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NIKKOR Z DX MC 35mm f/1.7 レンズレビュー完全版

このページでは「NIKKOR Z DX MC 35mm f/1.7」のレビューを掲載しています。

NIKKOR Z DX MC 35mm f/1.7のレビュー一覧

レンズの評価

ポイント 評価 コメント
価格 機能性を考慮すると高くはない
サイズ 機能性を考慮すると許容範囲内
重量 同上
操作性 コントロールリングのみ
AF性能 近距離から遠景まで快適
解像性能 完璧ではないが優れている
ボケ 中距離以降で2線ボケの兆候
色収差 良好な補正状態
歪曲収差 とても良好な補正状態
コマ収差・非点収差 絞り開放で目立つ
周辺減光 遠景でかなり目立つ
逆光耐性 とても良好
満足度 唯一無二の標準大口径マクロ

評価:

唯一無二の標準大口径マクロ

少し厄介な問題があるものの、何でも撮影できる万能の標準単焦点レンズ。
販売価格はZ DX 24mm f/1.7よりも高価ですが、光学性能やクローズアップ性能、ビルドクオリティを考慮すると十分に価値のある選択肢。

マクロ撮影に対応している必要がなければ、他の安価な選択肢があります。
しかし、クローズアップやマクロも楽しめる大口径の標準レンズを探しているのであれな、唯一無二の製品。

While it has a few minor issues, this versatile standard prime lens can handle any shooting scenario.
Its retail price is higher than the Z DX 24mm f/1.7, but considering its optical performance, close-up capability, and build quality, it's a worthwhile choice.
If macro photography isn't a requirement, other more affordable options exist.
However, if you're seeking a large-aperture standard lens that also excels at close-ups and macro, this is the one and only product of its kind.

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まえがき

2025年10月に発売したニコンAPS-C Zカメラ用の新しい交換レンズ。

同システム用としては「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」に続いて2本目となる単焦点。開放F値F1.7を継承しつつ、フルサイズ換算で約50mm相当の標準画角をカバーしています。

比較してサイズが大きめですが、それはマクロレンズとしての機能も備えているため。「ちょっと大きく写すことが出来る」わけではなく、本格的なクローズアップ撮影が可能となっています。接写時は開放F値が大きくなるものの、それでも最大撮影倍率で「F3.2」を維持しているのは魅力的。
(マクロ撮影と実効F値についてはニコン公式ウェブサイトを参照してください)

主な仕様

レンズマウント Z
対応センサー APS-C
焦点距離 35mm
レンズ構成 7群8枚
開放絞り 撮影距離が∞のとき:f/1.7
撮影距離が0.16mのとき:f/3.2
最小絞り 撮影距離が∞のとき:f/16
撮影距離が0.16mのとき:f/22
絞り羽根 9枚(円形絞り)
最短撮影距離 0.16m
最大撮影倍率 0.67倍
フィルター径 52mm(P=0.75mm)
手振れ補正 -
テレコン -
コーティング SIC
サイズ 約70mm×72mm
重量 約220g
防塵防滴 防塵・防滴に配慮した設計
AF STM
絞りリング -
その他のコントロール コントロールリング
付属品 •レンズキャップ52mm LC-52B(スプリング式)
•裏ぶた LF-N1

等倍相当のマクロ撮影が可能なうえ、実効F値 F3.2で撮影できるのは魅力的。防塵防滴に配慮した仕様となっているので、屋外でも使いやすくなっています。ただし、前面レンズにフッ素コーティング処理は施されていないので、水滴や油汚れが想定されるシーンでは保護フィルターの装着がおすすめ。

レンズフードは同梱していないので、別途購入が必要です。フードはZ 28mm F2.8やZ 40mm F2と同じものを利用できるとのこと。

価格のチェック

売出価格は5万8410円。APS-C用のF1.7レンズとしては高め。しかしマクロレンズ兼用の大口径レンズと考えると、適正価格か、安いと感じるくらい。

マクロ機能が必要ないのであれば、VILTROX AF 35mm F1.7がより安価な選択肢。

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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

NIKKOR Zらしい、黒と黄色を基調としたデザインの箱。2018年のZシステム始動時から変化はありません。フルサイズシステムと同じ。

レンズ本体のほかに、通常のつまみ式キャップ、説明書・保証書が付属します。レンズフードは別売りです。

外観

外装は他のNIKKOR Z DXと同じくプラスチック製。コントロールリングはゴム製カバーで覆われています。

鏡筒はマットな黒色で塗装され、傷や指紋が目立たない処理が施されています。表面は少しざらつきがあり、滑り止めの効果。プラスチック外装ながら、手に取った際の感触はとても良好。

装飾は最小限で、ニコンの社名やレンズ名、ブランド名の表示のみ。鏡筒下部にはCEマークや撮影範囲、使用するレンズフードの型番などがプリントされています。製造国はベトナム。

ハンズオン

外装がプラスチック素材で高級感はありませんが、安っぽい質感でもありません。必要十分。

サイズ 約70mm×72mm
重量 約220g

APS-Cの35mm単焦点レンズとしてはサイズが大きく、少し重め。ただし、「F1.7の0.67倍マクロレンズ」という競合製品が存在しないので直接比較はできません。

参考までに他社の標準レンズのサイズと重量を掲載。

前玉・後玉

前面は52mmフィルターに対応するソケットを搭載。バヨネットタイプのレンズフードは装着することができません。52mmねじ込み式のレンズフードを用意する必要があります。

インナーフォーカスタイプのマクロレンズであり、ピント合わせは鏡筒内部でフォーカスレンズが駆動します。「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」のように、内筒が前方へ繰り出すことはありません。

レンズ前面はフッ素コーティング処理されていないので、ダメージが想定される場合は保護フィルターかレンズフードを装着しておくと良いでしょう。

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金属製レンズマウントは4本のネジで本体に固定されています。マウント周囲には防塵防滴用のゴムリングがあります。

フォーカスリング

フォーカス操作やその他制御の操作に利用する幅広のゴム製フォーカスリングを搭載。利用する機能はカメラ側のボタンカスタマイズで変更可能。

適度な抵抗感で滑らかに回転。大きくゴム製のリングは厚手の手袋装着しても快適に操作できそうです。

フォーカス操作時の応答性はカメラ側で設定変更が可能。回転量に応じしたリニアレスポンスや、回転速度に応じたノンリニアレスポンス(感度の変更可能)に切り替えることができます。

リニアレスポンス「90度」でピント全域を素早く操作可能ですが、リング操作にフォーカスレンズの駆動が追い付きません。(素早く90度回転すると追いかけるようにピント全域を移動するので移動量は正確でした)

参考:社外製フードについて

キヤノン用などにあるドーム型のコンパクトなフードが合うかと思って装着してみました。ほぼ問題ありませんが、遠景の場合に四隅が僅かにケラレが発生する可能性あり。素直に一般的な円筒型フードを導入したほうが良いでしょう。

装着例

Z50IIに装着。35mmレンズとしては大きめですが、常用可能なサイズに抑えられています。インナーフォーカスのマクロレンズと考えれば許容範囲内。片手持ちで姿勢を簡単に保持することができ、カメラバッグへの収納も容易。

AF・MF

フォーカススピード

Z50IIに装着してテスト。
フォーカスはステッピングモーター駆動を使用。静かで滑らかに動作します。067倍のマクロレンズと考えるとAF速度は快適で、マクロ域から遠景までフォーカスリミッターの必要性は低い。(レンズ非搭載なので利用できませんが)

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・0.33m・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
(無限遠で少しケラレが発生しているのは前述したフードを装着しているためです)

マクロレンズらしく、撮影距離によって画角が大きく変化します。これは大部分のマクロレンズが同様であり、妥協すべき部分。ただし、一般的な撮影距離では画角の変化が良く抑えられているように見えます。

精度

Z50IIと組み合わせて大きな問題はありませんでした。

MF

コントロールリングの応答性は良好で、感度や操作量はカメラ側で調整可能。MFで使いやすいシステムです。

撮影倍率

0.67倍の撮影倍率に対応。35mm判換算で等倍相当のクローズアップが可能です。
この際の実効F値は「F3.2」で、ニコンZカメラではマクロ域に向かって開放F値が変動します。

開放F値の変動は以下の通り。(撮影距離は実際の長さではなく、カメラに表示されている数値です)

  • 無限遠:F1.7
  • 3m:F1.8
  • 0.7m:F1.9
  • 0.39m:F2
  • 0.19m:F2.5
  • 0.16m:F3.2

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Z50II
  • 交換レンズ:NIKKOR Z MC DX 35mm f/1.7
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

F1.7の絞り開放から、中央・周辺・隅で画質差の少ない結果が得られました。近距離で周辺や隅が低下しやすかったZ DX 24mm F1.7と比べると遥かに良好な結果。少なくとも2000万画素のZ50IIやZ8のDXクロップでは、F1.7からなんの問題もなく使用することができます。

中央

F1.7付近で軸上色収差の影響があるものの、解像性能は絞り開放から良好。F2.8まで絞るとコントラストが少し改善します。

周辺

中央と同程度の結果。やはりF2.8まで絞るとコントラストが少し改善しているようです。解像性能に顕著な違いはありません。

四隅

フレーム隅でも解像性能は良好。F2.8まで絞ると、コントラストが改善するほか、周辺減光を良く抑えることが出来ます。

数値確認

Center Mid Corner
F1.7 2911 2569 2802
F2.0 2890 3239 2890
F2.8 3235 3181 2896
F4.0 3252 3356 3560
F5.6 3186 2796 2715
F8.0 2903 3181 3327
F11 2903 2566 2940
F16 2809 2136 2395

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2025.10.31:小雨 無風
  • カメラ:Nikon Z8
  • 三脚:SIRUI AM324
  • 雲台:アルカスイスZ1+
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Lightroom Classic 現像
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズ補正オフ
    ・レンズ補正オフ

中央

絞り開放(F1.7)から十分シャープな結果ですが、残存する僅かな軸上色収差の影響があるのかコントラストが少し低下しています。これは絞ると改善し、F2-2.8でピークの結果まで画質が向上。

その後はF8以降で回折の影響が始まるまで、同程度の画質を維持しています。

周辺

周辺減光の影響を分けて考えると、F1.7から十分に安定した画質です。中央と同じく、絞るとコントラストが改善し、F5.6付近でピークとなる。

四隅

周辺と同じく、F1.7から十分な解像性能が得られています。F2.8付近まで絞ると周辺減光の影響が緩和し、ほぼピークの状態。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

広い範囲で絞り開放から良好な結果を得ることができました。周辺や隅が少しソフトですが、これはコマ収差の影響によるもの。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り値全域でとても良好な補正状態です。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

完璧な補正状態ではなく、絞り開放付近で若干の色収差が発生します。目立ちにくい軽微な問題ですが、背景とのコントラストが高いと色収差が目立つ可能性あり。F2.8でほぼ解消し、F4-5.6で問題無し。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

未補正で非常に穏やかな糸巻き型。補正なしのままでも実用的な収差量に抑えられています。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

このレンズで最も目立つ収差。F1.7の絞り開放でフレーム周辺・隅の点光源が顕著に変形しています。これは絞ることで改善するので、点像の再現性を重視する場合は少なくともF2.8くらいまで絞っておきたいところ。

球面収差

完璧な補正状態ではないものの、前後のボケ質に大きな違いはありません。ただし、よく見ると後ボケ(左側)の縁取りが強く、ボケ描写に影響を及ぼす可能性あり。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

ニュートラル寄りのボケ質ですが、ボケの縁取りが少し強調されています。状況によっては悪目立ちするかもしれません。

前ボケ

後ボケと比べるとボケの縁取りが弱く、滑らかな描写。より重要な後ボケでこのような特性を見たかったところ。特に「F1.7」の開放F値で背景をぼかしやすいレンズだけに惜しい。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

前述の通り、ボケの縁取りが少し明るく強調されています。十分な大きさのボケであれば問題ないものの、複雑な背景やコントラストの高いシーンでは悪目立ちする可能性があります。これは絞ると改善するので、気になる場合はF2.5-2.8くらいまで絞ると良いでしょう。

ボケ実写

至近距離

縁どりが少し強いものの、近距離でボケが大きい場合は悪目立ちしません。

近距離

撮影距離が長くなり、ボケが小さくなると硬い縁取りのボケが目立つようになります。それでも、このサイズのボケであれば許容範囲内。

中距離

さらに撮影距離が長くなると、縁どりの強さが悪目立ちするようになります。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F1.7)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。

中距離以降の後ボケは悪目立ちしやすいものの、軸上色収差の影響は少なめ。ボケが小さいうちは許容範囲内。上半身くらいのクローズアップでは背景が微妙に騒がしいものの、顔のアップまで近寄ると問題無し。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

実効F値の変化により開放絞りは最短撮影距離で「F3.2」に変化。
F値は大きくなるものの、周辺減光の影響はほとんどありません。影響は軽微で、F4.5まで絞るとほぼ解消します。

無限遠

最短撮影距離とは打って変わって強めの減光効果が発生。F1.7の絞り開放では隅に強い減光が発生し、影響は広い範囲に及ぶ。F2まで絞っても改善は僅かで、F2.8まで絞ると大幅に改善。ただし、F4まで絞っても影響は残ります。

逆光耐性・光条

中央

僅かにゴーストが発生するものの、フレアは良く抑えられています。コントラストの低下はほとんど無く、絞ってもゴーストが少し増えるのみ。

光源をフレーム隅に移動してもほぼ同じ結果が得られました。

光条

手ごろな価格の単焦点レンズですが、絞った際は綺麗な光条が発生します。回折とのバランスを取ることが出来るF8から発生し始め、F11-16でさらにシャープな結果。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 「F1.7」の0.67倍マクロレンズ
  • 防塵防滴に配慮した設計
  • インナーフォーカス構造
  • 快適なAF速度
  • 中央から隅まで一貫性の高い解像性能
  • 穏やかな歪曲収差
  • 近距離で滑らかな後ボケ
  • 逆光時のフレアが抑えられている
  • 絞った際に綺麗な光条が発生

35mm判換算で等倍相当になるマクロ性能を備えたF1.7レンズ。
マクロ域の撮影でもシャッタースピードやISO感度に余裕があり、撮影距離が長い場合でも浅い被写界深度を得やすい。大口径のマクロレンズを探しているのであればこれ一択。

性質を考慮するとサイズや重量は適切に抑えられ、AF性能や光学性能もしっかりとしています。販売価格も許容範囲内に収まっているように見え、おススメしやすい標準マクロレンズ。

悪かったところ

ココに注意

  • レンズフードが別売り
  • スイッチ類がない
  • 独立したコントロールリングがない
  • 光学手振れ補正は非搭載
  • 絞り開放付近でコマ収差が目立つ
  • 二線ボケの兆候がある背景ボケ
  • 無限遠で周辺減光が強い

「F1.7」が最大の特徴ですが、それを活かす場合に注意点がいくつかあります。
周辺減光・コマ収差・2線ボケ。減光はカメラや現像ソフトの補正で修正可能ですが、コマ収差や2線ボケを改善するには絞りを閉じるしかありません(=F値を上げる)。

大口径マクロレンズは万能のように見えて、そうではない。「癖が強い」とまではいかないものの、撮影シーンによっては「おや?」と感じるかもしれません。問題が出てくるのは主に「離れた撮影でF1.7を使う」場合なので、近距離での撮影が中心なら心配する必要はありません。

結論

少し厄介な問題があるものの、何でも撮影できる万能の標準単焦点レンズ。
販売価格はZ DX 24mm f/1.7よりも高価ですが、光学性能やクローズアップ性能、ビルドクオリティを考慮すると十分に価値のある選択肢。

マクロ撮影に対応している必要がなければ、他の安価な選択肢があります。
しかし、クローズアップやマクロも楽しめる大口径の標準レンズを探しているのであれな、唯一無二の製品。

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購入するを悩んでいる人

30mm F1.4 DC DN

NIKKOR Z よりも安くて大口径レンズ。
クローズアップ撮影に非対応で、ニコンほど高い光学性能ではないものの、手頃な価格でF1.4の大口径を楽しむことが出来ます。

30mm F1.4 DC DN Sony E
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30mm F1.4 DC DN Fuji X
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VILTROX AF 35mm F1.7

シグマほど大口径ではないものの、ニコンと同程度の開放F値。比較して半値以下と安く、小型軽量でAPS-C Zカメラとの相性が良好。

光学性能はニコンと比べると、接写時に性能が低下します。しかし、一般的な撮影距離では良好な性能を発揮し、ボケはニコンよりもずっと滑らか。クローズアップ性能が必要なければ、コストパフォーマンスの観点からおススメの一本。

VILTROX AF 35mm F1.7
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TTArtisan AF 35mm F1.8 II

使用経験が無いのでノーコメント。
VILTROX Airと同じく小型軽量で手頃な価格の選択肢。悪くないレンズだと思いますが、VILTROX Airの存在感は強い。

TTArtisan AF 35mm F1.8 II
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PERGEAR 焦点工房    

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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