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TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro レンズレビュー 完全版

このページでは銘匠光学の交換レンズ「TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro」のレビューを掲載しています。

TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macroのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 このカテゴリでは安価
サイズ 適度なサイズ
重量 適度な重量
操作性 ティルト・シフト操作に欠点あり
AF性能 MF限定
解像性能 F2.8がややソフト、均質性は高い
ボケ 収差が少ない、口径食が少ない
色収差 シフトしない場合は非常に良好
歪曲収差 問題なし
コマ収差・非点収差 目立たない程度
周辺減光 シフトしない場合は非常に良好
逆光耐性 過去のTTArtisanよりは良好
満足度 コスパ良好の2倍TSマクロ

評価:

この価格で2倍マクロ・ティルト・シフト

6万円台で入手できる2倍マクロレンズ。2倍マクロレンズとして考えても手ごろな価格を実現しており、おまけにティルト・シフト撮影も可能と驚きの機能性。操作性や逆光耐性は気になるものの、光学性能は良好で、ボケも滑らかで綺麗。フルマニュアルレンズで問題なければ、コストパフォーマンスが非常に高い。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 適度な解像、滑らかで綺麗な後ボケ
子供・動物 MFで動体は厳しい
風景 絞れば均質性の高い解像性能、逆光耐性に注意
星景・夜景 まずまず良好な補正状態、周辺減光が目立たない
旅行 MF100mmの旅行は難易度が高い
マクロ 2倍マクロまで対応、優れた光学性能
建築物 可動範囲は狭いもののシフト撮影に対応

まえがき

TTArtisan初のフルサイズ対応望遠マクロ。そして同時にティルト・シフト撮影に対応した便利なレンズです。市場を見渡しても競合するレンズはほとんど存在せず、検討するとしたらキヤノン「TS-E90mm F2.8L Macro」「TS-E135mm F4L Macro」ですが、135mmは既にディスコン。TS-E90mmは30万円に近い非常に高価なレンズです。比較して本レンズは6万円ちょっとの手ごろな価格で入手可能。電子接点のないフルマニュアルレンズですが、望遠ティルトソフト撮影を体験してみたい人にとって面白い選択肢と言えるでしょう。単純に2倍マクロレンズと考えても非常に安い。

レンズの仕様
発売日 2023年5月15日 初値 ¥62,820
マウント E / X / Z /RF 最短撮影距離 0.25m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 2倍
焦点距離 100mm フィルター径 67mm
レンズ構成 10群14枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F2.8 テレコン -
最小絞り F22 コーティング 不明
絞り羽根 12枚
サイズ・重量など
サイズ φ72×149mm 防塵防滴 -
重量 836-854g AF MF限定
その他 ±8度ティルト・±6mmシフト
付属品

レンズ構成は10群14枚で、そのうち6枚に高屈折レンズを採用。絞り羽根は12枚と多く、絞っても玉ボケの形を維持しやすいレンズとなっています。フォーカシングによる全長の変化はないものの、全長149mm、重量が854gと大きく重いのが悩ましいところ。

価格のチェック

国内代理店経由でも6万円ちょっとで入手可能。前述したように2倍マクロレンズとしても非常に安く、さらにティルトシフト撮影まで可能。価格設定を考慮すると驚くほど機能的です。

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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

シンプルなデザインですが、銘匠光学らしいファブリック調のカバーで装飾されています。高級感があるとは言えませんが、他社と差別化は出来ているように見えます。

レンズ本体はウレタン製の緩衝材で保護されています。

説明書などを除くと、レンズ本体の他にキャップとコールドシューアダプタが付属。レンズケースやポートはありません。

外観

外装は総金属製のしっかりとした作り。無駄な装飾はなく、表面にはピント距離や被写界深度、撮影倍率など必要な表示があるのみ。全ての表示は外装にプリントしただけではなく、刻印したうえで塗装が施されています。

レンズキャップは金属製のかぶせ式が付属。内側には滑り止め用のフェルト生地が張り付けられ、程よい抵抗感で脱着が可能。簡単に脱落しない程度には固いです。

ハンズオン

総金属製の100mm F2.8 2倍マクロ&ティルトシフトレンズと言うこともあり、重くて大きなレンズです。できることやスペックを考慮すると小型軽量と言えるかもしれませんが…。

前玉・後玉

67mm径のねじ込み式フィルターに対応。接写性能が高く、フッ素コーティング未処理であることを考慮するとプロテクトフィルターの必要性は高い。また、お世辞にも逆光耐性が良好とは言えないため、社外製のレンズフードもおススメ。リアフォーカス式のため全長の変化はりませんが、後玉はフォーカシングで前後に移動します。

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レンズマウントは金属製。電子接点はなく、カメラ側に情報が全く伝達されないフルマニュアルレンズです。内部は反射を抑えるためのマットブラックの塗装が施されています。

フォーカスリング

金属製の幅広いフォーカスリングを搭載。マクロ撮影に適した少し重めの抵抗感で滑らかに回転します。安いレンズに多い、緩々のフォーカスリングとは雲泥の差がある操作性と言えるでしょう。ただし、フォーカスリングのストロークは90度と短く、その半分は2倍マクロから1/2マクロのピント距離となっています。無限遠側のストロークが非常に短く、微調整が難しい。幸いにも良好な抵抗感と滑らかさでストレスを感じることはありませんでした。

絞りリング

クリック付きの絞りリングを搭載。絞りの範囲は「F2.8」から「F22」まで。F2.8からF11までは1/2段刻みでクリックストップがあり、以降は1段刻みとなります。フォーカスリングと同じく適度な抵抗感で滑らかに操作可能。クリックストップがない中間でも絞りを保持することが出来ます。

ティルト

このレンズの特徴の一つとして±8度のティルト撮影に対応。レンズ側面にはティルト軸をロックするノブと、微調整できるノブの2種類を搭載。ロックを緩めすぎると自重落下しますが、適度に緩めることで自重落下を防ぎつつ調整ノブの操作が可能。ただし、ロック用ノブの繊細な調整が必要。

致命的な問題点として、2方向に可動するティルト軸は「シフト軸のロックレバー(上部写真における左側のレバー)」側に傾けると、鏡筒とレバーが干渉します。レバーのつまみの方向を調整できると良かったのですが、特殊な形状のビスで固定されています。

シフト

±6mmのシフトにも対応。このレンズの価格でティルトとシフトの両機能を搭載しているのは凄い。操作方法はティルトとほぼ同じですが、前述したようにシフト軸のロックはノブではなくレバーで操作します。ノブよりも「ロックを緩める」操作が難しく、基本的には「ロック or リリース」で操作する必要あり。このため、調整ノブがほとんど機能しません。

リボルビング

ティルト・シフトの可動方向を調整するリボルビング機能も搭載。初期状態から左回転90度のリボルビングに対応しています。一回転(360度)しないのは残念ですが、15度ごとにクリックストップあり。ロック解除用の赤ボタン(下部写真を参照)を押しながら回転する必要があります。

ちなみに側面の「赤い点」はマウントの装着位置を表しているのではなく、リボルビング用。紛らわしいので注意。

コールドシューアダプター

このレンズの個性的な機能として、付属のコールドシューアダプタをレンズ先端に装着することが出来ます。社外製の外部マイクやLEDライトなどを装着可能。シューアダプタ用のネジ穴は90度ごと4か所に配置。

装着例

α7R Vに装着。大きく重いレンズですが、グリップが大きなカメラと組み合わせることで手持ちでのマクロ撮影も不可能ではありません。ただし、レンズ側面の各種ノブがグリップの空間と干渉します。手が大きいとノブが邪魔で握り辛く感じるかもしれません。

MF

フォーカス速度

マニュアルフォーカス専用ですが、ストロークが90度と短いので素早い操作が可能。ただし、リングの抵抗感が強いため、スナップ撮影のように素早くピント位置を変更することは出来ません。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離から無限遠で撮影した結果が以下の通り。

スライドショーには JavaScript が必要です。

マクロレンズらしくピント位置によって画角が大きく変化します。

精度

精度を求めると全体的にストロークが短い。せめて180度くらいは欲しかったところ。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:ILCE-7RM5
  • 交換レンズ:TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

テスト結果

絞り開放こそ6100万画素を活かす性能とは言えないものの、1段絞ると全体的に大きく改善。特に中央から広い範囲でシャープとなり、隅も徐々に向上しています。最大限シフトした状態の隅はF2.8からF5.6くらいまで破綻しているものの、F8まで絞ると実用的な画質を得ることが出来ます。

中央

球面収差の影響かF2.8はコントラストが低下しています。ただし、細部まで解像性能は良好。F4からF5.6でコントラストが改善し、F8までピークが続きます。F11以降は回折の影響が発生し、F22はかなりソフトな描写へと変化。

周辺

基本的に中央と同じ傾向。解像性能は中央に近い結果が得られます。

四隅

中央や周辺と比べるとややソフトで、解像性能が低下。F8くらいまで絞ると満足のいく結果が得られるものの、非点収差のような像の流れが僅かに発生しています。細かいこと言わなければ、F4から均質性の高い結果と言えるかもしれません。

シフト後の隅

 絞り開放付近は破綻しているため 数段絞る必要があります。2段 絞ると画質は良好に。 完全に実用的な画質になるのは F 8から。倍率色収差の影響が残るものも カメラで簡単に補正できるため 特に心配 心配する必要はないでしょう。 

数値確認

中央 周辺部 隅TS
F2.8 3407 3019 3393
F4.0 4389 3924 3594
F5.6 4634 4386 3898 3718
F8.0 4648 4483 3992 3870
F11 4161 4147 3851 3780
F16 3783 3860 3521 3371
F22 2589 2488 2485 2514

実写確認

細部を確認すると隅の画質低下が目に付くものの、全体的に見ると均質性の良好なマクロレンズらしい結果が得られます。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2023年6月5日 晴れ・微風
  • カメラ:α7R V
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Camera RAW
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクションオフ

テスト結果

絞り開放は残存収差のためか少し甘めですが、F4まで絞ると大幅に改善。フレーム隅に向かって画質の低下が見られるものの、F8~F11まで絞ると許容範囲内と言ったところ。マクロレンズとしてはフレーム全体の均質性が低め。

中央

F2.8はややソフトですが、F4まで絞ると6100万画素のα7R Vでも満足のいくシャープな描写に変化。F5.6付近をピークとしてF8まで性能を維持しています。F11-F16で回折の影響が見られるものの許容範囲内。F22はソフトとなるので極力避けたいところ。

周辺

F8あたりをピークとして、F2.8から徐々に改善しています。改善速度は遅めですが、ピーク時は中央と遜色のない結果を得ることが可能。

四隅

中央や周辺部と比べると目に見える画質低下。コマ収差によるコントラスト低下と非点収差の影響が強いように見えます。絞ると改善しますが、F16付近まで甘さが残ります。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

倍率色収差はわずかに残存していますが、良好と言える水準で光学的に補正されています。少なくともティルト・シフト未使用の時は良好な結果を得ることが出来ます。シフト時のフレーム端はこれよりも目立ちますが、現像ソフトなどで簡単に修正することが可能。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り開放のF2.8から厳しい状況でもほとんど目に付かない程度に良く抑えられています。このレンズで軸上色収差に悩まされる機会は非常に稀。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

前後にボケ質の差がないニュートラルな描写です。球面収差は良好に補正されている模様。滲むような柔らかいボケではありませんが、縁取りが弱く、滑らかで悪目立ちしないボケと言えるでしょう。軸上色収差による色づきもほとんど目立ちません。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

シフト撮影に対応できるほど広いイメージサークルを備えているためか、F2.8の絞り開放から口径食はほとんど目立ちません。玉ボケの内側は滑らかで綺麗。縁取りはほとんど無いうえ、色収差による色づきも皆無。さらに12枚による絞りは閉じてもだ形状が乱れず、絞り値全域で良好な円形を維持しています。文句なし。

ボケ実写

近距離

ピント面はシャープでコントラストも良好。前後のボケは滑らかで綺麗な描写です。絞りによるボケ質の変化はほとんどなく、被写界深度の調整で大きく絞っても綺麗な描写を維持しています。

中距離

撮影距離が長くなると、ボケの縁取りが僅かに硬くなりますが、特に大きな問題はありません。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、F2.8の絞り開放を使って撮影した結果が以下の通り。

100mm F2.8と言うことで、フレームに全身を入れても大きなボケを得ることが可能。被写界深度のみで被写体を背景から分離することが出来ます。ただし、この際のボケは近距離と比べると少し騒がしい描写。特に周辺部が荒れる場合があるため、絞りによる調整も一つの手。

膝上・上半身から顔のクローズアップまでは特に大きな問題もなく、快適に利用できます。

球面収差

良好な補正状態に見えますが、ボケの縁取りに違いあり。後ボケは縁取りのない柔らかいボケである一方、前ボケは僅かに縁取りが発生。実写ではほとんど気にならない違いがと思われます。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

未補正では極めて僅かな糸巻き型の歪曲収差が残っています。このままでも問題ありませんが直線的な被写体をフレームに入れる際はLightroomの手動補正で「+3」くらいの調整で解消します。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

F2.8から何の問題もありません。絞り値全域で同じ結果が得られます。周辺減光は全く問題ありませんが、2倍マクロ時は無限遠時と比べてシャッタースピードが「2+2/3段」低下します。ISO感度やシャッタースピードの影響を受けやすいため、ストロボやLEDライトで光量を補うのがおススメです。

無限遠

最短撮影距離と比べると周辺減光の影響が少し強くなる。と言っても修正が必要ないくらいの僅かな光量低下であり、基本的には無視できる範囲内。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

完璧とは言えませんが、大きくクロップして初めて識別できる程度の小さな収差に抑えられています。

逆光耐性・光条

中央

TTArtisanと言えば、以前から逆光耐性が弱点でした。そして、このレンズも例外ではありません。強い光源をフレームに入れると、フレームの広い範囲に影響を及ぼすフレアやゴーストが発生します。絞るとフレアは抑えられますが、レンズ間面の反射と思われるゴーストが目立つように。基本的にこのレンズでフレアを抑えたい場合は光源をフレームから外す必要があります。

光源をフレーム隅に外した場合でもF2.8の絞り開放では妙な光の筋が発生。これは少し絞ることで改善します。それ以降はまずまず良好な結果を得ることが可能。

光条

F4から光条が発生しはじめ、F8からF11あたりでシャープな描写へと変化。回折と光条のバランスを取るのであればF16あたりがおススメ。

 

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 100mm ティルトシフト or 2倍マクロとしては手ごろな価格
  • インナーフォーカス構造
  • 2倍マクロ
  • ティルト・シフト撮影対応
  • 金属製の鏡筒
  • コールドシューアダプター
  • 滑らかで適度な抵抗のフォーカスリング
  • クリック付き絞りリング
  • 均質性の高い解像性能
  • シフト時も絞れば良好な解像性能
  • 倍率色収差の補正状態
  • 軸上色収差の補正状態
  • 滑らかで綺麗で口径食の影響が少ないボケ
  • 球面収差の補正状態
  • 歪曲収差の補正状態
  • 非シフト時の周辺減光が少ない
  • コマ収差の補正状態
  • 光条が綺麗

2倍マクロのフルサイズ用 MFレンズとしては安く、さらにティルトシフト撮影にまで対応しているのだから驚き。光学性能は安かろう悪かろうと思いきや、マクロ撮影時も収差をおさえた、しっかりとした光学性能を維持しています。フォーカスリングや絞りリングの操作性も良く、単純に2倍マクロレンズとして購入するのも一つの手。シフト撮影に対応する広いイメージサークルをカバーしており、口径食や倍率色収差などもよく抑えられています。

大口径レンズのような滲みを伴うボケは得られませんが、高度な光学性能がもたらす滑らかで綺麗な描写であることは確か。

悪かったところ

ココに注意

  • 電子接点なし
  • ティルト・シフト用ロック・リリースの間隔が狭い
  • ティルト構造とノブが干渉する
  • リボルビングが90度。
  • 絞り開放のシャープネス
  • 逆光耐性

最も気になるのはティルト・シフト撮影の操作性。ロック・リリースのノブは調整できるようになっているものの、緩めたら自重落下するくらいに緩々となってしまうのが残念。トルクを残したまま緩めるのが難しい。適度なトルクに調整したとしても、位置調節用のノブを操作するとロック用のノブまで回転してしまうのが悩ましいところ。ピント面の傾きを微調整したい時にイラっとすることがありました。

光学性能で気になる部分はTTArtisanでお馴染みの逆光耐性とF2.8におけるシャープネスの低下のみ。2倍マクロで逆光撮影をする機会は少ないと思いますが、光量増加のためにストロボやLEDを使用すると悪影響が発生する可能性あり。銘匠光学はそろそろコーティングの強化を意識して欲しいところ。

総合評価

満足度は90点。
”ティルト・シフト撮影もできる”高性能な2倍マクロレンズ。ティルトシフト撮影をメインで購入する場合は実際に手に取って操作性を確かめることをおススメします。2倍マクロ対応の100mm F2.8として購入する場合、欠点と感じるのは逆光耐性くらいで、他は優れたパフォーマンスを発揮。撮影距離が長い場合も口径食が小さく、ボケも綺麗で使い勝手は良好。飛び道具としてティルトシフト撮影もできると考えると、コストパフォーマンスの高いレンズと言えるでしょう。

購入早見表

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作例

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