このページでは「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」のレビューを掲載しています。
NIKKOR Z 35mm f/1.8 Sのレビュー一覧
レンズの評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | やや高め | |
サイズ | このクラスでは大きめ | |
重量 | このクラスでは重め | |
操作性 | シンプルだが使いやすい | |
AF性能 | 静止画・動画どちらにも適する | |
解像性能 | 撮影距離による変動が少ない | |
ボケ | 撮影距離による変動が少なく綺麗 | |
色収差 | 完璧ではないが良好な補正状態 | |
歪曲収差 | 穏やかな樽型 | |
コマ収差・非点収差 | 穏やかで無視できる程度 | |
周辺減光 | 撮影距離に関わらず目立つ | |
逆光耐性 | とても良好 | |
満足度 | 安定した結果が得られるプロ仕様 |
評価:
ポイント
35mm F1.8 でベストの選択肢
癖が少なく、堅牢で耐候性があり、様々な環境で使いやすい 35mm F1.8。言ってしまえばプロ仕様。撮影距離による画質の変動も少なく、近距離でのクローズアップから全身ポートレートまでムラなく使える便利なレンズです。
没個性的で面白さはないかもしれませんが、そのぶん安定感があり信頼できるレンズに仕上がっています。Z 50mm f1.8 S と比べると気になる部分も多いですが、中価格帯の35mmレンズとしては高水準にまとまっています。このクラスでベストを尽くすなら検討する価値のある一本。
This 35mm F1.8 lens has minimal quirks, is durable, weather-resistant, and easy to use in a variety of environments. In short, it's professional-grade. It exhibits minimal changes in image quality with shooting distance, making it a convenient lens that can be used seamlessly from close-ups to full-body portraits.
While it may lack individuality and excitement, it offers stability and reliability. Compared to the Z 50mm f1.8 S, there are several areas that may raise concerns, but as a mid-range 35mm lens, it is well-balanced and of high quality. If you're looking for the best in this class, it's definitely worth considering.
Index
まえがき
- 発売日:2018年 9月28日
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickr
2018年にニコンZシステム始動時にリリースされたレンズ3本のうちの一つ。
今でこそF1.4やF1.2レンズが存在するものの、最初の5年間くらいは 35mm F1.8 S が35mm唯一の選択肢でした。最初の単焦点レンズとして、使いやすい焦点距離の本製品を選んだ人も多かったのではないでしょうか。
現在は「NIKKOR Z 35mm f/1.4」「NIKKOR Z 35mm f/1.2 S」のほか、リバースエンジニアリングと思われるサードパーティ製の35mmを利用可能。選択肢が広がっています。しかし、純正品で汎用性の高いレンズとして、35mm F1.8 S を検討している人はまだ多いはず。
主な仕様
35mm F1.8としては平均的な9群11枚のレンズ構成。構成中には2枚のEDレンズと3枚の非球面レンズを採用。ナノクリスタルコートを採用するなど、力の入った製品となっています。
AFは2系統のフォーカスユニットを動かすマルチフォーカス方式を採用。「近距離の収差を劇的に改善しながら、極めて高いピント精度と高速なAF制御を実現」とニコンが言及しています。
レンズマウント | Z |
対応センサー | フルサイズ |
焦点距離 | 35mm |
レンズ構成 | 9群11枚 |
開放絞り | F1.8 |
最小絞り | F16 |
絞り羽根 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.25m |
最大撮影倍率 | 0.19倍 |
フィルター径 | 62mm |
手振れ補正 | - |
テレコン | - |
コーティング | ナノクリスタル SIC |
サイズ | φ73.0×86.0mm |
重量 | 370g |
防塵防滴 | 対応 |
AF | STM マルチフォーカス |
絞りリング | - |
その他のコントロール | AF/MFスイッチ |
付属品 | レンズフード ポーチ |
価格のチェック
売り出し価格は10万円前後。光学性能・ビルドクオリティを高めた「S-Line」シリーズらしく、35mm F1.8 レンズとしてはやや高価。キヤノン・ソニー・パナソニックなど競合他社を見渡しても、本製品が最も高価な35mm F1.8となっています。それだけのクオリティを実現していると期待したいところ。
NIKKOR Z 35mm f/1.8 S | |||
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
NIKKOR Zらしい、黒と黄色を基調としたデザインの箱。35mm単焦点レンズとしては箱のサイズが少し大きめ。50mm F1.8 S-Lineと同程度。
レンズ本体のほかに、レンズフードとポーチ、通常のつまみ式キャップ、説明書・保証書が付属します。
外観
NIKKOR Z レンズとしては古い世代のレンズデザイン。「NIKKOR」「S-Line」のロゴはまとめて側面に配置され、レンズ上部には焦点距離とF値のみ掲載。独立したコントロールリングは存在せず、幅広いフォーカスリングが鏡筒の大部分を占めています。
鏡筒の素材はフォーカスリングの前後にプラスチックパーツを使用、フォーカスリングやマウント付近には金属パーツを使用しています。質感は悪くなく、幅広いフォーカスリングの存在で「頑丈な金属鏡筒」のような印象。
一見するとシンプルでモダンな外観にも見えますが…。幅広いフォーカスリングは使いやすいものの、全体的に見ると野暮ったい印象。
焦点距離やF値の表示のみ加工され、その他の表示はプリントでレンズ下部に記載。製造国は中国。
ハンズオン
サイズ | φ73.0×86.0mm |
重量 | 370g |
競合他社の35mm F1.8と比べると、全長が長く、重量のあるレンズ。レンズ構成枚数は他社と同程度ですが、防塵防滴のプロ仕様と考えると妥協できる範囲内。
前玉・後玉
「S-Line」はナノクリスタルコートが標準採用されているものの、NIKKOR Z 24-70mm F4 Sのようにフッ素コーティング処理は施されていません。水滴や汚れの付着が想定されるシーンではプロテクトフィルターを装着しておくと良いでしょう。
35mm F1.8のフィルター径はメーカーによってバラつきがあるものの、NIKKOR Z は比較的大きめの62mmに対応。NIKKOR Z 50mm F1.8 S や Z 50mm F1.4 、Z 105mm F2.8 と同じフィルター径なので揃えやすい近距離の収差を劇的に改善しながら、極めて高いピント精度と高速なAF制御を実現。
金属製レンズマウントは4本のビスで本体に固定。マウント周辺に防塵防滴用のシーリングあり。後玉はマウントから少し奥に配置、周辺は不要は反射を抑えるために黒塗りされています。
フォーカスリング
金属製の幅広いフォーカスリングを搭載。滑らかに回転しますが、期待よりも少し緩め。応答性は機種によって変更でき、リニアレスポンスで操作角度の調整が可能。変更できない機種はノンリニアレスポンスで、リング回転速度に応じで90-360度くらいのストロークで操作可能。
スイッチ
左側面にはA/Mスイッチのみ搭載。
Fnボタンなどはありません。
レンズフード
花形レンズフードが付属。機能性のないシンプルなデザインで。フードを逆さ付けにした状態でもフォーカスリングは辛うじて操作することができます。
装着例
Z 8 に装着したところバランスは良好。ボディが大きいので特に問題はありません。ただし、比較的コンパクトなZ 7 / Z 6 やAPS-Cに装着すると、レンズが少し大きめと感じるかもしれません。
レンズとグリップの間には余裕があり、前面Fnボタンは操作しやすい。幅広いフォーカスリングに触れてしまいそうですが、マウント付近でに僅かな「くびれ」があるので、ここに指をひっかけておくことが可能。
AF・MF
フォーカススピード
ステッピングモーター駆動のマルチフォーカス方式を採用。
リニアモーターを使った電光石火のAFと比肩する性能ではないものの、このレンズを必要とする撮影には十分な速度。近距離の動体撮影で使う場合は力不足と感じるかもしれません。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
公式で「フォーカスブリージングを抑制」とあるように、35mm F1.8 レンズとしてはフォーカスブリージングが良く抑えられています。キヤノンやソニーの同等品はフォーカスブリージングが非常に目立つので、比較して遥かに使いやすい。
精度
Z 8との組み合わせで大きな問題はありませんでした。ミスショットがあるとすれば、カメラ側の問題であることが多い。(特に被写体検出が途切れたり、意図しない場所を検出したりした時)
MF
前述したように、フォーカスリングは少し緩めで滑らかに回転。
機種によっては応答性を調整できるため、好みの操作性で利用することが可能。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:
- 交換レンズ:
- パール光学工業株式会社
「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 64 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
中央は絞り開放から優れた結果が得られ、周辺や隅は少し低下するものの良好な結果。さらにF2.8まで絞ると周辺や隅でも優れた結果を得ることができます。(近距離で性能が低下する傾向のある)35mm F1.8クラスとしては非常に良好な性能であり、これと言った弱点はありません。
中央
絞り開放から非常にシャープで、絞っても大きな変化はありません。ただし、F1.8付近では僅かに残存する軸上色収差の影響が見られ、F4-5.6付近で解消します。
周辺
中央と比べると絞り開放が若干ソフト。しかし、F2.8まで絞れば目に見えて改善し、中央との差はほとんどありません。
四隅
周辺と同程度か少しソフト。やはりF2.8まで絞ると改善し、F4付近でピークに到達。絞ってしまえば、中央との差はほとんどありません。接写では隅の画質が大幅に低下する傾向のある35mm F1.8クラスの製品としては驚くほど良好です。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F1.8 | 4269 | 3559 | 3277 |
F2.0 | 4287 | 3304 | 3332 |
F2.8 | 4519 | 4487 | 4232 |
F4.0 | 4388 | 4342 | 4570 |
F5.6 | 4388 | 4090 | 4572 |
F8.0 | 4388 | 4413 | 4684 |
F11 | 4542 | 4342 | 4532 |
F16 | 3436 | 3938 | 3531 |
比較
NIKKOR Z は35mm F1.8/F2 クラスの製品として傑出した性能で、他社におけるワンランク上のF1.4 レンズのようなパフォーマンス。F1.8 レンズとしては高価ですが、それだけの価値があると言えるでしょう。
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2025.6.30 晴れ 無風
- カメラ:Nikon Z8
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:ArcaSwiss Z1+
- 露出:ISO 100 絞り優先AE
- RAW:Adobe Lightroom Classic
・シャープネスオフ
・ノイズ補正オフ
中央
F1.8の絞り開放は軸上色収差の影響かコントラストが若干低め。このあたりはZ 50mm F1.8 Sと比べて少し見劣りするポイントですが、他社の35mm F1.8と比べると十分良好な結果。F2.8まで絞るとコントラストが改善してピークの性能に到達。それ以降に大きな変化はありません。
周辺
中央と比べると僅かにソフトな描写ですが、全体的に見ると違いはほとんど分かりません。解像チャートテストと同じく、F2.8まで絞ると 改善し、以降に大きな変化は無し。
四隅
中央や周辺と比べるとソフトな画質で、絞ることで徐々に改善します。後述する像面湾曲の影響があり、隅にピントを合わせて撮影することで改善します。(ただし、中央付近がソフトな画質になる)これを改善するためには絞って被写界深度を深くする必要があります。
像面湾曲
像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
中央にピントを合わせた結果と、隅にピントを合わせた結果が少し異なります。像面湾曲の影響が残存しており、絞り開放で隅までパンフォーカスを得るのは難しい。中央でピント合わせの結果は許容範囲内に見えますが、隅にピントを合わせると不自然さを感じるかもしれません。
フレーム中間付近でピント合わせを実施することで、全体的に平均的な結果を得ることが可能。
- 中央合わせ
- 隅合わせ
- 中央合わせ
- 隅合わせ
- 中央合わせ
- 隅合わせ
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
- 良好な補正
- 倍率色収差あり
実写で確認
細部を拡大しても色収差はほとんど確認できません。とても良好な補正状態です。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
競合他社の35mm F1.8と比べると色収差は良く抑えられているように見えます。ただし、Z 50mm F1.8 S ほど良好ではありません。絞り開放では若干の色収差が残存しており、輝度差の大きなシーンでは目に付く可能性があります。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
- 糸巻き型歪曲
- 適切な補正
- 樽型歪曲
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
軽微な樽型歪曲で、直線的な被写体を撮影する場合は少し気になるかもしれません。レンズプロファイルで綺麗に修正が可能。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
- 良好な補正状態
- 悪い補正状態
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
少なくともフレーム隅にピントを合わせた状態で撮影するとコマ収差の影響は軽微。ゼロではありませんが、実写で目立たない程度。ソニーFE 35mm F1.8 やキヤノンRF35mm F1.8 IS STMのコマ収差がかなり目立つので、比較すると非常に良好な結果と言えそうです。
球面収差
前後のボケ質に大きな変化はありません。また、軸上色収差のテスト結果から分かるように、絞りによるピント位置の移動はありません。良好な補正状態です。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
後ボケ
滲むような描写ではないものの、縁どりが弱く滑らかなボケ質。軸上色収差の影響が少し残っているものの、概ね良好な描写。
前ボケ
後ボケと比べると、微ボケに僅かな硬さを残す描写。とはいえ、ボケが大きくなるにつれて差は目立たなくなります。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
- 影響が強い
- 影響が弱い
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
- 前ボケ
- 後ボケ
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
高価でやや大きめの35mm F1.8ですが、口径食は競合他社と比べて大きな違いはありません。倍率色収差は良好に補正されているため、フレーム隅のボケに色付きが無い点はGood。玉ボケの内側に非球面レンズの研磨ムラは目立たず、滑らかな描写。
ボケ実写
至近距離
最短撮影距離付近ではボケが大きく、滑らかで綺麗な後ボケ。色収差の影響は目立たず、口径食はボケのサイズから変形が目立たず許容範囲内。接写時も球面収差の変動が少ないため、コントラストが高く滲みの少ないボケ質となっています。
近距離
撮影距離が少し伸びても描写の傾向に変化はありません。口径食は少し目立つようになりますが、滑らかで綺麗なボケ質を維持しています。
中距離
さらに撮影距離が長くなると、隅の口径食が目立つようになります。それでも、全体的に滑らかで綺麗な描写に違いなし。四隅の問題は許容範囲内に収まっています。
中距離2
他の35mm F1.8では、コマ収差などの影響でフレーム四隅のボケが騒がしくなる撮影距離。しかし、本レンズは四隅が荒れにくく、心地よい描写を維持しています。流石のS-Lineと言ったところでしょうか。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。
フレームに全身を入れるような撮影距離でも背景は滑らかにボケています。フレーム端や隅の後ボケが少し騒がしく見えますが、ボケが小さく悪目立ちする可能性は低い。膝上くらいまで近寄ると、フレームの広い範囲で滑らかなボケが得られます。上半身やバストアップでほぼ完璧。
周辺減光
周辺減光とは?
フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。
- 良好
- 周辺減光
ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
最短撮影距離
最短撮影距離付近でもF1.8の絞り開放で目立つ周辺減光が発生します。光学的にこれを解消するためにはF4付近まで絞る必要があります。
無限遠
無限遠では最短撮影距離よりも強めの周辺減光が発生。補正オフで風景などを撮影するとかなり目立つ。F2.8-F4で大幅に改善するので、光量落ちが気になる場合はF2.8くらいまで絞ってカメラの自動補正を適用しておくのが良いでしょう。
逆光耐性・光条
中央
完璧ではないものの、強い光源によるフレアとゴーストを良く抑えています。絞るとゴーストが増加するものの、それでも壊滅的な影響ではありません。Z 35mm F1.4よりも良好。NIKKOR Z らしい良好なパフォーマンス。
隅
光源をフレーム隅に移動させると、問題はほとんど発生しません。とても良好な結果。
光条
F8の段階でシャープな結果が得られ、F11-16でさらに明瞭な描写へと変化します。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 防塵防滴(35mm F1.8では珍しい)
- フォーカスブリージングが良く抑えられている
- 解像性能は近距離でも良好
- 穏やかな軸上色収差
- ほぼゼロの倍率色収差
- 穏やかな樽型歪曲
- 穏やかなコマ収差
- 球面収差の良好な補正状態
- ニュートラルで綺麗なボケ
- 逆光時のフレア・ゴーストが良く抑えられている
- 絞った際に綺麗な光条
低価格の35mm F1.8と比べると一線を画す光学性能。特に顕著なのは近距離での画質低下が抑えられていること、色収差の補正状態、周辺画質の安定感、ボケの滑らかさ。全体的に使いやすく、さらに防塵防滴仕様であることからオールインワンの35mm F1.8と言うことが出来ます。
悪かったところ
ココに注意
- 35mm F1.8としては高価
- コントロールリングなし
- 35mm F1.8 としては大きく重い
- 口径食が強い
- 周辺減光が目立つ
- 遠景で若干の像面湾曲
後発のZ 35mm f/1.4にあって、本レンズにはないコントロールリングをはじめ、Fnボタンなど高級レンズ(シリーズ)によくあるコントロール群がありません。シンプルであるぶん誤操作は少ないものの、個人的にFnボタンやコントロールリングは欲しかったところ。
また、サイズのわりにピント全域で周辺減光や口径食が目立ちます。特にボケが大きくなる近距離において、口径食の影響はZ 35mm f1.4 よりも大きい。
このあたりの欠点を考慮しつつ、価格とサイズがニーズを満たすものか検討すると良いのかなと。
結論
癖が少なく、堅牢で耐候性があり、様々な環境で使いやすい 35mm F1.8。言ってしまえばプロ仕様。撮影距離による画質の変動も少なく、近距離でのクローズアップから全身ポートレートまでムラなく使える便利なレンズです。
没個性的で面白さはないかもしれませんが、そのぶん安定感があり信頼できるレンズに仕上がっています。Z 50mm f1.8 S と比べると気になる部分も多いですが、中価格帯の35mmレンズとしては高水準にまとまっています。このクラスでベストを尽くすなら検討する価値のある一本。
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競合製品について
NIKKOR Z 35mm f/1.4
f1.8 S-Line と同価格帯にある f1.4 レンズ。比較して大口径ですが、絞り開放の光学性能や撮影距離による描写の変化、外装の質感などはS-Lineと比べて見劣りします。「F1.4」に何を求めるかにもよりますが、絞り開放から快適に使いたいのであればf/1.8 S-Lineがおススメ。
逆に綺麗なレンズに飽きてしまった人は、このくらい癖のあるレンズのほうが楽しめるかもしれません。また、絞った時はS-Lineに近い良好な結果を得ることができます。
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作例
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