ニコン「Z50II」のレビューに先立ち、カメラの外観やメニュー一覧、シャッター音やローリングシャッターの影響を確認するページを公開しました。
簡単なまとめ
外観や操作性の観点では、APS-Cミラーレスの中で一眼レフっぽさのあるカメラ。特に同社のD5600などから乗り換えるのにちょうどいい。拡大縮小ボタンや「i」AF-Lボタンなどの配置がよく似ています。
競合他社のミラーレスと見比べてみると、ボタンが過密だったり、コントロールの柔軟性が控えめ。ボタン配置や操作性に一貫性がなかったり、メニューシステムも相変わらずで、これぞニコンと言った感じの部分があります。
その一方、EXPEED 7 の恩恵は顕著。
起動が非常に高速で、被写体検出に対応するAFは便利で快適。JPEG限定ですが、C15/C30の高速連写やプリ連写にも対応しているので気軽に動体撮影ができるカメラとなっています。高効率RAWやSD UHS-II対応で連続撮影との相性も良好。
From the perspective of appearance and operability, this is a camera with a DSLR-like feel among APS-C mirrorless cameras. It is particularly well-suited for those switching from a camera like the company's D5600. The placement of the zoom in/out button and the “i” AF-L button, etc., are very similar.
When you compare it with mirrorless cameras from competing companies, you'll find that the buttons are overcrowded and the control flexibility is modest. There is a sense of “this is Nikon” in the inconsistent button placement and operability, and the menu system is still the same.
On the other hand, the benefits of the EXPEED 7 are very noticeable.
It starts up very quickly, and the AF that supports subject detection is convenient and comfortable. It is limited to JPEG, but it also supports the high-speed continuous shooting and pre-continuous shooting of the C15/C30, so it is a camera that can easily be used for moving object photography. It is also compatible with high-efficiency RAW and SD UHS-II, so it is also good for continuous shooting.
Index
Z50II のレビュー一覧
カメラのおさらい
2024年12月発売のニコン製APS-Cミラーレスカメラ。最新の画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載しており、被写体検出AFをはじめとしたハイエンドモデルと同等(またはそれに近い)撮影システムを利用可能となっています。EXPEED 7を搭載するAPS-C Zカメラはこの機種が初めて。
- 発売日:2024年12月13日
- 予約開始日:11月12日10時
- 希望小売価格:オープンプライス
- 商品ページ/仕様表
- Web説明書
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
EXPEED 7 への更新以外にも、カメラ外装のコントロールやデザインにも変化あり。操作を覚えなおす必要があるものの、物理コントロールが増え、より使いやすくなっています。背面モニタはチルト式からバリアングル式に変更。モニタを素早く傾けるには不便となったものの、可動範囲が広がったことで自撮りなど様々な撮影に対応可能。
ぱっと見のボディサイズは大きくなっているものの、ファインダーの突出部がなくなったので収納しやすいデザイン。
参考:競合機種との比較記事
- 「Z50II」と「Z 50」の外観やスペックの違い
- 「Z50II」と「EOS R10」の外観やスペックの違い
- 「Z50II」と「X-M5」の外観やスペックの違い
- 「Z50II」と「X-S20」の外観やスペックの違い
主な特徴
前モデルからイメージセンサーは据え置き。主な変更点は前述したEXPEED 7へのアップグレードと外装デザインのリニューアル。スペック的なアップグレードは主にEXPEED 7 を搭載したことによる恩恵となっています。
- Modelname:N2318
- イメージセンサー
・タイプ:APS-Cサイズ/DXフォーマット
・有効画素数:2088万画素
・除塵ユニット:
・手振れ補正:レンズシフト方式 - ISO 100~51200
- 静止画:RAW(ロスレス・高効率・高効率★) / JPEG / HEIF
- ストレージ:SD UHS-II
- プロセッサ:EXPEED 7
- AFシステム:ハイブリッドAF
・測距点:209点
・測距輝度範囲:-9~19EV f/1.2レンズ使用時
・被写体認識:人物(顔、瞳、頭部、胴体)、犬、猫、鳥、飛行機、車、バイク、自転車、列車 - レリーズ性能:
・メカニカルシャッター:1/4000~30秒
・電子シャッター対応
・フラッシュ同調速度:1/250秒
・撮影速度:約11コマ/秒 / 約15コマ/秒
・撮影枚数:200コマ以上
・プリキャプチャーモード - ファインダー:0.39型XGA OLE 約1.02倍 約236万ドット
- モニター:バリアングル式8cm/3.2型TFT液晶モニター 約104万ドット
- 動画:
・4K:60p
・FHD:120p
・出力:MOV、MP4
・H.265/HEVC(8bit/10bit)、H.264/AVC(8bit)
・N-Log
・動画撮影中の赤枠表示
・RECランプ - イメージングレシピ
- インターフェース:
・USB:Type-C端子(SuperSpeed USB)UVC/UAC対応
・ヘッドホン:φ3.5mm
・マイク:φ3.5mm
・HDMI:Type D
・Wi-Fi:IEEE802.11b/g/n/a/ac
・Bluetooth:Ver.5.0
・その他:GN7 フラッシュ内蔵 - バッテリー
・タイプ:EN-EL25a
・撮影可能枚数: ファインダー 約230コマ / モニター 約250コマ
・充電方法:USB-C - サイズ:約127×96.8×66.5mm
- 重量:約550g
価格をチェック
- 発売日:2024年12月13日
- 予約開始日:11月12日10時
- ニコンダイレクト:
・ボディ:145,200円
・16-50 キット:166,100円
・18-140 キット:199,100円
・ダブルズームキット:198,000円
売り出し価格は小売店最安値でボディが13万円くらい。被写体検出AFに対応するAPS-Cミラーレスカメラとしては適切な価格設定です。より安価な機種も存在しますが、Z50IIは防塵防滴仕様やファインダー搭載を考慮すると適切と言えます。
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Z50II 16-50 VR レンズキット | |||
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Z50II
箱など
ニコン Zシリーズらしい黒と黄色を基調としたデザインです。装飾はごくわずかでシンプルなデザイン。箱を開けるとカメラボディとアクセサリーが段ボールで間仕切りされています。最近は環境に配慮して紙の梱包材を使うメーカーも多くなっていますが、ニコンは従来通りプラスチック製の梱包材を使用しています。
カメラ本体の他にはバッテリー、USBケーブル、ストラップ、その他書類が付属します。バッテリーはUSBケーブル経由でボディ内の充電となります。充電用の電源が必要となるので注意。手持ちのスマートフォンを充電する電源と共有できる可能性あり。
外観
デザイン
前モデルと比べると少し丸みを帯びていますが、ニコンらしい角ばったデザインは継承。グリップにニコンらしい赤いラインの装飾あり。Z 50から大きなデザインの変更はありません。しかし、各所のデザインは最新のZカメラらしい装飾が施されています。「Z」のロゴをグリップ付近に配置し、モデルネームのロゴはカメラ上部へ移動。
質感
よく観察するとプラスチック感のあるパーツを多用しています。上部のプレートやダイヤル・ボタン類など。高級感はないものの、しっかりとした作りに違いありません。
製造国
他にニコンZカメラと同じくタイ製造。
コードネームは「N2318」。
ハンズオン
127×96.8×66.5mmで約550gのボディ。APS-Cミラーレスカメラの中では比較的大きく重い。ファインダー搭載・防塵防滴仕様のカメラとしては標準的ですが、ボディ内手振れ補正を搭載していないカメラとしては重め。
グリップ
手にフィットする適度なサイズのグリップを搭載。指をかける部分があり、指で押さえる部分もよく考えられた曲線状のデザイン。全高が低いのでフルサイズほど立派なグリップではありませんが、必要に応じてカメラプレートを装着することが出来ます。(後述)
後述しますが、カメラを保持するつもりでグリップを握る場合、背面右下のボタンやマルチコントローラーは操作し辛い。親指で押しやすい選択肢は限られています。
前述したグリップの改善案として、私はSmallRig製のカメラプレートを購入しました。底面を保護するとともに、アルカスイス互換のクランプに対応。プレートを装着したままバッテリーの交換も可能。
コントロール
APS-Cミラーレスでは珍しい、2つのフロントFnボタンは健在。誤操作しない程度に離れた場所にある二つのボタンに、それぞれ好みの機能を割り当てることが出来ます。初期設定はフォーカスモードとホワイトバランスが登録されています。この二つの機能はボタンを「押している間」のみ設定変更が可能。
モニタ上にあった3つのタッチボタンが廃止となり、そのぶん物理ボタンが増加。
(前モデル比で)背面右側に物理ボタンが3つ追加されています。右下に4つ密集しているレイアウトはZカメラで共通していますが、利用できる機能は異なるので注意が必要。
「ボタン配置変え過ぎでは?」と思わなくもないですが、Z50IIの配置は最新のZカメラでよく見るものとなっています。そろそろ統一してほしいものですねえ。
カスタマイズはDSIPとAE-Lボタン、再生ボタンが可能。OKボタンもカスタマイズ可能ですが、登録可能な機能は限られています。
各ボタンはそれぞれ形状が異なっており、触覚のみで識別可能。…をニコンは想定しているのだと思いますが、ボタンが密集しているので、配置を覚えなければ触覚での判断が難しい。また、ボタンがやや小さ目なので、手袋を装着時は操作が難しいかもしれません。
実際にカメラをグリップした状態で操作できる最適なボタンは「AF-L」と「i」のみ。DISPや表示切替ボタンは遠すぎ、マルチコントローラーや下部4つのボタンは下過ぎて親指が届きません。グリップを握りなおして操作する必要があります。個人的には、物理ボタンよりもAFエリアを操作するためのジョイスティックを搭載してほしかったところ。
左肩にはレリーズモードとゴミ箱に対応するボタンを搭載。Z 50とは配置が異なるので慣れが必要ですが、左肩にレリーズモードを搭載しているフルサイズと互換性のあるコントロールとなっています。
上部のボタン配置はほぼ同じですが、リアダイヤル付近にピクチャーコントロールボタンが追加されています。機能はFnボタンで割当可能なピクチャーコントロールと同等。使い辛いと感じたら、別のボタンに付け替えることが出来ます。正直に言うと押しづらいため、ピクチャーコントロールを多用するのであれば他のボタンに付け替えたほうが良いでしょう。
ピクチャーコントロールんおUIは従来機と比べてデザインと操作性が異なっています。(後述)
レリーズボタン付近の3連ボタンは健在。それぞれカスタマイズ可能となっているので、好みに合わせてボタン機能を変更するのがおススメ。レリーズボタンはストロークが浅めでクリック感のある全押し。
ファインダー
仕様は前モデルとほぼ同じ。ただし、パネルの輝度が2倍になっているので、状況によっては使いやすくなっているはず。また、このクラスのAPS-Cミラーレスとしてはファインダー倍率が大きく、見やすい光学系。
Z 50と比べてファインダーの突出が控え目で収納性が向上。その一方、ファインダー使用時はモニターと顔の距離が近くなり、タッチFn(ファインダーを覗きながらタッチパネルを操作する機能)が使い辛くなっています。
モニター
左側方へ展開後に可動範囲の広いバリアングル式のパネルを搭載。解像度は前モデルと同じ104万ドット。必要最低限と言った印象で、特筆するような部分はありません。メニューからパネルの明るさを「±5」で調整可能。さらに「-5」よりも暗くできる拡張設定「Lo 1 / 2」を利用できます。
インターフェース
左側面で上からマイク・ヘッドホン・HDMI D・USB-Cポートに対応。充実していますが、全体的にバリアングルモニタと干渉しやすい。
バッテリー・ストレージ
バッテリーはEN-EL25タイプの新型「EN-EL25a」が付属。容量が増えていますが、強力な画像処理エンジンの消費電力が多いのか撮影枚数はZ 50より少なくなっています。一日中の撮影や旅行で使うのであれば予備バッテリーやモバイルバッテリーを用意しておきたいところ。
SDカードスロットは高速書き込みが可能なSD UHS-IIに対応。前モデルはSD UHS-Iまでのため、バッファクリア速度は大幅に改善しています。ただし、カードスロットはバッテリースロットに隣接しているため、三脚搭載時はアクセスし辛くなっています。
フラッシュ
引き続きガイドナンバー7のフラッシュを内蔵。ポップアップ式で角度の調整は出来ません。光量・操作性は必要最低限。
レンズ装着例
コンパクトなレンズと相性が良好。しかし、しっかりとしたグリップがあるので、少し大きなレンズを装着してもカメラの手持ち撮影で苦労することはありません。バランスを取りやすい。
起動時間の確認
EXPEED 7 の処理速度が高速であるためか、起動が非常に高速。電源投入から1秒も経たずにレリーズすることが出来ます。シャッター音の確認
シングルショット
メカニカルシャッターと電子先幕シャッター、サイレンとモード(電子シャッター)に対応。しかし、初期設定でメカニカルシャッターが原因不明のグレーアウトで利用することが出来ませんでした。このため、電子先幕シャッターのみチェック。シャッター音は控えめで、軽めの印象。
高速連続撮影
ローリングシャッターの影響
RAW
前世代のモデルと同じイメージセンサーであり、これと言った改善はありません。前モデルの14bit RAWと同程度で、12bit RAWの選択肢がないぶん性能が低下しています。競合他社の2600万画素センサーや、キヤノンの3000万画素センサーよりも見劣りする結果。電子シャッター(サイレントモード)使用時の動体撮影では若干の歪みが目につきやすいかもしれません。
連写時
JPEG出力のみの高速撮影では読み出し速度が少し改善しています。おそらく、12bitモードになっていると思われます。
メニュー一覧
撮影メニュー
多くの設定項目が1ページの撮影メニューに収まっています。ページを上下にスライドして項目を探す必要あり。
競合他社がカテゴリを分けたり、ページを分けたりしていることを考慮すると不親切と言わざるを得ません。(カスタムメニューはカテゴリ分けされている)
頻繁に使う機能はマイメニューに登録するのがおススメ。
動画メニュー
カスタムメニュー
再生メニュー
セットアップメニュー
グレーアウト
相変わらずグレーアウトして使用できない機能について説明が不足しています。
どのような設定が干渉しているのか分からないため、手の施しようがありません。
ピクチャーコントロール
ピクチャーコントロールのUIが従来機から一新。シンプルでモダンなデザインとなっていますが、Z 8などでは利用できた「フロントダイヤルでの適用度変更」が使用できなくなっています。個人的に重宝していた操作だったので、残念。
また、プリセットを変更後に「OK」ボタンで決定しないと設定が反映されません。
例えば、「SD」から「MC」にカーソルを合わせても、OKボタンを押さずにレリーズすると「SD」に戻ってしまいます。以前のシステムとは挙動が明らかに異なるので慣れが必要。
まとめ
外観や操作性の観点では、APS-Cミラーレスの中で一眼レフっぽさのあるカメラ。特に同社のD5600などから乗り換えるのにちょうどいい。拡大縮小ボタンや「i」AF-Lボタンなどの配置がよく似ています。
競合他社のミラーレスと見比べてみると、ボタンが過密だったり、コントロールの柔軟性が控えめ。ボタン配置や操作性に一貫性がなかったり、メニューシステムも相変わらずで、これぞニコンと言った感じの部分があります。
その一方、EXPEED 7 の恩恵は顕著。
起動が非常に高速で、被写体検出に対応するAFは便利で快適。JPEG限定ですが、C15/C30の高速連写やプリ連写にも対応しているので気軽に動体撮影ができるカメラとなっています。高効率RAWやSD UHS-II対応で連続撮影との相性も良好。
AFジョイスティックは非搭載ですが、被写体検出AF前提であれば大きな枠に被写体を入れるだけでOK。ジョイスティックの必要性は低いと思われます。(高度な撮影がしたい場合は上位機種の登場を待つしかありません)
被写体種類の選択もフルオートに対応しているため、カメラの操作が分からずともAUTOモードでごり押しも行けるのではないかと感じました。被写体検出を利用できない場合でも、3Dトラッキングが良い仕事をしてくれます。
Z 50からのアップグレード理由が「AF」ならば大いに満足できるかなと。
個人的にはNikon Imaging Cloudとピクチャーコントロールの連携に注目しているので、そのあたりは別記事でピックアップ。少なくともピクチャーコントロール単体で見るとUIが少し改悪と感じました。
エントリーモデルとしてはと少し不親切で習熟が必要なカメラですが、ニコンユーザーの乗り換え先と考えると丁度いいカメラ。特にEXPEED 6 以前のカメラからすると、AF性能が大幅な進化を遂げていると感じると思います。
参考情報
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