キヤノンが6月3日に「EOS R3」スペシャルサイトを更新。これを受けてDPReviewが注目ポイントを解説しています。
DPReview:Here's everything we know about the Canon EOS R3
- キヤノンはEOS R3の追加情報を発表し、正式にカメラの製品画像を明らかにした。最新情報によると、EOS R3はこれまで想定していたよりも「ミラーレスの1D X」のように見え、実際には本格的なスポーツ/フォトジャーナリズムカメラになる可能性があるとのことだ。キヤノンはEOS R3を「EOS R5とEOS 1D Xシリーズの中間に位置する新しいクラス」としているが、現在分かっている情報では後者に近いものとなりそうである。
RAWでの30fps撮影
- キヤノンはEOS R3に搭載している積層型CMOSセンサーが、電子シャッターモードで30fpsの連続撮影を可能にするほど高速であることをすでに明らかにしている。
- 最新のアップデートで、このモードでRAW出力の撮影に対応していることが明らかとなった。これは機能制限のある動画からの切り出しモードではなく、カメラの主要なドライブモードの1つであることを意味していると思われる。
(訳注:EOS Rなどには4K 30pから830万画素の切り出しモードが存在します)- なお、この連写速度を実現するため、ビット深度を低くして、ダイナミックレンジを狭める必要があるかどうかは実際にEOS R3を手にしてみないと分からない。
(訳注:例えばEOS R5は電子シャッター時にダイナミックレンジが狭くなります。ソニーα1でも30コマ秒時は圧縮RAWのみ対応。)高速電子シャッター
- キヤノンは積層型CMOSセンサーを搭載することにより「電子シャッター使用時のローリングシャッター歪みが非常に少ない」と述べている。
- 今回のアップデートでは、それに加えて電子シャッターモードでフラッシュを使用できることを明らかにしている。
- ただし、キヤノンはフラッシュ同期速度を明らかにしていない。フラッシュの同調速度は、センサー全体を露光できる最短の露光時間を表すため、非常に重要だ(シャッタースピードが速くなると、先幕と後幕の間のスリットが狭くなる)。
- 電子シャッターの場合、センサーの読み出し速度によって同調速度の限界が決まる。フラッシュ同調速度は、ローリングシャッター速度やカメラのフラッシュの動作を知ることになる。
- EOS R3がハイエンドボディであること、そしてキヤノンは実用的な機能だけを実装するという点でかなり保守的な傾向があることから、電子シャッター時のフラッシュ同調速度が実用的となるような速いシャッタースピードに対応するのではないかと予想している。
オートフォーカス
- キヤノンは、EOS R5で採用した「瞳・顔・体」検出AFシステムをさらに進化させたデュアルピクセルAFシステムを採用すると発表している。
- このAFシステムは機械学習をベースとしており、大量の画像を用いて学習したアルゴリズムが、被写体を認識する。
- 今回の発表で、モータースポーツ撮影用のモードとして、車やバイクの認識も可能になることが確認された。オリンパスはすでにOM-D E-M1Xで、このようなモードが有効であることを実証している。
- EOS R3のAFは-7.0EVまで動作するとしている。これはとんでもなく低い値だ。この数値に必要なレンズの詳細は明らかにされていない。以前に発表したミラーレスシステムの数値は「F1.2 レンズ」をベースにしており、F2レンズを使用する他社よりも1.5EVほどレンズの性能で良くなっている。
(訳注:おそらくDPReviewの見落としだと思いますが、スペシャルサイト内では「F1.2 レンズ」使用時と明記されています)- この数値は、極端な低照度条件でのAFが「静止していない被写体」に対しても十分に高速であることを保証するものでは無い。しかし、従来のキヤノン製カメラはこの点でそれほど悪くは無い結果となっている。
動画
- キヤノンの最初の発表では、動画については全く触れられていなかった、とは言え、キヤノンがこの高速センサーを使って動画を生成することは必然のように思えた。
- 案の定、最新のアップデートでは、オーバーサンプリングされた4K動画が約束されており、Canon Log3または内部収録のRAW動画のいずれかを選択できるようになっている。
- また、積層型CMOSセンサーの高速読み出しにより、ローリングシャッター歪みを抑制することが可能だ。
- さらに、人物・動物・モータースポーツなどのAF追従モードも動画撮影時に使用できるようになるとのことだ。
グリップ内蔵型ボディ
- すでに公開されている製品画像から、このカメラがデュアルグリップのボディを採用していることは判明していた。そして1D Xと同等の品質と耐候性を備えていると言及している。今回、マグネシウム合金製のボディであると公開されたのは、当然のことかもしれない。
- 興味深いのは、EOS-1D X Mark IIIよりも小型化されているにもかかわらず、R3にも同じ大容量バッテリー「LP-E19」が採用されていることだ。
- このバッテリーは30Wh(EOS R5のLP-E6NHの約2倍)である。ライブビューに依存しているため、デジタル一眼レフ並みのスタミナは期待できないものの、1回の充電で十分な枚数を撮影できるはずだ。
ボディに関するポイント
- 新たに公開された製品画像では、EOS R5スタイルの3つのダイヤル(シャッターボタンの後ろに1つ、カメラの肩に2つ目、カメラの背面に3つ目)で操作することができる。
- また、1D X Mark IIIと同様、AFジョイスティックと赤外線スマートコントローラーが搭載されることも明らかになっている。指先の動きを測定するスマートコントローラーは、1D X IIIのAFポイントを高速かつ正確にコントロールするのに非常に有効な手段であることが分かっている。より多くのAFポイントが存在し、より細かい間隔で配置されているミラーレスシステムで、このコントローラーがどのように機能するのかは興味深いところだ。
- R5と1D X IIIのコントロールポイントの組み合わせは、キヤノンが約束している「1シリーズの操作性とR5の使いやすさ」を意味していると思われる。もちろん、視線入力AFも搭載している。
追加情報
- さらに、EOS R3はキヤノンの縦位置グリップ一体型カメラとしては初めて、完全可動式「バリアングル」モニタを搭載している。
- キヤノンが公開した画像では、3.2型のディスプレイであることが明らかになっているが、使用されているパネルの解像度についてはまだ詳細が明らかになっていない。
- EOS R3はCFexpress BとSDカードを使用すると明らかになっている。同社がCFexpress Type Bカードを使用していることから、この大きな(そして高速な)フォーマットを使用することに固執するのは妥当なことだと思われる。
手ぶれ補正
- EOS R3は、EOS R6・R5で採用したボディ内手ブレ補正機能を搭載している。パナソニックやオリンパスが採用しているように、手ぶれ補正機能付きRFレンズと連動して動作する。
- 「レンズ側で補正する軸」と「ボディ側で補正する軸」を分けている手ぶれ補正システムとは異なり、両方のシステムが連動し、動きの情報を共有している。
- これにより、CIPAの標準的な試験方法で評価した場合、キヤノンは最大8.0EVの補正効果があると謳っている。
- CIPA規格の数値ほどの効果を実感することはほとんど無いが、数値が大きいほど性能が高いことは確かだ。EOS R3は同社のデジタル一眼レフカメラで実現していたよりもはるかに効果的な手ぶれ補正を提供することになるだろう。
通信
- キヤノンはAndroidとiOS用のアプリ「Mobile File Transmitter」に対応すると述べている。これは、有線接続(少なくともiOSの場合)または無線通信を約束するものだ。
- また、EOS R3にはLANが内蔵されており、大規模なスポーツイベントのサイドラインでの撮影時に画像のやり取りが簡単になると述べている。これもプロ向けの機能であり、1Dシリーズの下に位置すると明言しているにもかかわらず、キヤノンはR3と1Dシリーズの間にそれほど大きな隔たりを設けるつもりはないようだ。
新型アクセサリシュー
- キヤノンによると、このカメラには「新しいアクセサリーをサポートする」新しい「アクセサリーシュー」が搭載されるそうだ。
- EOS M6 Mark IIなどには、フラッシュのホットシューの前面に一連のコネクターを設けている。M6 Mark IIの場合は電子ビューファインダーに対応するためのものだった。しかし、電子ファインダーを搭載しているカメラに外付けファインダーは不要だ。
- パナソニックとソニーは、XLRコネクターを持つハイエンドマイクを装着してコントロールできるアクセサリーオーディオモジュールを提供している。
- EOS R3の動画仕様は、高品質なオーディオアクセサリーに対応するにはふさわしいものだと思っている。しかし、キヤノンのエンジニアがどのような「新しいアクセサリー」を考えているのか、見守っていきたいと思う。
行間を読む
- 現時点でEOS R3について、かなりのことが判明している。モニタ解像度やバッファ深度、動画のフレームレートなど、細かい部分までは分からないが、カメラの性能については大体のことは分かっている。
- また、カメラの画素数についても、ある程度の想定が可能だ。オーバーサンプリングされた4Kと言及しているので、8K動画を実現するために必要な4500万画素よりも少ないセンサーであることを示唆している(少なくとも、キヤノンが好んでいると思われるDCI 8Kを実現することは可能だ)。
- これに加えて、EOS R5よりも優れた低照度AFが約束されている。これは画素ピッチが大きいことで直接恩恵を受ける数少ない要素の一つであり、低画素数のカメラになると考えるのが妥当だ。画素数は2400?3200万画素程度になるのではないかと思われる。
- 残念なことに、キヤノンはEOS R3の最終的な発表時期を明確にしていない。今年の夏、日本で開催されるオリンピックで使用されることは間違いないだろう。問題は、最終的なベータテストの目的で使用されるのか、それとも正式発表されるのかということだ。
- いずれにしても、次のアップデートでスペックや価格、発売日などの詳細が明らかになることを期待している。
とのこと。
具体的なスペックは不明ですが、現在公開されている情報からある程度の予想は出来るみたいですね。やはり気になるのはカメラの解像性能でしょうか。8Kに対応するソニー「α1」ほど高解像では無く、3000万画素前後の解像度となるのは理にかなっているように見えます。
4500万画素のEOS R5は20fps連写時はダイナミックレンジが低下(つまりメカシャッターに対して電子シャッターのダイナミックレンジが狭い)。おそらく、センサー読み出し速度を高速化するために、出力するデータの量を抑えているのではないかなと。
積層型CMOSであることに加えてEOS R5より低画素だと仮定すると、EOS R3がダイナミックレンジを犠牲にすることなく30fpsの高速連写を実現する可能性はありそう。
また、高速連写時はCFexpressカードを利用してもバッファクリアに時間がかかります。5000万画素のα1はCFexpress Aカードを使用してもバッファフルからクリアまで15秒ほどかかると言われています。3000万画素でファイルサイズを抑え、より高速なCFexpress Bカードでどれほど連続撮影枚数が伸びるのか気になるところ。
例えば2000万画素のEOS-1D X Mark IIIは連続撮影枚数が1000枚以上と言われています。(使用しているカードはおそらくPro Grade DigitalのCobalt 325GB)同程度のセンサーを使用しているEOS R6がSD UHS-IIカードで最大240枚と言われています。
EOS R5のスペックシートはSDカードを使用しているので参考となりませんが、手持ちのEOS R5でCobalt 325GBを使用したところ、5秒間で60コマ程度のバッファクリア速度でした(つまり12コマ秒の連写であれば無限連写が可能。)。2500万画素でデータサイズが半分となるならば、単純計算で24コマ秒の無限連写が可能となるかもしれませんね。当然、30コマ秒の連写速度でも十分以上のバッファを期待できそうです。
そして、新開発のCMOSセンサーがどれほどの画質となるのかも気になるところ。EOS R5の4500万画素CMOSセンサーが非常に良好なパフォーマンスを発揮しているので、EOS R3も汎用性の高いセンサー性能に仕上がっていると期待したい。
ハイライト
アップデート部分を太字で表示
- 自社製フルサイズ裏面照射積層CMOSセンサー
- 高性能映像エンジン?DIGIC X
- 電子シャッター 最高30コマ/秒のAF・AE追従撮影
・RAW撮影対応
・電子シャッターの歪みを大幅低減 - AF測距輝度範囲 EV-7.0以上
(F1.2レンズ使用時) - ボディ内手ぶれ補正+レンズ手ぶれ補正で世界最高 8.0段
- 瞳と胴体を検知機能を向上
- モータースポーツ検出機能に対応
- 電子シャッター時のストロボ撮影に対応
- 視線入力対応ファインダー
- CFexpress・SDカード両メディアに対応
- EOS-1D系と同等の防塵・防滴性能
- 縦位置グリップ一体型
- Mobile File Transfer対応
参考リンク
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