銘匠光学「TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。
TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macroのレビュー一覧
- TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro レンズレビュー 完全版
- TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro レンズレビューVol.5 諸収差 編
- TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro レンズレビューVol.4 ボケ編
- TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro レンズレビューVol.3 遠景解像編
- TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro レンズレビューVol.2 解像チャート編
- TTArtisan TS 100mm F2.8 2X Macro レンズレビューVol.1 外観・操作編
Index
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
実写で確認
倍率色収差はわずかに残存していますが、良好と言える水準で光学的に補正されています。少なくともティルト・シフト未使用の時は良好な結果を得ることが出来ます。シフト時のフレーム端はこれよりも目立ちますが、現像ソフトなどで簡単に修正することが可能。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
絞り開放のF2.8から厳しい状況でもほとんど目に付かない程度に良く抑えられています。このレンズで軸上色収差に悩まされる機会は非常に稀。
球面収差
良好な補正状態に見えますが、ボケの縁取りに違いあり。後ボケは縁取りのない柔らかいボケである一方、前ボケは僅かに縁取りが発生。実写ではほとんど気にならない違いがと思われます。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
未補正では極めて僅かな糸巻き型の歪曲収差が残っています。このままでも問題ありませんが直線的な被写体をフレームに入れる際はLightroomの手動補正で「+3」くらいの調整で解消します。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
完璧とは言えませんが、大きくクロップして初めて識別できる程度の小さな収差に抑えられています。
まとめ
TTArtisanはアポクロマート設計とは主張していませんが、少なくとも軸上色収差はとても良好に補正されています。倍率色収差に関してもシフト撮影しなければ問題と感じることはほぼ無いはず。補正状態はマクロ撮影時も同様で、厳しい光環境でも色ずれの影響はごく僅か。
歪曲収差やコマ収差はほとんど気にならないレベルまで補正されています。球面収差の補正状態も良く、前後どちらのボケを大きくしても悪目立ちすることは無いでしょう。全体的にマクロレンズらしい高度な補正状態のレンズと感じました。ティルト・シフト撮影が特徴的なレンズではありますが、単純に100mm F2.8マクロレンズとしても優れています。
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作例
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