2021年5月6日付けでキヤノンの気になる特許出願が公開。どうやらボディ内手ぶれ補正を活用し、PENTAXのような振動型ローパスフィルターをカメラに実装しようとしている模様。
- 【公開番号】特開2021-71573(P2021-71573A)
- 【公開日】2021年5月6日
- 【発明の名称】撮像装置及びその制御方法
- 【出願日】2019年10月30日
- 【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社- 【課題】 フレームレートが高い場合にも、振れ補正機構を利用して、適切なローパスフィルタ効果が得られるようにすること。
ローパスフィルタとはモアレや偽色を抑えるため、センサー前面に取り付ける光学フィルターです。レンズの像をあえてぼかす(基本的には垂直・水平に像を分離する)ことで、モアレや偽色を防いでいます。ただし、ローパスフィルタは解像感が低下するので、最近のカメラでは「ローパスフィルターレス」仕様も多い(コストカットの意味もあるのでしょうけども)。特にソニーα7シリーズやニコンZ 7IIなど高画素モデル、そしてマイクロフォーサーズの多くや富士フイルムX-Trans CMOSでもローパスフィルタレス仕様を採用しています(ただし、X-Transは独自のカラー配列でモアレが出にくくなっている模様)。
参考までにローパスフィルタ搭載モデル・非搭載モデルを撮り比べた結果が以下の通り。「R5」「R」以外はローパスフィルタレス仕様です(α7 IIIは効果が半減しているローパスフィルタです)。
ローパスフィルターレス仕様でも処理エンジンでモアレや偽色を抑えることは可能。しかし、ローパスフィルタと比べると効果は十分と言えず、特に後処理が難しい動画や、カメラの画像処理を使わないRAW現像時に悪影響が発生する可能性があります。ご覧のように、6100万画素のα7R IVでも、4500万画素のEOS R5よりモアレや偽色が目立ちます。
キヤノンは基本的に「ローパスフィルターは必要」と考えており、一眼レフやミラーレスカメラはほぼローパスフィルター搭載モデルです。
とは言え解像感が低下するので、ローパスフィルターの効果は必要に応じて入り切り出来るのが理想的。例えばソニー「RX1R II」は可変式ローパスフィルタを搭載。
そしてPENTAXはセンサーがローパスフィルタレスですが、イメージセンサーの手ぶれ補正を機能を活用。センサーを超微細に円運動させることで、1本の光を瞬時に4つのピクセルに当て、機械的にローパスフィルタの効果を再現しています。今回の特許出願も基本的にはペンタックスと同じ原理を採用している模様(センサーはデュアルピクセルCMOSですが)。さらに高速フレームレートでも振動型ローパスフィルターが動作するそうな。
ローパスセレクター
必要なときだけ偽色・モアレを防ぐ独自機能光学ローパスフィルターの効果を、独自の原理と技術で実現したのがローパスセレクターです。露光中にCMOSセンサーを微少駆動させることで、偽色やモアレを軽減。ローパスセレクターの効果は、解像感とモアレとのバランスを重視した[TYPE1]、モアレ軽減を重視した[TYPE2]、解像感を重視する[OFF]から選択することが可能です。ローパスフィルター非搭載カメラの解像感と搭載カメラの安心感、2台分以上のメリットを1台で得られます。
※1/1000秒より低速のシャッター速度で撮影時に、十分な効果が得られます。
キヤノンは過去に、当時としては抜群の解像性能を備えたフルサイズ一眼レフ「EOS 5Ds」を投入。この際に珍しくローパスフィルターレスモデル「EOS 5Ds R」を同時発表しています(正確にはローパスフィルターの効果を打ち消しているのですが)。ひょっとしたら、来る「EOS R 高解像モデル」がローパスフィルターレス仕様で、今回の特許出願で示されているような振動型ローパスフィルター機能を搭載するかもしれませんね。
ちなみに、面白いことに【先行技術文献】として掲載しているのは2007年に出願したニコンだったりする。この時は「ボディ内手ぶれ補正」を採用しているメーカーは少なく、ニコンは専用のアクチュエータで駆動させようとしていた模様。当時から「光学ローパスフィルターが高価なので、振動型ローパスフィルターに切り替える」ような流れがあった模様。
【背景技術】
【0002】
現行のディジタルカメラは、撮像素子の前面に光学ローパスフィルタを配置しているが
、光学ローパスフィルタは高価であり、しかもカットオフ周波数の変更が難しいので、振動型ローパスフィルタ機構への置換が検討されている。
振動型ローパスフィルタ機構は、特許文献1の図14などにも記載されているとおり、被写体像を撮像素子上で振動させるものである。振動型ローパスフィルタ機構の振動振幅は微小なので、その振動子には圧電素子などのアクチュエータが使用される。【0003】
撮像時にこのアクチュエータを駆動すれば、撮像素子が取得する画像へ空間的なローパスフィルタ効果を付与することができる。また、アクチュエータの駆動量(振動振幅)を変更すればカットオフ周波数を変更することもできる。
因みに、ディジタルカメラのシャッタスピードは様々に変更されるので、アクチュエータの駆動周波数(振動周波数)も、高速なシャッタスピードに対処できるよう予め高く設定されることが望ましい。
参考:PENTAX ローパスセレクタ
PENTAXのローパスセレクタは連写速度の低下やシャッタースピードによるローパス効果の低下が発生する模様。ローパスブラケットでローパス効果の異なる写真を撮影しておけるのは便利ですね。
- PENTAX K-3 製品ページ
- PENTAX K-3【第5回】:ブラケットが追加された「ローパスセレクター」を検証
- カメラの八百富|PENTAX ペンタックス K-3 ローパスセレクター のサンプル写真
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