パナソニック「LUMIX G9 PRO II」のレビュー第六弾を公開。多彩な拡大機能を持つAF/MF、概ね良好ながら逆光時などに不安定となるAF、細かい設定が可能なピーキングなどを紹介しています。
LUMIX G9 PRO IIのレビュー一覧
- パナソニック LUMIX G9 PRO II レビューVol.6 フォーカス 編
- パナソニック LUMIX G9 PRO II レビューVol.5 静止画ISO感度 編
- パナソニック LUMIX G9 PRO II レビューVol.4 メニュー・カスタマイズ編
- パナソニック LUMIX G9 PRO II レビューVol.3 ドライブ・連写編
- パナソニック LUMIX G9 PRO II レビューVol.2 ダイナミックレンジ 編
- パナソニック LUMIX G9 PRO II レビューVol.1 外観・操作 編
- LUMIX G9 PRO II ハンズオン 外観と起動時間やシャッター音の確認【更新】
Index
オートフォーカス
仕様の確認
AF方式
- 映像検出によるTTL方式(像面位相差AF/コントラストAF)
- 像面位相差:779点
- コントラスト:315点
LUMIX Gシリーズとしては初となる像面位相差検出に対応(位相差AFの詳細は割愛)。従来通りDFDテクノロジーを活かしたコントラストAFも利用するものの、位相差AF・DFD AFがそれぞれ動作するのか、同時並行で動作するのか詳細は不明。
カバーエリア
- 追尾
- フルエリア
- ゾーン 横・縦
- ゾーン
- 1点 補助
- 1点
- ピンポイント
従来から柔軟性の高いAFエリアが特徴的でしたが、G9 PRO IIでは「1点」に補助9点が追加。
1点のAFエリアを優先しつつ、9点の補助エリアでも追従を継続することが可能。動きが速い被写体などで重宝します。被写体検出モード動作中は補助エリアの枠まで検出対象となり、中央1点と補助点で比べて優先的に検出されるような動作は無し。。
普段使わないフォーカスエリアは表示から消すことが出来ます。素早くAFエリアを変更したい場合はおススメ。ピンポイントAFは従来通り「全画面拡大」「PIP(部分的な拡大)」を選択可能。後述する「AFスコープ」と動作設定は分離しているので、ピンポイントAFとして使いたい時の設定でOK。
AFポイントスコープ
G9 PRO IIの静止画における拡大機能は3つ。それぞれ全画面・PIPは個別に設定可能。
- MFアシスト:リング操作時やMF時のAFモードボタンで起動
- ピンポイントAF:AF時に自動的に拡大
- AFポイントスコープ:ライブビュー時にボタンを押すことで起動
AFポイントスコープは他社で言うところのシンプルな「拡大」機能に相当しますが。初期設定で「ボタンを押している間のみ拡大」する設定となっています(一般的な動作に変更することもできます)。
便利な機能ですが、注意点としてMFモード・MFレンズ装着中は利用することが出来ません。この際に拡大機能を利用する場合は「AFモード」を割り当てているボタンを押す必要があります。不便なので、MF中でもAFポイントスコープで拡大して欲しいところ。
自動認識
- 人物(「顔/瞳/身体」・「顔/瞳」)
- 動物(「体」・「瞳/体」)
- 車
- バイク
人物・動物・車両に対応。競合他社のような鉄道・航空機・昆虫には対応していません(検出することはあると思いますが)。人物認識の際は体の誤検出を防ぐために「顔/瞳」の検出のみに限定するモードあり。逆に動物認識の場合は「瞳」の検出をオフにするモードが用意されています。
測距輝度範囲
- EV-4~18(F2.0、ISO100・AFS)
スペックシート上はG9 PROから変化ありません。
メニュー
カスタマイズメニューでは関連する項目が3ページあります。特筆すべきことはありません。
ジョイスティックが8方向に対応
前モデルは上下左右の4方向操作でしたが、G9 PRO IIでは斜め方向を加えた8方向操作に対応。比較的便利になりましたが、競合機種であるOM-1などのジョイスティックと比べると斜め方向に動かしにくい。上下左右と斜めの動作切替にぎこちなさが残っています。
AF-S
パナソニックのAFSにはもともと不満ありませんでしたが、G9 PRO IIでも特に大きな問題はありません。あえて言えば、逆光時や低照度時のシャドー部分にピントを合わせようとすると苦労する場面に遭遇しました。これはG9 PRO IIのみならず、フルサイズのS5 IIでも似たような状況に遭遇したのでヴィーナスエンジンの癖なのかもしれません。今後のファームウェアアップデートで改善を期待したいところ。
AF-C
像面位相差AFに対応したことで被写体を滑らかに追従可能。コントラスト・DFD AFだったG9 PROも静止画ならば悪くない結果でしたが、近距離の小動物撮影にも使ってみようと感じる程度に使いやすくなっています。ただし、応答性は積層型CMOSのOM-1ほどではなく、近距離で不規則かつ高速移動する被写体を撮影する際は出遅れる可能性あり。
至近距離での撮影は依然としてオリンパス・OMDS有利と感じました。しかし、差を感じるのはそれくらいで、一般的な撮影距離で予測できる範囲内の撮影であれば特に苦労することはありません。AFSと同じく、逆光時・低照度時にピントが迷う場合があるのは将来的に改善して欲しいところ。
検出機能
人物の検出は従来通り。顔や瞳を検出できない場合でも、頭部を認識し続けています。キヤノンやソニー、ニコンなども被写体検出に対応し始めていますが、この距離で頭部を認識できる製品は多くありません。検出後の追従性能は見劣りするパナソニックですが、初動の検出性能はかなり良好。
眼鏡装着時でも頭部や顔は良好に検出しています。ただし、眼鏡越しの瞳検出は不安定となり、顔検出と瞳検出が交互に切り替わっているように見えます。
帽子をかぶっている状態では瞳を検出することができませんでした。頭部や顔の検出は可能であるものの、瞳にピントを合わせたい時は検出をオフにしたほうが良いかもしれません。
動物の検出は体・瞳どちらも良好。ただし、左右の瞳は検出後に粘り続ける傾向が見られ、手前側の瞳へ自動的に移動し辛くなっています。このあたりの挙動は他社のほうが良好。
瞳検出をオフにすると、体を検出した枠でピントを合わせ続けます。この際は枠内で最も手前側にピントを合わせる傾向。被写界深度の浅いレンズを使用すると、瞳ではなく体の最も手前部分にピントが合ってしまう可能性あり。
2体の被写体を配置した場合、最初に検出した被写体を粘り強く追従しています。他社では瞳の検出が外れた途端、別の被写体へ乗り移ってしまう場合あり。これはパナソニックの「動物 体」検出が良好で、瞳検出から滑らかに体検出へ移行しているためと思われます。他社の場合は瞳検出が途切れた場合に体を検出せず、別の被写体の瞳を検出してしまうためと予想。
瞳検出をオフにすると大きい被写体であれば効果的に追従し続けていることが分かります。ただし、小さい被写体の場合、検出が途切れてしまうと他の被写体へ乗り得ることがある模様。
マニュアルフォーカス
フォーカスアシスト
G9 PRO IIのMFアシスト(自動拡大)機能は4つの設定があります。
- フォーカスリング:MF時にリング操作で拡大
- AFモード:AFモード中にリング操作で拡大
(AF+MF設定をonにしておく必要あり) - ジョイスティックを押す:MFモード中にジョイスティックを押し込むと拡大
- MFアシスト表示:全画面・PIPのどちらかを選択
呼び出す方法が複数あるので便利。前述したようにAFポイントスコープやピンポイントAFとは設定が分離しているので、MFアシストに合わせた設定が可能となっています。
ピーキング
コントラストが高い位置を強調・色づけすることで、ピント位置を確認しやすくするピーキング機能を搭載。MFアシストとは異なり、撮影メニューに配置されています。ピーキングは感度の設定(他社でいうところの強度)や表示色、AFS時の表示(AF後のみ)、MF時の表示に関する詳細設定を変更可能。ライブビュー拡大中のみピーキングをオフにできる機能も備わっています。
合焦判定を確認できる機能はない
ピーキングはあくまでもコントラストを強調しているだけ。キヤノンのフォーカスガイドやニコンのフォーカスエイドのように、位相差検出を利用して合焦やピント位置を視覚的に確認できる機能ではありません。高精度のピント合わせが要求される場合はMFアシストなど拡大機能を使った方が良いでしょう。
まとめ
像面位相差AFの搭載により、被写体を滑らかに追従できるようになったと実感しています。前モデルもコントラストAFながら健闘していたものの、ライブビュー中の挙動は間違いなくG9 PRO IIのほうが快適。大デフォーカスからの復帰も滑らかで、狙った場所に向かって素早くピントが合うようになりました。体感として、オリンパスレンズよりもパナソニック純正レンズのほうが応答性が良好。
テストでは追尾AFのサンプル動画を撮り忘れましたが、少なくともオリンパス・OMDSのC-AF+TRよりも安定した動作を期待できます。(ソニーやキヤノンと比べると見劣りしますが)
被写体検出は前モデルから実装済みですが、AFCでの使用がさらに快適。前モデルも検出は精度は良好でしたが、追従しながら検出するには処理回数が少なかった印象があります(応答性がイマイチだった)。特に体の検出は競合他社よりも良好で、公式では非対応ながら魚なども検出可能。瞳の検出もまずまず良好ですが、手前の瞳に切り替わりにくい点は要改善。動物は体を良好に検出しますが、頭部のみの検出には対応していません。
このため、瞳を検出できない場合は「体」に切り替わり、体で最も手前の領域にピントを合わせる傾向あり。この結果、ピント合わせたい場所よりも手前に合焦する場合も多い。(例えば上の写真のような)将来的に、動物も「頭部」の検出に対応して欲しいところです。個人的に気になったのが低照度や逆光時におけるAFの挙動。ローコントラスト・シャドーの領域でAFを動作すると合焦に失敗、速度低下することがしばしばありました。他社も苦手な領域ではありますが、それでも、比較してやや不安定な動作が目立つかなと。
参考情報
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