このページではの交換レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8」のレビューを掲載しています。
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
ビルドクオリティ | 金属鏡筒 | |
価格 | 高すぎる | |
サイズ | 望遠単焦点としては素敵なサイズ | |
重量 | 同上 | |
操作性 | フォーカスリングのみ | |
AF性能 | まずまず高速 | |
解像性能 | 安定した解像性能だが抜群ではない | |
ボケ | ニュートラルな描写 | |
色収差 | 軸上色収差がわずか | |
歪曲収差 | 歪曲収差がほぼ完璧 | |
コマ収差・非点収差 | 良好な補正状態 | |
周辺減光 | 光量落ちがわずか | |
逆光耐性 | 中央付近の光源でフレアが発生しやすい | |
満足度 | 高価だが唯一無二の望遠単焦点 |
ポイント
マイクロフォーサーズ用設計としてはイメージサークルが大きく、フレーム全域の解像性能や収差の補正状態が良好かつ均質的。口径食も小さいので癖が少なく使いやすい望遠単焦点レンズ。
高性能・高ビルドクオリティのレンズだが、防塵防滴非対応・操作がフォーカスリングのみ、フード別売りなどを考慮すると価格設定が高め。ただし、このレンズに代わる同じ焦点距離のレンズは存在せず、気になったら買うしかない貴重な大口径望遠単焦点。
Index
まえがき
概要 | |||
---|---|---|---|
レンズの仕様 | |||
マウント | MFT | 最短撮影距離 | 0.84m |
フォーマット | 4/3 | 最大撮影倍率 | 0.1倍 |
焦点距離 | 75mm | フィルター径 | 58mm |
レンズ構成 | 9群10枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F1.8 | テレコン | - |
最小絞り | F22 | コーティング | ZERO |
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ64×69mm | 防塵防滴 | - |
重量 | 305g | AF | STM |
付属品 | |||
説明書・保証書 |
2012年に登場した比較的古いマイクロフォーサーズ用の望遠単焦点レンズ。マイクロフォーサーズで「75mm」の焦点距離はフルサイズ判換算で「150mm」に相当する望遠レンズです。AF対応の明るい望遠単焦点レンズとしは焦点距離が最も長く、2021年現在でもその特徴は健在。
レンズ構成は9群10枚で、そのうち3枚のEDレンズと2枚のHRレンズを贅沢に採用。大口径レンズで発生する軸上色収差や球面収差を良好に補正する設計。
外装は金属製で堅牢性と高級感を両立しています。ただし、レンズフードが付属していないので、遮光性や前玉保護の観点からなんらかの対策を実施する必要があります。レンズフードは別売り7千円と高いのが悩ましいところ。
価格のチェック
新品相場は9万円前後。M.ZUIKO PREMIUMシリーズのレンズとしては最も高く、一部のPROレンズよりも高価です。75mmは他に選択肢がない魅力的な焦点距離ですが、価格を正当化できるのかよく考えたいところ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 ブラック | |||
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M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 シルバー | |||
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
最近のオリンパス製レンズのように黒を基調とした化粧箱ではなく、少し情報量が多いカラフルなデザインの箱。箱に描かれているレンズはシルバー・ブラックどちらのモデルでも「シルバー」に固定されているので注意が必要です。小売店が出荷する際に取り違える可能性大。ちなみに私はシルバーを購入したはずがブラックモデルが届きました。
レンズ本体はダンボールで間仕切りされたうえで緩衝材で保護されています。
レンズ本体の他に、キャップ・説明書・保証書が付属しています。レンズフードは付属していないので、必要であれば用意しておく必要があります。純正レンズフードは7000円と高価なので注意が必要。
外観
オリンパス製PREMIUMレンズとしては珍しく、しっかりとした金属製外装を採用。レンズマウントからフィルターソケットまで金属製の頑丈な作り。フォーカスリングも金属製ですが、AF/MFスイッチやL-Fnボタンはありません。
ハンズオン
全長69mm、重量305gと、換算150mmの明るい望遠単焦点レンズとしては非常に小型軽量。実焦点距離が同じAPS-Cレンズやフルサイズ用レンズと比べても少しコンパクトなレンズに仕上がっています。ハンディな望遠レンズを携帯性できるのはマイクロフォーサーズの強みと言えるでしょう。E-M1系やLUMIX G系と相性が良いのはもちろんのこと、PENやGF・GMなどコンパクトなカメラボディに装着しても取り回しに苦労しません。
前玉・後玉
フィルター径は58mm。他にも一部の望遠ズームや高倍率ズームで採用しているフィルター径ですが、46mmや62mmと比べると汎用性は低め。フィルターワークが必要な場合はステップアップリング経由で62mmや72mmのフィルターを使うのも一つの手。
オリンパス製レンズは前面にフッ素コーティング処理が施されていることが明記されていません。水滴や汚れの付着が想定される場合はプロテクトフィルターを装着しておくのがおススメです。また、レンズフードが同梱していないので、前玉保護の観点からもプロテクトフィルターは装着しておいたほうが良いかも。
レンズマウントは4本のビスで固定されています。防塵防滴仕様ではないので、ゴム製シーリングは無し。後玉付近は密閉されていないように見えますが、インナーフォーカス駆動のためフォーカシングで移動することは無いはず。
フォーカスリング
幅27mm程度の金属製フォーカスリングを搭載。滑らかに回転しますが、誤操作の予防や精密操作を考慮すると少し緩すぎるかも。フォーカス移動量はリングの回転速度に応じて変化します。ゆっくり回転するとピント全域を移動するには約3回転必要。素早く回転しても270度ほど必要です。
マニュアルフォーカスはバイワイヤでステッピングモーターを駆動しますが、その際の駆動音はゼロと言えず、静かな環境ではノイズが気になる場合があるかも。特に動画撮影時は内蔵マイクで音を拾う可能性が高い。
レンズフード
金属製レンズフードが別売りで販売中のため入手。とても高級感があり、しっかりとしたレンズフードですが、7千円と非常に高価なのが悩ましいところ。
12mm F2や17mm F1.8と同じく、レンズフードの固定はネジ式。ネジでしっかりと固定することができますが、緩いと脱落する可能性あり。レンズ全長を考えると大きなフードですが、逆さ付けに対応しています。
装着例
E-M1 Mark IIIとの組み合わせでバランスは良好。レンズ全長が短いのでフロントヘビーと感じることはありません。コントロールはフォーカスリングのみとシンプルで、操作に迷うことはありません。レンズ直径も大きくなく、グリップとレンズの間には十分な空間があります。
AF・MF
フォーカススピード
決してPROレンズのように爆速とは言えず、至近距離から無限遠までは少し時間がかかります。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指しています。最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。
最短撮影距離が長いことを考えると、フリージングが目立つように見えます。ピント位置が最短撮影距離に近いと画角が狭くなり、ピント位置が無限遠側にあると画角が広くなる。このレンズで動画撮影をする人は少ないと思いますが、静止画でも場合によってはブリージングが目障りと感じるかもしれません。
精度
E-M1 Mark IIIと組み合わせる限りでは、レンズのAF精度に問題があるとは感じません。
MF
前述したとおり、バイワイヤ式ですが十分な回転角を備えているので、フルマニュアルでも精度を確保できるMFが可能です。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディLUMIX G9 PRO
- 交換レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- LUMIX G9 PROのRAWファイルを使用
- ISO 200 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果 2000万画素
中央
絞り開放は「2659」とまずまず良好な性能で、F2.8まで絞ると「3500」に近いとても良好な解像性能を発揮。この性能はF5.6まで持続し、回折の影響が始まるF8でワンランク低下します。F11までは良好な画質を維持しているものの、F16以降は回折の影響が強いので出来るだけ避けたいところ。
周辺
絞り開放はほぼ中央と同じパフォーマンスですが、絞りによる改善速度は中央よりも遅い。中央に追いつくのはF5.6付近。
四隅
中央や周辺と比べると解像性能がワンランク低下するものの、絞ることで徐々に中央や周辺に追いつきます。F4で周辺部とほぼ同じとなり、F5.6?F8で均質的な結果を得ることができます。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F1.8 | 2659 | 2440 | 2062 |
F2.0 | 2764 | 2306 | 2017 |
F2.8 | 3425 | 2769 | 2279 |
F4.0 | 3495 | 3007 | 2812 |
F5.6 | 3412 | 3179 | 2953 |
F8.0 | 2960 | 2988 | 3115 |
F11 | 2857 | 2764 | 2971 |
F16 | 2331 | 2332 | 2199 |
F22 | 1702 | 1839 | 1667 |
実写確認
最新設計のレンズと比べると絞り開放付近の収差補正が完璧と言えず、若干ソフトに見えます。ただし、四隅まで顕著な性能低下が無く、使いやすい画質に見えます。F2.8からF4で全体的にコントラストが改善し、F5.6でピークとなる。
テスト結果 8000万画素
中央
収差の影響があるものの、絞り開放から良好な解像性能を発揮。F2.8まで絞るとこの解像力チャートで測定できる限界値に到達します。
周辺
中央と比べて(ハイレゾモードによる)絞り開放の伸びが悪いものの、ピークのF4に向かって絞ると急速に改善します。F2.8で「4000」に迫る優れた結果となり、F5.6で中央に近い性能を獲得します。
四隅
絞り開放ではハイレゾモードの効果がほとんどありませんが、周辺と同じく絞ると急速に改善します。F4?F8の絞り値で優れた性能、F5.6でフレーム全域がピークとなる。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F1.8 | 3836 | 2831 | 2129 |
F2.0 | 4259 | 2882 | 2198 |
F2.8 | 4631 | 3853 | 2922 |
F4.0 | 4645 | 4451 | 3820 |
F5.6 | 4729 | 4451 | 4437 |
F8.0 | 4175 | 4220 | 3954 |
F11 | 3419 | 3579 | 3431 |
実写確認
ハイレゾモードを活用するのであれば、少なくともF2.8まで、出来ればF5.6まで絞りたいところ。
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2021年5月14日 晴れ・微風
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:Leofoto G4
- カメラ:LUMIX G9 PRO
- 露出:絞り優先AE・ISO100固定
- RAW現像:Adobe Lightroom Classic CC
テスト結果
中央
絞り開放から良好な解像性能を示しています。 軸上色収差によるコントラストの低下がわずかにあるものの、 シャープネスは非常に良好。 一段絞っても解像性能に大きな変化は見られませんが、 色収差が改善しコントラストが向上します。 それ以降で画質の変化は小さいものの、F5.6でピークを迎えます。F8以降はパフォーマンスが低下するものの、F11までは実用的な画質を維持。F16以降は回折の影響が強くなるので視写界深度が足りない場合以外では避けた方がいいでしょう。
周辺
絞り値全域で中央とほぼ同じ傾向が見られます。特筆すべきことはありません。
四隅
中央と比べると絞り解放のシャープネスがいくらか甘く見えます。 F2.8まで絞るとシャープネスとコントラストが大きく改善し、F4?F5.6で画質のピークを迎えます。F8はF2.8と比べて良好な画質であり、被写体深度が必要であればF8までは躊躇なく絞り込んで問題ありません。F11で回折の影響が強くなるものの、それでも絞り開放付近のパフォーマンスは備えているように見えます。中央と同じくF16以降は必要な時以外は避けるのがお勧めです。
実写で確認 2000万画素
細かいことを言わなければ、絞り開放から均質性の高い解像性能が得られます。四隅まで完璧を求めるのであれば、少なくともF2.8まで絞るといいでしょう。それ以降はF8まで非常に高い解像性能をフレーム全域で得ることができます。F11も実用的な画質を維持しており、 本当に避けるべきはF16?F22のみ。
実写で確認 8000万画素
通常の撮影と同じように中央領域は絞り開放から非常にシャープな描写。 最高のパフォーマンスを得たいのであれば、F2.8まで絞るべし。F8までは非常に良好な結果を期待できますが、F11はハイレゾモードの恩恵が薄くなります。 周辺部も同じ傾向。
四隅はパフォーマンスはいくらか低下し、絞り開放では8000万画素の解像性能を活かすことができません。少なくともF4まで、ベストを尽くすのであればF5.6まで絞りたいところ。
撮影倍率
最短撮影距離は0.84m、その際の撮影倍率は0.1倍(フルサイズ判換算で0.2倍)です。焦点距離を考慮すると一般的な撮影距離ですが、寄りやすいレンズが多いマイクロフォーサーズシステムとしては比較的寄りづらいレンズ。
それでもフルサイズ判換算で0.2倍となり、一般的な被写体のクローズアップに十分な接写性能を備えています。
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられます。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないと思いますが、近距離では収差が残存している場合もあります。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要です。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか手段がありません。
実写で確認
最短撮影距離付近でも特に大きな問題はないように見えます。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。
実写で確認
絞り値全域で良好に補正されています。マイクロフォーサーズはRAWにレンズ補正用プロファイルが格納されているため、Adobe Lightroomでは自動的に補正が適用されます。現像時に問題となることは無いでしょう。また、プロファイルが適用されない現像ソフトでも良好に補正されています。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
実写で確認
ピント面の前後に色づきが発生しており、色収差の補正が完璧では無いことが分かります。このレンズの価格設定を考えると、少し目立ち過ぎている印象。もう少し高度な補正状態を期待していました。とは言え、極端なコントラスト以外で目立つシーンは少ないはず。収差は1?2段絞っても残存し、完璧に補正するためにはF5.6?F8まで絞る必要があります。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と感じます。逆に、「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写を好ましくないと感じています。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。また「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在します。
実写で確認
ピント面前後のボケにこれと言った違いは無く、非常にニュートラルな描写に見えます。個性的な描写ではないものの、汎用性の高い使いやすいボケ。ただし、軸上色収差の補正が完璧ではないため、ピント面前後にマゼンダとグリーンの色付きが発生しています。コントラストが高い前景・後景がフレームに入ると、色収差が原因となってボケが少し騒がしくなる可能性あり。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
非球面レンズを使用していないので、輪線ボケや厄介なムラの発生はありません。玉ボケの内側はとても滑らか。口径食はゼロではないものの「75mm F1.8」のスペックを考えると影響は小さい。わずかな口径食の影響はF2.8まで絞ると解消します。
絞り羽根は9枚円形絞りを採用しており、絞っても玉ボケが角ばることはありません。
ボケ実写
至近距離
被写界深度は非常に浅く、後ボケは大きめ。ピント面前後に軸上色収差と思われる色付きが発生しているものの、気にならない程度に抑えられています。
F2.8まで絞ると軸上色収差の影響が抑えられ、ピントのクリアさが増します。ボケは小さくなるものの、この撮影距離であれば特に問題ありません。
撮影距離2m
撮影距離が長くなると、必然的にボケが小さくなり、後ボケの輪郭が少し見えるようになります。しかし、依然として騒がしい描写ではありません。
F2.8まで絞るとボケが小さくなり、F4で背景が少し騒がしくなります。F5.6?F8でも十分なボケ量ですが、F11は避けたほうが良さそう。
撮影距離3m
さらに撮影距離を長くしても良好な描写を維持。とろける様なボケとは言えないものの、卒の無い綺麗なボケに見えます。絞り開放から口径食の影響が少なく、四隅まで安定した描写が特徴的。
1?2段絞るとボケが小さくなり、少し騒がしく見えるものの、悪目立ちする要素はありません。
全身ポートレート?顔まで
全高170cmの三脚を全身像と仮定し、全身・上半身・バストアップ・顔のクローズアップとして撮影。
全身ポートレートでも被写体と背景を十分に分離できる程度のボケがあります。マイクロフォーサーズでこのボケ量は貴重。ボケは硬くも柔らかくもありません。優等生的な描写で使いやすいものの、個人的にはもう少し後ボケにこだわって欲しかったところ。また、軸上色収差の影響により若干の色付きが見られます。場合によってボケ量を犠牲にしてでもF2.2?F2.8まで絞ったほうが良い場面もあるはず。とは言え、口径食の影響が小さく、四隅まで均質的なボケが得られるのは長所と言えるでしょう。
上半身程度の撮影距離では、背景の輪郭が溶ける程度にボケが大きくなります。軸上色収差の影響が限定的となり、ピント面前後の騒がしさも薄く使いやすい。
さらにバストアップ・顔のクローズアップでは背景が分からなくなるほどボケが大きくなる。
全体的に見て、マイクロフォーサーズとしてはボケを大きくできるレンズですが、「ボケの質」で言えば球面収差を微調整しているF1.2 PROのほうが上手。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
実写で確認
極僅かな糸巻き型歪曲ですが、直線的な被写体を入れたとしても補正無しで問題ないように見えます。前述したように、レンズプロファイルで自動的に補正されるので心配する必要はありません。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
実写で確認 最短撮影距離
絞り開放で僅かな光量落ちが発生するものの、F2.8までには解消しています。明るい望遠レンズとしては光量落ちが少なく、イメージサークルが比較的大きいのではないかと予想。
実写で確認 無限遠
最短撮影距離と同じく、F2.8までに光量落ちはほぼ解消します。F2.8で僅かに残っている光量落ちもF4までに無くなります。全く問題ありません。
コマ収差
コマ収差とは?
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
テスト結果
絞り開放付近で僅かに収差が残存していますが、F2.8まで絞ると解消します。全く問題ありませんが、個人的にはもう少し良好な結果を期待していました。
逆光耐性・光条
中央
強い光源をフレーム中央に配置すると、フレアとゴーストが発生します。影響は絞り値全域で発生し続けるため、これを回避するには光源を動かすしかありません。ただし、ゴーストの状態や色は極端に目立つものではないので、これも「味」と割り切ってフレアやゴーストを写真に取り込むのは一つの手。ただし、F5.6以降は隠れていたゴーストが顕在化しやすいので、F4くらいまでに抑えておいたほうが良いかもしれません。
隅
僅かにゴースト(フレーム左下)が発生しているものの、全体的に見るとコントラストを維持した良好な逆光耐性。小絞りを使ってもゴーストは目立ちにくい。
光条
光条が発生するのはF8以降。光の筋が強く見えるのはF16?F22ですが、回折の影響を考慮するとF11付近までに抑えておきたい。
イメージサークルを確認する
ここまでレビューしてきた流れで「このレンズはイメージサークルが大きいのではないか?」と言う結論に至る。そこで、実際にフルサイズミラーレスにアダプター経由で装着した結果が以下の通り。
ご覧のように、APS-Cをほぼカバーするイメージサークル。マイクロフォーサーズ用の4/3型センサーは余裕でカバーしていることが分かります。これにより、安定した解像性能とコマ収差補正・弱い口径食などを実現しているものと思われます。
総評・作例
肯定的見解
ココがポイント
- 換算150mmのレンズとしては小型軽量
- 金属製鏡筒・金属製フード
- 近距離でも安定した解像性能
- 絞った際のピークの解像性能
- 倍率色収差の補正が良好
- 軸上色収差が僅か
- ニュートラルなボケ描写
- 口径食が弱く、非球面レンズの影響がない
- 歪曲収差が目立たない
- 周辺減光が目立たない・改善速度が早い
際立った解像性能・諸収差の補正状態では無いものの、小型軽量な望遠単焦点としては全体的に良くまとまっていると思います。特に大口径レンズとしては口径食・周辺減光が少なく、扱いやすくなっているのがGood。軸上色収差の補正は完璧と言えませんが、特に問題となるシーンは多くないはず。
批判的見解
ココに注意
- 高価
- 箱のデザインがブラック・シルバーで共通
- レンズフードが別売り、しかも高い
- 防塵防滴非対応
- フッ素コーティング非対応
- コントロールはフォーカスリングのみ
- ブリージングが少し目立つ
- 撮影倍率が平凡
- 絞った際の逆光耐性
やはり問題は価格設定。明るい望遠単焦点としては面白い選択肢ですが、新品で10万円に近い価格設定は悩ましいところ。高価ながら、防塵防滴に非対応だったり、コントロールがクラッチの無いフォーカスリングのみだったりと残念。極めつけはレンズフードが別売りであること。確かにレンズフードは立派な作りで高価となるのも理解できます。しかし、レンズ本体の価格設定を考慮すると付属して欲しいところ。遮光性・保護性の両面から、必須だと思うのです。
総合評価
唯一無二の望遠単焦点として活躍が期待できる反面、マイクロフォーサーズ用レンズとしては高価で、価格のわりに機能性や操作性が見劣りするのが残念。イメージサークルが大きいので、フレーム全体の均質性が高く、諸収差の補正が良好であることは評価したいポイント。
購入早見表
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作例
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