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グローバルシャッターを任意のエリアに適用できるニコンの特許出願

2024年10月7日付けでニコンの気になる特許出願が公開。イメージセンサー内にグローバルシャッターとローリングシャッターの回路を備え、歪みを抑制したいエリアでグローバルシャッターの利用を想定している模様。

概要

  • 【公開番号】P2024138158
  • 【公開日】2024-10-07
  • 【発明の名称】撮像素子
  • 【出願日】2024-07-30
  • 【分割の表示】P 2022180382の分割
    【原出願日】2016-06-30
  • 【出願人】
    【識別番号】000004112
    【氏名又は名称】株式会社ニコン
  • 【課題】1フレーム内において、ローリング電子シャッタ方式による撮像信号とグローバル電子シャッタ方式による撮像信号とを得ること。
  • 【解決手段】撮像素子は、画素エリアにおいて行方向と列方向とに並んで配置され、光電変換された電荷に基づく信号を生成する複数の画素と、前記複数の画素のうち、前記画素エリアの第1エリアにおいて前記行方向と前記列方向とに並んで配置される複数の第1画素からグローバル電子シャッタ方式で前記信号を読み出し、前記複数の画素のうち、前記画素エリアの第2エリアにおいて前記行方向と前記列方向とに並んで配置される複数の第2画素からローリング電子シャッタ方式で前記信号を読み出すように前記複数の画素を制御する駆動回路部と、を備える。
  • 【背景技術】
    【0002】
    従来、ローリング電子シャッタ方式とグローバル電子シャッタ方式とを切り替え可能な撮像素子が知られている(特許文献1参照)。
    従来の撮像素子では、1フレームの読出期間においてローリング電子シャッタ方式とグローバル電子シャッタ方式による信号読出を行うことはできなかった。
  • 【0098】
    図25は、画素エリア201内で、グローバル電子シャッタ駆動させるように設定されたエリア(GSエリア)Agの例を示す図である。ボディ制御装置102は、撮像素子101に対して、GSエリアAgを設定する。図25に示すように、GSエリアAgは画素エリア201内に複数設定することができる。GSエリアAgの形状も、横長の長方形、縦長の長方形、十字型などに設定することができる。また、第1の実施の形態と同様に、GSエリアAgとしては、AF処理で用いるAFエリアや、被写体認識処理、動体予測処理および被写体追尾処理で用いる被写体認識エリアの他、AF処理やAWB処理で用いるエリアなど、蓄積同時性を有していた方がよいエリアが設定される。

  • 【0024】
    (ローリング電子シャッタおよびグローバル電子シャッタの問題点)
    ローリング電子シャッタは、行毎の蓄積同時性がないことから動体が歪んで画像に写るため、被写体認識やその認識結果を基に被写体追尾する用途には不向きである。たとえ高速にローリング電子シャッタ駆動を行える撮像素子を用いたとしても、原理的に画像の歪みは解消しないし、高速動作させることで消費電力が増大するという問題も生じてしまう。また、ローリング電子シャッタをAF(像面位相差AFやコントラストAFなど)に用いた場合も、縦方向(同列画素)の蓄積同時性がないため、動体のピント合わせには不利である。横方向(同行画素)の蓄積同時性だけを頼りにAFを行うことになるので精度が劣る。
  • 【0025】
    一方、グローバル電子シャッタを用いた場合、フォトダイオードPDの電荷を同時転送することで全画素の蓄積同時性が確保できるので画像の歪みは起こらない。しかしながら、保持容量SCからの読み出しには時間差が生じ、それが暗電流バラツキとなって画像に現れ画質を低下させる。保持容量SCからの読み出し順が最後の方の画素ほど暗電流の影響を受けることになる。たとえば監視カメラのような用途では撮像素子が常時動作しており、発熱による暗電流の影響が画像に現れやすい。そのため、放熱対策も十分行う必要があり、暗電流の影響が大きい場合は補正手段も考慮する必要が出てくる。
  • 【0026】
    また、グローバル電子シャッタの場合、フォトダイオードPDのリセットやフォトダイオードPDの電荷転送を全画素同時に行うので、ローリング電子シャッタと比較して何倍も大きな瞬時電流が流れる。この瞬時電流と電源配線のインピーダンスにより電圧降下が起こるので、一般的に、撮像素子のチップサイズが大きく、撮像素子の中央部ほど電圧降下の影響を受けやすい。具体的には、電圧降下により出力信号のダイナミックレンジが不足したり、搭載されている回路の正常動作範囲を外れたりする可能性がある。これらは画質低下の原因になり得るので、瞬時電流が収まり電源電圧が定常状態に落ち着くまでの待ち時間を設けなければならず、フレームレート低下の要因となる。
  • 【0027】
    (本実施形態の撮像素子の概要)
    そこで、本実施形態の撮像素子101では、1フレーム分の撮像信号の読み出しにおいて、一部のエリアをグローバル電子シャッタで駆動させ、それ以外のエリアをローリング電子シャッタで駆動させることで問題解決を図る。グローバル電子シャッタで駆動させる一部のエリアとしては、例えば、被写体認識エリアやAFエリアなどが挙げられる。このように画素の蓄積同時性を有していた方が機能的に精度が高い場合にグローバル電子シャッタを用いるとよい。
  • 【0028】
    グローバル電子シャッタで駆動させるエリアの設定は、連続行による行エリア設定や、XYアドレス指定によるブロックエリア設定のどちらでも設定でき、複数の離散したエリアを選択することも可能である。ブロックエリア設定の場合、XYアドレスで対象画素領域を指定することになるが、その分、エリア設定のための回路が複雑になる。行エリア設定の場合、対象画素領域以外も選択されることが多いが、ブロックエリア設定のようにXアドレス(水平方向)の設定は必要ないので回路が複雑にならずに済む。

(管理人によるまとめ)

ローリング電子シャッターの問題点

  • ローリング電子シャッターは、行ごとに同時に信号を蓄積できないため、動いている物体が歪んで映ります。このため、被写体を認識したり追尾したりする用途には適していません。
  • たとえ速い動作が可能な撮像素子を使用しても、原理的に画像の歪みは解消されません。また、高速駆動にすると消費電力が増える問題もあります。
  • 自動焦点(AF)でローリング電子シャッターを使用すると、縦方向(同じ列の画素)の同時性がないため、動体のピント合わせに不利です。横方向(同じ行の画素)のみでAFを行うため、精度が低下します。

グローバル電子シャッターの問題点

  • グローバル電子シャッターでは、全ての画素の電荷を同時に転送できるため、画像の歪みがありません。
  • しかし、保持容量(SC)からの読み出しに時間差が生じ、これが暗電流のばらつきとして画像に影響を与え、画質を低下させます。特に、最後の方の画素は暗電流の影響を受けやすいです。
  • 監視カメラなどの用途では、撮像素子が常に動作しているため、発熱による暗電流の影響が現れやすいです。そのため、放熱対策や暗電流の補正手段が必要です。

グローバル電子シャッターの瞬時電流の問題

  • グローバル電子シャッターでは、フォトダイオード(PD)のリセットや電荷転送を全画素同時に行うため、瞬時電流が非常に大きくなります。
  • この瞬時電流と電源配線のインピーダンスによって電圧降下が発生し、特に撮像素子の中央部では影響を受けやすいです。
  • 電圧降下により出力信号のダイナミックレンジが不足したり、搭載回路の正常動作範囲を外れたりする可能性があります。これらは画質低下を引き起こす可能性があるため、瞬時電流が収まるまで待つ時間を設ける必要があり、結果的にフレームレートが低下します。

過去の特許の分割ですが、以前にピックアップしていなかったので今回取り上げてみました。原出願が2016年となっているので、かなり前から構想としては存在している方式のようですね。

イメージセンサー内にグローバルシャッターとローリングシャッターの両方に対応できる回路を備え、状況に応じて切り替えることが出来る模様。さらに部分的にグローバルシャッターの効果も得られるらしく、被写体検出により動体の領域のみ適用することも想定しているようです。

グローバルシャッターを利用できるならグローバルシャッターのみでも良さそうですが、画質や発熱などの観点から状況に応じて使い分けることが出来るのは便利ですね。また、今回の特許でグローバルシャッターはあくまでも補助的な使い方となっており、基本はローリングシャッターを使用する形態のように見えます。

果たしてこれらが実現できるのかどうか不明ですが、ソニー「α9 III」に続くグローバルシャッター搭載モデルとなるのか注目ですねえ(コンシューマー向けの静止画用カメラとして)。

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