DPReviewがOMデジタルソリューションズ(OMDS)へのインタビュー記事を公開。2021年内に「OMDSへ安心して投資できることを証明する革新的な新製品」を投入すると述べています。
DPReview:Interview: Aki Murata of OMDS (Olympus) - 'we’re more flexible now'
2021年にOM Digital Solutions(OMDS)が直面する最大の課題は何か?また、それの対処について
- 昨年6月にオリンパスからカメラ部門を切り離すことを発表した。多くの方が、オリンパスのカメラが将来的に変わってしまうのではないか、研究開発の理念や製品のロードマップが変わってしまうのではないかと心配されたと思う。
- 改めて申し上げるが、医療関連の大企業であるオリンパスから分社化することにしたのは、事業をより適切に管理し、カメラのお客様へベストを尽くすためだ。この新しい会社OMデジタルソリューションズ(OMDS)には、会社の課題に新鮮な視点を与えてくれるシニアリーダーが揃っており、オリンパスカメラ85年の歴史の中で、新たな章のスタートにふさわしいものとなっている。
- 課題はそれを証明することだ。私が何を言おうと、人々がそれを信じることができなければ意味がない。既存のオリンパスユーザーはもちろんのこと、オリンパス以外の写真家、マイクロフォーサーズ以外の写真家へ証明する必要がある。そのようなユーザーに、「このシステムなら安心して投資できる」と思ってもらわなければならない。
- そのための最善の方法は、革新的な製品を導入だ。2021年後半にOMDSからエキサイティングな製品の発表を確認できると思う。それによって、多くの人々がオリンパス将来に安心すると思う。
- 当社のCTO(最高技術責任者)は、2月のインタビューで新製品について言及していたが、その発表が今年中になると確認している。
その発表の内容について、もう少し詳しく
残念ながら詳細はお伝え出来ないが、マイクロフォーサーズの中・上位機種に引き続き注力していくと述べることはできる。
消費者向けデジタル映像市場において、最も大きな未解決のニーズは何か?
- コンパクトカメラの分野では、現在販売されているスマートフォンとの差別化を図るための機能が求められている。また、アクションカメラや360度撮影用のカメラなど、用途に応じたカメラの種類も増えている。
- 当社のToughシリーズは、とても強力な防水性能を持つ耐久性と、非常に優れたマクロ撮影モードを備えている。このシリーズは、ダイバーやカジュアルなビーチフォト、ネイチャーマクロ撮影などに大変重宝されている。
- 専門性の高い分野で活躍されているユーザーのニーズに耳を傾けることで、そのニーズに応えることができると考えており、今後も継続して取り組んでいきたい。
では、今後もコンパクトなToughシリーズをラインナップに加えていくのか?
その通りだ。しかし、ただの防水カメラであれば、必ずしも市場があるとは思えない。すでに防水機能を備えたスマートフォンがある。しかし、先ほど申し上げたように、我々は特定のタイプのユーザー、特定のニーズに応えるためにToughカメラを開発した。それを継続的に発展させていけば、必ずや市場は存在すると思う。
先ほどおっしゃった360度映像のように、OMDSが他の市場分野に進出する可能性はあるのか?
具体的な話はできないが、オリンパス時代に比べて柔軟性が増していることは確かだ。ユーザーを見て、自分たちの技術を見て、それらがクロスオーバーしていれば、それは自分たちが参入すべき市場だと考えている。このため、お客様が何を求めているかを常に考えている。
スマートフォンに対抗するために、カメラ専業メーカーは何をすればいいと思うか?
- これは社内でもよく聞かれる質問で、頻繁に議論している。我々は、スマートフォンと競合する必要性をあまり感じていない。なぜなら、スマートフォンは異なるデバイスであり、異なる特性を持っているからだ。
- レンズ交換式カメラの重要な差別化要素のひとつがレンズだ。さまざまな撮影シーンで最高の瞬間を切り取ることを可能にする、高い光学性能を備えた多種多様なレンズである。これこそが、レンズ交換式カメラの存在意義だ。例えば、動きの速い鳥を遠くから撮影することは、スマートフォンでは絶対にできない。
- つまり、スマートフォンと明確に差別化できる機能を持ったカメラ製品を提供する必要がある。我々は、マイクロフォーサーズのラインアップによって、写真家が最大限の携帯性で瞬間を切り取るために必要なシステムを開発してゆく。そして、スマートフォンが太刀打ちできない、写真家にメリットを提供できない分野に注力してゆく。
- イメージセンサーやプロセッサー、手ぶれ補正などの力を最大限に発揮することが重要だと考えているが、同時にそれらの力を最大限に発揮するためには、AIなどのコンピュテーショナル・イメージング技術を駆使して、瞬間を切り取る可能性を広げていく必要がある。その組み合わせが、我々のカメラをより魅力的なものにしてくれると思う。
- フォーサーズのセンサーサイズは、高速読み出しの可能性を秘めており、コンピュテーショナルイメージングに最適なフォーマットといえる。
- 従来、どのカメラもハードウェアの進化が重要な要素だった。しかし、コンピュテーショナルイメージング技術により、適切なハードウェアと適切なソフトウェアを組み合わせて活用することで、消費者にとって魅力的なシステムとなる。ハードウェアの開発だけでは実現できない撮影体験を提供できると考えている。
- E-M1 Mark IIIの手持ちハイレゾショットモードはその一例だ。今後もこのような技術を使って市場に新しいものを提供していきたいと考えている。
これまでのカメラに搭載してきたコンピュテーショナルフォト機能に対するユーザーの反応は?
- 先ほど、三脚を使わずにノイズの少ない高精細な写真を撮影できる「手持ちハイレゾショット」モードについてご紹介した。E-M1 Mark IIIのユーザーの多くが、これらの機能の存在により、このカメラに興味を持ったことが分かっている。これらの機能を求めて新しいユーザーが増えている。
- 大型センサーと同等の画質を、より小型・軽量なシステムで実現できるマイクロフォーサーズカメラの価値が理解され始めているのだと思う。我々は、ハードウェアとコンピューショナルフォトを組み合わせた新しい分野を常に探しており、近い将来、さらなる発展を見せることができると確信している。
今後、静止画だけでなく、動画の開発にもコンピューショナルフォトの技術を活用できると思うか?
具体的にどことは言えないが、さまざまな側面や可能性を検討している。きっと、もっと面白い機能をご紹介できると思う
フルサイズセンサーに搭載されるようになった積層型CMOSのような技術は、理論上の小型センサーの優位性を損なうものなのか、あるいはそのような技術は4/3にも活用できるのか
将来の具体的な計画について情報を提供することは出来ないが、積層型CMOSのような技術を検討することは可能だ。我々は、常に最新の技術を開発・活用することで、マイクロフォーサーズ規格の可能性を最大限に引き出したいと考えている。小型・軽量のシステムで、機能を拡張し、お客様に最高のイメージング体験を提供するために必要なことをしてゆく。
4/3センサーフォーマットの解像度には現実的な限界があるのか?
- マイクロフォーサーズシステムは2000万画素で限界というわけではない。当社のPROレンズは、1億画素のセンサーでも十分に動作する優れた解像度と性能を備えている。
- しかし画素数の増加は、処理速度や高感度画質に大きな影響を与える。また、機能や特徴が制限されてしまうリスクもある。そのため、解像度、画質、性能、価格のベストバランスを、常にお客様の立場に立って慎重に検討している。
オリンパスはスチール写真に特化した企業と思われているが、一般的にはどのような動画戦略をとっているのか?
- 我々にとって静止画は非常に重要だが、動画を軽視しているわけではない。今後の動画技術の開発について具体的にお話しすることはできないが、レンズ交換式カメラで高品質な動画撮影を行うには、まだいくつかの障壁があると考えている。
- そのひとつが手ブレ補正だ。例えばジンバルを持っていないカジュアルなユーザーも多いので、すぐに高画質な動画を撮影できるオールインワンのパッケージが必要だ。これは我々が実現したいことであり、他のメーカーとは少し異なる。
- 例えば、パナソニックは動画専用の優れた製品をリリースしているが、我々はオールインワンのパッケージを作りたいと考えている。
- 強力な手ブレ補正機能と動画専用AFシステムを搭載したポータブルシステムを提供することで、動画撮影の向上に貢献できると考えている。
- また、上級者向けにApple ProRes Raw動画への対応など、ワークフローを改善するソリューションを提供していきたいと考えている。
150-400mm F4.5 TC 1.25x IS PRO」の一般発売の目標時期は?
- 150-400mmに寄せられた予約の数は信じられないほどだった。世界的に見ても予想をはるかに超えている。通常、この種のレンズは最初の需要が非常に高く、その後数ヶ月で減少するのだが、このレンズの需要を見ると、それが止まらない。
- これは嬉しいことだが、お待たせしているユーザーの皆様には申し訳なく思っている。このレンズは日本で製造されており、品質には非常に気を遣っている。
- 35mm換算で1000mmまでカバーしているが、コンパクトサイズで高解像度と高性能を実現している。それが、これほどまでに高い需要がある理由だ。
- 最大のセールスポイントは、手持ち撮影である。野鳥や野生動物を撮影する人にとって、画質を犠牲にすることなく手持ちで作業ができることが最大の魅力だ。そのため、このレンズは世界中のプロフォトグラファーから大きな期待を寄せられ、予想を上回る売れ行きとなった。
- 1本のレンズを作るのには多くの時間がかかり、残念ながらこのレンズが一般販売される時期を今すぐに言うことは出来ない。当社の生産設備は、需要に応えるためにフル稼働している。
150-400mmはハイエンドやプロのユーザーを対象としており、特に野生動物の写真家を挙げているが、これは現在最も重要な顧客層なのか?
- 我々はフォトグラファーに差をつけたくない。エントリーレベルからハイエンドまでの製品をラインナップしているが、特定のお客様のためだけに製品を開発することは無い。我々のシステムは、大きさや重さの点で明らかに優位性があり、手ぶれ補正は市場で最も優れたシステムのひとつだと考えている。
- 大きさや携帯性を重視する写真家が我々の理想的なお客様だ。
OM-D E-M10 IVのようなエントリーレベルのレンズ交換式カメラ市場は、いつまで続くと思うか?
- 人々が写真への興味を失わない限り、エントリーモデルは常に存在すると考えている。しかし、そうはならないだろう。問題は、エントリーレベルをどのように定義するか、そして人々がそれらのカメラにどのような機能を期待しているかということだ。
- スマートフォンのカメラ機能が進化すればするほど、現在のエントリーモデルとの差は小さくなっていくだろう。そうなると、カメラ市場でエントリーモデルの定義も変わってくるかもしれない。
- これまでは、手軽に使えて画質の良いカメラをエントリーモデルと呼んでいたが、日常的に気軽に使うのであれば、スマートフォンの写真も悪くない。そして、その役割をスマートフォンが担うことになれば、スマートフォンが写真の世界への入り口となるだろう。
- 我々だけでなく、すべてのカメラメーカーは、お客様のニーズを理解し、より多くの人が写真を趣味とするような製品を提供することが大切だ。
では、現在「エントリークラス」と呼ばれているものが、より高度に、より高価に進化していくとお考えか?
確かにその可能性もある。
今後の製品開発を考えるとき、どのような部分を改善・開発することに重点を置いているのか
- 詳細をお伝えせずに、どうすれば意味のある回答ができるかを考えている
- フォーサーズセンサーフォーマットの可能性を最大限に引き出し、センサーが小さいことは私たちにとって有利だと考えている。
- 世間ではまだデメリットだと思われているが、それは間違いだ。将来的には技術が進歩し、センサーの小型化に伴う物理的なデメリットは解消されるだろう。
- そうなれば、最後に残るのはハードウエアの大きさと重さだ。マイクロフォーサーズのシステムは、そこに大きなアドバンテージがある。我々は、センサーの小型化に対する認識を変えるような製品や技術を開発してゆく。
- いつか「センサーが小さいのは不利だと思っていた」と言われる日が来るのを楽しみにしている。
現在取り組んでいるプロジェクトの中で、顧客の要望と自社が利用できる技術の可能性との間で、どの程度の差があるのか
- この質問に明確な答えを出すのは難しい
- 我々は常にお客様の要望と技術の発展の両方を考えている。どちらを優先するかは、その機能によって異なる。
- お客様が機能を求めても、その機能や技術が市場に存在していない場合、ニーズに応えることは難しい。
- 一方で、技術があるからといって、お客様のニーズを考えずに新しい機能を開発することはできない。我々は、お客様の経験やニーズに合った機能を開発し、お客様の撮影機会を増やすことが解決策だと考えている。
この1年間は、世界的なパンデミックやオリンパスのカメラ部門の売却など、さまざまな出来事があった。あなたのチームはどのような影響を受け、どのように調整しなければならなかったか?
- これまでサプライチェーンの問題はあまり無かったが、COVID-19により、多くの渡航制限や遅延が発生し、カメラ市場全体に大きな影響を与えている。我々は供給を慎重にコントロールし、市場の状況を監視してきた。
- 良いニュースは、我々のチームが多くの創造性を発揮して迅速に対応したことだ。「ホーム・ウィズ・オリンパス」のような新しい取り組みや、対面式のイベントの代わりにFacebook Liveを利用するなどしている。
- COVID-19後の市場の回復に伴い、市場環境は改善し始めていると考えており、お客様のご要望にお応えするために新製品を開発している。
- パンデミックの結果、我々が「ローカル・アドベンチャー」と呼ぶカメラの楽しみ方をする人が増えている。例えば、マクロレンズはこれまで以上に人気があり、75-300mmや100-400mmなどの望遠レンズの販売も継続的に増加している。
- また、会議やハッピーアワーのようなバーチャルな集まりにカメラを使う人も増えている。このようなニーズにお応えするために、当社ではウェブカメラソフトのベータ版をリリースした。
- オリンパス/OMDSとしては、パンデミックやカメラ部門の売却など、興味深い1年だったが、チームが困難な時期にどのように調整してきたかを非常に誇りに思っている。
- OMDSへの移行の過程でご一緒したアドバイザーの方々からは「今までで最もスムーズな移行だった」と言っていただいた。その理由は、ブランドや会社に対する信頼感があったからだ。
- お客様と同じように、我々も最初に売却計画の話を聞いたとき、何が起こるのか心配した。しかし、会社が変わるのではなく、所有者が変わるだけだということがわかった。これは、ユーザーの皆様により良い結果をもたらす変化であり、我々にとってもユーザーの皆様にとっても良いことだ。
- また、パンデミックの間、第一線で働くすべての人々に感謝の意を表したいと思う。非常に困難な時期だったが、我々はこの1年で写真がいかに意味のあるものかを知った。
現在のオリンパスのブランドは、どのようなものか?
オリンパスというカメラブランドは、伝統と優れた品質の象徴であると考えている。また、オリンパスには革新と開発をリードしてきた歴史があり、「世界初」の機能を数多く導入してきた。我々の仕事は、スタートアップの精神を持ちながらも、歴史や評判、ブランドの伝統に裏打ちされた、革新的で市場をリードする製品を開発し続けることだ。このことは、社内でもチームに伝えている。我々は、このブランドを構築し続けることに興奮している。
OMDSへの移行に伴い、製品開発のロードマップは変わったか?
いいえ、我々の開発計画にはまったく影響がない。今後も計画通りに新製品をお客様にお届けしてゆく。変更はない。
とのこと。
噂の「サムスンと提携してスマートフォン用のカメラモジュールを作る」と言う話は無かったものの、それっぽい内容の部分がありますね。スマートフォン用カメラモジュールが普及することで、OMDS製品へのエントリーとなる可能性はありそう。
競合他社も言及しているように、OMDSもコンピューショナルフォトに力を入れていくと述べています。この点で大型センサーよりも有利となる可能性はありそうですね。
2021年中の「新製品」について言及しているものの、具体的にそれが何を指しているのかは不明。以前から150-400PROの品薄に拍車をかける新製品が噂されていますが、それが年内に登場するのか、それとも全く別の新製品が登場するのか気になるところ。「安心して投資できることを証明する革新的な新製品」と述べており、個人的には期待しています。
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