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ソニーα7S IIIは新型プロセッサの導入でレスポンスが改善している

DPReviewが正式発表されたばかりのソニー「α7S III」についてハンズオンを公開。ファインダーの解像度は条件によって少し異なる模様。プロセッサの更新でレスポンスが良くなっているみたいですね。

安定した動作で信頼できる動画用ミラーレス

DPReview:Hands-on with the Sony a7S III

  • α7S IIIは、2014年の初代α7S、2015年のα7S IIに続く、動画特化のソニー製ミラーレス第3弾である。前モデルが発表されてから5年が経過しているので、期待が高まるのも無理はない。
  • α7S IIIは間違いなくビデオグラファーや映像製作者に向けたものであるが、ソニーは他の会社とは異なるアプローチでその動画モデルのフラッグシップを開発した。
  • 他のカメラに見られるような、大げさなスペックを避け、高解像度イメージセンサーや6K、あるいは8K動画などの機能を見送っている。
  • その代わりに、古き良き時代の4K動画を採用しており、これは何年にもわたって制作の基準であり続けている。
  • α7S IIIは、これまで以上に大きな数字を追い求めるのではなく、一つのことをしっかりと行うことに焦点を当てている。箱にはまだ1200万画素と書かれているかもしれないが、ボディ内部には多くのエキサイティングな技術が搭載されている。
  • 一見すると、α7S IIIは、a9 IIやa7R IVを含むソニーの「第4世代」ミラーレスカメラと似ているように見える。より優れたエルゴノミクスと見事なバッテリーNP-FZ100に対応している。しかし、もう少し近くで見てみると、いくつかの目に見える(そして目に見えない)違いがある。
  • 最も明らかな変更点は、ソニーα7モデルでは初となるバリアングル式の背面液晶ディスプレイを搭載していることだ。これは、動画撮影者向けのカメラとしては便利な機能である。さらにα7シリーズの液晶ディスプレイと比べても、かなりの機能性を備えている。
  • また、ボディ前面には小型の可視光・IRセンサーを搭載しており、人工光の中でのホワイトバランスの精度を向上させている(RAWフォーマットで撮影されない動画が多いことを考えると、これは特に有用な機能だ)。
  • さらに、放熱性を向上させるため、まったく新しい内部構造を採用している。外からは見えないが、冷却ファンを内蔵しなくても長時間の録画が可能になったという。
  • 背面液晶はより機能的なタッチス操作を備えている。タッチ操作は、トラックへの移動、メニューのナビゲート、再生モードでのピンチ・ズーム・スワイプの操作、そして重要な(カスタマイズ可能な)Fnメニューへのアクセスなど、カメラ操作の大部分をカバーしている。
  • 残念なニュースもある。144万ドットで、2020年のプレミアムカメラとしては驚くほど低解像度なモニターだ。我々はここでもう少しアップグレードを期待していた。
  • 背面液晶画面の解像度は少し足りないかもしれないが、カメラの新しい電子ビューファインダーについては同じことが言えない。944万ドットのOELDファインダーは、これまでのミラーレスカメラで見たことがないほどの解像度だ。
  • ただし、ファインダー解像度の恩恵はモードが限られている。これまでの経験では、再生モードでフル解像度の画面を使用するが、ライブビューで使用する場合は「高画質」モードであってもディテールが失われてしまうように見える。
  • 電子ファインダーは印象的な0.91倍の倍率と41度の視野角を備えている。これにより、25mmと長いアイポイントを得ることができ、メガネをかけている人でもファインダー内の画像全体を見ることが可能だ。
  • より高いアイポイントが必要な場合でも、ディスプレイの中央部分のみを使用することで、視野を少し狭くすることが可能だ(倍率は低くなる)。
  • α7S IIIは1200万画素のCMOSセンサーを搭載している。しかし、これまでのα7Sで見てきたものとは全く異なるセンサーであり「クラスをリードする4K動画」を提供するというソニーのコンセプトを考えると、これは良い選択だ。
  • 新しいセンサーはBSI(裏面照射型)CMOSセンサーであり、従来の12MPセンサーよりも多くの光を集めることが可能だ。さらに、センサー上に位相差検出用画素を搭載し、オートフォーカス性能を向上させているのもα7Sとしては初めてのことだ。
  • ソニーによると、このセンサーはα7S IIに搭載されているセンサーの2倍の読み出し速度を持ち、動画の高フレームレートをサポートし、ローリングシャッター性能を大幅に向上させることができるという。
  • 1200万画素センサーはまた、4K、完全に(2:1)オーバーサンプリングされたFullHD、またはRAW動画であっても、あらゆるモードでセンサーの全幅を使用できる(一部を除く)。
  • 動画はα7S IIIのすべてだ。すべての記録モードで4:2:2 10Bitカラー、4K 120pまで利用できる見事なフレームレートを備えており、最小限のクロップで最大60分間連続して撮影することが可能だ。
  • ソニーは、高ISO感度の動画性能も改善したと主張している。
  • 本格的なビデオグラファーは、ソニーのS-Log2とS-Log3ガンマプロファイルを使用することができ、10Bitモードのおかげでより便利になるだろう(ソニーは、S-Log3を使用すると、15ストップ以上のダイナミックレンジを実現すると主張している)。
  • また、HDRディスプレイへの直接再生を容易にするためのHLG用プリセットも用意されており、それらも10ビットである。
  • 特筆すべき欠落の一つは、DCI4Kフォーマットでの録画機能が無いことだ。すなわち4K UHDのみ対応している。
  • ソニーのミラーレスカメラに搭載されているXAVCコーデックは数年前から変わらず、100Mbps、8ビットの動画を上限としている。動画を主軸としたカメラで大きな飛躍があったとしても驚くべきことでは無い。
  • H.264規格をベースにしたXAVC S記録はそのままだが、最大280Mbpsのビットレートに対応した。さらに、H.265規格をベースにした新しいXAVC HSコーデックも280Mbpsまで対応している。H.265はH.264の約2倍の効率があり、半分のビットレートで同じだけのディテールを記録するか、同じビットレートでより多くのディテールを記録することができる。驚くことではないが、ソニーは後者のアプローチを取った。
  • ソニーはまた、XAVC Sの新バージョンであるXAVC S-Iを発表した。これはコーデックのALL-Iバージョンで、「I」フレーム間の差分情報だけを保存するのではなく、フレームごとに完全な画像データをキャプチャすることを意味している。データレートは600Mbpsで、複雑な動きのあるシーンをエンコードする際に有効だ。
  • S&Q(「スロー&クイック」)モードでは、4K 120pまでのALL-Iを記録することが可能だ。面白いことに、再生速度に応じて最大240Mbpsでデータを書き込む。例えば、120pを録画して24pで再生すると、実効ビットレートは1200Mbpsになる。
  • 欠点はS&Qモードでオーディオを録音することができず、最高のビットレートを得るためにはCFexpress Type Aカードが必要なことだ。
  • ミラーレスカメラではRAW動画が一般的になってきており、α7S IIIも例外ではない。しかし、最近の多くのモデルで見られたものを超え、最大60pのフルワイド、16BitのRAW出力が可能と言われている。
  • 今のところ、α7S IIIを対応する唯一の外部レコーダーはAtomos Ninja Vだ。カメラ出力を12Bit ProRes RAWとしてエンコードしている。映像がどのように見えるかは興味深いところだが、1200万画素センサーを使用するという決定は、6Kや高解像度センサーのサブサンプリングによる品質低下が発生せず、4264 x 2408の映像を扱うだけで良いことを意味している。
  • オートフォーカスは、α7S IIIで大きな改善が期待できる分野の一つだ。
    これまでのα7Sシリーズでは、コントラスト検出方式のオートフォーカスを採用していたため、フォーカスハンチングやウォブリングを避けるためにマニュアルフォーカスが必須だった。
    しかし、ビデオグラファーは常にマニュアルフォーカスを使いたいと思っているというのは俗説であり、ドキュメンタリー撮影のように多くの用途では、優れたオートフォーカスシステムが本当に役に立つ。
  • a7S IIIは、フレームの92%をカバーする759点の位相差AFポイントを含むハイブリッドAFシステムを搭載しており、動画と静止画の両方で被写体を追跡する際に目と顔の検出を自動的に利用可能だ。
  • ソニーは、α7S IIIがさらに優れた性能を実現し、最大30%の目の認識を向上させたと主張している。また、特定のモードでのAF機能の使用が制限されているいくつかのカメラとは異なり、オートフォーカスは4K 120pを含むすべての動画モードで動作する。
  • 外部接続は、動画ユーザーにとって重要だ。そして、ほとんどの人がソニーがα7S IIIの接続性を好ましく思うだろう。
  • 多くのカメラに見られるミニ・マイクロHDMIプラグよりも耐久性と普遍的があるフルサイズのHDMIポートを備えている。さらにカメラの16ビットRAW出力を外部レコーダーに転送するのを容易にする。
  • USB-CとUSB-microの2つのポート備えている。USB-Cポートは、USB 3.2 Gen 1規格に準拠しており、さらにPD充電システムにも対応している。必要に応じて外部電源でカメラを動作させることが可能だ。
  • 他のソニーのαカメラと同様に、α7S IIIは5軸のボディ内手ぶれ補正を搭載、最大5.5段分の手ぶれ補正効果を謳っている。
  • さらに、ソニーが「アクティブモード」と呼ぶ手ブレ補正機能も搭載している。このモードでは、カメラのジャイロスコープのデータと、センサーのネイティブUHD領域(全幅から約1.1倍クロップ)に映像をトリミングすることで、センサーがさらに動き、より高い動作域でブレを補正できるようにしている。
    (訳注:おそらくソニーEマウントはマウント内径が小さいため、センサー可動域が狭いのだと思われます。そのため、センサーの使用領域を減らすことで、マウント内側で手ぶれ補正の可動領域を増やす方向に舵を切ったのではないかなと)
  • α7シリーズカメラとしては初めて、4チャンネルのオーディオ録音が可能となった。これには、2つのXLR入力と3.5mmオーディオ入力を備えたソニーXLR-K3Mが必要だ。4チャンネルオーディオは、オフカメラレコーダーが必要な複雑なオーディオ設定を容易にする。
  • メニューシステムが一新された。従来のメニューはカスタマイズ性が非常に高いにもかかわらず、少し複雑であるという評判があった。
    最も顕著な変更点は、メニュータブが縦に配置され、セクションごとに色分けされていることだ。メニュー項目をタップすると、画面の右側に設定項目のリストが表示される。この新しいレイアウトは、頭で覚える必要がなく、ナビゲートしやすくなっている。画面を行ったり来たりして目的のものを探す必要がなくなった。
  • BIONZ XRはソニーにとって数年ぶりの新プロセッサであり、α7S IIIはソニーのカメララインナップで初の採用となる。デュアルチップ設計により、従来のBionz Xプロセッサと比べて最大8倍の処理能力があると主張している。
  • ソニーによると、Bionz XRはカメラの性能のあらゆる面に対応しており、以前のα7シリーズカメラに見られたいくつかの制約を克服しているという。
    特に、画像処理は他のタスクと競合せず、他のタスクとは別個に処理されるようになった。新しいプロセッサでは動画の高ビットレート化にも対応している。
  • まだ完全にはテストしていないが、第一印象としては、ソニーの前モデルよりも「a7S III」の方が速く、レスポンスの良い操作性を実現していると感じる。
  • ベースISO感度は80に下げられ、必要に応じてISO 40の拡張感度を利用することが可能だ(これはダイナミックレンジの向上を期待できるものではない)。
  • 高感度側では、ISO 102,800で撮影することができ、オプションで409,800まで拡張することが可能だ。
  • RAWおよびJPEG画像に加えて、4:2:0または4:2:2のカラーサンプリングで10BitのHEIFファイル、および最新のHDTV規格と同じBT.2020色空間を使用するHLG静止画モードを利用することが可能だ。
  • ソニー「α7シリーズ」には、従来からデュアルカードスロットが搭載されていたが、「α7S III」では新たにデュアルフォーマットのカードスロットが2基搭載された。標準のUHS-II SDカードに加え、CFexpress Type Aに対応。その名の通り、CFexpress規格の一部であり、サイズが小さいため、最近のキヤノンやニコンのカメラに搭載されているXQDサイズのタイプBのカードとは相互互換性が無い。
  • CFexpress Type AカードはType Bカードよりも理論上の最高速度が低いものの、SDカードよりも小さくて高速という利点がある。
  • すでに高速SDカードに投資している場合、V60またはV90カードでカメラ機能のほとんどが正常に動作するのは朗報だ。しかし、このカメラで最も帯域幅を必要とする記録フォーマットである4:2:2 10BitのS&Q(「スロー&クイック」)モードでは、CFexpress Type Aカードが必要だ。

ソニーのα7Sシリーズは歴史的に非常に高品質な動画を提供してきた。初代α7Sでは完全にオーバーサンプリングされたFullHD、そしてa7S IIではネイティブ解像度のフルフレーム4Kを実現した。どちらも、フルサイズ動画があまり一般的ではなかった時代に、堅牢な低照度動画性能を提供するものだ。しかし、それは2015年のことであり、2020年現在は。多くのカメラ(動画を重視していないカメラでも)は、α7S・α7S IIよりも強力な動画性能を備えている。

α7S IIIは再び市場に挑戦する準備ができているように見えるが、今回はまったく異なる市場だ。ソニーの戦略は、最も見事なスペックシートで勝とうとするのではなく、「人々が求めるものを提供し、非常に信頼できる方法でそれを行う」というものだ。これは悪い戦略ではない。動画画質は全体的に非常に良くなってきているので、安定して素晴らしい結果を出すことができる信頼性の高いカメラは、多くのビデオグラファーの心を掴むことになるだろう。

とのこと。
発熱。放熱性をひとまず置いておき、8K RAWまで対応させたキヤノン「EOS R5」と比べると堅実な進化ですね。ユーザーレビューはこれから増えていくと思いますが、低画素・新しい冷却構造・新プロセッサが実際にどのように機能するのか気になるところ。

高解像ファインダーは状況によって944万ドットのパフォーマンスをフルに発揮できないようなので、これは実際に使って試してみたいですねえ。反面、モニターは従来通りの144万ドットの解像度とギャップが大きい。動画メインのカメラであれば、背面液晶にもう少し力を入れても良かった気がしますが…。(競合他社の210万ドットパネルや、S1Hのようなチルト+バリアングル機構の導入など。もしくは外部モニタ使うか)

個人的には、今回導入された「メニューシステム・レスポンスを改善したプロセッサ・超音波式センサー除塵ユニット・タッチ操作の拡充・バリアングルモニタ」が今後のα7シリーズにおけるスタンダードにならないかと期待しています。

α7S III デジタルカメラデータベース

*予約開始は8月4日、発売予定日は10月9日となっています。

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