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銘匠光学 TTArtisan 250mm F5.6 Reflex レンズレビュー完全版

このページでは銘匠光学「TTArtisan 250mm F5.6 Reflex」のレビューを掲載しています。

製品提供

このレビューは焦点工房より無償提供された製品を使用しています。金銭の授受やレビュー内容の指示は一切ないことを最初に明言しておきます。無料であること、購入した製品ではないことに対する無意識のバイアスは否定できませんが、できるだけ客観的な評価を心がけています。

TTArtisan 250mm F5.6 Reflexのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 やや高めだが競合製品無し
サイズ コンパクト
重量 金属鏡筒の塊感
操作性 MFリングがわずかに緩い
解像性能 適度な解像・コントラスト
ボケ 個性的なリングボケ
色収差 皆無
歪曲収差 皆無
コマ収差・非点収差 非常に良好
周辺減光 穏やかな影響あり
逆光耐性 中央付近で影響大
満足度 やや高価だが使い勝手の良いミラーレンズ

評価:

高価だが使い勝手の良いミラーレンズ

ミラーレンズとしてはやや高価ですが、250mmと短い焦点距離に加えてコンパクトサイズで汎用性が高い。光学性能は良好で、フォーカスリングの操作性もまずまず良好。被写体が決まっていないけど、ミラーレンズを使ってみたい人、リングボケを主な目的とする人にはおススメしやすい一本。

ただし、M42マウントのため、アダプターの追加投資が必要となる可能性が高い点には注意が必要。

まえがき

2024年に登場したM42スクリューマウントのミラーレンズ。「MINOLTA RF ROKKOR 250mm F5.6」のオマージュと思われる外観デザインやパラメータで、コンパクトで適度に明るい望遠レンズを実現しています。M42マウントのため、現代のカメラに直接装着することは出来ませんが、アダプター経由でミラーレスや一眼レフカメラで利用することが可能。

5群6枚のレンズ構成で鏡筒はアルミニウム合金製。全長が66mmと短く、重量は380gと非常に軽量。フルマニュアルレンズですが、携帯性の高い「250mm F5.6」となっています。MTFのピーク値は高いと言えないものの、フレーム周辺まで安定感のある結果を得ることができるようです。

価格のチェック

売り出し価格は約6万円。フルマニュアルの「250mm F5.6」としては高く、Tokina製のF8ミラーレンズのほうが全体的に手頃な価格。悩ましい価格設定ですが、250mmと比較的扱いやすい焦点距離をカバーする競合製品はほとんど存在しません。

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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

ここ最近の銘匠光学らしく、シルバーを基調としたカラーリングの箱にレンズの光学系や外装の図面がプリントされています。「イケてるデザインか?」というと好みが分かれると思いますが、従来のTTArtisanと比べると少しモダンなデザイン。中のデザインは従来どおり。レンズ本体のほか、レンズフードやレンズキャップが付属。アダプターは同梱していないので、M42マウント以外のカメラで使用する際は別途用意しておく必要があります。

外観

他のTTArtisanレンズと同じく、鏡筒は総金属製の頑丈な作り。マウント付近や、フォーカスリングもゴム製ではなく金属パーツを加工したグリップ。「MINOLTA RF ROKKOR 250mm F5.6」のオマージュであるためか、現代のカメラと組み合わせるには少し野暮ったいデザインにも見えます。

 

ピント距離やTTArtisanのロゴ、シリアルはプリントしたもの。「250mm f5.6」のみ加工のうえから塗装されています。

ハンズオン

コンパクトな250mmレンズですが、380gの重量は(見た目に反して)少し重い。とはいえ、ガラスと金属の塊であり、安っぽさはありません。

前玉・後玉

前面は67mmフィルターに対応。マルチコーティング処理されているものの、フッ素コーティングを採用しているかどうかは不明。水滴や汚れの付着が想定されるシーンではプロテクトフィルターの装着がおススメ。前面を保護する役割もあるレンズフードは小さく、物理的なダメージを防ぎきれない場合も想定されます。

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金属製レンズマウントは4本のビスで本体に固定。電子接点や防滴用シーリングなどは見当たりません。

フォーカスリング

鏡筒の大部分は幅広のフォーカスリング。フィルターソケットごと回転するため、C-PLフィルターと相性が悪い。リングは滑らかに回転しますが、少し触れただけでピント位置がずれる可能性があります。もう少し重めの抵抗感があっても良かったと思いました。

ストロークは2mの最短撮影距離から無限遠まで180度を少し超えるくらい。長めのストロークであり、近距離の浅い被写界深度でも微調整が可能。ただし、近距離から遠距離まで素早いフォーカス操作には不向きです。

装着例

アダプター経由でLUMIX S5IIに装着。SHOTEN製のM42アダプターとレンズの外観はよく似ているので組み合わせやすい。もともと重量のあるレンズにアダプター、頑丈なカメラボディを組み合わせることで、手に取った際の重量感は重め。

MF

フォーカススピード

前述したように、ストロークが長いので素早い操作には不向き。しかし微調整しやすいので、結果的に合焦まで素早い操作が可能と言えるかもしれません。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

繰り出し式フォーカスのため画角変化は目立つと思われますが、F値固定で被写界深度が浅め。画角の変化が目立つ前に被写界深度から外れてしまう可能性が高い。

精度

前述した通り、ストロークが長く微調整が容易。高精度でのピント合わせが可能です。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2024.05.09:晴れ
  • カメラ:LUMIX S5II
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • 同じ被写体をフレーム中央・周辺・隅に配置して撮影
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC

テスト結果

適度なコントラストと解像性能で、中央から隅まで均質的なパフォーマンスを発揮。周辺減光と口径食以外で大きな差はありません。細部の解像性能やコントラストも良く、風景写真などでも利用可能と感じました。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

テスト結果

大きな問題はありません。最小限の光学レンズしか使用していないミラーレンズらしい結果と言えそうです。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

テスト結果

倍率色収差と同じく、ミラーレンズらしく優れた結果。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

歪みは知覚できないくらいに抑えられています。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

テスト環境

良好な結果で問題はありません。

ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

テスト結果

ミラーレンズらしい玉ボケが得られます。口径食による楕円形の歪みは目立ちませんが、リングボケの形状が変化し、四隅は馬の蹄のような形となっています。

ボケ実写

いつもの被写体をフレーム一杯に写すと、ボケが大きくなりすぎてリングボケが目立ちません。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。「250mm F5.6」の適度な焦点距離とF値の結果、ポートレートの撮影距離では無難に使えそうなサイズのリングボケを得ることができます。癖の強い描写ですが、一般的なレンズでは得られない結果と言えるでしょう。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

テスト結果

全体的にフレーム隅に向かって僅かな光量低下があります。絞りによる改善が出来ないので、後処理による補正が必須。幸いにも、減光効果は極端な強度ではありません。

逆光耐性・光条

中央

強い光源を正面から受けることで、リング状のフレアが発生します。フレームの広い範囲に影響を及ぼすため、(意図的にフレアを発生させる場合を除いて)撮影結果が破綻する可能性あり。光源はできるだけ中央を避けたほうが良いでしょう。

よく見るとリング状のフレアがフレームにかかっていますが、中央に光源がある場合よりも影響が軽微。

光条

絞りが無いので光条は発生しません。

 

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 扱いやすい焦点距離
  • コンパクト
  • 良好な解像性能とコントラスト
  • 諸収差が良く抑えられている
  • 個性的なリングボケ
  • M42マウント

一般的なミラーレンズよりも焦点距離が短く、画角が広いため扱いやすい。適度なサイズの玉ボケを作りやすく、ミラーレンズらしいリングボケを簡単に得ることが出来ます。光学性能は全体的に良好で、フレーム隅まで解像性能・コントラストが良好。M42マウントのため、追加のアダプターが必要ではあるものの、様々なマウントのミラーレスカメラに適合させることが出来ます。

悪かったところ

ココに注意

  • やや高価
  • 逆光時の強いフレア
  • 最短撮影距離が長い
  • M42マウント

撮影で最も気になったのは最短撮影距離が長いこと。当然ながら小さい被写体をクローズアップするのには限界があります。とは言っても、マクロレンズのように使わなければ十分な撮影倍率だとは思いますが…。逆光耐性も注意点の一つですが、これは光源を避けることで回避しやすい問題。

おそらく、多くの人にとって最も悩ましいのは価格設定。フルマニュアルのミラーレンズに6万円近い対価を払うことができるかどうか。Kenkoのミラーレンズよりも高価であり、さらにM42マウント用のアダプター購入費用も加える必要があります。

結論

「望遠レンズを低価格で入手したい」人におススメできるレンズではありません。そのような人は200/300mmクラスのAFレンズを同程度(もしくは少し高め)の価格で、入手したほうが良いでしょう。画質は多少低下するかもしれませんが、MFレンズで癖のつよいリングボケの望遠レンズは取り扱いに困る可能性が高い。

本レンズは、以下の特徴を強みと捉えることが出来る人が、初めて購入を検討できるのかなと。

  • 「250mm」のミラーレンズ
  • 個性的なリングボケ
  • コンパクト
  • M42マウント

比較的画角が広いので風景撮影に使いやすく、撮影距離が長くなりすぎないポートレート撮影にも使えると感じました。用途が限定されがちな400mmや600mmのミラーレンズと比べて汎用性が高い。光学性能は十分良好で、安めのAFズームレンズよりは周辺画質が安定していると感じるかもしれません。2024年にM42スクリューマウントの新製品が登場するとは想像もしていませんでしたが、幸いにもミラーレスに装着するためのアダプターは市場に揃っています。様々なミラーレス・一眼レフで使うことができると考えると費用対効果は高い。(追加投資が必要ですが…)おススメできるのは、写真にリングボケを取り入れてみたい人。野鳥など望遠レンズが本当に欲しい人にとって焦点距離は短めで使い辛いと感じはず。小動物やポートレート、スナップなどでリングボケを使ってみたい人にとって面白い選択肢になると思います。

購入早見表

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作例

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