外観レビュー
外装
外観はニコンの標準単焦点らしいデザイン。
外装はほぼプラスチック。頑丈さで言うと全く不安の無い造りですが、実売15万円のレンズにしては質感が少し安っぽい。実用性を考慮すると金属外装よりも理にかなっているかもしれません。
とは言え描写の傾向を考えると趣味性の高い外装でも良かったかなと。
手に取ったサイズは標準単として許容できる大きさ(個人的に)。
シグマArtなど、レトロフォーカスタイプな新世代の標準単と比べてまだまだ小さい。
レンズフード
50mm F1.4Gなどの円形フードと異なり花形のプラスチックフードを採用しています。内側は反射を抑えてくれるマットな仕上げ。
遮光性の高さが期待できる反面、携帯性はよろしくない。
そもそも外筒の保護性や遮光性が高いため、普段はフード無しでも十分いける。しかし、プロテクトフィルターを装着するとフレアが発生しやすいためフード推奨。
フォーカスリング
フォーカシングはレンズ繰り出し式。しかし、50mm F1.4Gなどと同様に外筒内部でレンズの移動が完結するタイプ。
外筒に備わっている72mmフィルター溝へプロテクトフィルターを装着すると実質的にレンズが密閉されます。
繰り出し式のAFであることから分かるように、本レンズのフォーカス速度はそこまで速くありません。決して遅くは無いが、近接で動く被写体を捕捉するのは難しい。
フィルターサイズは72mm。
50mm F1.4Gの58mm径と比べてかなり大きい。ズームレンズは77mm径が多く、単焦点レンズでも72mmは一部の広角レンズで採用されている程度なので72mm径の互換性はよろしくない。
上に掲載した写真のようにフィルター面と前玉の空間が広いです。つまり極端な逆光シーンでフィルター面にフレアが発生する可能性が高いので状況に応じて脱着が必要かもしれません。
フォーカスリングの回転角は約130度。この画角のレンズとしては小さくもなく、大きくもなくと言ったところ。
リングは一部の高級マニュアルフォーカスレンズ程ではないものの、必要十分な滑らかさを持っています。
個人的な意見としてはもう少し幅の広いフォーカスリングが良かったです。
マウント側には防塵防滴用のシールが施されています。ただし50mm F1.8Gなどに採用されているものと同程度なので過信は禁物。
Gタイプレンズのため絞り羽根の機構やフォーカシングにより後玉が移動することでレンズ内部への隙間が発生します。このため密閉されているタイプと比べてレンズ内部へゴミが侵入する可能性が高い。
D850装着例
やや太めの鏡筒ですが、D850とのバランスは良好。
レンズフードを装着するとレンズ全長が2倍程度となるため、必要なければ外しておきたいところ。
実写レビュー
細かい描写は以前のレビューを参照してください。
後ボケは評判通りの滲みを伴う美しいボケ質。
特に近接の絞り開放はピント面すら滲むソフトな描写。他のガウスタイプなレンズと同様に絞ることで収差が安定するため、ソフトな表現が邪魔となる場合はF2.8以上に設定すると良い感じ。
滲む描写はピント距離がおよそ1m前後まで。それ以上となるとシャープな描写へ変化してゆきます。
滲みを伴う滑らかで綺麗なボケ質はおよそF2まで。
それ以上絞ると他のガウスタイプと比べて差を感じられなくなる。(それでもまだ十分に綺麗なボケ質ですが…)
絞り開放は球面収差のインパクトが強すぎるので、使い勝手が良いのはF1.8~F2.2のあたり。
とにかく近接の絞り開放はソフトフィルターを装着しているかのように滲むため、人によって「甘い描写」と感じるかも。
ピント面のシャープさを絞り開放から求める場合には別のレンズがおススメです。
F1.4大口径レンズらしく周辺減光は開放で目立つ。と言っても減光によるトンネル効果で印象的に写ることもしばしば。
1段絞ると減光が一気に半減。思った以上にフラットな描写となり、コントラストが低下したような錯覚を受けるかもしれません。
滲みを伴うボケは縁取りが弱く柔らかい描写となります。
このため、シャドーを持ち上げたりハイライトの諧調を調整した場合に不自然を感じない、感じにくいボケと言えるでしょう。RAW現像における柔軟性の高いレンズです。
例えば上の写真「フレーム右上のシャドーとハイライトの境界線における滲むボケ」。この部分のボケが硬いとトーン調整で不自然な描写となる可能性が高い。
イルミネーションのように暗いシーンではレンズの明るさが役に立ちます。
しかし、噴水などシャタースピードのシビアなコントロールが必要となる場面には不向きです。スローシャッターを使って動きを出したい場合には手振れ補正を搭載したレンズが有利と言えます。
58mm F1.4Gをあえて使うのであれば三脚推奨。
玉ボケは綺麗で非球面レンズ2枚の影響はほぼ皆無。しかし口径食が強く影響するレンズですので、周辺に玉ボケを配置すると大きく変形します。
イルミネーションの撮影で気になる軸上色収差はとても良好に補正されています。特に悪目立ちすることはないでしょう。
コマ収差などによる点光源の変形は少なからず発生しています。しかし、50mmの大口径単焦点としては非常に良好かなと感じるレベルまで抑えられています。
今回のおさらい
- 頑丈なプラスチック製の鏡筒(信頼性で言えばアリ、趣味性で言えばナシ)
- サイズは個人的に許容範囲内
- レンズフードは花形のプラスチック製で大きめのサイズ
- レンズマウント部に防塵防滴用と思われるシーリング
- 前玉は繰り出し式だが鏡筒内で完結
- フィルター面と前玉の空間が広いため逆光時の影響が懸念される
- フォーカスリングの回転角は約130度
- 滲みを伴う極上のボケ質
- F1.4の近接はピント面も滲むため、F1.8~F2.2が使いやすい
- 絞り解放の周辺減光が大きい
- 滲むボケはRAW現像時の柔軟性が高い
- イルミネーション撮影では向き不向きの被写体が存在する
シグマのように「開放からシャープ」と言う描写では無く、あくまでも50mm F1.8GやF1.4Gの延長線上に位置しているガウスタイプの親玉的な存在。
ピント距離による描写の変化が大きく、イメージした描写を得るためには絞り値に加えて撮影距離を考慮する必要がある。扱いづらいですが、それを使いこなす楽しさもあるレンズです。
使いやすい大口径単焦点を求めているのであれば、素直にシグマやタムロンのチョイスが無難。
NIKKOR 58mm F1.4Gを買うべきか?
単純に15万円の価格設定に「高性能なレンズ」という幻想を抱いているのであればおススメしません。まずは作例を十分に確認するべき。
近接の柔らかいピント面とボケ描写にほれ込んでしまったら替えが効かないレンズ。
個人的にスペシャルな描写と価格設定は納得。ただし、価格設定に対してレンズの外装や機能(AFの速度や防塵防滴など)は少しチープ。
マニュアルフォーカスレンズに金属鏡筒のナイスなレンズ「NOKTON 58mm F1.4 SLII S」が存在します。ただし、58Gと比較して僅かに後ボケが硬調。
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