DPReviewがCP+2023のけるソニーのインタビュー記事を公開しています。サードパーティについて、センサーサイズについて、APS-Cの新モデルについて、AI技術について、などなどソニーらしい内容となっていますね。
DPReview:CP+ 2023: Sony interview - 'Expanding an ecosystem around E-mount is our strategy'
カメラ業界全体について
- カメラ市場全体として、今期はCovid-19や深刻な部品不足から回復しつつある。
- カメラの出荷数量は昨年度を上回っている。
- 新しい需要も増えており、Vlogや動画需要、若いクリエイターなどが増えている。
- 全体的に業界の健全性は非常に高く、我々の予想よりも良い。
競合他社について
- ミラーレス市場に参入するカメラメーカーが増えることは、お客様が好みに応じて選択できるということだ。それは我々にとって良いことだ。
- 我々はこの市場のパイオニアであり、相対的にいくつかの強みを持っている。
- コンパクトさ、軽さ、レンズのラインナップ、AIやプロセッサーといった最先端技術もある。
- 競合他社が追いついてくるのは認識しているが、最先端の技術とイノベーションでこの市場をリードしていかなければならないと思っている。
ここ最近はキヤノンのミラーレスシステムが存在感を増していますが、ソニーは強力で幅広いレンズラインアップや高度なAF性能が強み。特に最近は光学性能を維持・向上させながら小型化した新製品が多く、αシリーズの携帯性を活かすレンズが増えているように見えます。キヤノンの小型レンズは割り切った製品が多く、「プレミアムコンパクト」な製品は少ない。サードパーティ製レンズにも小型軽量なレンズが多く、他者にはない魅力的なシステムと言えそうです。
自社他者におけるサードパーティーメーカーの対応について
- 他社の戦略については何とも言えないが、我々は常にトータルエコシステムの優位性を考えている。
- ソニーは、Eマウントの成長を軸に、全体のエコシステムとして事業を展開。ボディだけでなく、レンズも含めてさまざまな製品を用意している。
- APS-Cからフルサイズまで、エントリーからプロフェッショナルまで、スチルカメラからシネマカメラまで、それぞれの製品が1つのマウントで繋がっている。まさに理想的なエコシステムだ。
新製品はほとんどがフルサイズだ
- 小型カメラと望遠レンズを好むお客様が多いことは承知している。APS-Cの領域には大きなチャンスと需要があることを理解しており、APS-Cカメラの開発を止めたことはない。
- お気づきのように、FX30には全く新しいイメージセンサーが搭載されている。つまり、期待してほしい。
- 昨年、15mm F1.4 G、11mm F1.8、PZ 10-20mm F4 Gという3本のAPS-Cレンズを発売し、好評をいただいている。
- フルサイズであることが重要ではなく、APS-Cを含めてEマウントのエコシステムに力を注いでいる。
動画向けのAPS-Cミラーレス「FX30」には、これまでソニーαで導入していなかった裏面照射型の2600万画素CMOSセンサーを搭載。富士フイルムやPENTAXの2600万画素センサーと関連があるのかどうか不明ですが、APS-C α初となる裏面照射型の新型モデルが登場すると良いですねえ。「つまり、期待してほしい。」とまで言及しているので、近い将来にこのセンサーを使った新モデルを検討しているのかもしれません。
今後のαは動画を重視するのか?
- 静止画のカメラマンも多く、同じようにフォーカスしていくつもりだ。動画、写真、そしてロービジョンフォトグラファーまで。
(訳注:視覚障碍者のためのDSC-HX99 RNV kitをリリースしています)- FXシリーズ、α7シリーズ、α6000シリーズ、ZVシリーズと、それぞれの技術で、それぞれのコミュニティにアプローチしていく。
- フォーカスを変えるということではなく、多様化して幅を広げたということだ。
FX30について
- FX30は若い映像クリエイターをターゲットにしている。
- 一流のビデオグラファーやシネマトグラファーに憧れ、学び、手頃な価格のシネマカメラで自分のクリエイティビティを表現したいと思っている。
- 彼らが学び続けることで、FX6やFX9にステップアップしてくれることを期待している。
APS-Cは動画向けか?
- そうは思っていない。動画に関してAPS-Cやフルサイズにこだわるつもりはない。
- 若い映像クリエイターにとって、フルサイズとAPS-Cの差別化ポイントは何かと考えると、複雑ですが重要だ。
- FX3のユーザーは、自分のイメージするものを作るため、カメラの使い方をすでに知っている可能性が高い。
- APS-Cのユーザーはまだ若く、学び始めである可能性がある。
つい最近登場した「ZV-E1」を含めて、ソニーは1200万画素 フルサイズCMOSセンサーを使用したカメラを3機種もラインアップ。どちらかと言えば動画向けのセンサーで複数のカメラをラインアップしているメーカーは他にありません。幅広い動画需要を示しているように見えます。この勢いでAPS-Cのラインアップも拡充するのか気になるところですねえ。
Eマウント用レンズの優先順位は?
- お客様に新しい映像や撮影体験を提供すること。
- Eマウントのお客様は幅広い用途の方がいらっしゃる。さまざまな要望があり、可能な限り多くの選択肢を作りたいと考えている。
- 写真家の創造性を最大限に引き出すような新しいレンズを提供したい。
- レンズの技術や、新しいレンズを作るために必要な周辺技術の向上は常に心がけている。
- レンズはチャレンジングな製品だ。光学設計だけですべての問題を解決するのは難しい。周辺技術は、レンズ設計の制約を取り除くことができる。
- 我々は、周辺技術の改良に常に注力している。
既存レンズのアップデート
- 新しいレンズを作る際には、光学設計の改良が大きく寄与する。そして光学設計だけでなく、周辺技術も非常に重要だ。
- オートフォーカスは、リニアモーターをシステムの最初に開発した。この技術は本当に重要で、新しいレンズの開発にも貢献している。
- リニア技術に着目し、継続的に改良を加えている。
- 最新のXDリニアモーターは強力かつ効率的で、非常に重いレンズ群を動かすことができる。このモーターは、光学設計の制約をいくつか取り除いてくれる。
- もう一つの重要な技術は、非球面レンズだ。我々は非常に高い面精度を持つ非球面レンズを社内で開発しており、この非球面技術は、レンズの改良に大きく貢献している。
更新されたGM II、新しく登場したGM、Gレンズはどれも小型軽量化と高性能・多機能化を両立している製品が多い。これらはXDリニアモーター駆動や非球面レンズの製造技術などで光学設計の自由度が高まっていることが寄与している模様。(設計の自由度に制限がかかると思われる)レンズマウント径こそ小さいものの、それをものともしない勢いを感じます。
Vlog市場について
- 映像業界を健全に保つためには、より多くの新しい顧客が映像業界に参入する必要がある。
- 今、その流れをリードしているのが、Vlogger、特に若いクリエイターたちだ。
- 我々はスチルカメラマンに加え、若いクリエイターであるZ世代に注目している。
- 彼らはVlogを撮ることで映像の世界に入ってきている。それを応援したい。
ZV-1Fについて
- ZV-1Fは、特にZ世代やティーンエイジャーの心をつかむことに重点を置いている。
- 学生向けに魅力的なキャンペーンを実施しており、多くの学生、特に女性はこのカメラが自分に合っていると感じてくれているようだ。
- 発売当初、ZV-1Fはカメラ愛好家に評価され、当初は若いクリエイターや若い女性の心をつかむことが出来なかった。しかし、今は多くのインフルエンサーが使った感想を投稿し、評価してくれている。そしてZ世代がZV-1Fに興味を持ち始めた。
新メニューシステムについて
- チャレンジングなことだった。お客様から複雑なメニューに対する不満があり、我々はお客様がどのようにカメラを使用し、どのように反応するかを分析する必要があった。
- 何度もアンケートを取り、エントリーユーザーからプロフェッショナルまで、さまざまな人からプロトタイプのフィードバックをもらった。
- DPReviewからも改善点を提案していただいた。こうしたフィードバックと研究を組み合わせて、カメラに新メニューを実装していった。
- 良い反応を得ているが、前回の改善からすでに新しい要望が来ている。
リアルタイムトラッキングについて
- α7R V以前は、AI技術を1つのDSPチップに統合していた。α7R Vから、AI機能に特化した専用のAIプロセッサーを搭載。このプロセッサーは、オートフォーカスだけでなく、シーン認識、ホワイトバランス、自動露出など、大きな効果を発揮する。
- 他社との違いを実感していただくのは難しいが、一度使っていただければ、我々の強力なテクノロジーに気づいていただけると思う。
- カメラ本体に専用のAIプロセッサーを搭載しているが、AIはさらに高いレベルへと移行している。
- カメラにAIプロセッサーを搭載しているだけでなく、すでにクラウドAIソリューションも立ち上げた。クラウドにAIエンジンを搭載しており、クラウドとカメラをつなぐことができる。
AIについて
- オートフォーカスにAIを使うだけでなく、シーンそのものを明確にするためにAIを使うようになってきている。
- そのシーンには何があるのか?被写体は?どこにいるか?何時頃か?被写体はどんな気持ちか?そのような場合に、AIの力を借りて、シーン全体を認識できるようにしたいと思う。
- AIはクリエイティブな手助けをしてくれるかもしれません。
ソニーはCP+の後、3月に新しいVLOGCAM「ZV-E1」を発表しました。α7R Vと同じAIプロセッシングユニットを搭載し、被写体検出機能を軸として様々な自動制御機能を実装しています。他社のVlog向けカメラとは一線を画す便利な機能が多く、価格は高いものの魅力的なカメラに見えます。
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今後5年間における新技術について
- テクノロジーは、マニアやデバイスだけのものではなく、クリエイターが気軽にカメラシステムを使ってコンテンツを作ることができるようになる。
- α1やα9のようにハイエンドモデルに最先端の技術を実装することもあるが、エントリークラスの製品まで技術がスケールダウンすることで、クリエイターが当社のカメラを使いやすくなる。そうあってほしいと思う。
- だからこそ、カメラ本体だけでなくCreators' Cloudというサービスも開発している。我々はクリエイターをサポートし、彼らがコンテンツを作り、業界を楽しくすることで彼らの成功を実感したい。彼らのカメラや映像体験を盛り上げたい。
- ユーザーをサポートする技術インフラを整備する必要がある。
この25年間で写真にとって最も重要な変化は?
- 1998年、デジタル写真は始まったばかりだった。ガソリンエンジンからEVに移行するようなものだった。
- 現在、写真はよりポピュラーになった。人々はそれを使ってお互いにコミュニケーションをとっている。
- スマートフォンであっても、写真を撮るのが好きな人はいる。この世代は写真を撮る人が多く、みんなが写真を撮って共有するのが当たり前になりつつある。コミュニケーションにとってより重要なことだ。
- 誰もがより高いクオリティを求め、クリエイティビティを高めたいと考えている。誰もがクリエイターになりたいと思っている。
ソニーはカメラの分かりやすいパフォーマンス(解像性能など)よりも使い勝手の向上にフォーカス。他社は「Vlog市場」を見据えて動き始めていますが、まだまだ始まったばかりという印象。ソニーはさらに一歩進み、「新製品で何ができるようになるのか」を具体的に示し始めました。最近登場した「VLOGCAM ZV-E1」がいい例と言えるでしょう。
画期的な技法や技術ではないものの、これらをカメラで自動的に処理してくれるのは非常に便利で魅力的。今後も撮影が便利で楽しくなるようなテクノロジーに期待。今のところ、これら機能は高価な機種に導入される傾向があるものの、手ごろな価格のカメラ・デバイスにも実装されると良いですねえ。
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