DPReviewがソニー「α7R V ILCE-7RM5」のイニシャルレビューを公開。センサーは従来通りですが、新型プロセッサとを中心として強化されたAFシステムやメニューシステム、動画機能などを高く評価し、EOS R5を凌駕する性能を備えていると言及しています。
DPReview:Sony α7RV initial review
カメラの紹介:
- α7R IVと同じ6000万画素 裏面照射型 CMOSセンサーを搭載している。
- 新しいプロセッサにより、前世代のカメラではできなかった手段でセンサーの能力をフルに使用することができるそうだが、同社はこれ以上具体的に説明しないので、評価は難しい。
- いずれにせよ、既存のカメラよりも幅広い機能に対応している。
- 優れている点の多くは、より強力なプロセッサーが搭載されていることに起因している。一連の機能、および大幅に改善されたメニューシステム、フォーカス、露出、ホワイトバランスに使用される複雑なAIで学習したアルゴリズムを処理する専用プロセッサーを搭載。
ビルド・外観:
- α7S IIIと非常によく似たボディだ。ボタンやダイヤルは既存のユーザーにとって使い慣れた場所にあるが、いくつかの改良が加えられている。
- このレベルのカメラに期待されるように、マグネシウム合金製の筐体を採用し、防塵・防滴に配慮した設計になっている。
- カメラ前面には、ホワイトバランスセンサーがあり、特に動画モードでのオートホワイトバランスの飛びを抑えるために使われる。
バッテリー:
- 新型のα7と同じNP-FZ100バッテリーを使用。
- 16.4Whのバッテリーで、α7R Vは背面モニタ使用時で1充電あたり530枚、ファインダー使用時で1充電あたり440枚という定格撮影枚数を実現。
- USB経由で給電することができる。十分強力なUSB PDチャージャーを使用すれば、カメラを操作しながら充電することが可能だ。
インターフェース:
- 端子類を見ると、α7R IVのフラッシュシンクロ端子はそのままに、α7S IIIのフルサイズHDMI端子が加わっていることがわかります。USB C端子もUSB 3.2 Gen2(10Gbps)規格にアップグレードされ、カメラからのファイル転送がより高速に行えるようになりました。また、USBソケットはアダプターを介して、イーサネットLANに接続することも可能です。
- 最近のソニーのカメラと同様、α7R Vには2つのデュアルフォーマットカードスロットがあります。UHS-II SDカードと、現在ソニーだけが採用している小型のCFexpress Type Aカードが使用可能です。α7R VにはCFeカードの使用を前提としたモードや機能はありませんが、書き込み・読み込み速度が速いため、特に10fpsでの撮影では、カメラが少し速くなったように感じられるでしょう。
- α7R VのWi-Fiは、2×2 MIMO(マルチイン・マルチアウト)対応になりました。つまり、他のMIMO機器と同時に送受信したり、並列に通信することができるはずです。これにより、ファイルサイズが大きくても、ワイヤレステザリングを実現することができます。Wi-Fiはスマートフォンとのファイル送受信にも使用でき、現行バージョンのImaging Edge Androidアプリを使用しても問題なく動作しました。
携帯性:
- 記載なし。
グリップ:
- 記載なし。
操作性:
- グリップやダイヤルは前モデルとほぼ同じだが、RECボタンが番号付きのカスタムボタンと入れ替わっている。
手ぶれ補正:
- 処理能力の向上とアルゴリズムの高度化により、ボディ内手ブレ補正機構を大幅に強化。
- 業界標準のテストにおいて8.0EVを達成した。
- 他社のようにボディ内手ブレ補正とレンズ内手ブレ補正を併用することなく達成しており、非OSSレンズでも高い性能を維持できるはずだ。
- CIPA方式によるISテストはやや単純化されているため、必ずしも8段分の効果を実感できないとしても、これだけの高評価は実際にうまく機能しているシステムでなければ実現できないだろう。
ファインダー:
- 先代モデルから改良されている。
- ファインダー光学系は0.9倍に拡大し、944万ドットのOLEDディスプレイを採用。
- 撮影時には「表示品質:高」を選択する必要があり、フォーカス時は解像度が下がる。
- 「ファインダーフレームレート」オプションもあるが、これはEVFを標準解像度モードにロックするものだ。
モニター:
- 最大の変更点は、バリアングルモニタの後ろにチルト式クレードルを搭載したことだ。
- マイクやヘッドホン端子の邪魔にならないようにモニタを前方に傾けてからバリアングルを展開することが出来る。
- 従来のチルトモニタのように使用することも可能だ。
メニューシステム:
- 最も顕著な変更点は新しいメニューシステムを採用したことだ。
- オプションは縦長のタブで配置され、サブカテゴリーが展開されてサブメニューが表示される。
- 旧来のシステムと比べて大きな進歩で、どこに何があるのかを予測しやすくなり、場所を覚える必要が大幅に減った。
- これまでのソニーカメラと同様に、Fnメニューがあり、最大12項目までカスタマイズ可能だ。そして静止画と動画の撮影を別々に設定することができる。
- メニューの左上には「マイメニュー」タブがあり、特定のパラメーターに素早くアクセスしたい場合、よく使うメニューオプションをすべて保存しておくことができる。
フォーカスシステム:
- 新しいプロセッサーは、カメラの被写体認識能力を大幅に向上させる力をもたらした。
- α7R IVでも人物の顔や目を認識し、優先順位をつけることができたが、α7R Vではさらに進化した。
- このカメラのAFシステムは、人間、動物、鳥、昆虫、車と電車、そして飛行機を認識する。
- 「動物」と「鳥」、さらに「動物/鳥」を組み合わせたモードが用意されているのも興味深いところだ。
- 被写体の種類は、メインメニュー、Fnメニュー、カスタムボタンから選択できる。
- それぞれの認識モードでは、AFポイントからどのくらい離れて被写体を探すか、他の被写体にフォーカスを移すか、実際の認識にどの程度敏感か寛容か、などのパラメーターを変更することが可能だ。
- さらに、人間、動物、鳥など、「目/頭/体」、「目/頭」、「目」のどれにピントを合わせるかも選択できる。
- 実に多彩なオプションが用意されているが、おそらく多くのフォトグラファーは1つか2つの認識モードを使い分けるだけで、あとは自分の選んだ被写体に対してカメラがどう反応するかを微調整するだけだろう。
- すべての被写体を、静止画・動画の両方で検出することができる。
- ソニーは目の表面へのフォーカシングに優れていると約束しており、このような高解像度カメラにとって評価できる改善点となるだろう。
- 瞳AFが60%向上し、さまざまな被写体を認識できるようになったということで一番試してみたい機能だ。それぞれの設定項目が多いので少し心配だが、多くの人にとって微調整が必要な項目は1つか2つの被写体だけだと思われる。
連写性能:
- 最大10fpsの連続撮影が可能だが、より高品質のRAWモードでは7fps程度まで低下する。
- バッファは最大583枚の圧縮RAWを記録可能だ。
- 対応フラッシュを使用すれば、P-TTLフラッシュ測光を使用した最高速での撮影が可能だ。
- シャッターは50万回作動とされているが、最高同調速度が1/250秒なのでα1と同じ機構ではないと思われる。
- 従来の照明の明点にシャッターを同期させるアンチフリッカーモードと、LED照明で経験するような高周波のフリッカーに対応するためにシャッタースピードを調整するモードがある。
解像性能:
- 6000万画素のRAWを大量に撮影することが困難な状況下で、より幅広いRAWファイルサイズに対応している。
- 非圧縮RAWに加えて、ラージ、ミディアム、スモールのロスレス圧縮に対応。また、(少し)損失の大きい圧縮RAWのオプションもある。
- MとSのRAWファイルは、2600万画素と1500万画素のダウンサンプリングバージョンで、2600万画素や1500万画素のカメラで撮影した画像よりもディテールがあるはずだ。
- APS-Cクロップ 2600万画素(またはダウンサンプル1500万画素バージョン)を撮影するオプションも用意されている。
- 三脚を使ったマルチショットによるピクセルシフト高画質モードを搭載。出力画素の位置ごとに赤、緑、青の情報を取り込む4ショットモードと、画像を少しずつずらして撮影する16枚撮影モードで2.4億画素まで解像度を向上させることができる。
- いずれのモードも、ソニーのデスクトップソフト「Imaging Edge Desktop」で画像を合成する必要がある。
- このカメラでは、画像間の被写体の動きを検知し、補正を行うことが可能だ。あまり安定していない被写体を撮影したときでも、良好な結果を得ることができた。
高感度ISOノイズ:
- 記載なし。
ダイナミックレンジ:
- 記載なし。
画質・仕上がり機能:
- ソニーとして初めてフォーカスブラケット機能を内蔵。ドライブモードとして選択し、異なるフォーカス距離間の「ステップ幅」と撮影枚数(最大299枚)を選択することができる。
- ピクセルシフトモードと同様に、フォーカスブラケットした画像を重ねて合成したい場合は、Imaging Edge Desktopを使用する必要がある。
動画:
- BIONZ XRプロセッサーを搭載した他のカメラと同様、α7R Vは10bit動画を撮影することができ、より柔軟なLog映像やハイダイナミックレンジ「HLG」映像を実現するのに役立つ。
- センサーの1.24倍クロップした領域から最大25pでUHD 8K映像を撮影できる。
- センサーの全幅から最大30pのUHD 4K映像を記録することも可能だ。
- センサーの8K領域から最大60pの4K、またはセンサーのAPS-C/Super35領域から6.2Kオーバーサンプリング4Kを撮影するオプションもある。
- 8KモードとオーバーサンプリングされたAPS-C 4Kモードでは、大きなローリングシャッターが発生する。
- 全幅4Kモードでは少し良くなっているが、よく抑えられている考えられるのは、クロップ4K/60p設定だけだ。
- α7S IIIと同じ放熱技術を搭載しており、温度制限を緩和すれば30分の8K記録が可能だ。
- α7S IIIやFXモデルと同様に、XAVCフォーマットを選択することができる。
- HDRディスプレイで再生するための10bit HLGキャプチャも可能だ。
- より大きなブレ補正を行う電子式手ブレ補正を追加する「Active SteadyShot」モードは4K 60pまで利用でき、さらに1.16倍のクロップが追加される(APS-Cモードでは1.09倍の追加クロップ)。
- 撮影時にカメラのジャイロデータを記録し、同社のソフトウェア「Catalyst」を使って映像にデジタル補正をかけることができる(8Kを含む)。
- フォーカスマップ、ブリージング補正、撮影時にショットマークを追加するオプションなど、最近のソニーのカメラに導入されている動画機能を搭載している。
- 16bit RAWをHDMIで出力し、Atomos Ninja VまたはV+でProRes RAWとして撮影することが可能だ。
総評
- α7R IVはすでにかなり成熟した製品だが、α7R Vはさらに改善している。
- 誰もが使える機能が揃っているように感じ、一人のカメラマンがこのカメラの機能をすべて使うことを想像するのは難しい。
- メニューシステムの見直しにより、カメラの複雑さに完全に圧倒されることはない。
- (D850のように)どう改良すればいいのか想像もつかないほど洗練されたカメラとは言わないが、α7R Vを見て著しく不足している部分を指摘することは難しい。
このカメラがどれだけ好感度の高いカメラになるか、まだ実感がない。EOS R5を凌駕する性能を備えているが、メニューやエルゴノミクス、性能など、持ち出して撮りたくなるカメラに仕上がっているかどうか。今後数週間で判明することだろう。
とのこと。
イメージセンサーこそ従来通りの6100万画素CMOSですが、新型プロセッサに加えてAIプロセッシングユニットを搭載しており、AFをはじめとして各種機能が強化されているようです。特にAFはソニー製カメラとしては初めて無機物の被写体(車・電車・飛行機)を認識するようになり、モータースポーツや航空機の撮影での活躍が期待できそう。ただし、連続撮影速度は従来通り10コマ秒までなので、高速連写やローリングシャッターが気になる場面ではα1を選択肢したほうが良いかもしれません。
外装で特徴的なのはソニー初となるチルトとバリアングルを兼ね備えた4軸フリーアングルモニタ。チルトとバリアングルの長所をどちらも活かすことができる理想的な構造。他社の一部カメラで同様の機構を採用していますが、従来のボディサイズを維持しながら実現しているメーカーは他になかったはず(ただし、重量はやや重め)。世界情勢や円安の影響で驚くような価格設定となってしまいましたが、見どころが多く、魅力的なカメラに仕上がっているように見えます。
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