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銘匠光学 TTArtisan 100mm f/2.8 M42 レンズレビューVol.4 諸収差 編

銘匠光学「TTArtisan 100mm f/2.8 M42」のレビュー第四弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。

TTArtisan 100mm f/2.8 M42のレビュー一覧

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

*F2.8は隅の結像が甘すぎるので、今回はF4で撮影しています。

像面湾曲はゼロと言えないものの、極端なピント位置のずれは無いようです。少なくともパンフォーカスが必要な小絞りで大きな問題となることはありません。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

3群3枚のシンプルな構成ですが倍率色収差は良好に補正されています。ソフト側で補正する必要性は低い。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

軸上色収差

完璧な補正状態とは言えませんが、倍率色収差と同じくシンプルな光学系としては思いのほか良好な結果が得られています。残存する収差も、ピント手前は滲むようなボケで分散し、ボケが硬くなる後方でも特に目立ちません。

球面収差

前後のボケ質に大きな差が残る程度に球面収差が発生しています。このレンズの特徴となる「シャボン玉ボケ」も球面収差によるものであり、意図的に残された収差です。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

よく見ると少し複雑な歪曲収差が残っているようにも見えますが、基本的には良好な補正状態を実現しているように見えます。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

非点収差・コマ収差ともにいくらか残存しているように見えます。過度な影響ではありませんが、抑え込むためには2~3段絞る必要あり。

まとめ

3群3枚の非常にシンプルなレンズですが、色収差に関しては驚くほど良好に補正されています。かなり厳しめの環境でも色収差が悪目立ちすることはありません。積極的に絞り開放を使いたくなるレンズです。非点収差やコマ収差の補正は完璧と言えず、フレーム周辺部では僅かに目立ちます。夜間における点光源や木洩れ日などでは目に付く可能性あり。と言っても、このレンズでF2.8の風景撮影・夜景撮影する人は多くないと思われ、絞れば大きく改善します。このレンズの特徴的な描写である「シャボン玉ボケ」の原因となる球面収差はF2.8でのみ強めに残存。F4まで絞ると大きく改善するため、シャボン玉ボケを楽しみたいのであればF2.8に固執する必要があり。シャボン玉ボケが不要と感じる場合は簡単に調整することが出来ます。全体的に見て、3群3枚のシンプルな構成で驚くほど良く写るレンズです。残存する収差は絞りで調整することができ、癖が少なくコントロールしやすいのがGood。F2.8でシャボン玉ボケを楽しんだり、F4以降で「普通に写りの良い100mm単焦点」として利用することも出来ます。下手に中古の100mm F2.8オールレンズに手を出すくらいであれば、TTArtisan 100mm F2.8 M42を検討するのもアリ。

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