キヤノン「EOS R7」のレビュー第二弾を公開。今回はカメラの連写速度やバッファ性能、そして電子シャッターを使った際のローリングシャッターについてチェックしています。
EOS R7のレビュー一覧
- キヤノン EOS R7 徹底レビュー 完全版
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.8 カスタマイズ編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.7 AF・MF編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.6 解像性能編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.5 ISO感度編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.4 ダイナミックレンジ編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.3 メニュー編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.2 ドライブ編
- キヤノン「EOS R7」徹底レビューVol.1 外観・操作性編
- キヤノン EOS R7 ハンズオン 外観と起動時間やシャッター音の確認
連写・ドライブ
連写速度
EOS R7の連写速度(メカニカル・電子シャッター)はキヤノンの仕様表を参考にすると以下の通りだ。
メカ | 電子 | |
高速連続撮影+ | 15 | 30 |
高速連続撮影 | 8 | 15 |
低速連続撮影 | 3 | 3 |
APS-Cでは珍しいノンクロップの30fpsに対応した連続撮影速度に対応している。富士フイルムも最大30fpsに対応しているが、この際は1.25倍のクロップが必要だ。(ただし、最新X-H2Sは積層型CMOSセンサーで40fpsの連写速度となっている)
さらにメカニカルシャッターも15fpsに対応しているため、電子シャッターでは撮影できないようなシーン(高速移動・フラッシュ使用など)でも一眼レフのスポーツモデル並の高速連写が可能だ。
バッファ・バッファクリア
EOS R7のバッファは仕様表でRAW46枚(SD UHS-IIで59枚)となっている。実際に手持ちの環境でテストした結果が以下の通りである。
撮影条件
- EOS R7 電子シャッター
- RF50mm F1.8 STM(MFで固定)
- 絞り優先 F1.8 ISO 100 SS 1/1000秒
- ProGrade Digital COBALT SD UHS-II 64GB
- 5秒・10秒・15秒の連続撮影で撮影できた枚数をカウント
- RAW・C-RAW・RAW+JPEG出力でそれぞれテスト
RAW | 5秒 | 10秒 | 15秒 |
15コマ秒 | 49 | 62 | 86 |
30コマ秒 | 52 | 73 | 87 |
RAW出力でのテストでは、5秒を待たずしてバッファが詰まり、その後はバッファが少し回復したら連続撮影が再開可能となる。1枚ごとにバッファの空き容量が復活するわけでは無いので、バッファが底をついてしまうと低間隔での撮影が難しくなる。
連写→バッファ尽きる(撮影不可)→バッファクリア中(撮影不可)→10枚程度のバッファ回復(撮影可能)→連写→バッファ尽きる…
このため、撮影するタイミングによっては全くシャッターが切れず、思ったよりも長い空白期間が発生してしまうので気を付けたい。無駄うちは避けたいところだが、連写速度や撮影枚数の制限など、他社にある便利機能が使えないのは残念だ。
C-RAW | 5秒 | 10秒 | 15秒 |
15コマ秒 | 77 | 97 | 134 |
30コマ秒 | 73 | 109 | 134 |
圧縮によるファイルサイズ減で書き込み速度が向上する「C-RAW」を使うことで時間あたりの撮影枚数を増やすことが可能だ。ただし、この場合もバッファが詰まると長い空白期間が発生してしまう。
RAW+JPEG | 5秒 | 10秒 | 15秒 |
30コマ秒 | 49 | 64 | 86 |
ついでにRAW+JPEG(L)でもテストしてみたが、JPEGが結果に及ぼす影響は極僅かだ。連続撮影枚数のためにJPEGを省略しても効果はほとんど期待できない。
Kingston RAW | 5秒 | 10秒 | 15秒 |
30コマ秒 | 49 | 71 | 86 |
同様のテストを低価格なSD UHS-IIカードであるKingston 32GB(購入時は2900円程度)で試してみたところ、結果はProGrade Digital COBALTとほぼ同じ枚数となった。コストパフォーマンスを求めるのであれば手ごろな価格のSD UHS-IIで十分である。
オートISO
従来機と同じくAUTO ISO感度設定の機能を利用可能だ。使用するISO感度設定の下限・上限を設定できるほか、オート時のISOレンジも限定可能。さらに、オートISO時にシャッター低速限界を設定することで手ぶれや被写体ブレを抑えつつ、絞り優先AEなどを利用することもできる。
低速限界設定は焦点距離に応じて変化する「自動設定」モードがあり、標準ではレンズに応じて「1/焦点距離」となるシャッタースピードが下限になる。これは前後3段階で調整可能で、1目盛り1段分の調整幅となる。つまり、50mmレンズ(APS-Cでは80mm相当)を装着すると標準で1/80秒が下限となり、1目盛り「速め」に調整すると、下限は1/160秒となる。
また、低速限界設定の手動設定も可能だ。調整幅は1/8000秒から1秒まで1段刻みで設定可能。被写体ぶれなどを抑えたい場合はこちらを活用するのがおススメだ。この場合、設定は小まめに切替たいところだが、残念ながらショートカットボタンは存在しない。マイメニューに登録して操作速度を改善することは出来る。
ローリングシャッター
CMOSセンサー全体を一度に露光出来るのが理想的だが、現在は発熱やノイズなど、様々な問題から実現に至っていない。現在はイメージセンサーの上ラインから下ラインまで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的だ。言葉で説明しても難しいので、下部の動画で分かりやすい。
動画のように、コンシューマー向けのデジタルカメラは大部分がローリングシャッター方式を採用したイメージセンサーを使用している。海外企業で「PIXII」のようなカメラがグローバルシャッターを採用しているが、国産ミラーレスでこの方式を採用しているカメラは存在しない。(キヤノンの業務用向けカムコーダーくらい)
実際にこのカメラのローリングシャッターの影響を調べた結果が以下の通りだ。
ご覧のように扇風機の羽根が不自然な描写となってしまっている。ローリングシャッター方式では、このように高速移動する被写体を撮影する際に問題が発生する。他のカメラではどのような影響があるのか?は以下の通り。
ご覧の通り、どのミラーレスカメラにしても影響は少なからず発生している。同じ3250万画素のEOS 90DやフルサイズのEOS Rと比べると良好で、X-S10やZ fcの12bit RAWと同程度だ。ただし、EOS R5や4/3型の最新センサーほどではない。Z fcと同程度であるところを見ると、スキャンレートは24ms程度だと思われる。
まとめ
APS-Cミラーレスとしては優れた連写性能を備えている。最大30コマ秒の高速連写に対応しており、ローリングシャッターが問題となる場合でも15コマ秒のメカニカルシャッターを利用可能だ。従来通りISOオート機能も揃っているが、出来れば低速限界設定をこまめに変更できるショートカットを用意して欲しかった。
SD UHS-IIのためバッファクリアは少し遅めで、30コマ秒を使用すると2秒も持たずにバッファが詰まってしまうのは残念である。出来れば高速転送が可能なCFexpressカードを利用できると良かった。とは言え、一般的な撮影としては十分な撮影枚数を稼ぐことができる。ただ、バッファが詰まると一定量のバッファが回復するまでシャッターが切れなくなる仕様は改善して欲しい。
参考情報
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