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銘匠光学 TTArtisan 100mm f/2.8 M42 レンズレビューVol.5 ボケ 編

銘匠光学「TTArtisan 100mm f/2.8 M42」のレビュー第五弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。

TTArtisan 100mm f/2.8 M42のレビュー一覧

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

ピント面の直前・直後はどちらも滲むように柔らかいボケ質が得られます。ボケが大きくなると、縁取りの硬い後ボケと、溶けるような描写の前ボケに分かれていきます。ただし、軸上色収差が良好に補正されているため、硬い後ボケでも過度に悪目立ちはしていないように見えます。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

非球面レンズを使用していないためか、玉ボケの内側は非常に滑らかで綺麗。球面収差の影響で極めて強い縁取りが発生しているものの、それがこのレンズの個性であり、強みと言える描写となっています。また、口径食の影響が少なく、四隅まで変形の少ない玉ボケが得られます。
一段絞ると球面収差や軸上色収差が綺麗に解消。絞り羽根の影響も目立たず、使い勝手の良いボケが得られます。口径食もF4で解消します。

ボケ実写

至近距離

近距離

中距離

ポートレート距離

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。

球面収差の影響で間違いなく後ボケは硬め。しかし、ボケの色づきはほとんどなく、口径食は目立たず、硬調ながらも自然な描写で不快な印象はなし。撮影距離が短くなると玉ボケが強調されやすくなるものの、それがこのレンズの特徴。

まとめ

強い縁取りのある背景の玉ボケが本レンズの醍醐味。被写体と背景との距離や露出が重要となり、狙った構図で玉ボケを作りだすのは難しいですが面白い。地味な背景でもシャボン玉ボケを演出することでキラキラした背景を得ることができます。ピント面はハロっぽいですが程よくシャープで、使いやすい。繰り返しとなりますが、手を加えない環境で、狙った被写体とシャボン玉ボケを両立させるのはかなり難しいです。適切なサイズ・露出となる複数の点光源が必要となるので、木洩れ日や水面・金属素材の照り返しなどを上手く利用する必要があります。適切なシャボン玉ボケが得られたとしても、多くのシーンで逆光となるので、被写体を明るく照らすフラッシュか、RAW現像で被写体側の露出を持ち上げる必要があるかもしれません。また、レンズの最短撮影距離が長く、被写体と背景の距離を調整し辛いのも厄介なポイント。できるのであれば、M42-VMマウント経由で、VMマウント用のクローズフォーカスアダプターを使用するのがおススメです(アダプター側が疑似的な接写リングの役割となる)。シャボン玉ボケだけのレンズかと思いきやそうでもなく、シンプルなレンズ構成でヌケが良く、絞れば滑らかなボケを得ることが出来ます、色収差や口径食など、目障りとなる原因が良く抑えられ、癖の少ない描写です。MFレンズに3万円を出すことができるかどうか悩ましいところですが、MFの操作や設定に抵抗がなければおススメの一本です。

購入早見表

作例

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