DPReviewがソニー「VLOGCAM ZV-E1」のファーストインプレッションを公開。α7S IIIやFX3と比べて、知識がなくとも簡単に映像制作が可能となるYouTuberのためのカメラと評価しています。
2023年4月発売のVLOGCAM。同シリーズでは初となるフルサイズセンサーとボディ内手ぶれ補正を搭載。ボディの形状はα7Cとよく似たコンパクトサイズ。センサーはα7S IIIと同じ1210万画素の4K動画向け低解像センサーを使用し、プロセッサには高速処理が可能となる最新のBIONZ XRを使用。また、α7R VのようにAIプロセッシングユニットを使用し、高度な被写体検出AFにも対応。その他にもVLOG・動画撮影向けの便利な機能が複数追加されており、これまでの経験を活かした全部盛りのVLOGCAMとなっています。それなりに高価ですが、DPReviewのハンズオンレビューでは以下の通り。
新着情報
- α7S IIIやFX3と同じ1200万画素センサーを搭載。
- プロ仕様のVLOGカメラを作るには理にかなったセンサーだ。
- クロップすることなく、最大60pのUHD 4Kに対応。
- クロップモードでは、4K未満の動画をアップスケーリングすることを意味している。ZV-E1には、このようなモードが複数存在する。
- α7R Vで初めて搭載された「AIプロセッシングユニット」を搭載。主要機能のいくつかを専用アルゴリズムでより効果的に実行できる。
- 既存のカメラと異なるのは、自動化されたモードだ。特に自分で撮影して公開する人たちが、動画制作をより簡単に行えるように工夫されている。
iAuto 動画モード
- 「マイイメージスタイル」はカメラの設定を調整するためのボタンを画面上に表示する機能だ。露出補正やホワイトバランスではなく、「明るさ」や「色」で表現しているのが特徴だ。
- 撮影者がカメラマンでなくても、プロダクションクラスの映像が撮れるカメラであることが重要だ。他のモードも、この文脈で意味がある。
- 最も自動化された動画モードでは、被写界深度を巧みに利用している。被写体検出と連動して絞りを制御し、顔検出による露出設定だけでなく、2人目の顔が写り込むと徐々に絞ることで十分な被写界深度を確保できる。また、2人目が離れると、再び絞りが開放される。
- カメラ上部のボタンで被写界深度を浅くするか深くするかを選択でき、押すとカメラのオートモードに切り替わる。
- 従来のZVと同様、「商品レビュー用設定」を搭載。
シネマVlogモード
- このモードでは、コントラストの低いS-Cinetoneカラープロファイルに設定し、23.98pで撮影し、映画のようなアスペクト比(2.35:1)で映像の上下に黒帯を挿入して出力する(出力映像は16:9 UHD)。
- 基本的には、ワンタッチボタンで、カメラの出力をより「映画的」な外観にすることができ、その方法を理解する必要はない。
- デフォルトは色あせたS-Cinetoneプロファイルだが、カラーモードを変更する簡単な方法を備えている。タッチ操作で、「ムード」と「ルック」を映像に適用することができる。
- ルックは主にトーンレスポンスとコントラストを調整し、ムードはカラーレスポンスを調整する。
- また、別の被写体をタップしたときに、カメラがフォーカスを引くスピードを調整することができる。
ダイナミックアクティブ補正・フレーミング補正
- センサーシフト式手ブレ補正の「スタンダード」と、センサーシフト式手ブレ補正とデジタル式手ブレ補正を併用する「アクティブ」。さらに、より広い範囲でデジタル手ブレ補正を行う「ダイナミックアクティブ」モードがある。
- 映像を安定させるだけでなく、被写体をフレーム内の中央に収めるためにクロップを調整する。これは、ソニーの「姿勢推定」システムを使用したもので、単に手ぶれ補正をするだけでなく、フレーミングや構図も補正してくれる。
- デフォルトでは被写体を画面の中央に配置しようとするが、人物を画面のどこに配置したいかを指示すれば、その構図を維持しようとする。
自動フレーミング
- 三脚を使った撮影では、フレーム内の一部分を切り出し、被写体の動きに合わせてパンやスキャンを行い、構図を維持するモードがある。
- このモードでは、カメラを操作せずに、広い画角の中で歩き回ることができる。
- クロップは3段階から選択でき、追従速度も調整可能だ。
- 被写体がフレームに入った瞬間にカメラがズームアップするオプションも用意されている。
- 自動クロップした映像をメモリーカードに記録しながら、クロップしていない映像をHDMIで出力するオプションもある。ただし、これら2つの出力は常に同じ解像度だ。
- 4Kから1080クロップしてカードに保存しながら、オリジナルの4KをHDMIで出力することはできない。
ユーザーLUT
- LUTをカメラにアップロードすることができる。
- LUTを適用した映像は、プレビューで確認できるほか、カメラから直接グレーディングした映像を得ることができる。
- もちろん、通常のログで得られるグレーディングの柔軟性は失われる。
- 写真で言えば、好みのRAW現像用プリセットを新しいカラーモードとしてカメラにアップロードできるようなものだ。
カメラ内タイムラプス
- ZV-E1では、インターバル撮影ができるようになり、カメラ内で合成することができる。
比較対象
- 「わぁ、半分の値段で実質的にFX3が手に入る」と思うのは簡単だ。実際にはそうではない。
- ZV-E1は、高価なα7S IIIの代用品にならない。
- メニューはとても気に入っているが、「低照度用のα7C」と言った発想はしない方がいいと思う。
- ZV-E1はα7S IIIやFX3に比べて様々な機能が不足している。まず、メカニカルシャッターがなく、電子シャッターは動画では快適な速度だが、静止画で使用する14bitモードで読み出すと、かなり遅くなる。
- 手ブレ補正はα7S IIIやFX3ではなく、α7Cのものだ。
- 3機種ともほぼすべての動画モードを高速SDカードに記録できる。シングルスロットを使用することで動画に制限がかかることはないと思われる。
- 小型軽量のボディは放熱効果が低いという欠点がある。α7S IIIは長時間の撮影が可能で、FX3はファンを搭載しているので幅広い温度帯で録画が可能だ。ZV-E1はプロが必要とする堅牢なカメラではない。
- また、サブダイヤルがないため、ZV-E1は使い勝手の点でα6100/α6400の領域であることに注意が必要だ。
- ZV-E1は、4K/120p、RAW出力、フルサイズHDMI、そして決定的なのは、信頼できる長時間録画を実現するファンなど主要な機能が欠如している。
(訳注:4K 120pは6月以降にアップグレード予定とのこと)- メカニカルシャッターがないのは、サイズや重量の削減と同様に、より安価なα7S IIIの代用品となるのを防ぐためだと思われる。
- 全体として、このカメラは単なる「クリエイター向け」ではなく、「クリエイター専用」のカメラであろうとしている。
ボディ/操作性
- α7Cに少し似ているが、ファインダーを省略、さらに小さくすることに成功した。
- ボディ内手ブレ補正機構を搭載した最小・最軽量のフルサイズミラーレスとソニーは主張している。
- エルゴノミクス的には、奇妙なカメラだ。バリアングルモニタと表示上のインターフェースは、自撮りを想定しているようだが、ハンドグリップとボタンの位置は、その逆だ。
- グリップを持って自撮りを意図したデザインではないように見える。きちんとしたリストストラップをお勧めする。
- 軽量でありながら、ボディはかなりしっかりした作りだ。
- 上部には3カプセルのマイクアレイを搭載。これまでのZVと同様、ウインドスクリーンが付属する。
- 従来モデルとは異なり、音声を取り込む場所によって調整することができる。フロント、リア、オートの3つのオプションがある。オートモードは、カメラが人間を検出するように設定されていて、フレーム内に人間がいる場合、「前」に焦点を当てた録音モードを使用する。
バッテリー
- 小型化したにもかかわらず、大型「Z」タイプのバッテリーを搭載。
- NP-FZ100は16.4Whのバッテリーだ。1回の充電で570枚の撮影が可能である。
- カメラはUSBで充電できるほか、USB電源で給電・操作することも可能だ。
- UVC/UACに対応しているため、USBデバイスとしてパソコンに接続すれば、追加のソフトウェアを必要とせずに動作する。
- このような使い方で最大4K 30pに対応するカメラはZV-E1が初めてだ。
インプレッション
- ZV-E1の記事を書くのがこれほど難しいのは、これまでで最もDPReview向きではないカメラだからだ。
- ここ数年で、YouTubeやTikTokなどのプラットフォームで動画を作るクリエイターを意識している製品が多くなった。しかし、製品そのものは、そのような用途を想定して設計されたとは言い難い。
- ソニーのアプローチは、最も過激で散漫だ。まず、RX100にバリアングルと優れたマイクを搭載し、ファインダーを省略したZV-1を作った。その後、既存のミラーレスを改修したZV-E10を発表。さらに超広角レンズを搭載したAFが残念なZV-1Fが登場。そしてZV-E1が登場した。
- ZV-E1が目指しているのは、YouTubeで生計を立てようとする人たちに、使いやすいソロ・Vlog用カメラだ。
- 我々が参加した説明会で顕著だったのは、かつて雑誌からWebサイトへとバランスが変化したように、今度はWebサイトからYouTuberへと焦点が移っていることだ。好むと好まざるとにかかわらず、多くの人がオンラインコンテンツをYouTubeから入手することを望んでいる。
- YouTuberという職業は、技術系ライターと同じくらい、いや、それ以上となり得る存在だ。ZV-E1は、そのキャリアを支えるプロフェッショナルな道具として設計されている。
- 24pや2.35:1やLogの意味を知らない人たちが、自分たちの番組を撮影・制作して、いいものを作ることができるように設計されている。
とのこと。
同じセンサーを使用するα7S IIIやFX3と比べて、オート機能に長けたカメラのようですね。ZV-E1に実装されたそれぞれの新機能は、映像制作の手法として目新しいものではありません。しかし、それらをカメラが自動的に判断して調整したり、手間いらずで出力できるのは便利で魅力的。
映像制作の知識がない人からすると、時間やコストを抑えて効果的な映像表現が可能になると感じるかもしれません。本体価格は30万円超と高価ですが、収益性のあるチャンネルを運用している人からすると価値のある買い物と言えそうです。
(とは言え、そのようなターゲット層が豊富なアプリを有するiPhone以上のカメラを必要としているのかどうか気になるところですが…)
クリエイター以外の層にとってZV-E1はどのようなカメラとなるか?
DPReviewによると、14bit RAWの静止画ではセンサー読み出し速度が著しく低下するらしいので、電子シャッターしか使うことができないZV-E1は高速移動する被写体と相性が悪い。静止画用のカメラを探しているのであれば、素直にα7S IIIか、α7 IVあたりを検討したほうが良さそうです。
本格的な動画撮影であれば、より高機能なα7S IIIやFX3のほうが良い選択肢となるかもしれません。また、ZV-E1と同価格帯にはAPS-Cのプロ機であるFX30も存在します。
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主な仕様
概要 | |||
---|---|---|---|
発売日 | 2023年4月21日 | 初値 | 33万円前後 |
主な仕様 | |||
センサー | Exmor R | 解像度 | 1210万画素 |
手振れ補正 | 5段分 | 除塵機能 | あり |
プロセッサ | BIONZ XR | メモリーカード | SD UHS-II |
AF | ハイブリッド | 測距点 | 759点 |
被写体検出 | 対応 | ISO | 80-102400 |
連写速度 | 10コマ秒 | シャッター | 電子 1/8000秒 |
連写枚数 | 非圧縮RAW 85枚 | プリ連写 | - |
動画 | ~4K 120p | 動画圧縮 | LGOP/ALL-I |
Logなど | S-log3など | 撮影時間 | 4K 60p 30分 |
ファインダー | 非搭載 | LVフレームレート | 不明 |
モニター | 3.0型 104万dot | モニター可動 | バリアングル |
Wi-Fi | 5GHz 対応 | Bluetooth | v4.2 |
NFC | - | GPS | - |
USB | 3.2 5Gbps | マイクなど | 3.5/3.5mm |
サイズ・重量など | |||
サイズ | 121.0 x 71.9 x 54.3 mm | 防塵防滴 | 不明 |
重量 | 約483 g | ボディ素材 | 不明 |
バッテリー | NP-FZ100 | 追加グリップ | - |
付属品 | |||
ストラップ/ウインドスクリーン |
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