2021年7月1日付けでニコンの気になる特許出願が公開されています。撮像時はローリングシャッターですが、オートフォーカス時に一部でグローバルシャッターを利用するようですね。
- 【公開番号】特開2021-100287(P2021-100287A)
- 【公開日】2021年7月1日
- 【発明の名称】撮像装置
- 【出願日】2021年3月22日
- 【分割の表示】特願2016-130966(P2016-130966)の分割
- 【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン- 【課題】1フレームの読出期間において、ローリング電子シャッタ方式による撮像信号とグローバル電子シャッタ方式による撮像信号とを得る撮像装置を提供する。
- 【0024】
(ローリング電子シャッタおよびグローバル電子シャッタの問題点)
ローリング電子シャッタは、行毎の蓄積同時性がないことから動体が歪んで画像に写るため、被写体認識やその認識結果を基に被写体追尾する用途には不向きである。たとえ高速にローリング電子シャッタ駆動を行える撮像素子を用いたとしても、原理的に画像の歪みは解消しないし、高速動作させることで消費電力が増大するという問題も生じてしまう。また、ローリング電子シャッタをAF(像面位相差AFやコントラストAFなど)に用いた場合も、縦方向(同列画素)の蓄積同時性がないため、動体のピント合わせには不利である。横方向(同行画素)の蓄積同時性だけを頼りにAFを行うことになるので精度が劣る。- 【0025】
一方、グローバル電子シャッタを用いた場合、フォトダイオードPDの電荷を同時転送することで全画素の蓄積同時性が確保できるので画像の歪みは起こらない。しかしながら、保持容量SCからの読み出しには時間差が生じ、それが暗電流バラツキとなって画像に現れ画質を低下させる。保持容量SCからの読み出し順が最後の方の画素ほど暗電流の影響を受けることになる。たとえば監視カメラのような用途では撮像素子が常時動作しており、発熱による暗電流の影響が画像に現れやすい。そのため、放熱対策も十分行う必要があり、暗電流の影響が大きい場合は補正手段も考慮する必要が出てくる。- 【0026】
また、グローバル電子シャッタの場合、フォトダイオードPDのリセットやフォトダイオードPDの電荷転送を全画素同時に行うので、ローリング電子シャッタと比較して何倍も大きな瞬時電流が流れる。この瞬時電流と電源配線のインピーダンスにより電圧降下が起こるので、一般的に、撮像素子のチップサイズが大きく、撮像素子の中央部ほど電圧降下の影響を受けやすい。具体的には、電圧降下により出力信号のダイナミックレンジが不足したり、搭載されている回路の正常動作範囲を外れたりする可能性がある。これらは画質低下の原因になり得るので、瞬時電流が収まり電源電圧が定常状態に落ち着くまでの待ち時間を設けなければならず、フレームレート低下の要因となる。- 【0027】
(本実施形態の撮像素子の概要)
そこで、本実施形態の撮像素子101では、1フレーム分の撮像信号の読み出しにおいて、一部のエリアをグローバル電子シャッタで駆動させ、それ以外のエリアをローリング電子シャッタで駆動させることで問題解決を図る。グローバル電子シャッタで駆動させる一部のエリアとしては、例えば、被写体認識エリアやAFエリアなどが挙げられる。このように画素の蓄積同時性を有していた方が機能的に精度が高い場合にグローバル電子シャッタを用いるとよい。
グローバルシャッターは原理的に歪みなく動体を撮影できる電子シャッターの方式ですね。既にキヤノンが一部の業務用カムコーダーで導入していますが、民生用カメラのイメージセンサーはほとんどがローリングシャッターを使用しています。(例外としてMマウントカメラ「PIXII」がグローバルシャッターを採用)
文献内にも記載があるように、まだまだ課題の多いグローバルシャッターですが、それをAF時のみ利用するための技術のようです。とは言え、積層型CMOSセンサーの幕速が高速化しており、AF時のグローバルシャッター化でどれほど恩恵を受けるのか気になるところ。
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