DPReviewが正式発表されたばかりのソニー「α7S III」のイニシャルレビューを公開しています。堅実な4K動画機能を備え、他のαシリーズへの導入が期待できるいくつかの新要素があるみたいですね。
これが次世代のα7
DPReview:Sony a7S III initial review
新しい要素
- ソニーは「α7S IIIは信頼性を第一に考えて開発した」と言っている。そのため、8Kやオーバーサンプリングされた4Kを撮影しようとするのではなく、基本的には「ネイティブ」の4Kを撮影することになる。これは、動画に特化していない同社の既存モデルに比べ、細部の映像はやや劣るが、ローリングシャッターの改善と記録時間の延長という利点がある。
- 解像度は変更されていないが、α7S IIIは、従来モデル2機種で使用されているものとは異なるセンサーを搭載している。裏面照射型CMOSを採用し、低照度のパフォーマンスを向上させている。
- 興味深いことに、常用ISO感度「80」を利用可能だ。より広いダイナミックレンジをもたらす可能性を示している。
- 間違いなく改善されているのは、センサーの読み出し速度だ。α7S IIIは、その全幅(4.2K)から最大60pで4K UHDを撮影するか、ネイティブ4K UHD領域(1.1xクロップ)から120pで撮影することが可能だ。
- センサーのみならず、新しいBionz XRプロセッサを搭載した初のαカメラだ。これは2チップの処理システムで、画像処理と動画処理をファイル管理の処理から完全に分離することができるとソニーは主張している。レイテンシが短縮され、処理能力が8倍に向上し、複雑な画像処理が可能となるそうだ。
- 従来の「S」モデルとは異なり、センサー上に位相差検出素子を搭載している。また、顔・瞳・頭を自動的に検出し、適切なピント合わせができる最新のオートフォーカスシステムを搭載している。
- これにより、動画撮影時にも顔検出AFを使用することができ、被写体が背を向けたときにカメラが別の人物にリフォーカスしてしまうというリスクを回避可能だ。
- ソニーによれば、今回の新処理によりAFシステムにおける認識面での性能が向上したという。
- 動画のAFシステムのすべてが静止画のように洗練されているわけではない。しかし、以前のa7Sカメラのコントラスト検出に比べれば、大きな進歩である。動画モードでは、AFの速度や、被写体が切り替わるまでの待ち時間を指定することができる。
- カメラに専用の外付けホワイトバランスセンサーが付いているのは久しぶりだ。(以前はキヤノン、ニコン、オリンパスのハイエンドなデジタル一眼レフに搭載されていた)
スマホでは一般的となってきており、そして今、α7S IIIの前面にも搭載されている。- シーンの変化に応じてホワイトバランスがどのくらい速く反応するかを操作する機能(露出/色|ホワイトバランス|ショックレスWB)と組み合わせることで、動画撮影中に予測できないホワイトバランスの変化を軽減することを目的としている(例えば、ある色が突然フレームいっぱいになってしまった場合など)。
- おそらく、ほとんどのビデオグラファーにとって最も大きな改善点は、圧縮オプションの幅が広がったことだ。(H.264ベースの)XAVC Sエンコーディングの4:2:2 10Bitを得ただけでなく、「XAVC HS」と呼ばれるH.265ベースのバリアントを獲得した。また、XAVC S-Iと呼ばれるH.264 All-Iオプションもある。
- UHD映像(少なくとも60pまで)のほとんどは、センサーの4240ピクセル幅を実質的にフルに使って撮影されている。これは、ソニーがDCI 4K(4096×2160)のオプションを提供する可能性があることを十分に示しているが、そのようなオプションは存在しない。
- α7S IIIのXAVC HS実装で興味深いのは、従来のXAVC Sフッテージと同じビットレートで録画することだ。H.265コーデックは旧来のH.264システムよりも効率的なので、XAVC HSファイルは同じファイルサイズでもシーンのディテールやシーン内の動きをより多く持つはずである。
- 一方、XAVC S の All-Iバリアントも存在する。これはまだ H.264 をベースにしているが、すべてのフレームを「イントラ」フレームとして扱うものだ。「I」フレームの間で何が変化したか差分情報を保存するのではなく、それに関する完全な情報を保存するモードだ。これは主に複雑なシーンで複雑な動きやディテールをエンコードするのに役立つものだ。
- 4K/120pのAll-Iフッテージを録画することも可能だが、これはS&Qのスローモーションモードを経由するので音声が無い。そのため、書き込み速度は240Mbpsに抑えられている。
- オリジナルのa7Sと同様、ネイティブ4Kセンサーとして、または完璧な2:1のオーバーサンプリングFullHDフッテージを提供するセンサーとして見ることもできる。
- 最近の多くのカメラで見られるように、α7S IIはRAW動画を出力して外部レコーダーにエンコードすることができる。ライバルのほとんどとは異なり、ソニーはセンサーから16ビットのデータを出力することを約束している。
- RAWのビット深度はガンマエンコードされたデータのビット深度とは直接比較できず、センサーのダイナミックレンジをすべてキャプチャするのに十分なデータ値を持っていても品質は向上しない。このため、ほとんどのカメラは14ビット以上のRAWを提供しても何のメリットもない。
- しかし、大きな画素を持つα7S IIIは、ピクセルレベルで多くのダイナミックレンジをキャプチャしているため、すべての階調範囲を完全にエンコードするには16ビットが必要になるという初めてのカメラになのかもしれない。外部レコーダーがこのカメラをサポートするようになれば、興味深いことになるだろう。
- このカメラには「静止画と動画の間でどの設定を引き継ぐか、引き継がないか」を設定する機能がある。ホワイトバランスのような設定は、静止画からビデオに引き継ぐと便利だが、設定を分けることで、誤ってログの静止画を撮影したり、1/500秒のシャッタースピードで動画を撮影したりすることなく、静止画撮影と動画撮影の間を行き来することが可能だ。
- α7S IIIはHEIFフォーマットを使用して10ビットの圧縮ファイルを記録することができる。これは、4:2:0または4:2:2:2カラーサブサンプリングのオプションに対応している。我々は、より多くの色の解像度を保持するため、ファイルサイズの10%の増加を選ぶことをお勧めする。
- 2つのチャンネルだけではなく、最大4つのチャンネルのオーディオをビデオに記録する機能を持つ。これを利用するには、XLR-K3Mアダプターを使用する必要がある。
ボディ・操作性
- 新しい944万ドットのOLED EVFを初めて採用したカメラだ。これは2048×1536ピクセルの解像度で、同クラスのカメラに搭載されている577万ドットのファインダーと比較して、各方向の解像度が27%も高く、α7S IIで採用されていたパネルの各方向の解像度が文字通り2倍にもなる。
- その高解像度にもかかわらず、最高120フレーム/秒での撮影が可能であり、世界を生き生きと映し出すことが可能だ。しかし、デフォルトモードでは、フル解像度のままで動作しない「ディスプレイの高解像化」に切り替えると、向上するが、プレビューはまだ再生モードほど詳細には見えない。
- 印象的な解像度に加え、ファインダー倍率は0.91倍と非常に大きいことを意味している。
- アイポイントが25mmということは、メガネをかけていても画面の隅々まで見ることができる可能性が高い。それでも十分でない場合は画面の面積を小さくして使う「ズームアウト」機能が存在する。
- 7シリーズのカメラとしては初となる、バリアングルモニタ式のLCDを搭載している。この価格のカメラにしては異様に解像度が低い(144万ドット)ものの、これまでのソニーのカメラよりもはるかに大きな範囲でタッチ感応性を備えている。
- α7S IIIは3台目のSシリーズカメラだが、a7R IVで導入したエルゴノミクスにより大幅に改善している。より快適なグリップ、大きなグリップ力のあるジョイスティック、目立つAF-Onボタンがそれだ。さらに、露出補正ダイヤルにトグル式ロックも搭載した。
- 他のすべての動画機能に加え、ソニーのミラーレスカメラとして初めて「アクティブ」モードを搭載しました。このモードでは、わずかに(1.13倍)のクロップが適用され、ボディ内手ぶれ補正がケラレのリスクを冒すことなく、より大きな動きをすることができるようになるモードだ。
「アクティブ」モードは、歩行中やエンジンの振動が激しい乗り物の中など、カメラを持って移動しているときのための特別な設計だ。- 本格的な動画撮影に重点を置いているため、パナソニックS1Hと同様にフルサイズHDMI端子に対応している。これは、何かがケーブルに触れても信号を落とす可能性がDタイプの端子より可能性が低い。はるかに耐久性の高い規格だ。
- このカメラには大きなネジ込み式のケーブルリテーナーが付属している。HDMIのヘッドを保護し、ソケットから直角にケーブルを固定することが出来る。他のすべての端子にアクセス可能なままだが、バリアングルモニタの可動範囲をある程度を制限することになる。
- a7S IIIではメニューシステムが一新されている。より複雑なメニューに対応するため、垂直タブをベースに一連のサブセクションに分割されている。また、サブセクション内のオプションも表示されるので、全体構造の中で自分がどこにいるのかを明確に把握しながら、個々の設定を確認することができる。
- 「撮影」と「セットアップ」タブで、7つ以上のサブセクションがあり、すべてのカテゴリンを「一目で」判断することはできない。それでも、以前よりメニュー構造を覚える必要はかなり少なくなっている。
- メニューオプションの基本的なグループ分けは、既存のカメラと一貫しているため、既存ソニーユーザーはすぐに慣れると思う。
- タッチスクリーンを使ってFnメニューとメインメニューの両方を操作できるようになっている。
- ソニーは長い間、複数のメディアに対応したカードスロットを作ってきたが、このカメラではその伝統を復活させている。従来の、SD+メモリースティックではなく、新しいCFexpress Type Aを採用した。CFexpress Aを採用したのは「このカメラが初めてだ。両スロットには、UHS-II SDカードとCFexpress Aカードのいずれかに対応している。
- CFexpress Type Aは、CFexpress規格のV2.0で導入された新しい小型フォーマットだ。既存の(XQDのような)CFexpress Type-Bカードと同じインターフェイス技術を使用しているが、最大読み取り/書き込み速度は遅い。
- 理論的にはType-Bカードほど速くないが、市場に出回っているほとんどのUHS-IIカードよりも速く、最大容量も大きくなっている。
- 2017年に導入されたより大きなバッテリーを搭載している。16.4WhのNP-FZ100バッテリーは、背面液晶で600ショット、EVFを使用して510ショットの撮影が可能だ。
- USB-Cポートを搭載しており、USB PD対応の電源と組み合わせて使用することで、充電や電源供給も可能だ。USB給電中にバッテリーは充電されないので注意が必要だ。
ファーストインプレッション
多くの点で、α7S IIIは「アンチR5」のように見える。動画は、8Kやオーバーサンプリングされた4Kを提供しようとするのではなく、信頼性のためにディテールを犠牲にすることを厭わない。アクティブ冷却がないことを除けば、ほとんどの点でパナソニックのS1Hと共通している。
16ビットのRaw出力は目を引き、一部の人には役に立つだろう。しかし、本当に堅実な4:2:2 10Bitの内部記録は、より多くの日常的な使用で使われる可能性が高いと思う。これは、従来の全αカメラにおける4:2:0 8Bit動画からの大きな飛躍だ。10Bit動画は、シーン内の色調範囲ごとに4倍以上のデータ値を提供するため、Logフッテージをより柔軟にしてくれる。4:2:0から4:2:2への移行は、よりディテールのあるフッテージを得られるはずだ。
120pの撮影が可能になったことで、ビデオグラファーは美しいスローモーション動画を撮影できるようになった。そして、30pや24pの長時間撮影が可能になったことで、ほとんどの作品に大きな価値がもたらされるだろう。熱対策のためにヒートシンクをアピールした最初のメーカーではないが、ファンなしで1時間以上の高ビットレート4Kを約束できる数少ないカメラの一つである。
α7S IIIを購入する多くの動画ユーザーは、必ずしも動画でオートフォーカスを使うことに慣れているわけではないだろう。しかし、新しいカメラのオートフォーカスがα7R IVのように頼りになるものであれば、それを使い始めるキッカケとなるかもしれない。
静止画はどうだろう?低照度下での撮影には期待したいが、昼夜を問わず他のカメラよりも優れているとは限らない。多くの静止画撮影では、ディテールが劣るだけだ。だからこそ、静止画カメラとしての長所を探すのが難しい。間違っているかもしれないが、α7Sの低照度の強は、デュアルゲインセンサー設計から来ていることが判明し、大きなピクセル(低画素からくる画素ピッチの広さ)を持っていることが直接的な原因ではない。
かなりニッチで特殊なビデオカメラだが、このカメラがEマウントシステムに投資している人々を興奮させると思っている。次世代のソニー製カメラがどのようなものになるか、可能性が高いかについて多くを語っているからだ。最も明白な改善点は、根本的に再設計されたメニューとインターフェースだ。長年にわたり、ソニーの複雑化するメニューシステムを批判し続けてきましたが、第一印象では、ほぼすべての懸念事項が解決されていると感じた。
他のカメラにも搭載されていると思われるもう一つの機能は、高精細なファインダーだ。Sシリーズは、バリアングルモニタを使って動画を撮影することが多いと思われるので、このファインダーがデビューするには奇妙なステージだったと思う。そして、動画撮影はシャッタースピードを遅くするので、パネル自体の滑らかさを誤魔化すことになる。より静止画向けのカメラで魅力的と感じるファインダーだ。
ソニーαシリーズはHDR静止画の撮影を採用した3番目のブランドとなった。面白いことに、キヤノンのようなHEIFファイルフォーマットを採用しているが、パナソニックが使用しているHLGガンマ/色域応答だ。この組み合わせで正しく表示できるデバイスの数が増えるかどうかは興味深いところだ。
全体的に、α7S IIIは非常に有能な動画機材のように見え、他のEマウントシューターのためのいくつかの有望なポイントを含んでいるカメラだ。
とのこと。
モデルネーム第3世代、外観は第4世代、そして中身は第5世代と言ったところでしょうか?プロセッサーが更新されているので、既存カメラにファームウェアアップデートで導入できるのか不明。α7R IVあたりは短命になりそうで怖いですねえ(α7R III→α7R IVの期間が短かったように)。
動画は敢えて流行りに乗らず、4Kに抑えることでどのようなメリットが生まれてくるのか、今後レビューが数多く出てくるはず。キヤノンと同じくパッシブ冷却システムなので、環境温度によって動作時間が変化しそうですが…。そして過熱後のクーリングタイムも気になる所。
個人的に注目しているのは一新されたメニューシステムと低照度AF、そして何より超音波式のセンサー除塵機能が復活していること。この辺りが継承されRシリーズ・無印が登場したら突撃しようかと思います。
世界初となる944万ドットの大型・高解像ファインダーを他シリーズで導入するのかも気になります。無印で導入は無いとして、Rシリーズに搭載すると面白そうですねえ。
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