DPReviewがソニー「α9 III」のハンズオンやグローバルシャッターについて解説。グリップの形状はソニーα7シリーズで過去最高、センサー由来で歪みは無いが、モニター表示では歪んで見えるなど。
DPReview:Sony α9 III: what you need to know
ソニー α9 III
- α9 IIIは、ミラーレスカメラ市場に積層型CMOS技術を初めて導入した(訳注:α9)高速度カメラシリーズの最新モデル。
- この新モデルは、全画素が同時に読み出されるグローバルシャッターを搭載した初のフルフレームミラーレスカメラ。
- メカニカルシャッターを必要とせず、センサーがメカニカルシャッターでできること、それ以上のことをすべて行うことができる。
- グローバルシャッターがα9 IIIの全てではないが、市場にある他のスポーツカメラとは異なる点の多くの要素に関するコアの部分。
グローバルシャッターで歪まない120fps
- 最も顕著な利点は、被写体がフレームを横切って素早く移動しても歪みのリスクがないこと。静止画でも動画でも同じで、動きの速い被写体でも歪む心配なく撮影できる。
- 毎秒120フレームで撮影でき、アクションをキャプチャするためにプリキャプチャできるカメラとしては理にかなっている。
- 非常に高速な連写速度を備えても、被写体が歪んだりすると機能しない。
- ソニーは、120コマ/秒が大部分の撮影で過剰であると認識しているため、ボタンを押している間、最大120コマ/秒の撮影を実行できるようにした。
- この「連写スピードバースト」ボタンは、ニーズに応じて5コマ/秒から120コマ/秒まで設定できる。
グローバルシャッターで任意速度のシンクロ
- 任意のシャッタースピードでシンクロできるようになった。
- ローリングシャッター(電子式か機械式かを問わず)は、露光を開始または終了するのに一定の時間がかかり、カメラのシンクロ速度は通常この速度によって定義される。このポイントを超えてフラッシュを使用するには、ハイスピードシンクロを使用する必要がある。つまり、センサーが部分的にしか露光されていない状態で、フラッシュをパルス発光させて均一な露光を確保する。
- グローバルシャッターはこの問題を完全に解消。全ピクセルが同時にキャプチャされ、1/80,000秒までのシャッタースピードで同調する。
- この短時間露光の能力は、リーフシャッターシステムと同様に、明るい場所でも背景の露出をコントロールでき、なおかつフラッシュを使って被写体を照らすことができることを意味する。
- ソニーのF46RMおよびF60RM2フラッシュは、最高シャッタースピードまで同調可能。
- 他社製フラッシュは、フラッシュ発光時間より短いシャッタースピードを使用すると、明るさが低下することがある。このような場合、フラッシュが発光する前に発生するわずかなディレイを調整することで、フラッシュのピーク出力と露出の重なりを増やすことが可能。
グローバルシャッターでバンディングなし
- LED広告パネルのフリッカーを取り込むリスクがない。
- 全電子式のローリングシャッターを使用した場合に特に顕著なバンディングを回避できる。
- LEDパネルがリフレッシュしている途中を撮影するリスクはあるが、そのリフレッシュ中の複数のポイントを撮影するリスクはなく、したがってバンディングは発生しない。
- LED照明下で作業する場合、光の明滅によって撮影ごとに露出が変化するリスクがあるが、α9 IIIにはアンチフリッカーモードがあり、照明の明滅を測定し、明滅サイクルの最も明るいポイントと撮影を同期させる。
グローバルシャッターへの挑戦
- グローバルシャッターは何年も前から存在したが、スチル・カメラに採用されたものはなかった。主な課題は、瞬時読み出しに必要な追加回路が各画素のスペースを占め、ダイナミックレンジが制限されることだった。
(訳注:Mマウントカメラ「PIXII A1112」がAPS-Cセンサーのグローバルシャッターを搭載。「フルサイズのスチルカメラ」としてはα9 IIIが初)- α9 IIIは、回路とフォトダイオードを別々の層に移動できる積層型CMOS設計を採用しており、グローバルシャッターの問題をいくらか緩和している。
- しかし、α9 IIIのベースISOが250であることは注目に値する。これは、フルウェル容量が少ない(露光中に発生する電荷を蓄える容量が少ない)ことを示唆している。
- この電荷容量の低下は、画素が従来の設計よりも早くクリップ(訳注:いわゆる「白飛び」)することを意味し、したがってベースISOが高いと評価される。
- ベースISOが高くなるのが、読み取りノイズの大きな変化ではなく、ウェル容量の減少の結果であれば、必ずしも高ISO性能に悪影響を与えるわけではない。
- また、グローバルシャッターを実現するために必要な回路が追加されるため、デュアルゲインセンサーではない可能性が高い。
- ソニーセミコンダクタはすでに、フォトダイオード、トランジスタ、読み出し回路を分離した小型センサーを発表しており、DRの制限をさらに緩和するのに役立っているが、今回はそうではないようだ。
- グローバルシャッターを実用化するためには、積層型CMOS製造プロセスを利用する必要があるという欠点がある。
最高120fpsのバースト
- 最も目を引くスペックは、最大120コマ/秒で撮影でき、シャッターを押し切る前から最大1秒分の画像をプリバッファ(プリキャプチャ)できること。
- プリバッファの量は、1秒から0.1秒まで0.1秒刻み、さらに0.01秒刻みで微調整できる。
- ほんのわずかなタイミングのずれシャッターチャンスを逃す場合に利用できる0.05秒のオプションもある。
- 14bit RAWで1.6秒の記録が可能で、6GB/秒のスループットが必要。
これは、このカメラで使用されているCFexpress Type Aカードの最大書き込み速度をはるかに超えているため、明らかにカメラ内に大きなバッファがあることがわかる。- すべてのモードはCFeカードとSDカードの両方で使用可能で、カードの種類によってバッファのクリアにかかる時間が異なる。
- もしソニーがType Aカードの2倍の読み書きチャンネルを持つ、より一般的なCFexpress Type Bカードを使用していれば、カメラは2倍の速さでバッファをクリアできたと思われる。
歪みゼロの動画
- α9 IIIはクロップなしで最大120pの4K撮影が可能。
- 8Kを撮影するのに十分な画素数はないが、60pまたはそれ以下の映像で水平6000画素すべてを使用する。
(訳注:6Kオーバーサンプリング)- 静止画と同様、α9 IIIにはローリングシャッター歪みやバンディングのリスクはなく、動きの多いシーンの撮影に最適。
- 最近のソニーのモデルと同様に、最大4:2:2カラーサブサンプリングで10bitの映像を撮影することができる。
- 既存のα9モデルとは異なり、S-Log3を提供する。通常通り、ベースISOは2000まで3EVジャンプする。
(訳注:α9・α9 IIはS-log3を含めたピクチャープロファイル非搭載)- 魅力的なS-Cinetoneカラーモードもある(ベースISO 320)。
人間工学の改善
- エルゴノミクス(人間工学)は長年ソニーに対する批判の的であったが、同社は世代を重ねるごとに改良を加えてきた。
- ハンドグリップが大幅に改良されている。
- シャッターレリーズの後ろにある2つのカスタムボタンは高くなり、手が届きやすくなった。
- 新しい300mm F2.8と他の大きなレンズを装着して数時間使用したが、これまでで最も快適なソニーのカメラだと感じた。
EVF
- α9 IIIは、ソニーα7R Vと同じ944万ドット(2048×1536ピクセル)のビューファインダーを採用し、0.9倍の高倍率を実現している。
- デフォルトでは、画面は120fpsで更新され、バースト撮影中にブラックアウトすることはない。
- 240fpsのリフレッシュモードもあるが、このモードではパネルの解像度が低下する。
- 興味深いことに、ファインダーと背面スクリーンは依然としてプログレッシブに更新されるため、極端な条件下ではカメラがローリングシャッターを切っているように見えることがある。
- 個々のフレームを調べると、垂直方向はすべてまっすぐで、表示パネル(特に背面液晶)のリフレッシュ速度でわずかに歪んでいるように見えるだけだ。
進化したAF
- 期待通り、α9 IIIにはソニーが近年開発してきた被写体認識AFモードがすべて搭載されている。
- 最新のBIONZ XRプロセッサーと、複雑な機械学習由来のアルゴリズムをクランチするための専用チップの使用により、α9 IIIは被写体追尾の点でα1よりも優れているはずだ。
- ソニーによると、α9 IIIはフレーム内の被写体の大きさがα9 IIの半分でも認識できるという。
- α9 IIIはプロセッサーへの情報を頻繁に更新するため、被写体認識AFトラッキングの最も効果的な例であるとしている。
バッテリーグリップ
- プロ向けのスポーツカメラとして期待されるように、ソニーはα9 III用のバッテリーグリップを用意している。
- VG-C5はNP-FZ100バッテリーを2本収納できるスペースがある。
- カメラを操作する際に中指が届く位置に、2つ目のC5ボタンを含むカメラの主要な操作部が縦方向に配置されている。
- 背面肩部にはツインダイヤル、AF-Onボタン、AELボタン、AFジョイスティックがあり、カメラ本体と同じレイアウトと相対的な位置関係で配置されている。
- ソニーによると、2つのバッテリーは1つのユニットとして扱われ、同時に使用される。
まとめ
α9 IIIはα9シリーズにとって大きな一歩。我々が期待する全てのアップグレード(a7R Vからの最新処理と高解像度ファインダー)と、我々が期待していなかったアップグレード(フルサイズのスチルカメラで初めて真にグローバルシャッターを採用)がもたらされた。
カメラ本体の発売はまだ数ヶ月先なので、今のところJPEG画像の公開にとどめているが、最終的な製品サンプルが入手できた時点で、カメラの画質についてさらに詳しく見ていきたい。
とのこと。
フルサイズセンサーを搭載したスチルカメラでは初となるグローバルシャッター搭載ミラーレスが登場。ローリングシャッター歪みやフリッカーを完璧に抑えることができ、フラッシュに全速同調も可能。さらに120fpsのRAW対応連続撮影やプリキャプチャ機能、クロップ無しの4K 120p対応などなど、静止画・動画ともに高性能なカメラに仕上がっています。
DPReviewによると、期待していた被写体検出AFやスペックアップしたファインダーやコントロールに加え、予想外のグローバルシャッター搭載などを評価しているようです。グリップの形状や周辺のコントロールもかなり良くなっているとのこと。
進化したAFに関する言及は少ないものの、AFエリアの種類が拡張していたり、カスタマイズに対応しているなど、システムとしても改善している模様。また、ボタンを押している間だけ連写速度をブーストできる機能も便利そうです。
- 希望小売価格:オープン価格
- 発売予定日:2024年1月26日(金)
- 予約開始日:2023年11月16日(木)10時より
主な仕様
- イメージセンサー
・タイプ:積層型CMOS(GS対応)
・有効画素数:2460万画素
・ローパスフィルター:あり
・除塵ユニット:あり
・手振れ補正:5軸 8.0段分 協調手振れ補正対応 - プロセッサ:BIONZ XR
- ISO 250 - 25600 (拡張: 下限ISO 125、上限ISO 51200)
- CFexpress Type A / SD UHS-II デュアルカードスロット
- AFシステム:ファストハイブリッドAF
・測距点:759点
・測距輝度範囲:-5EV
・被写体認識:人、動物、鳥、昆虫、車、列車、飛行機
・その他:フォーカスエリア 2種追加 - ドライブ性能:
・メカニカルシャッター:
・電子シャッター:~1/80000秒
(連続撮影時は1/16000秒)
・フラッシュ同調速度:全速同調
・撮影速度:最高約120コマ/秒
・撮影枚数:RAW (非圧縮): 96枚 - ファインダー:944万ドット OLED 0.9倍 25mmアイポイント
- モニター:マルチアングル 210万ドット 3.2型
- フレームレート:STD 60fps / HI 120fps / HI+ 240fps
- 動画:
・4K:~ 120p 280Mbps クロップなし
・出力:XAVC S/ XAVC HS ALL-I対応 / HDMI RAW
・電子IS:対応
・連続撮影時間: - インターフェース:
・USB:SuperSpeed USB 10 Gbps (USB 3.2)
・ヘッドホン:3.5 mm
・マイク:3.5 mm
・HDMI:A
・LAN:1000BASE-T
・シンクロ:あり
・Wi-Fi:802.11a/b/g/n/ac 2x2 MIMO対応
・Bluetooth:5.0
・音声メモ専用のマイクをカメラ背面に搭載 - ストリーミング:~3840 x 2160 (15p / 30p)
- バッテリー
・タイプ:NP-FZ100
・撮影可能枚数:ファインダー使用時: 約410枚、液晶モニター使用時: 約520枚
・充電方法:USB給電・充電 PD対応 - サイズ:約136.1 x 96.9 x 82.9 mm
- 重量:約703 g
- 防塵防滴:対応
- ボディ材質:マグネシウム合金
- 付属品
・バッテリーチャージャー BC-QZ1
・電源コード
・ケーブルプロテクター
・ショルダーストラップ
・ボディキャップ
・アクセサリーシューキャップ
・アイピースカップ
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