーにおけるプロ/アマの割合
- 正確な数字ではないが、ほぼ同じ比率のユーザーがいると考えている。
- B2Bを含め、プロユースが伸びている。(ティルトシフトを含めたラインアップの拡充により)
富士フイルムが言及しているように、やや高価なフルサイズミラーレスと同程度の価格でGFXボディが購入できる時代となっています。AF性能など総合的な機能性で言えばフルサイズの競合他社に及ばないかもしれませんが、44×33mmセンサーの画質が最重要であれば面白い選択肢と言えるでしょう。レンズラインアップも充実してきており、社外製のGFX用レンズ。マウントアダプターも数が増えてきています。年内には50mm F1.7やティルトシフトレンズも予告されているので、GFXシステムで出来ることがさらに増えそう。システムの将来性が確かなものとなってきたためか、プロユースでGFXを使用している人を見かけることが多くなってきています。
X100Vについて
- X100シリーズは、最もアイコニックなモデルだ。
- ユーザーはTikTokにX100を投稿して、かっこよく見せている。
- TikTokでは、カメラ本体や撮影した写真を投稿するのではなく、カメラと一緒にポーズをとっている人を多く見かける。ファッションアイテムのようなものだ。
- X100Vは若い世代だけでなく、幅広い層のユーザーから需要がある。
- 既存の富士フイルムユーザーだけでなく、他のシステムを使っている人もいる。我々のシステムに対する入り口のようなカメラだ。
X100Vの供給が改善されるのはいつごろか?
- 信じられないかもしれないが、生産能力を増やしたものの、需要は増え続けている。
- 需要は横ばいではなく、伸び続けているので、いつ追いつくとは言い切れない。
- 我々は供給を安定させるために最善を尽くしている。
ラージセンサーのX100シリーズについて
- 絶対にないとは言い切れない。X100Vのサイズだったら、私は使いたい(笑)。
- サイズによる。
- 世界中からそのような要望を耳にしている。
X100Vは引き続き売れまくっている模様。増産しても追いつかないほど売れているのは驚きですね。確かに、X100Vは受注停止したまま再開には至っていません。在庫不足のためか、市場では価格を釣り上げた新品在庫が目立ってしまうのが残念。光学系の一新、チルトモニタ、防塵防滴など見所が多く、最近はファッション感覚でX100Vを購入する人も多い模様。ライカのようなレンジファインダーの実用的なデジカメが10万円台で購入できるのは魅力的と言えるでしょう。
この25年間で写真にとって最も重要な変化
- 選択肢が多すぎて、トリッキーな質問だ。富士フイルムとしては、もちろん、フィルムからデジタルへの移行を挙げることができる。
- 初の1000万画素デジカメであるカシオ「Oneデジタル(訳注:おそらくEX-Z1000のこと?)を今でも覚えている。あれは大きなゲームチェンジャーだった。それまでは、誰も1000万画素が必要だとは思っていなかったのに、あの製品が発売された後は、誰もが最低でも1000万画素を搭載しなければならなくなった。エンジニアとしては、大きなターニングポイントだ。
- 携帯電話(J-phone)のカメラと比べた際の画質。
- 400万画素や600万画素のカメラの4×6(inch)プリントを見て、そのサイズに必要な画素数は何だろう、と考えたのを覚えている。それで十分なら、フィルムの代わりとして十分な性能を持っている。そうやって判断していた。
- デジタルカメラでも写真をプリントしていた。でも、スマホが使えるようになってからは、みんなスマホで写真を見るようになった。そのインパクトは大きい。
他社と同じく、フィルムからデジタルへの移行、デジタル黎明期が印象に残っているようです。2012年に登場した初のXシリーズミラーレス「X-Pro1」は1600万画素でしたが、今や「X-H2」で4000万画素、44×33センサーの「GFX100S」が1億画素の高解像センサーを搭載。将来的にさらに解像度が高くなるのか気になるところですねえ。
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