弩級カメラ揃い踏み
2014年から2015年にかけて、3000万画素を超える高画素機が相次いで登場した。ピントを追い込んだガチピンの写真は、トリミング耐性が高く撮影後の自由度が高い。また、後から現像をする際には細かいデータが多く存在することで繊細な階調表現やシャープさをよりベストな調整に追い込むことも可能だ。
しかし、画素数は多ければ多い方が良いという類のものではない。手振れに対して繊細だったり、受光面積が減少する諸デメリットがあったり、ファイルサイズが大きくなったり、レンズ性能がより重用になったりと、高画素機だからこその問題点があったりする。
そんな中で各社が高画素機を打ち出してきたと言う事は、それらデメリットよりもメリットの方が優先できる状況にまで技術が進歩してきたと言う事だろう。
今回はそんな各社の有名な高画素機を比較してみて行こう。
スペック比較
センサー・有効画素
やはり中判イメージセンサーのカメラは伊達じゃない。1画素あたりの面積も広く、同様の画素数を誇る5DsRとは1.7倍の面積比。画像処理エンジンを抜きした性能なら645Zがかなり有利。ノイズ処理の負担が少ない低感度時の解像度であれば、645Zが独走状態。
単純にセンサースコアではα7RIIがトップクラス。センサーサイズが大きく、従来であれば「裏面照射型である必要は無い」とされた一眼カメラだったが、高画素化で画素ピッチが狭くなった昨今ではメリットが大きくなってきたと言える。特に高感度時の恩恵は大きいみたいだ。
参考:「DxO Mark:A7R-2」「デジカメinfo:α7RIIはα7sと比べて差があまり無い」
5DsRとD810では画素ピッチが狭い5DsRの方が高感度ノイズが多い。但し、マルチショットNRを使えるシーンではその差が縮まり、低感度時の解像感では5DsRが勝る。
参考:「デジカメinfo:5DsRvsD810」
画像処理エンジン
超高画素機において、画像処理エンジンでの味付けはかなり重要。と言うのも高画素機において、1画素あたりの受光面積が落ちるので受け取る光学情報量は低画素に比べると劣る。高感度時のノイズやダイナミックレンジなど、その足りない光学情報を補完するシステムが画像処理エンジン。当然、新しい処理エンジンの方が現行機種に最適化されているので優れている所が多いだろう。
処理エンジンのバージョンによっては発色傾向がガラっと変わったりもするので、その辺りは好みの問題になってくる。
- 『デュアルDIGIC6』 …7D Mark2に搭載。処理エンジンを2基搭載することで高速画像処理を実現している。各収差の補正やホワイトバランスなどのバランスを考慮しつつ、連写性(軽快な動作)も配慮したといった按配だと思う。データサイズだけで見ると2000万画素の7D Mark2で秒間10コマ、比べて5000万画素の5DsRで秒間5コマなのでデータ量にしてはかなり頑張っていると思う。「データ量(画素数)で比較した連写性で言えば4機種中最も連写できる。」と言う恩恵にもなっている。
- 『EXPEED 4』 … 従来のEXPEED 3と比べるとノイズ処理やホワイトバランスの味付けで差が出ている。よく言う「ニコンの黄色」な発色傾向も大分落ち着いてきて降り、EXPEED4では特に問題無いようだ。特にノイズ処理の大幅な改善には定評があり、探せば幾らでもお褒めのレビューが存在する。
参考:デジカメWatch『D810vsD800E』
- 『BIONZ X』 … 従来比で約3倍の高速処理を実現した処理エンジン。コンパクトデジタルカメラやスマホにも搭載されているものを、フルサイズイメージセンサーに最適なチューニングを施してあるそうだ。傾向としてはよく「記憶色」と言う単語が出てくる。撮って出しJPEGの場合で色のりが強く表現されている場合が多く、鮮やかな写真が多い。
- 『PRIME III』 … K-3系統にも採用されている処理エンジン。従来のPRIME IIと比べると、処理速度の向上が図られている。特に旧エンジンが積んでいるカメラと比べると「快適になった」と言うレビューがかなり多い。但し、同様の画素数である5DsRと比べた場合には連写速度は劣りバッファは弱い。しかし、ペンタックスの発色傾向には定評がありファンも多い。発色自体はRAW現像でどうとでもなるものだが、独自のWBである『CTE』と言う発色はあとから自分で調整しようと思っても中々難しい。『CTE』で発色がキマり過ぎていくらパソコン上でRAW現像しても納得がいかないが事も多々(パソコンRAW現像ではCTEが無かったりする…)。ノイズリダクションなどは、センサーサイズの差を根底に考えると少し他社に比べて劣るかな?と言ったところ。
参考:デジカメWatch『CTEを使ってみる』
5DsR | D810 | α7RII | 645Z | |
方式 | 位相差 | 位相差 | 位相差 コントラスト |
位相差 |
AFポイント | 61点 41点クロス |
51点 15点クロス |
399点 位相差 25点コントラスト |
27点 25点クロス |
検出輝度 | -2~18 | -2~19 | -2~20 | -3~18 |
LV時拡大倍率 | ?16倍 | ?原寸200% | ?可能 倍率不明 | 16倍 |
露出測光 | 15万画素RGB IRセンサー 252分割 |
9万画素RGBセンサー | 1200分割 | 8.6万画素RGBセンサー |
ISO感度 | 100-6400 拡張12800 |
64-12800 拡張 ~51200 |
100-25600 拡張102400 |
100-204800 |
オートフォーカス・測光
645Zは中判カメラであることに加えて、AFポイントが27点しか無いのでほぼ中央にしかAFエリアが無い。AFでピントを合わせてからフレーミングをしようとすると「コサイン誤差」によりピントが微妙に合わなくなる現象が発生する。ライブビューによるピントの追い込みをかければフレーミング後でもガチピンは可能。但し、一回の撮影に時間がかかるのは言うまでも無い。 参考:『薮田織也のデジカメ 1・2・3:コサイン誤差』
対してフォーカスエリアが広く、守備範囲で言えば圧倒的にα7RIIだ。399点の位相差AFとコントラストAFが使えるのはミラーレス一眼らしい特権。構図を決めてからもオートフォーカスでピントを合わせやすく撮影をスムーズに行う事が出来る。
バランスが良いのは5DsR。AFポイントも多く、クロスセンサーも贅沢に搭載されているのでより正確なピント合わせが可能だろう。さらに測光方法も分割測光に加えてRGBセンサーとIRセンサーを搭載。7D Mark2と同じくハイエンド機であるEOS-1DXより上の測光方法。
5DsR | D810 | α7RII | 645Z | |
方式 | 光学 アイレベル式 |
光学 アイレベル式 |
電子式 0.5型 236万ドット |
ケプラー テレスコープ式 |
視野率 | 100% | 100% | 100% | 98% |
倍率 | 0.71倍 | 0.70倍 | 0.78倍 | 0.85倍 |
アイポイント | 約21mm | 約17mm | 約23mm | 約24.1mm |
背面液晶 | ワイド3.2型 104万ドット |
3.2型 123万ドット |
3.0型 123万ドット |
3.2型 104万ドット |
ファインダー
645Zのファインダー倍率は大きく、見易い。AFエリアが狭く、特にマニュアルフォーカスを使う頻度が多いと思われるこの機種では重要なポイントだ。視野率は若干欠ける98%。また、ケプラーテレスコープ式を採用しており、接眼レンズ中央部を除かないとケラれが生じる場合がある。
次いでα7RIIの電子ビューファインダーが0.78倍。電子ビューファインダーとしては現在最大級のファインダー倍率を誇る。ファインダーを覗きながら拡大表示をしてガチピンを狙うのに最適なカメラはこの機種を置いて他に無い。(次点でFUJIFILM X-T1が0.77倍)露出情報をファインダー越しに確認できる点や露出シュミレーション、MFピーキングアシストも使える点は電子ビューファインダーの利点。また、低照度でのピント合わせも露出シュミレーションをオフにして感度を上げることで被写体を明るく見やすくする事が出来る。但し、超高感度時には動作がモッサリするので注意。
背面液晶
精細さはどれも似たような液晶パネルだが、α7RIIと645Zはチルト可動液晶。ローアングルやハイアングルに対して有効だ。しかし、縦持ち撮影のローハイアングルにはチルト液晶が役に立たない。
5DsR | D810 | α7RII | 645Z | |
最高秒間コマ数 | 約5コマ | 約5コマ | 約5コマ秒 | 約3コマ秒 |
連続撮影 | JPEG L 31枚 RAW 12枚 |
JPEG 100コマ RAW 28コマ |
JPEG L 24コマ RAW 23コマ |
JPEG L 30コマ RAW 10コマ |
手ぶれ補正 | レンズ側 | レンズ側 | レンズシフト式 4.5段分 |
レンズシフト式 |
前述したが、『連写が利く高画素機』と言うくくりでは5DsRがそれにあたる。バランスが良いのはやはり画素数の少ないD810で連続撮影枚数が伸びている。
但し、高画素機である事と連写できると言うメリットの両立は難しい。手振れを押さえ込みながら連写をしなければならない。高画素機のメリットを最大限に活かしながらの連写は難易度の高い撮影方法。その点で言えば、手振れ補正機構をボディに搭載しているα7RIIの優位性は高い。手振れ補正を搭載していない大口径単焦点が多い他社に対しては大きなアドバンテージだ。
ただし、高画素機で連写をすると特に記録データ量が膨大になるので後処理も考えるとオススメは出来ない。(PCでのRAWデータの処理も負担が大きい)
5DsR | D810 | α7RII | 645Z | |
WiFi | 別売対応 | 別売対応 | 可能 | 別売対応 |
GPS | 別売対応 | 別売対応 | 不可 | 別売対応 |
連続撮影 ファインダー時 |
約700枚 | 約1200枚 | 約290枚 | 約650枚 |
USB給電 | 不可 | 不可 | 可能 | 不可 |
サイズ | 152.0*116.4*76.4 | 146*123*81.5 | 126.9*95.7*60.3 | 156*117*123 |
重量 | 930g | 980g | 625g | 1550g |
WiFi
フラッグシップ機において、WiFiを内蔵しているカメラは少ない。α7RIIはそんな貴重な機種の一つ。注意点はフルサイズ機で撮影したとしても、その場で転送する際は写真がリサイズされてしまったりする事もあるので、まず始めに説明書を読んでおこう。原データを渡そうとするとそれこそ巨大なファイルサイズの転送になってしまう。
また、カメラに触ることなく遠隔操作できる点も魅力的だ。特にレリーズケーブルや無線スイッチが利きにくい距離の場合にその差は歴然となる。
連続撮影可能枚数
D810gがかなりの高耐久を見せる。反面5DsRは処理エンジンを2基積んでいたりするので電池の消耗も早い。645Zはその図体の割にバッテリーはK-3シリーズと同様。持続時間もまあこんなものかな?と言うとこだ。
何かと便利で高性能なα7RIIの最大の欠点がココだろう。ミラーレス機の宿命とも取れるが、持続時間が少ない分バッテリーの予備を持つ必要性が高い。普段使う分にはそれで問題ないが、荒れた天候のシチュエーションではバッテリー交換もしたくないと思う人も多いと思う。
サイズ・重量
645Zが圧倒的に重たい。他のフルサイズ機が可愛く思えるくらい違う。
その割に幅と高さは抑えられているので中判カメラにしてはコンパクトな印象を受ける。しかし、フルサイズ機と比べてクイックリターンミラーが巨大なので、ミラーを入れるスペースが必要だったりでカメラの奥行きが長い。当然レンズもデカイのでシステム全体として見ると群を抜くヘビー級。これに望遠レンズを付けるのならば筋トレが必要。
反面α7RIIは4モデルの中では最軽量。APS-C一眼レフ機よりも軽かったりする。但し、フルサイズ対応のレンズはそれ相応の大きさなレンズのラインナップなので、フロントヘビーになりがち。
5DsRとD810はコンスタントなフルサイズ一眼の重量だ。特にニコンは比較的安価で高画質なGタイプの大口径単焦点レンズをリリースしまくっているので、それらと合わせると軽いシステムを組めるだろう。反面大口径ズームはかなり重くなっているレンズもあるが…。
連写もデキる高画素機 EOS 5DsR
連写性を維持しつつ、フルサイズ機の中ではトップクラスの高画素機となった一眼レフカメラ。1画素あたりの面積は狭いので低感度での撮影は申し分ないが、高感度時におけるノイズの乗り方は早い。出来るならマルチショットNRを使って処理したい所。一眼レフ機の中では測距点が多く、総じてクロスセンサーの数も多い。高画素機で動体を積極的に撮ることは少ないだろうが、性能の良好なAFで動体撮影にも果敢にチャレンジできるモデルだ。露出測光もEOS-1DXよりも性能が高い。
レンズは豊富だが、ローパス効果を付けた一眼カメラが多いEFマウントにおいては5000万画素のローパスフィルターレス(キャンセラー)のスペックをカバーするレンズがどれだけあるのかは未知数だ。
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バランスの取れた高画素機 D810
他機種と比べると画素数が一回り少ないが、それでも超高画素クラス。ここ最近のカメラがおかしいのです。
あまり高画素でも安レンズではスペック足らずでセンサーの能力を十分に活かしきれない。第1線を張れる一級品レンズを使うのでなければ、D810はよそ様の超高画素機に比べシステム全体として安上がりに組むことが出来る。特にボディ価格も現行の高画素機の中では安い方。
ここ最近で性能が良好でお買い得な単焦点や大口径ズームが多く登場している。そのニコンFマウントにおいて、それらのレンズ群の力を余すことなく使いたいのであればこのボディだろう。D800・D800E用のオススメレンズのラインナップがニコン公式に存在していたりする。ラインナップ以外にも高評価のGタイプ F1.8なども検討してみては如何だろうか?
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コンパクトで高精細 α7RII
コンパクトだが、性能に妥協は無い。さらに強力な手振れ補正まで搭載しており、裏面照射による高感度耐性と合わせればお手軽スナップショットを超解像度で楽しむ事が出来る。さらにチルト可動液晶も備えているので、機動力に加えて変化球も投げ易いカメラだったりする。性能に妥協が無い分、α7Rと比べると目玉が飛び出るような価格になっている。
高画素機故に動体を撮る為に購入する方は少ないと思うが、裏面照射による高感度の恩恵が高い。よってISO感度を高めに設定して手振れを押さえ込むだけの、動く被写体を切り取るための、シャッタースピードを稼ぐ撮り方もあると思う。
注意点として、FEマウントは現在高級路線をひた走っているので、高画素機を使うに値するレンズは少なくて高い。そして重い。ボディを買って満足するはずが、気がついたらツアイス銘のレンズがゴロゴロしてたなんて事も…。
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表
ネイチャー系ならコレで決まり PENTAX 645Z
ネイチャー系の雑誌である「風景写真」を開いて見れば、645Zやら645Dやら645Nやらと中判カメラのユーザーがゴロゴロいらっしゃったりする。デカイ・重い・高いと3拍子揃った大物。レンズもあわせて考えるとかなりのヘビー級なシステムである。
PENTAXでは御馴染みのボディ内手振れ補正は645系列は搭載されていないので、しっかりと三脚で固定して撮影に臨みたいところだ。645Zよりライブビュー撮影に対応したので、背面液晶でピントの追い込みが可能になった。16倍まで拡大して確認が出来るので、ここぞと言う時にはAFに頼らずガチピンをマニュアルで狙っていこう。
まだまだ645マウントのレンズがフィルム時代から移行できておらず、その高画素を活かす為のレンズの拡充が急務。つい最近もデジタル対応したレンズのリリースがあり、PENTAXが地味に頑張っているブランド。いやいや、その前にフルサイズ機を出してほすぃ…ゴニョゴニョ…
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