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銘匠光学 TTArtisan 100mm f/2.8 M42 レンズレビュー 完全版

このページでは銘匠光学「TTArtisan 100mm f/2.8 M42」のレビューを掲載しています。

TTArtisan 100mm f/2.8 M42のレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 トリプレットとしては安い
サイズ 100mm F2.8としては適度
重量 100mm F2.8としては適度
操作性 滑らかで正確な操作が可能
MF性能 操作性良好・最短撮影距離が長い
解像性能 絞れば全体的に良好
ボケ 開けても絞っても綺麗
色収差 とても良好な補正状態
歪曲収差 ほぼゼロ
コマ収差・非点収差 目立つので絞る必要あり
周辺減光 無視できる程度
逆光耐性 TTArtisanとしては良好
満足度 個性的で使いやすい100mm F2.8

評価:

意外と何でもできるヤツ

球面収差を活かしたシャボン玉ボケが魅力的なレンズですが、絞りを調整すると普通の100mm F2.8として使いやすい描写が得られます。フレームの広い範囲でシャープな結果が得られ、ボケは滑らかで綺麗。MF限定ながらフォーカスリングの操作は極上で問題とは感じません。敢えて言えば最短撮影距離が長いことが欠点となりますが、接写リングやクローズフォーカス対応のアダプターを用意することで解決する可能性あり。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 個性的なボケ
子供・動物 MF操作でピント合わせは難しい
風景 絞れば使えなくもない
星景・夜景 軸外収差の影響が大きい
旅行 画角が狭いので状況を選ぶ
マクロ 接写リングやクローズフォーカス対応アダプタが必要
建築物 絞れば使えなくもない

まえがき

レンズの仕様
発売日 2023年8月7日 初値 ¥29,700
マウント M42 最短撮影距離 0.9m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 不明
焦点距離 100mm フィルター径 49mm
レンズ構成 3群3枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F2.8 テレコン -
最小絞り F22 コーティング 不明
絞り羽根 13枚
サイズ・重量など
サイズ φ59×180mm 防塵防滴 -
重量 307g AF MF限定
その他
付属品

2023年に登場したTTArtisanの「M42マウント限定」MFレンズ(M42マウントに関する説明は割愛します。フィルム時代に普及したスクリューマウントです)。古い規格のマウントであるため、最新のデジタルカメラで使用するにはカメラに対応するアダプターが必要です。Amazonなどで探せばいくらでもあるので、困ることはないはず。
3群3枚のシンプルなトリプレット構成と言えばMeyer-Optik Görlitzの「Trioplan」(トリオプラン)で、50年以上前に製造されたシリーズの一つ。当時は光学的な欠点とされていたものの、デジカメ世代で「シャボン玉ボケ」として定着、2015年にKickstarterで復活すると人気を博しました。銘匠光学はこのトリプレット構成を採用し、より手ごろな価格のレンズとしてTTArtisanブランドでリリース。いくつか仕様が異なるものの、最短撮影距離やレンズサイズ・重量はよく似ています。前述したように、残存収差を活かした個性的な玉ボケが特徴のレンズ。シャボン玉ボケを作りには慣れや工夫が必要ですが、普通のレンズでは得られない描写は一見の価値あり。また、玉ボケがフレーム隅まで綺麗に見えるように余裕のあるイメージサークルを採用しており、周辺減光も少な目となっている模様。

価格のチェック

国内では焦点工房やイングレートジャパンが代理店となり、販売価格「¥29,700 」で売り出し開始。3群3枚構成にしては高くないか?と感じるかもしれませんが、「Trioplan 100mmF2.8 II」が15万円を超える価格設定であることを考慮すると遥かに安い選択肢と言えるでしょう。

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

銘匠光学TTArtisanブランドらしく、ファブリック調の生地が張り付けられています。高級感があるかないかで言えば賛否両論あるデザインですが、競合他社とは一線を画すデザインです。レンズ本体は発泡樹脂の緩衝材に覆われて梱包されています。レンズ本体のほかに説明書とレンズキャップが付属。スクリューマウントのため、リアキャップも金属製のねじ込み式。

外観

TTArtisanらしい総金属製の外装ですが、デザインはやや異なります。Trioplan 100mmF2.8 IIを模倣しているわけではなく、どちらかと言えばM42マウントで主流のアサヒペンタックス Takumarシリーズを彷彿とさせるもの。(と言っても被写界深度やピント位置の表示・配色は異なる)全体的にしっかりとした作りで、表面の印字はプリントではなく、エッチング加工の上から塗装が施されています。

前玉・後玉

凸型前玉の周囲にはレンズ名やフィルター径などが白色で印字されています。フィルター装着時は白色が反射する可能性あり。前玉にフッ素コーティングのような防汚コートを採用している記述はありません。水滴や汚れ、ダメージが想定される環境では保護フィルターを装着しておくと良いでしょう。最短撮影距離が90cmと長いため、クローズアップレンズを用意するのも一つの手。

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M42スクリューマウントは金属製で、3本のビスで固定。内側には反射防止用のフェルト生地を張り付け、不要な光の反射を抑えています。

フォーカスリング

0.9m~無限遠に対応するフォーカスリングは180度を超える長いストロークで正確な操作が可能。最短撮影距離が0.9mであることを考慮すると長すぎる印象を受けますが、100mm F2.8で接写する機会が多いと思われる本レンズでは丁度良いのかもしれません。もちろん素早い操作には不向き。

リングは適度な抵抗で滑らかに回転します。決して緩すぎるわけではないものの、小さな力で微調整も簡単。フォクトレンダー並みと言っても過言ではないはず。よくできています。

絞りリング

F2.8からF22まで操作可能な絞りリングを搭載。F2.8からF11までは0.5段刻みでクリックストップがあり、F16-F22のみ1段刻みで動作します。他のTTArtisanと同じく、適度なクリック感と滑らかな操作性で、絞り操作を楽しむことができる仕上がり。

装着例

今回はEOS Rシリーズに装着するためRFマウント用アダプターを用意。スクリューマウントのため、レンズ装着時にピント距離などの表示が上に来ない可能性あり。もしも調整が必要な場合は、アダプターのイモネジを緩めることで位置を調整可能(M42アダプターの多くは対応していると思われます)。

EOS R5に装着。3群3枚のシンプルなレンズ構成ですが、全長が長く、金属外装ということもあり思っていたよりも重め。バランスを損なうほどではないものの、両手でしっかりとホールドする必要性を感じました。また、100mmと焦点距離が長く、手振れしやすいため、ボディ内手ぶれ補正を搭載したカメラで使用するのがおススメです。(カメラ側で焦点距離は調整する必要あり)

 

 

MF

フォーカススピード

前述した通り、フォーカスリングのストロークが長いため、最短撮影距離 0.9mから無限遠まで操作するには時間がかかります。ファインダーを覗いた状態でピント合わせをする場合、2~3回の操作が必要で、3~4秒かかりました。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。全群繰り出し式というこもあり、最短撮影距離長めながら顕著な画角変化が発生します。

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精度

長いストロークにより正確な操作が可能。5m~無限遠の遠側でも、ピントの山を確認するのに十分な操作量でMFが可能。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:TTArtisan 100mm F2.8 M42
  • 交換レンズ:EOS R5
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子先幕
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

最新の光学設計とは比べ物にならないものの、3群3枚の非常にシンプルな光学設計のレンズとしては健闘しています。F2.8は球面収差の影響もあり低調ですが、絞ると全体的に改善。F5.6まで絞ると中央から広い範囲でシャープな結果を得ることができ、F8-11まで絞れば隅も良好な結果となります。

中央

F2.8は球面収差が強く残っているため、低コントラスト。ただし、ピントの山はシャープで、画像処理次第で切れ味のある描写を得ることが可能。F4まで絞るとコントラストが大幅に改善。F5.6まで絞ると非常にシャープな結果を得ることができます。

周辺

中央と同じくF2.8は低コントラストで、若干ソフトですがピントの山は識別可能。F4まで絞るとコントラストが改善するものの、細部の解像性能はイマイチ。F5.6まで絞るとシャープとなり、F8でピークに達します。

四隅

中央や周辺部と比べると、低コントラストで細部が甘いソフトな画質。F4まで絞っても実用的とは言えず、F8までしっかりと絞る必要があります。ピークはさらにF11まで絞ったところですが、回折やシャッタースピードとのバランスを取るのであればF8も許容範囲内。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F2.8 3431 2532
F4.0 3592 2529
F5.6 4009 3327 1948
F8.0 4005 3880 3175
F11 4005 3630 3527
F16 3449 3402 3232
F22 2474 2604 2552

実写確認

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2023.8.9:晴れ 時々 曇り
    *当日は日差しが雲で遮られてしまい、F2.8-4のみ明るい写真となっています。
  • カメラ:EOS R5
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:絞り優先AE ISO100 セルフタイマー2秒
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ

テスト結果

中央

F2.8は残存する球面収差の影響でコントラストが低下しているものの、ピント面はシャープでしっかりとした描写。F4まで絞ると収差が低減し、コントラストが大幅に改善。F5.6まで絞るとピークの画質となり、細部のコントラストとシャープネスが非常に良好。この状態はF8まで維持していますが、F11以降は回折の影響で徐々に画質が低下します。

周辺

F2.8の絞り開放は非点収差のような結像の甘さが見られるものの、F8のピークに向かって徐々に改善します。F8まで絞ると、中央に近いとても良好な結果を得ることが可能。

四隅

隅のF2.8は周辺部よりもさらに甘く、実用からは程遠い結果。F8まで絞ってもわずかにソフトな画質で、中央や周辺部と比べると大きく見劣りします。良好な結果を得たい場合はF11やF16を使うのがおススメ。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

*F2.8は隅の結像が甘すぎるので、今回はF4で撮影しています。

像面湾曲はゼロと言えないものの、極端なピント位置のずれは無いようです。少なくともパンフォーカスが必要な小絞りで大きな問題となることはありません。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

3群3枚のシンプルな構成ですが倍率色収差は良好に補正されています。ソフト側で補正する必要性は低い。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

軸上色収差

完璧な補正状態とは言えませんが、倍率色収差と同じくシンプルな光学系としては思いのほか良好な結果が得られています。残存する収差も、ピント手前は滲むようなボケで分散し、ボケが硬くなる後方でも特に目立ちません。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

ピント面の直前・直後はどちらも滲むように柔らかいボケ質が得られます。ボケが大きくなると、縁取りの硬い後ボケと、溶けるような描写の前ボケに分かれていきます。ただし、軸上色収差が良好に補正されているため、硬い後ボケでも過度に悪目立ちはしていないように見えます。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

非球面レンズを使用していないためか、玉ボケの内側は非常に滑らかで綺麗。球面収差の影響で極めて強い縁取りが発生しているものの、それがこのレンズの個性であり、強みと言える描写となっています。また、口径食の影響が少なく、四隅まで変形の少ない玉ボケが得られます。
一段絞ると球面収差や軸上色収差が綺麗に解消。絞り羽根の影響も目立たず、使い勝手の良いボケが得られます。口径食もF4で解消します。

ボケ実写

至近距離

近距離

中距離

ポートレート距離

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。

球面収差の影響で間違いなく後ボケは硬め。しかし、ボケの色づきはほとんどなく、口径食は目立たず、硬調ながらも自然な描写で不快な印象はなし。撮影距離が短くなると玉ボケが強調されやすくなるものの、それがこのレンズの特徴。

球面収差

前後のボケ質に大きな差が残る程度に球面収差が発生しています。このレンズの特徴となる「シャボン玉ボケ」も球面収差によるものであり、意図的に残された収差です。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

よく見ると少し複雑な歪曲収差が残っているようにも見えますが、基本的には良好な補正状態を実現しているように見えます。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

絞り開放で薄っすらと影響が見られるものの、ほとんど問題ありません。F4まで絞ると解消します。

無限遠

最短撮影距離と同程度。やはりF2.8からほとんど問題ありません。公式でも言及しているように、イメージサークルが広く、余裕のある画質を実現しているようです。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

非点収差・コマ収差ともにいくらか残存しているように見えます。過度な影響ではありませんが、抑え込むためには2~3段絞る必要あり。

逆光耐性・光条

中央

TTArtisanのレンズとしては驚くほどフレア・ゴーストの影響をよく抑えています。3群3枚のシンプルな光学設計と、センサーの反射が影響しにくいバックフォーカスが良く作用しているのでしょうか。強い光源を真正面に配置しても顕著なフレアやゴーストは発生しません。絞ると少し大きなゴーストが1つ発生するのみ。複数の光源を入れる場合は悪化する可能性があるものの、一つの光源であれば特に問題はなさそう。

光源を隅に移動すると、若干のフレアが発生。かなり弱めで目立たず、2段絞ると解消します。

光条

絞り羽根は13枚。奇数羽根のため絞った際の光条は26本となります。描写としては綺麗ですが、光の筋が多すぎて、ギラギラと目立つ描写にはなりません。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • トリプレットタイプとしては低価格
  • 総金属製
  • 正確な操作が可能なフォーカスリング
  • クリック感のある絞りリング
  • F2.8から良好な中央解像
  • F8まで絞ると隅まで良好
  • 良好な色収差補正
  • 絞ると滑らかな前後ボケ
  • 特徴的なシャボン玉ボケ(F2.8)
  • 歪曲収差が良好に補正
  • 周辺減光の影響がほとんどない
  • TTArtisanとしてはヌケが良い

宣伝通り、球面収差を活かしたシャボン玉ボケが楽しめるレンズです。被写体や背景との距離、光源や露出などの条件が揃えば、魅力的で特徴的なシャボン玉ボケを作り出すことが出来ます。シャボン玉ボケだけのレンズかと言えばそうでもなく、ピント面はシャープで球面収差以外の補正状態は良好。絞ればヌケが良く、全体的に良好な結果を得ることができます。シンプルな光学系ながら、思いのほかきちんとした結果が得られるレンズです。

悪かったところ

ココに注意

  • M42マウント
  • ストロークがないフォーカスリングは素早い操作に不向き
  • F2.8が低コントラスト
  • 非点収差・コマ収差が残存
  • 綺麗な光条だが細かすぎる
  • 最短撮影距離が長い

描写における欠点は、このレンズの特性であるF2.8の球面収差のみ。低コントラストで個性的な後ボケとなりますが、絞ることで簡単に調整可能。あとは非点収差やコマ収差がやや目立ちますが、このようなレンズでF2.8の解像性能を追求する人は多くないはず。敢えて言えばM42マウント限定であることが欠点ですが、このようなレンズを導入する人にとって大きな問題となることは無いでしょう。また、最短撮影距離が長いので、柔軟性を高めるためにもヘリコイドでクローズアップに対応したレンズアダプターを用意しておくのがおススメです。

総合評価


満足度は95点。
TTArtisanの中でも一押しのレンズ。シャボン玉ボケだけのレンズかと思いきや、癖が少なく非常に使いやすい100mm F2.8です。特徴的な後ボケは絞りで簡単に調整できるので問題とならず、TTArtisanとしては逆光耐性も悪くない。ピント面は思いのほかシャープで、しっかりと絞れば隅まで良好。イメージサークルに余裕があり、歪曲収差や周辺減光は未補正RAWの段階で目立たず、追加の補正が必要ありません。口径食もわずか。MFレンズに3万円を出せるかどうか悩ましいところではありますが、オールドレンズに3万円をつぎ込むのであれば、新品のTTArtisan 100mm F2.8 M42も面白い選択肢となることでしょう。

購入早見表

作例

関連レンズ

  • Trioplan 100mmF2.8 II

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