この写真を拡大してご覧頂きたい。
一見してタダのマクロ撮影した花だ。「構図や被写体とか何も考えずに撮ったのかねチミは」とおっしゃらずに、まあ見て欲しい。
ピントは雌しべの先に置いて撮影した。しっかり絞ってもなかなか被写界深度が深くならないのがマクロ撮影。パンフォーカスが難しい。
だが、この写真ではピント面のさらに奥、茎までしっかりとピントが合っている事が分かると思う。そう、これは「深度合成」というフォーカスブラケットによる合成写真。OM-D E-M1のファームウェア4.0で導入された新機能だ。
今回は新しく購入したフルサイズ一眼レフ「PENTAX K-1」によるリアルレゾリューションシステム(超解像撮影)で撮るべきか、オリンパスのマイクロフォーサーズ規格なミラーレス一眼カメラ「OM-D E-M1」による深度合成について考えていきたい。
要は「解像力」と「被写界深度」のお話。
- PENTAX K-1 + smc PENTAX-DA★55mm F1.4 SDM
- Olympus OM-D E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL 40-150mm F2.8 PRO
両方にVelbonのミニ三脚を装着して撮影に臨んだ。余談だが、この多段ミニ三脚がとても使いやすい。
PENTAX K-1 リアルレゾリューションシステム
近くの公園敷地内を流れるさらさら小川をリアルレゾリューションでパチリ。もちろん動体補正(MC)はオンにしてある。smc PENTAX-DA★55mmは開放で周辺の光量落ちがあるものの、しっかり絞れば周辺までバッチリ使える事が分かった。
さすがに元データをアップロードすると20MB近くあるため、リサイズして8MB程度にサイズダウンしてある。リアルレゾリューションシステムの痛い点はココで、トンデモ超解像もホームページにアップする際にはダウンサイジング必須というのが泣けてくる。
まあ、それを言っちゃうと高画素機全般に言えることではあるのだけどね。
リサイズ無しの画像は、さすがの解像力。撮って細部を確認していると「こんな所に虫がおったのか…」という小さい被写体もしっかりと描き切っている。動体補正の効き目も良く、さらさら小川はしっかりRRS適用外としてくれている。
問題は、超絶解像力はピントが合っている範囲内でしか適用されてないと言う事。アウトフォーカスの部分はどう頑張っても解像してくれない。
フルサイズの場合、特に被写界深度は低いので奥行きがある場合にパンフォーカスを狙うならガッツリ絞りこまなければならない。絞り込めば回折現象は避けられないので、高解像とは逆行してしまう。適切な絞り値の選択が必要なので、RRSを使う前にデジタルプレビュー等で被写界深度の確認をすると良いだろう。
OM-D E-M1 深度合成
8枚のフォーカスブラケット撮影をボディ内で深度合成する機能。パソコンに落とし込んで合成するソフトは色々あるが、ボディ内で完結出来るのはE-M1やオリンパスの防水カメラくらいのもの。
35mm判換算で200mmの望遠をF5.6と控えめな絞り値で撮影。ピントは左の小岩に乗っている落ち葉に合わせた。
深度合成モードにするとなぜかタイマーを使うことが出来ない。リアルレゾリューションと同じく複数枚を合成するのでブレを抑制したいのだが、これは思わぬ盲点だった。今回はリモートレリーズを持ち合わせていなかったので、ややブレてしまった。
ややブレではあるものの、手前や奥にもピントが合っている点に着目して欲しい。これは圧縮効果を高めつつ、課題である被写界深度の浅さをカバーしている。
しかし、この深度合成もリアルレゾリューションと同じく一筋縄ではガチッと決まらない。
ピント距離をずらした8枚の写真は、それぞれ異なる被写界深度を持つ。深度合成には「フォーカスステップ」という設定項目があり、1枚毎にどの程度の間隔を開けて撮影するか設定する事が出来る。
数値を高くすれば間隔を広めることが出来、より近接から無限遠までのピントをカバーする事が出来る。数値を低くすればパンフォーカスさせたい距離を狭めることが出来、被写体だけをより鮮明にして背景はボカしたままという芸当が可能。
難しいのは、被写界深度が浅い望遠レンズでパンフォーカスを狙いたい場合の絞り値とフォーカスステプの関係。絞り値を開き過ぎると被写界深度が浅く、1枚毎のピント距離の間にアウトフォーカスした部分が発生してきてしまう。
- フォーカスステップが低い時:近接ー1枚目ー2枚目ー…8枚目ー無限遠
- フォーカスステップが高い時:近接ー1枚目ーピンぼけー2枚目ーピンぼけー3枚目…ピンぼけー8枚目ー無限遠
この設定値のバランスがシビアで調整が難しい。標準レンズならなんてことは無いのだろうけども、望遠レンズで風景パンフォーカスは至難の業だ。解像力を犠牲にしてガッツリ絞り込めば全体的なパンフォーカスを狙いやすくなる。実際の所、リアルレゾリューションと比べるとそもそも解像度では負けるので「パンフォーカスにさせる事」を優先すれば良かったかなと思う。
次の機会では一度ガッツリ絞り込んで撮影してみたいと思う。
別の被写体で撮り比べ
今回はF値を同様にして撮影。それぞれRRSと深度合成を使用している。どちらも結構リサイズしているので拡大してもわかりづらいと思う。
こちらで細部を確認すると、K-1のピントはさすがの高解像。リアルレゾリューションを使った際にボケ味はどうなるのかな?と思ったが、あまり影響は無さそうだ。
と思ったのだが、ダンボーの足元にある草の前ボケにややドットボケが誕生している。リサイズしてしまえば、RRSの効果そのものがスポイルされるので分からないっちゃあ分からないが…。
E-M1の方は前述したように、ブラケットの間隔にアウトフォーカスが存在する不安定な写真になった(笑
フルサイズ・M4/3の特性
大きなボケを作り易いフルサイズと、パンフォーカスにし易いM4/3はどちらも良い個性であり、選択が難しい問題だ。
フルサイズセンサーで深度合成が出来れば言う事無いのだが、手持ちのカメラでは取捨選択をするしかない。
特に被写界深度が浅くなる望遠やマクロ撮影時はフルサイズでRRSを使うか、M4/3でパンフォーカス優先で行くか悩みどころ。
個人的にはパンフォーカス優先。と言うのも、使用する場面がこのブログ上やSNSで投稿する機会が多い為だ。引き伸ばして使ったり、印刷する訳ではないので一見してガチっとピントが合っていた方が分かりやすい。
反面、被写界深度の深い広角?標準においてはフルサイズでも調整し易いのでリアルレゾリューションにトライする。ボケに余裕があり、アウトフォーカスへのグラデーションも柔らかい点はさすがのフルサイズと言ったところ。
K-3IIって良いのでは?
と色々と考えているとAPS-Cってバランスが取れており、RRSを使うには最適なセンサーサイズかもしれない。K-3IIの様な高画素機に耐えうる光学性能を持ったレンズと組み合わせれば最高に違いない。
特に解像方向に重心を置いたHD PENTAX-DA 16-85mmとの相性は間違い無いはずだ。
まとめ
フルサイズのお供にセンサーサイズの控えめなマイクロフォーサーズは相性が良い。と思う。
両方を使うことで、それぞれの良いところと悪いところにハッキリ気づくので、使ってより面白みを増す。現行のマイクロフォーサーズで深度合成が使えるのはE-M1だけだが、下位モデル(ボディもレンズも)にこの機能が来ると面白くなりそうだ。
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