富士フイルム「FUJIFILM X100Vi」のレビュー第一弾 ドライブ編を公開。X-Trans CMOS 4より少し遅めのローリングシャッター、非圧縮RAWはファイルサイズが大きすぎて使い辛いなど。
簡単なまとめ
20コマ秒までの高速連続撮影に対応していますが、電子シャッターはX-Trans CMOS 4と同等かやや遅め。レンズの焦点距離が短く、バッファも十分とは言えないため、(分かり切ったことではありますが)本格的な連続撮影には不向きなカメラです。
それでも連続撮影をする場合、非圧縮RAWはファイルサイズが非常に大きいため使い辛い。ロスレス圧縮RAWか圧縮RAWの常用がおススメです。
It supports high-speed continuous shooting at up to 20 frames per second, but the electronic shutter is equivalent to or slightly slower than that of the X-Trans CMOS 4. Because the focal length of the lens is short and the buffer is not sufficient, (as is obvious) this camera is not suitable for serious continuous shooting.
Even so, if you do want to do continuous shooting, uncompressed RAW is difficult to use because the file size is very large. We recommend using lossless compressed RAW or compressed RAW on a regular basis.
レビュー一覧
- FUJIFILM X100VI レビュー ドライブ編
- FUJIFILM X100VI 23mm F2.0 II レンズレビュー 完全版
- FUJIFILM X100VI 23mm F2.0 II レンズレビューVol.5 逆光・周辺減光編
- FUJIFILM X100VI 23mm F2.0 II レンズレビューVol.4 ボケ編
- FUJIFILM X100VI 23mm F2.0 II レンズレビューVol.3 諸収差編
- FUJIFILM X100VI 23mm F2.0 II レンズレビューVol.2 遠景解像編
- FUJIFILM X100VI 23mm F2.0 II レンズレビューVol.1 解像チャート編
ドライブ
仕様の確認
シャッター
- シャッター形式:レンズシャッター方式
- メカニカルシャッター:15分〜1/4000秒
- 電子シャッター:15分〜1/180000秒
- メカニカル+電子シャッター:15分〜1/180000秒
- バルブ:最長60分
「X-Trans CMOS 5 HR」「X-Processor 5」搭載モデルらしいスペック。電子シャッターは高解像センサーながら1/180,000秒までの超高速シャッターに対応しており、強い逆光時でもNDフィルター無しで絞り開放を利用しやすくなっています。
ただし、メカニカル方式はレンズシャッターを採用しているため、最高速は1/4000秒まで。構造上、電子先幕シャッターはありませんが、レンズシャッターが静かで低反動のため必要ありません。
NDフィルター
従来通り4段分のNDフィルターを内蔵しています。メニューからオンオフを変更できるほか、クイックメニューやボタンカスタマイズに登録可能。
電子シャッターで1/180,000秒まで対応しているため、フィルターで減光する必要性は低い。ただし、低速シャッターを利用したい場合(例えば流し撮り)には有効な手段。特にX100VIはボディ内手振れ補正を搭載しているため、手持ち撮影での低速シャッターを利用しやすくなっています。
撮影速度
- 電子シャッター(1.29x クロップ):
・約20コマ/秒
・約13コマ/秒
・約10コマ/秒 - 電子シャッター:
・約13コマ/秒
・約11コマ/秒
・約8.9コマ/秒
・約8.0コマ/秒 - メカニカルシャッター:
・約6.0コマ/秒
・約5.0コマ/秒
・約4.0コマ/秒
・約3.0コマ/秒
4000万画素の高解像センサーながら、最大で13コマ秒の高速連続撮影に対応。×1.29クロップの場合は20コマ秒の高速連写を利用可能。ただし、高速連続撮影は電子シャッター限定で、この際はローリングシャッター歪みが目立つ可能性あり。歪みが発生しないレンズシャッター利用時は最大で6コマ秒までとなる点に注意が必要。
電子シャッター利用時の撮影速度はX-H2やX-T5などXシリーズのミラーレスカメラと同等。注意点は連続撮影可能枚数がCFexpress対応モデルと比べて圧倒的に少ないこと。(後述)
連続撮影枚数
非圧縮 | ロスレス | 圧縮 | JPEG | |
電子 20 fps | 17 | 35 | 52 | 117 |
電子 13 fps | 17 | 24 | 38 | 80 |
メカ 6.0 fps | 18 | 23 | 36 | 97 |
高速連写時の撮影枚数はどの設定でもRAW出力時に100枚まで届きません。特に非圧縮RAWを利用時はバッファが詰まりやすいため注意が必要。CFexpress対応のX-H2は非圧縮RAWでも200枚以上撮影可能。とはいえ、同じくSD UHS-II対応モデルのX-T5はX100VIと同程度です。X100VIのバッファが特に小さいわけではありません。
連写テスト
撮影環境
- Nikon Z50II
- NIKKOR Z DX 16-50mm F3.5-6.3 VR
- Mモード
- 16mm F3.5 / ISO 100 / 1/4000秒
- 各 RAW形式・シャッター形式・レリーズモードを使用
- 5/10/15秒の連続撮影で記録できた画像の数を計測
- Kingston SD UHS-II V90 32GB
- ノイズ低減・レンズ補正は全てオフ
- フリッカー低減 オフ
ファイルサイズ
同じ条件で撮影した種類の異なるRAWのファイルサイズが以下の通り。
- 非圧縮RAW:81.4MB
- ロスレス圧縮RAW:37.5MB
- 圧縮RAW:26.4MB
非圧縮RAWはロスレス圧縮RAWと比べて倍以上の大きなファイルサイズであることが分かります。画質は最も良好ですが、ストレージの使用割合を半分以下に抑えることができる圧縮系のRAWは魅力的。画質差も気にならない程度である場合が多く、非圧縮RAWを積極的に使う必然性は低い。
特に連続撮影でファイルサイズの大きな非圧縮RAWは書き込み速度で不利となります。撮影枚数を重視する場合、非圧縮RAWは避けたほうが良いでしょう。
非圧縮RAW
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
11コマ秒 | 22 | 27 | 32 |
20コマ秒 | 23 | 30 | 36 |
スペック通り、17枚を超えたあたりでバッファが詰まり始める。その後は1コマ/秒くらいの撮影速度が続きます。SD UHS-IIの書き込み速度がボトルネックとなっているのは明らか。
V90のSD UHS-II メモリーカードでこの結果となるため、これ以上のパフォーマンスを期待するにはCFexpressを使うしかありません。(富士フイルムの4000万画素機ではX-H2のみ)
ロスレス圧縮RAW
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
11コマ秒 | 51 | 70 | 89 |
20コマ秒 | 61 | 82 | 107 |
非圧縮RAWと比べるとファイルサイズが小さく、バッファに余裕があるようです。ただし、スペック通り30枚を超えたあたりで撮影速度が減速している模様。減速後は約4コマ秒で連続撮影を利用可能。
圧縮RAW
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
11コマ秒 | 54 | 70 | 89 |
20コマ秒 | 69 | 90 | 117 |
ロスレス圧縮RAWと圧縮RAWのファイルサイズに大差がないためか、結果はほぼ同じ。
ローリングシャッター
ローリングシャッターとは
イメージセンサー全体を一度に露光出来るのが理想的ですが、現在は発熱やノイズなど、様々な問題から(民生用カメラでは)ほぼ実現に至っていません。現在はイメージセンサーの上から下まで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的。言葉で説明しても難しいので、下部の動画を参考にしてください。
コンシューマー向けのデジタルカメラは大部分が動画のようなローリングシャッター方式を採用したイメージセンサーを使用。ローリングシャッターが発生しない方式を採用しているカメラは海外企業で「PIXII」、国産ミラーレスで「α9 III」のみ。(もしくはキヤノンの業務用向けカムコーダーくらい)
RAW
全幅の静止画RAW出力の場合、RAWの形式を問わず結果は一定。前世代の2600万画素 X-Trans CMOS 4 イメージセンサーのローリングシャッターと比べると幕速は遅め。電子シャッター利用時は動体が歪む可能性がより高い。
とは言うものの、静音・低反動のレンズシャッターは常用可能で、静粛性が求められる環境でも利用可能な場合が多いはず。電子シャッター必須となる環境は少ない。(高輝度のF2利用で1/4000秒よりも高速シャッターが求められる場合など)
また、ミラーレスのフォーカルプレーンシャッターのように歪むことがないため、1/4000秒までのスピードで問題ないのであれば優秀なシャッター方式と言えるでしょう。
(フォーカルプレーンシャッターは構造上歪みが発生します。通常の電子シャッターよりも高速ですが、積層型CMOSセンサーと同程度。)
連写 ×1.29クロップ時
撮影する被写体の倍率を整えて×1.29クロップの高速連写で撮影した結果が以下の通り。性能は2600万画素 X-Trans CMOS 4とよく似ています。4000万画素 X-Trans CMOS 5 HRで動体を撮影するのであれば、1.29倍クロップ(2400万画素)を利用することで同程度の結果となる。
まとめ
4000万画素の高解像ながら10コマ以上の高速連写に対応する珍しいコンパクトカメラ。ただし、利用できるシャッター方式が限定され、ローリングシャッター性能が十分とは言えません。
とは言え、搭載しているレンズが35mm相当であり、この画角でフレーム上を高速移動する被写体は珍しい。被写体に近寄って撮影する場合は影響を受けるかもしれませんが、その場合、高速移動はしていないはず。
高速で横切る車両や鉄道を電子シャッターで止めるように撮影いない限り、ローリングシャッターで歪む可能性は少ないかなと思います。どちらかと言えば、人工灯におけるフリッカーで悩まされるシーンが多いはず。
さらに言うと、レンズ繰り出し式のAFはミラーレスカメラのAFと比べると遅め。そもそも動体追従の撮影に適していません。ここを期待してX100シリーズを購入する人は少ないと思いますが…。
もちろん、被写体検出機能を利用したAFはとても便利です。個人的にも家族写真やペットの撮影で重宝しています。それでもレンズシャッターの上限「6 fps」を超える撮影速度が欲しいと感じる場面は少ない。無理して高速電子シャッターを利用する必要はないのかなと。
参考情報
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