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M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0 レンズレビューVol.4 諸収差編

「M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0」のレビュー第四弾 諸収差編を公開。やや癖のある光学性能ですが、マイクロフォーサーズの中でも古い設計の小型軽量 F2レンズと考えると許容範囲内。

簡易的なまとめ

全体的に見て、やや癖のある光学性能ですが、2011年に設計された小型軽量な明るい12mmレンズと考えると許容範囲内。出来ることと出来ないこと、対応手段などを理解して使えば面白いスナップレンズになると思います。

Overall, the optical performance is a little quirky, but when you consider that it is a small, lightweight, bright 12mm lens designed in 2011, it is within acceptable limits. If you understand what it can and cannot do, and how to deal with it, I think it will be an interesting snapshot lens.

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

以下の作例は「F2でフレーム中央ピント合わせ」「F2でフレーム周辺ピント合わせ」で撮影した写真をクロップしたもの。

作例を見るとわかるように、ピントを合わせる場所によってフレーム内でピントが合う位置が変化します。F2で遠景のパンフォーカスは不可能であるため、全てにピントを合わせるためにはかなり絞る必要があります。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

若干の色づきがあるものの、問題は軽微。後処理で簡単に補正することができ、その際の影響はほとんどありません。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

若干の色づきを確認できるものの、過度ではなく無視できる程度。高輝度・高コントラストのシーン以外で目立つことは少ないと思われます。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

レンズ補正を適用しない場合、樽型の目立つ歪曲収差が残存しています。最近のミラーレス用レンズでは一般的な手法ですが、一眼レフが主流の2011年時点でこのような設計を採用していたのはオリンパスとパナソニックくらいでしょうか。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

過度ではないものの、影響があるのは明らか。フレーム隅におけるコントラスト低下の一因となっています。幸いにも、1段絞ると大幅に改善します。

球面収差

ピント面前後の点光源に関して描写の違いは僅か。球面収差は良好に補正されているように見えます。

まとめ

大口径レンズとして気になる色収差はまずまず良好な補正状態ですが、売り出し価格7万円と考えると完璧ではありません。特にボケの色づきが目につく場合があるため、気になるシーンでは少し絞る必要があります。

樽型歪曲収差は未補正RAWで人工物を撮影すると目立ちます。とはいえ、カメラ内JPEGや一般的な現像ソフトではプロファイルを使って修正可能。特に大きな問題とはなりません。

明るい広角レンズの特性を活かして低照度の撮影に使いたいところですが、残念ながら像面湾曲の影響が強い。フレーム全体を被写界深度内に入れるためには絞りを調整するか、MFでピント位置を細かく調整する必要があります。また、コマ収差の補正状態が完璧ではないため、F2の絞り開放では隅に向かって点光源の変形が見られます。

全体的に見て、やや癖のある光学性能ですが、2011年に設計された小型軽量な明るい12mmレンズと考えると許容範囲内。出来ることと出来ないこと、対応手段などを理解して使えば面白いスナップレンズになると思います。

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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