OMデジタルの新製品「OM SYSTEM OM-1 Mark II」のファーストインプレッション。被写体検出が不安定なAFにモヤモヤしつつも、ライブGNDが面白い。しかし、このタイミングでハイエンドの「II」は悪手だったのではという点について。
Index
OM-1 Mark IIのレビュー一覧
- OM SYSTEM OM-1 Mark II AFレビュー 実写編
- OM SYSTEM OM-1 Mark II オートフォーカス性能を確認する
- OM SYSTEM OM-1 Mark II 手振れ補正とバッファの性能を確認する
- OM SYSTEM OM-1 Mark II ファーストインプレッション
カメラのおさらい
- 商品ページ
- 発売日:2024年2月23日
- 販売価格(初値):
ボディ:275,220 円
12-40PROキット:339,570 円
12-45PROキット:304,920 円
2022年に登場したOM-1の後継モデル。基本的にはOM-1をベースとしており、ハード的な変更はバッファの倍増くらい。あとはカメラのロゴが「OM SYSTEM」に切り替わっている点のみ。内部的にはAFシステムの更新やライブGND・ライブND128の追加など細かい改善点が盛り込まれています。ハイエンドモデルの新製品ですが、旧製品と比べてマイナーチェンジ感の強いカメラ。
仕様の確認(太字がOM-1からの変更点)
- イメージセンサー
・タイプ:積層型・裏面照射型
・有効画素数:2040万画素
・除塵ユニット:SSWF
・手振れ補正:8.5段分 - プロセッサ:TruePic X
- AFシステム:
・測距点:1053点
・測距輝度範囲:‐5.5EV~19EV
・被写体認識:車両・鉄道・鳥・犬・猫・人物
・その他:オールクロスセンサー
・AF-C範囲設定
・被写体検出AFボタン設定 - 連写性能:
・メカニカルシャッター:60-1/8,000秒
・メカ最大10コマ秒
・電子シャッター:60-1/32,000秒
・SH2 12.5/16.7/25コマ秒 追加
・電子AF/AE追従 50コマ秒
・最大120コマ秒
・フラッシュ同調速度:1/250秒以下
・連続撮影枚数:20fps 405枚 RAW・120fps 213枚 RAW - ライブND(ND2/4/8/16/32/64/128)
- ライブGND (ND2/4/8)
- ハイレゾショット 14bit RAW
- ファインダー:OLED 576万ドット 0.82倍
- モニター:3.0型 162万ドット バリアングルモニタ
- 動画:
・4K:60p LGOP 202Mbps
・FHD:60p ALL-I 162Mbps
・出力:MOV
・電子IS:対応
・連続撮影時間: - インターフェース:
・USB:USB 3.0 C端子 UVC/UAC
・ヘッドホン:φ3.5mm
・マイク:φ3.5mm
・リモート:φ2.5mm
・HDMI:D
・LAN:‐
・シンクロ:あり
・Wi-Fi:802.11a/n/ac/b/g/n
・Bluetooth:LE 4.2
・その他:ゴミ箱ボタンのMENU機能 - バッテリー
・タイプ:BLX-1
・撮影可能枚数:500枚
・充電方法:USB-PD対応 - サイズ:134.8×91.6×72.7mm
- 重量:511g
- 防塵防滴:対応 IP53
- ボディ材質:マグネシウム合金
価格をチェック
ほぼマイナーチェンジモデルですが、OM-1から販売価格が高くなっています。
外観・箱
箱
オリンパスの映像事業がOMデジタルへ移行後、しばらくの間は従来通りの箱でした。しかし、昨年あたりから非常にシンプルで、業務用のようなデザインの箱へ移行しています。ハイエンドモデルのOM-1 Mark IIも同様となっています。箱にこだわりはありませんが、購入体験として良い印象はありません。
付属品
- USBケーブル
- バッテリーBLX-1
- ストラップ
- 説明書
- 保証書
前モデル「OM-1」には付属していた外付けフラッシュ「FL-LM3」がありません。非力ではありますが電源が要らず、バウンス撮影にも対応していたので重宝しました。OM-1より値上がりしていることを考慮すると、少し釈然としない気持ちがあります。
外観
デザイン
基本的にボディの形状やカラーリング、コントロールレイアウトはOM-1と同じ。ロゴが「OM SYSTEM」に切り替わり、カメラ左前面に「II」のロゴが入っている以外に大きな違いはありません。
OMデジタルは「OLYMPUSのロゴが入るカメラはOM-1が最後になるかもしれない」と過去に述べており、実際にその通りとなりました。ボディキャップを含めると、「OM」が全面に3か所も配置されています。
全体的なフォルムはE-M1 Mark IIから続くハイエンドモデルらしい形状。しかし、E-M1 Mark II・Mark IIIと比べると、少し曲面が増えています(ファインダー部や肩の形状など)。カメラ底面は従来通り、縦位置グリップ用の接続端子があり、ゴムカバーで端子を保護。底面の大部分は金属製ですが、バッテリースロットのドアのみプラスチック製のように見えます。
質感
E-M5 Mark IIIやE-P7など、ポリカーボネート製のカメラボディが増えてきたものの、ハイエンドモデルは依然としてマグネシウム合金製。前面・上面・背面・グリップなど、あらゆる箇所が非常に頑丈。
OM-1との比較
前モデル「OM SYSTEM OM-1」との違いはほとんどありません(後述)。アクセサリーを共有することが可能ですが、残念ながら共有できるほどのアクセサリーが流通していないのが現状。(カメラプレートやボディケース、大型ファインダーくらい)
ハンズオン
サイズ
OM-1以前の従来機と比べてサイズが僅かに異なるものの、基本的にはE-M1シリーズの後継モデル。手に取った際の違和感はありません。
重量
サイズと同じく、E-M1シリーズと比べて大差ありません。マイクロフォーサーズの中では少し大きめのボディですが、LUMIX GH6やG9 PRO IIのようなサイズ・重量ではありません。
カメラグリップ
E-M1 Mark IIIと言うよりはE-M1Xに近い形状のグリップ。フロントダイヤルやシャッターボタンの配置もよく似ています。手のサイズにもよりますが、従来機と比べて小指までしっかりとグリップを掴むことが可能。シャッターボタンとコマンドダイヤルはセパレートタイプに変化。操作性に大きな変化は感じません。
E-M1 Mark III比でカメラの横幅に大きな変化はありませんが、イメージセンサーやマウント、ファインダーの配置が左寄りとなり、そのぶん右側の空間に余裕があります。親指でしっかりと握ることができるスペースがあります
コントロールレイアウト
正面
前述したようにフロントダイヤルとシャッターボタンがE-M1Xのようなセパレートタイプに変化。シャッターボタン同軸ダイヤルと比べると誤操作は少ないはず。とは言え、個人的には同軸ダイヤルのほうが好み。OM-1からの変更点として、樹脂製の前後ダイヤルがゴム製に切り替わっています。小さな違いですが、指のかかりが良くなっていると感じました。
背面
E-M1 Mark IIIとよく似た配置ですが、余裕のあるサムレストにAF-ONボタンを追加。他のボタンと比べると大きく飛び出した形状で、素早く押しやすい形状。
AF-ONボタンの実装に伴い、ボタンカスタマイズに「AF-ON」機能が追加。従来機は「親指AF」を使いたい場合に複数の設定項目を調整する必要があったものの、その煩雑さが解消しています。AF-ON機能を他のボタンに移動させることも可能。
AF-ONボタンに追いやられるようにFnレバーとAELボタンは左へシフト。右手の親指で押せない位置ではなく、特に問題はありません。Fnレバーは従来通り、カスタマイズで電源レバーとして使うことも可能。メニューよりゴミ箱ボタンを「MENU」ボタンとして使うことができるようになりました。これにより、左を使わずにメニュー操作が可能となっているので便利。マルチセレクター(通称ジョイスティック)の仕様は従来通り。相変わらず中央押し込み時の機能が他社と異なり、「測距点を中央に戻す」目的で使用する場合は「HOME」機能のカスタマイズが必要。
上面
露出補正ボタンとRECボタンが微妙に使い辛い配置。個人的にはもう少し前方に、シャッターボタンやコマンドダイヤルとの距離を短くしてほしかったところ。どちらもカスタマイズ可能で、RECボタンは初期設定でハイレゾショットへの切替機能が登録されています。
モードダイヤルに大きな変化はありません。ここ最近の機種らしく、バルブモードが独立。シャッタースピード優先モードから手動で切り替える手間がないので便利。パナソニックのように、カスタムモード枠に拡張機能があると良かったです。
シャッターボタンの感触は従来通り。半押しまでのストロークは浅め、全押し中は深く押し込むことが可能。
左肩のレイアウトに大きな変化はありません。ボタンはOm-1以前のフラットな形状から中央が強く窪んでいる独特なデザイン。少し押しにくいものの、誤操作の可能性はグッと抑えられています。
ファインダー
解像度・発色
E-M1シリーズで使い続けていた236万ドットの液晶パネルを一新し、576万ドットのOLEDパネルを使用。高輝度・高コントラストで高解像を実現しつつ、リフレッシュレートは120fpsを維持。PEN-FのころのOLEDパネルと比べるとぎらついた印象が少なく、見栄えは良好。ただし、高速フレームレート(120fps)時はAF動作中に若干ノイジーとなるのが玉に瑕。標準(60fps)では問題ありません。
光学系
E-M1 Mark IIやMark IIIの光学系とは異なり、換算0.82倍の新しい接眼光学系を採用。断面図を見る限りではE-M1Xと同等。周辺部まで見やすい光学系。
アイセンサー
E-M1 Mark IIIと異なり、アイセンサーは光学系下部に搭載。反応する距離はおよそ5cm前後。初期設定ではモニター展開時にアイセンサーが自動的にオフとなる仕組みがあり、これをオンにする設定もある。
モニター
解像度・発色
従来の104万ドットから162万ドットまで高解像化。同価格帯のAPS-Cやフルサイズと比べても遜色のないスペック。ファインダーと同じ発色で、特に設定を変更する必要性は感じられない。
可動方式
従来通りバリアングル方式を採用。
タッチパネル
メニューシステムやスーパーコンパネが一新されているものの、基本的にタッチ操作で出来ることに大きな違いは見られない。
インターフェース
左側面のインターフェースは従来通り。上からマイク・ヘッドホン・HDMI D・USB-Cポートを搭載。USB-PD対応機器をUSB-Cポートに接続することでカメラ内のバッテリー充電が可能。USB-PD製品と組み合わせることで、電源オン時でも給電と充電を併用することができるのはOM-1の特徴。
新機能
14bit ハイレゾショット
ハイレゾショット(ピクセルシフト撮影)モードにて14bit RAW出力モードが追加されています。従来の12bit RAWと比べて広いダイナミックレンジを期待でき、RAW現像時の柔軟性が高い。14bit RAWは三脚・手持ちどちらにも対応しています。実際に試してみたところ、大きな違いはありませんでした。実際、12bit RAWと14bit RAWのファイルサイズはほとんど変わらず、12bit RAWと比べて情報を保持している訳ではない模様。シャドウには同程度のノイズが発生し、白飛びの閾値は全く同じ。ファイルサイズがほぼ変わらないので14bit RAWの常用で問題ありませんが、画質の向上もあまり期待できません。
正直に言えば、LUMIX G9 PRO IIの通常撮影のほうが広いダイナミックレンジを備えています。また、E-M1 Mark IIIまでのハイレゾモードで撮影したRAWのほうが柔軟性が高かったように感じます。OM-1の積層型CMOSセンサーはダイナミックレンジがやや狭い印象あり。
ライブGND
コンピューショナル撮影の新機能として「ライブGND」が追加されました。これは従来のライブNDとは異なり、ハーフNDの効果が得られる撮影モードです。RAW・JPEGどちらにも効果があり、ND濃度やグラデーションの強度などを指定可能。いつものグレーチャートで確認してみたところ、確かに数値通りの減光効果が得られているようです。濃度の違いはグラデーションの硬さに関しては以下の通り。
- Std:通常(適正露出から+5オーバーで撮影)
- ND2 hard
- ND4 hard
- ND8 hard
- ND8 soft
- ND8 medium
- ND8 hard
GNDの設定は基本的にチャートの左半分で効果が出るようにマーカーを配置して撮影。フィルタータイプを「Hard」にすると、効果は左半分に現れますが、「Soft」「Medium」の場合は右半分にもある程度の影響があります。自然なグラデーションを得るにはSoftがおススメですが、状況によってはHardやMediumのほうが適している場合もあると思います。実写でも期待通りの結果が得られました。効果が強すぎたり、グラデーションの高いフィルタータイプを使うと違和感があるものの、それは物理的なハーフNDを使った場合も同じ。ソフト的なNDフィルターのため、セットアップが不要で回転や効果の位置調整が非常に簡単。OM-1 Mark IIの新機能で最も付加価値の高いポイントと感じています。
ライブGNDは絞り優先など様々な撮影モードで利用可能。AE使用時はGND適用後に測光で露出が調整されます。この際の露出(マルチ測光時)は通常と同程度の白飛びに抑えられるので、ハイライトの粘りに関してはあまり期待できません。ただし、シャドーだった部分のノイズが少なく、輝度差を抑えた結果を得ることが可能。RAWの柔軟性は確かに高まっていると感じます。
また、アートフィルターやハイレゾモードなど、他の特殊効果機能とは併用不可。そして、今のところ効果が得られるのは直線のみで、曲線やスポット的な減光効果が得られるモードはありません。このあたりが可能になると、物理NDを超えた使い勝手の機能となりそうです。
ライブND 128
E-M1Xより実装しているライブNDですが、OM-1で「ND 64」に対応し、OM-1 Mark IIで「ND 128」も利用可能となりました。これにより、物理的なNDフィルター無しで7段分の減光に対応可能。もちろん複数枚の撮影結果を合成した画像となるので、実際に長秒露光した結果とは異なる点には注意が必要です。
被写体検出 人物
被写体検出に「人物」が追加されました。OM-1までの「顔・瞳検出」が被写体検出に統合され、さらに顔や瞳が検出できない場合でも「頭部」の認識が可能。家族写真で使ってみたところ、確かに背後でも頭部を認識するので便利と感じました。
ただし、他の被写体検出モードと同じく誤検出や検出から外れる場合も多く、その場合にAFが前景や後景に引っ張られたり、ありもしない被写体を間違えて追従する場合があります。パナソニックを含めた競合他社と比べると信頼性が低い。
被写体検出のC-AF 設定
被写体検出モードで暴れる検出枠を抑えるための新機能が「C-AF範囲」の設定。検出や追尾する範囲をAFターゲットエリア枠内に狭めることで、誤検出などを抑えることが可能な機能です。初期設定では「All」となっているので、誤検出に悩まされる場合は変更を推奨。実際にこの状態で使ってみると、確かに効果が得られているように見えます。ただし、厳密に「AFターゲット枠内」で動作するわけではなく、枠に少しでもかすっていたら動作したり、被写体の一部が枠内に入っていたら場合に枠外の顔や瞳を検出して追従を開始します。これが非常に分かりづらく、意図しない被写体にAFが乗り移る原因となっているように見えます。枠内に限定するのだから、枠内でのみAFを動作して欲しいところ。
ご覧のように、設定を変更してもターゲット枠外の被写体を捕捉・追従する場合が多々あります。これでは設定変更の意味がありません。枠内なら枠内に限定して動作して欲しいところ。被写体が少ない場合は安定することもありますが、ただの枝を「動物」と認識した場合には同様の挙動を確認しました。
被写体検出AFのボタン設定
被写体検出が不安定な場合に素早く「被写体検出オフ」のAFを動作させることができる新機能。初期設定ではレリーズ半押し・AF-ONはどちらも被写体検出が動作するモードとなっていますが、これを「ターゲットエリア優先」に切り替えると被写体検出を強制的にオフで動作させることが出来ます。
レリーズ半押しとは別にAF-ONのボタンを割り当てる必要があるものの、素早く1点AFで被写体を狙いたい場合に重宝します。OM-1 Mark IIで多用することになると思われる機能。逆に言えば、被写体検出の信頼性がそれだけ低いということですが…。
(追記)検出した被写体のロック
読者の方より被写体検出ロック時の挙動が見てみたいと要望があったので参考動画を公開しました。実写でも概ね同様で、ロックした被写体が検出から外れるた場合は前景に引っ張られたり別の被写体への乗り移りが発生します。(ロックを使用した追従は1:00あたりから)
ゴミ箱ボタンのメニュー操作
OM-1のMENUボタンは背面の左上に配置されており、これを操作するには左手を使う必要があります。当然ながら、超望遠レンズなど大きなレンズを装着している場合は(レンズを支えているので)左手が使えません。そんな場合、右手で操作できるゴミ箱ボタンをMENUボタンの代わりに使うことが出来る設定が追加されました。この設定ではライブビューからメニューを呼び出す際に使ったり、メニュー操作中に「戻る」機能として利用することが可能。右手だけでメニュー操作が可能です。
残念ながら、ゴミ箱ボタンのカスタマイズはMENUボタン固定であり、他の機能を割り当てることは出来ません。また、本来のMENUボタンをカスタマイズで設定変更することも出来ません。
ボタンカスタマイズ
新機能であるライブGNDが追加されています。ライブGNDを使う場合、頻繁に入り切りする機能になると思うので、ボタン割り当ては必須かなと。また、ボタン押しながら前後ダイヤル操作もするので、前面のFnボタンや左上のボタンに割り当てておくのがおススメ。
ISO感度
基本的に従来通り。4/3型 2000万画素センサーらしい結果。メカニカル・電子シャッターどちらでも、シングルショット・高速連写どちらでも同程度の結果を得ることができる安定した性能。APS-Cやフルサイズなどと比べると見劣りしますが、4/3型としては優秀なほう。手持ちハイレゾショット時は2~3段程度のノイズ低減効果を得ることができます。ISO 3200~6400くらいまでは常用可能な画質。12bit・14bitどちらもあまり変わりません。OM-1から引き続き、JPEGのノイズリダクションが優秀。と言ってもカメラ設定にあるノイズリダクションを適用するとディテールが崩れるので、個人的には「オフ」で使っています。しかし、それでもカラーノイズは補正され、輝度ノイズは細かくディテールを損なっているようには見えません。JPEG出力に限って言えば、個人的にISO 500~6400くらいまでは常用できる画質と感じています。ハイレゾショットモードではISO 12800や25600のJPEGでも実用的。
ダイナミックレンジ
ISO 200
4/3型 2000万画素センサーとしてはやや狭め。ハイライトは一般的ですが、シャドウ復元時にノイズが発生しやすいように見えます。参考までに、以下にG9 PRO II(ISO 100)の結果を掲載。違いは一目瞭然で、シャドウのノイズが良く抑えられていることが分かります。APS-Cに近い結果であり、比較するとOM-1 Mark IIは厳しい。
12bit 手持ちハイレゾ
シャドウのノイズは良く抑えられていますが、何故かハイライトが白飛びしやすくなっています。もしも輝度差の大きなシーンであれば、露出を少し抑えめに撮影したほうが良いでしょう。この傾向はOM-1と同じ。
14bit 手持ちハイレゾ
12bit 手持ちとほぼ変わりません(ノイズの色が異なるように見えるのはAWBで撮影したため。WB固定で現像すればよかったと反省しています)。14bitの恩恵はほとんどありません。
14bit 三脚ハイレゾ
OM-1 Mark IIで最も効果的にシャドウのノイズを抑えることができるモード。ただし、ハイライトの閾値は手持ちハイレゾと同じで、通常撮影よりも白飛びしやすい点に注意。
オートフォーカス
正直に言うと、基本性能はOM-1とほとんど一緒のように感じます。これまで撮影できたものは撮影できるし、撮影できないものは出来ません。少なくとも、AFの改善で何か新しいものが撮影できるようになったとは感じませんでした。被写体検出は動物の顔や瞳を検出する頻度が増加。特に追加された「人物」の検出は従来機より良くなっています。また、瞳が検出できている場合は使用するフォーカスエリアが小さいためか、前景に引っ張られにくくなりました。特定のシーンでは「良くなった!」と感じるかもしれません。
ただし、検出が頻繁に外れ、そのタイミングで別の「何か」を検出してAFが迷走する可能性があります。特に被写体以外に複雑な背景や、別の被写体(同じ種類・別の何か)が存在する場合は不安定甚だしい。
顔や瞳が検出できない場合、頭部やボディの検出に切り替わりますが、これも非常に不安定。そして被写体以外を誤検出する場合も多く、この場合は前景に引っ張られます。被写体を大きくクローズアップすると安定性が増すものの、この状態で動体をフレーミングし続けるのは至難の業。
咄嗟のシャッターチャンスに対する応答性は良好ですが、この点に限って言えばOM-1や旧世代(E-M1X・E-M1 Mark III)なども良好。被写体検出を使わないC-AFであれば、連写速度とバッファ以外で乗り換える価値を見出せないかもしれません。
まとめ
ざっと使ってみた限りではAFや画質(14bit RAW)に劇的な変化はありません(被写体の検出精度は多少良くなっていますが不安定)。このあたりを期待してOM-1から乗り換えるには差額が適正ではないと感じます。被写体検出関連のC-AF設定が追加されているため、リカバリーしやすくなっていますが、そもそもリカバリーしなくても良いAFを期待していました。
バッファは倍増しているものの、肝心のAFがあまり改善されていないために宝の持ち腐れ。成功率が低いにも関わらず撮影枚数が向上したところで、削除する手間が増えるだけという印象。さらに、他社では採用が進む「連写時のグループ化」が実装されておらず、削除するのも非常に手間というのが実情。
軌道が読みやすい鉄道や航空機などでは上手くいくかもしれませんが、少なくとも野生動物のようなシーンでは価格ほどの価値を見出すことができません。OM-1 Mark IIでうまくいくのであれば、OM-1でもうまくいくと思います。
個人的に、OM-1 Mark IIでおススメできるのはライブGNDとゴミ箱ボタンのMENU機能のみ。ライブGNDは実用的で、ハーフNDを揃える金額を考慮するとOM-1との差額は許容範囲内かなと。セットアップの手間がなく、カメラ一つでGNDの効果が得られるのは便利と感じました。フィルターが装着できない7-14mm F2.8 PROでも、カメラバッグから取り出して素早くハーフNDの効果を得ることができます。これは画期的。AFはともかく、ライブGNDに関しては「買ってよかった」と感じるポイント。
長所
- 握りやすいグリップと周辺の操作性
- 効果的な手振れ補正
- 様々なコンピューショナル撮影とライブGNDの追加
- JPEGのノイズ処理(NRオフ時)
- 魅力的なM.ZUIKOレンズラインアップ
- この価格帯で珍しい50/120fps RAW連続撮影
- 前モデルと比べてバッファ倍増
短所
- OM-1よりも高価
- FM-LM3が付属しない
- 箱が業務用っぽくなった
- 被写体検出が不安定
- OM-1と同じくダイナミックレンジが狭い
- 14bit RAW ハイレゾモードの効果が薄い
「Mark II」である必要があったのか?
根本的な問題として、ハイエンドモデルかつフラッグシップである本機がマイナーチェンジに近い状態で短期間に「Mark II」としてリリースされたのが痛い。他社のフラッグシップモデルで世代が変わるときはハード・ソフト共に一新している場合が多い。大きく進化すると共に、可能性も広がっているように感じます。
しかし、今回のOM-1 Mark IIにはそれがほとんどありません。仕様表からある程度は予想していましたが、予想以上でした。バッファ倍増やライブGNDなどは次世代の機種に温存しておき、まずはファームウェアアップデートでOM-1を強化していく方向性でも良かったのではないのかなと。
少なくともOM-1からのアップグレードはおススメできません(下取りを考慮しても10万円くらいの追加が必要となるはず)。購入資金は温存しておき「Mark III」を待つか、キャッシュバックキャンペーン中のM.ZUIKO PROレンズを購入したほうが良さそう。
これからOM-1かOM-1 Mark IIを選ぶのであれば、差額で「ライブGND」「バッファ」などに価値を見いだせるかがポイントになると思います。
LUMIX G9 PRO IIについて
OM-1 Mark IIと同じ価格帯・システムサイズで「50/120fpsのRAW高速連写」「被写体検出AF」「強力な手振れ補正」などを両立するカメラはLUMIX G9 PRO IIくらい。OM-1 Mark IIのような積層型CMOSではないので応答性はやや見劣りします。しかし、被写体検出は比較して安定感がある(キヤノンやソニーほどではありませんが)。
低照度や逆光時にAF低下が目に付くので、向き不向きあるのが悩ましいところ。とは言え、画質はOM-1よりも良好で、ダイナミックレンジも広い。JPEGの高感度ISOノイズ処理はOM-1のほうが好みですが、色や諧調の表現は個人的にLUMIXが良好。販売価格の差も大きいので、無難に使いたければG9 PRO IIを選ぶのもアリ。