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シグマはレンズ業界における一種のモルモットのようなもの

DPReviewがCP+ 2024におけるシグマ山木社長へのインタビュー記事を公開。「ミラーレス完了後に市場縮小の懸念」「レンズ業界における一種のモルモット」「DC DNのIシリーズ化は計画されていない」などなど。

DPReview:Sigma CEO talks market trends, the challenge of innovation and the future for APS-C

*CP+ 2024におけるインタビューの後編

市場の現状

  • 市場縮小の流れは底を打ったように見える。しかし、これは一眼レフからミラーレスのへの移動が発生しているため。しかし、ミラーレスに切り替えた後、今後数年で市場が縮小する可能性があると心配している。
  • 懸念する理由の一つは平均価格が上昇していること。我々は小売価格をリーズナブルに保とうと努力している。
  • 最近の若い世代はスマートフォンで大量の写真を撮る。スマートフォンからカメラに乗り換える人もいるが、価格差が大きすぎて乗り換えるのは難しいと考える人も多いだろう。
  • より高度な技術開発に投資することは非常に重要だが、顧客を重視することも同様に重要である。
  • 技術的に非常に素晴らしいスペックのカメラも見受けられるが、多くのフォトグラファーが本当に必要としている機能とは限らないのではないかと心配している。
  • 今後は、よりユーザーフレンドリーな仕様の方が、顧客にとって意味があるのではないかと推測している。

イノベーションへの挑戦

  • 500mm F5.6を顧客重視のイノベーションの例として挙げる。
  • 1枚の強力な回折素子を使用する代わりに、複数の特殊低分散(SLD)ガラスを使用した。複数の特殊レンズを使うことで、同じような効果を得ることができる。
  • しかし、このアプローチは単純ではない。非常に高度な製造技術と技能が必要だが、非常に優れた工場と光学設計者の存在があったからこそ。
  • 信頼関係は本当に、本当に重要である。レンズ研磨はまだ歩留まりが低い特殊なプロセスだ。
  • エレクトロニクスのようなものでは、歩留まり率は99.99996パーセントとかそんなもの。しかし、レンズに関しては歩留まり率が高い我々でも90%であり、10%は廃棄しなければならない。

信頼の問題

  • 他社が新しいガラス素材の使用をためらう理由はそこにある。歩留まりが不安だからだ。
  • たいていの場合、我々が新しいタイプの素材を最初に使用し、我々を観察したのちに使用を開始する。
  • そのような役割を果たすことができ、とても嬉しく思っている。
  • シグマはレンズ業界における一種のモルモットのようなもの。彼らはシグマを実験台として使い、我々がそれを証明すれば、使ってくれる。
  • 最近発表した天体写真用の意欲的なレンズにもそれは表れている。ニッチな製品を作ることがシグマの使命の一つだと考えている。スタンダードな製品に集中して廉価版を出すだけでは、写真文化の発展に貢献できない。
  • 特定のターゲット層を満足させるニッチなレンズを開発することが、レンズメーカーとしての使命だ。
  • そして、ほとんどのレンズはとても良い。しかし、天体写真家だけは決して満足しない。彼らは隅々まで星の形を見ている。星は、最もタフで、最も困難な被写体であり、言ってみれば、最も厄介なレンズチャートである。
  • 星像にはあらゆる収差が見られる。だからこそ、私たちの能力で何ができるかを示したい。天体写真用のレンズは、シグマの技術の能力を示すための私の個人的な強い情熱。

APS-Cの未来

  • ニッチということで、DC DNプライムについて話を振った。これらのレンズのユーザーを、金属ボディと絞りリングを採用した中価格帯のiシリーズ・フルサイズ用プライムのユーザーと区別して見ているかどうかを知りたかったのだ。
  • DC DNシリーズのユーザーはコンパクトさと画質を重視する。これらの顧客は大都市に住んでいることが多く、公共交通機関をよく利用する。
  • そのため、大きくて重い機材を車で持ち運ぶことはできない。バッグに入れて持ち運ばなければならないからだ。
  • DC DNをIシリーズのようなデザインに刷新する計画はないようだ。
    (訳注:DPReview談)
  • フルサイズが欲しい人はIシリーズのレンズを使えばいいし、APS-Cで満足できる人はDC DNレンズがある。
  • 我々の計画では、APS-C用レンズを比較的充実したラインナップにすること。

ここ数年でミラーレスの技術革新が進み、一眼レフから乗り換えやすい土壌が出来たように見えます。その結果として、ミラーレス用レンズの販売が促進している側面もあるのでしょうか。現在は市場縮小の流れが底を打ったように見えるものの、シグマは楽観視していない模様。このタイミングでのRFマウントへの参入は必然だったのかもしれませんね。(キヤノン側の思惑もあるのでしょうが)

興味深い話として、シグマは最も難易度の高い顧客として天体写真家を認識しているようです。たしかに点像ばかりの天体撮影は天然のチャートテストのようなものであり、全ての天体写真家がテスターのように見えるかもしれませんね。今後もニッチなレンズの登場に期待したいところ。

APS-Cレンズラインアップのさらなる充実について言及していますが、これは今年中に展開が期待されているRFマウント用を見据えての発言だったのでしょうか。(RFマウント参入を表明したのはCP+後の4月)
もしくは大口径ズームレンズに不足している「望遠域」を指しているのか今のところ不明。APS-Cミラーレス向けの大口径ズームはすでに特許を出願しており、検討段階だとは思うのですが…。このカテゴリは「フルサイズ用でも良いのでは?」という考え方もできるので、過度な期待は禁物。56mm以上の単焦点レンズも同様。

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