このページではタムロン「28-75mm F/2.8 Di III RXD」のレビュー・各種描写を確認できる作例を掲載しています。
Index
更新情報
- 2018-05-29:AFに関する不具合をちょこっと追記しました。
- 2018-05-26:「AF」「発色」「接写性能」「総評」「管理人の作例」項目を追加しました。
- 2018-05-24:手元にレンズが届いたのでひとまず作例をざっと公開。レビューは後日更新します。
追記:パッケージ・レンズ外観・遠景解像・マクロ解像・逆光耐性を追加
28-75mm F/2.8 Di III RXD A036はどんなレンズ?
A036の特徴
- FE24-70mm F2.8 GMと比べて小型軽量
- 抜群の接写性能
- 広角側が28mmと狭い
- 大口径ズームながらステッピングモーター駆動で静音性が高いAF
- 安い
広角側を28mmと妥協し、鏡筒をポリカーボネート素材とすることで小型軽量なレンズに仕上がっている大口径ズームレンズです。純正GMと比べて明らかにサイズが小さく軽量ですね。小型ボディであるミラーレス一眼の強みを活かした一本と言えるでしょう。
さらに広角側で0.34倍と高い撮影倍率を持ち、望遠側でもGMを僅かに上回っています。同価格帯のFE24-70mm F4 ZAと比べると明らかに有利です。
また、フルサイズ用F2.8大口径ズームレンズとしてはとても安価で、ソニー純正F4ズームよりもお買い求め易いのは魅力的ですね。
フォーカス駆動はソニー純正の「ダイレクトドライブSSM(DDSSM)」や「リニアモーター」と異なり「RXD(ステッピングモーター)」駆動のためフォーカス速度はやや遅いと感じるかもしれません。
モデル名 | A036 | 2470GM | 2470Z |
---|---|---|---|
焦点距離 | 28-75 | 24-70 | 24-70 |
明るさ | F/2.8 | F/2.8 | F/4 |
レンズ構成 | 12群15枚 | 13群18枚 | 10群12枚 |
最短撮影距離 | ・0.19m (WIDE) ・0.39m (TELE) |
0.38 | 0.4 |
最大撮影倍率 | ・0.34(WIDE) ・0.25(TELE) |
0.24 | 0.20 |
フィルター径 | 67 | 82 | 67 |
最大径 | 73 | 87.6 | 73 |
長さ | 117.8 | 136 | 94.5 |
質量 | 550 | 886 | 426 |
絞り羽根 | 9 | 9 | 7 |
最小絞り | F/2.8-22 | F/2.8-22 | F/4-22 |
手振れ補正 | 非搭載 | 非搭載 | 搭載 |
防汚・フッ素 | 対応 | 対応 | ー |
コーティング | BBAR | nanoAR | T* |
素材 | 非金属 | 金属/非金属 | 金属 |
防塵防滴 | 簡易 | 配慮 | 配慮 |
AF駆動 | RXD(STM) | DDSSM | リニア |
瞳AF・DMF | 対応 | 対応 | 対応 |
AF-C/AF-A | 対応 | 対応 | 対応 |
Amazon価格 | 約85,000円 | 約230,000円 | 約100,000円 |
28-75mm F/2.8 Di III RXD徹底レビュー
パッケージ
この世代のタムロンらしい外箱です。
SPシリーズと異なりレンズフード以外に付属品はありません。説明書と保証書が同梱されています。
レンズ外観
手に取ったサイズ感
大口径の標準ズームレンズとしては軽量。しかし、レンズ全長は一眼レフカメラ用の28-75mm F2.8とそこまで変わらず、コンパクトなα7 IIIには少し長いと感じるかもしれません。
鏡筒の素材はプラスチック(ポリカーボネート)を採用しており、レンズの軽量化に一役買っているようです。そのため、このレンズはタムロンの高級レンズシリーズである「SP」が冠されていません。(SPシリーズは「金属鏡筒である」と言う条件が必要)
プラスチック製ですが、特に安っぽさは感じません。全体的にしっかりとした造りの質感です。質感はこの世代の非SPレンズと全く同じと言っても過言ではありません。
レンズ前部・後部
フィルター径はF2.8ズームとしては小さく、67mm径を採用しています。フルサイズ用ズームレンズではあまり使われていないフィルター径なので少々厄介と感じるかもしれません。
本レンズには防汚コートが採用されているので、汚れや水滴に対する保護性が高くプロテクトフィルターの必要性が低い。その一方でeBANDコーティング(タムロンの最新コーティング)が採用されていないため、逆光耐性が気になるところです。
レンズ後玉はフレアカッターの直後に配置されています。ズームリングを操作することで前部へ移動するため、ボディ側のメカダストを吸引しやすいかもしれません。
レンズマウントにはソニー純正の一部「防塵防滴に配慮したレンズ」と異なりしっかりとゴムシーリングが施されています。シーリングとボディ側マウントがしっかり接着するためか、レンズ装着がやや硬めです。
ズーム
3cm幅のズームリングは程よく抵抗感があり滑らかに動作します。28mmから75mmまでのズームリング回転角は約90°。ワンアクションで素早く操作できる回転量ですね。リングにはロック機構が無いものの、自重で内筒が伸びることはありませんでした。
本レンズはズームリングを操作することで内筒が前後に移動します。28?50mmまでの変化は大きくありませんが、75mmで急速に内筒が伸びます。75mmまで伸ばすとレンズ全長は約30mmほど長くなります。
フォーカシング
ズームリングに手前に配置された1.5cm幅のフォーカスリングは滑らかに動作します。「DMF」モードに対応しているのでAF後に微調整も可能です。
電子制御式で回転動作は程よく抵抗感があるものの、ヘリコイド式と比べると少し緩く感じます。
フォーカスリングは回転速度によってピント移動速度が変化します。ゆっくり回すととても細かくピントの調整が可能です。
製造・設計国
製造国は中国で設計元は日本です。
「DESIGNED IN JAPAN」がデカデカと表示されている一方「MADE IN CHINA」が薄く小さく表示されているのは少しあざとく感じます。「別に中国製でもいいじゃん」と思いますが、やはり世界的に見るとまだ「日本」のブランドイメージが強いのでしょうか?
遠景解像性能
C=センター・E=四隅
28mm
遠景に関しては四隅までしっかりとした解像性能を発揮。中央は非の打ち所がない程シャープで、四隅はややシャープさが落ちるものの許容レベルと簡単に超えていると判断できます。
非点収差や倍率色収差は2400万画素のα7 IIIで使う限り問題無し。2段ほど絞るとマイクロコントラストが改善し、解像のピークはF8~F11あたりと感じます。F8~F11では中央と四隅における画質の区別はつきません。
35mm
センターは28mmと同じく絞り開放から高解像な描写。
周辺部も中央と同程度ですが、四隅のみF2.8でやや甘い傾向。2段ほど絞ると改善し、ピークのパフォーマンスは28mmと同程度。
50mm
*F5.6以降ピンズレのため省略(おそらくMF中にピントリング触っちゃったかも…。)
35mmと比べて四隅の描写が絞り開放から安定。75mmも含めて解像のスウィートスポットは標準?望遠側かもしれません。
70mm
50mmと同様でF2.8から四隅まで甘さを感じない描写です。細部までしっかりとコントラストがついているので解像感がバッチリ。
単焦点と比べて少し線が太いかなと感じるものの、安定感がありますね。
マクロ解像性能
28mm最短撮影距離
とても接写性能の高いレンズですが、中央以外は非点収差・コマ収差が強く、特に四隅の描写はかなり甘い。
中央は絞り開放からかなりシャープですが、周辺はF8まで絞りたいところ。周辺の解像性能はかなりソフトですが、その一方でボケはかなり柔らかい。
この傾向は被写体が近いほど強くなり、およそ1mほど離れると緩和します。遠景では前述したように残存収差が少ない高解像な描写です。
75mm最短撮影距離
望遠側は最大撮影倍率がやや小さめ。植物や昆虫には寄りづらいと感じるかもしれません。
広角側と比べてコマ収差の影響は少ないですが、解像性能を求めるのであればF8までは絞りたいところ。
周辺減光
ボディ側の光量補正はオフにして撮影(通常時は自動補正が作動します)。
広角・望遠端でやや強めの減光が発生し、中間域では僅かに緩和します。APS-Cフレーム枠ならまず問題ないレベル。
28mm
35mm
50mm
75mm
歪曲
自動補正が適用されますが、あえてオフにして撮影しています。
28mm
オフにすることで僅かな樽型歪曲が発生。
陣笠状では無いので補正は比較的簡単に出来るはず。
75mm
目立たない程度の糸巻き型歪曲が発生。自動補正が適用されると綺麗サッパリ解消します。
逆光耐性
プロテクトフィルター無し、レンズフード装着状態で撮影。
強いか弱いかで言うと、どちらでも無く”平凡”なパフォーマンス。決して逆光に強いレンズでは無いですが、弱いと言うほど弱くも無く…。いたって平凡な逆光耐性です。SP24-70mm F2.8 Di VC USD G2よりは広角側が弱い印象。
フレアによるコントラストの低下は少ないものの、やや大きめのゴーストが発生しやすい。特に目立ちやすいシーンは28mmや35mmなど広角側、強い光源を正面からちょいずらしでフレーミングした場合など。
2010年前半ならまだしも、コーティング性能が向上しているここ最近のレンズとしては少し物足りないパフォーマンス。せめてeBANDコーティングを採用して欲しかったなと。
ちなみに円形絞りのため、小絞りでも綺麗な光芒は出来ません。
28mm
28mm やや目立つ例
75mm
ボケ
前述したように被写体との距離によってボケ質が変化します。最短撮影距離に近いと柔らかいボケ味ですが、被写体との距離が離れるとエッジが硬いボケ質へ変化。
ポートレートや小動物のような距離感だと少し騒がしく感じるかもしれません。感覚的に言うと「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2」よりも良好ですが、ボケの綺麗な単焦点レンズと比べることは出来ないです。
非球面レンズの影響がありシチュエーションによって玉ねぎボケが目に付く場合があります。
28mm
35mm
50mm
75mm
接写性能
28?35mmまでは高い最大撮影倍率を維持していますが、50?75mmの領域では寄りきれず撮影倍率が低下するようです。最短撮影距離はオートフォーカスでもマニュアルフォーカスでも変わりません。
出来るだけボケを大きくしつつマクロっぽく撮影したいのであれば35mmあたりがベスト。しかし、28?35mmはワーキングディスタンスが短いので自身やカメラの影が写りこまないように注意しなければなりません。
発色
絞り開放からコントラストの高い豊かな発色のレンズですが、ホワイトバランスを固定してソニー純正レンズと撮り比べるとやや暖色傾向となります。
風景撮影で「ちょっと暖色寄りだな…」と感じるカットが多かったです。ホワイトバランスをB側へ0.5?1.0ほど調整するとおよそ似たような色温度となります。
下はホワイトバランス「太陽光(無調整)」でタムロン28-75mm F2.8 RXDとソニーFE28mm F2を撮り比べた画像です。AWBを使用するとさらに差が広くなる印象。
AF
ステッピングモーターらしくとても静かなオートフォーカスです。AF作動中に耳をレンズに当てると僅かなノイズが聞こえる程度。フルサイズ用の大口径ズームレンズとしては特筆すべき静かさと感じます。
α7 IIIとの組み合わせでオートフォーカス速度は極めて平凡。ソニー純正のDDSSMやリニアモーター駆動のレンズと比べてサーチ中の初速が少し遅いなと感じます。
AF-Cモードで一度ピント面を捉えてしまえば、見失わない限り問題無し。
AFに不具合発生
既に国内外で話題となっていますが、稀にオートフォーカスでピントが合わなくなるバグがあるようです。
私も現地で一度だけピントが合わなくなる症状が発生しました。カメラ電源のリセットで回復するため、現状は小まめに電源をオフにしておくことで回避できそうです。
参考動画 28mm
ピント移動に伴うブリージングは僅か。ただし、最短撮影距離付近まで近寄るとブリージングが大きくなります。
参考動画 75mm
総評
ポイント
- Good:ポリカーボネート製鏡筒で軽量なレンズ(とりわけ小型と言う訳では無い)
- Good:軽量だが安っぽく無くしっかりとしたレンズの造り
- Good:全ての焦点距離と絞り値において大部分がシャープな描写
- Bad:最短撮影距離付近では周辺部や四隅の描写が非点収差などで荒れる
- Good:最短撮影距離付近ではボケが比較的滑らかとなる
- Bad:無限遠側へピントが移動するほどボケが硬くなる
- Note:暖色傾向で絞り開放から良好なコントラストと発色の描写
- Good:色収差はほとんどの状況で問題無し
- Note:周辺減光は補正オフで28mmと75mmで目立つ
- Note:歪曲は補正オフで28mmが中程度の樽型、75mmが僅かな糸巻き型
- Bad:フレアは抑えられているがゴーストが発生しやすい
- Bad:静かで正確なオートフォーカスだが速度は平凡
これは良いレンズ。「究極」では無いものの、「全体的に良くまとまっており、なおかつ手ごろな価格」のレンズ。
28-75mm F2.8 Di RXDは3万円台のキットレンズと10万円前後のFE24-70mm F4 ZAとの間を埋める素晴らしい選択肢と言えるのではないでしょうか。F2.8の明るさを抜きにしても「光学性能の高いズームレンズ」として検討する価値があると思います。
純正リニアモーター駆動のレンズほどオートフォーカスが速く無いのでアクションスポーツには不向きな面があるものの、AF性能がそこまで重要ではないポートレートや風景・旅行など様々なジャンルに適しています。
最も注意するべきは「人気高すぎて納品時期が全く分からない程に入手困難」であること。もしこのズームレンズを必要とするのであれば早めに注文入れておくべきでしょう。おそらく当分は「納期未定・お届けまで1か月以上」が続くはず…。
購入早見表
JANコードに対応しました。楽天・Yahoo・キタムラで出品を確認済
楽天市場 | Amazon | カメラのキタムラ | Yahoo | |
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管理人の作例(Flickr)
*逆光によりフレーム右下にゴーストが発生しています。
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