PetaPixelがグローバルシャッターをフルサイズで初めて搭載したソニー「α9 III」のメモリーカードスロットについて所見を述べています。CFexpress Type BやCFexpress 4.0対応が望ましかったとのこと。
PetaPixel:Sony’s α9 III Uses Last-Gen Memory Cards, Creating an Irritating Bottleneck
連写とバッファについて
- ソニーα9 IIIは、グローバルシャッターを採用した初のフルサイズミラーレスで、120コマ/秒撮影などの本格的な性能を発揮する。しかし、最新のCFexpress仕様には対応していない。
- このスポーツとアクションに特化した新しいミラーレスカメラは、2460万画素CMOSセンサーを搭載し、Af/AE追従で最高120コマ/秒で撮影できる。このモードでは、「圧縮」とはいえ14bitのRAWで撮影することも可能で、これは6GB/秒相当のデータ量となる。
- これはメモリーカードに書き込むするデータ量としては膨大で、α9 IIIは最大フレームレート撮影時のバッファ深度が1.6秒しかない。最大連写速度の撮影を長時間維持するには非常に高速なメモリーカードが必要になる。
- α9 IIIは複雑なカメラで、性能に関して多くの脚注がある。例えば、このカメラの最大120コマ/秒の撮影時間は1.6秒で、これは192枚の写真に相当する。
- ソニーによると、実際のバッファ上限は700枚だという。つまり、フレームレートが低い場合、カメラはもっと長時間撮影できることになる。
- バッファいっぱいの120コマ秒を維持することができない。同社はこの矛盾について説明を避けたが、PetaPixelは熱、処理能力、またはその両方が関係していると推測している。
プリキャプチャ
- α9 IIIにはシャッターボタンが完全に押される前にバッファを開始するプリキャプチャーモードがある。バッファの上限が1.6秒である120コマ/秒で撮影する場合、プリキャプチャーモードによってシャッターを押してから撮影できる時間が大幅に変わる。
- 撮影者が1秒間のプリキャプチャを選択した場合(これが最大許容時間)、カメラはシャッターを切る前に1秒間のキャプチャを行い、その後0.6秒間の撮影に対応する。
- しかし、初期テストでカメラは120コマ/秒で1.6秒を超える長時間の撮影が可能なようだ。これに関してはさらなるテストが必要である。
動的な連写速度の調整
- 表面的には、このカメラはバッファをクリアする能力によって制限されているように聞こえるが、そうではない可能性もある。
- 詳細は不明だが、カメラは連写中に秒間フレームキャプチャ速度を動的に調整すると説明している。例えば、120コマ秒を維持できない場合、維持できる速度まで落としてからスピードを戻す。
- この動的調整の正確な性質について説明されていない。ソニーは、撮影状況によって変化するため、1つの答えを出すには変動要因が多すぎると述べている。
CFexpressについて
- ソニーが最新のCFexpress規格をサポートしないのは不可解だ。CFexpress 4.0は前世代から速度を倍増させ、α9 IIIの撮影者は大量の写真を処理する能力を2倍に高めることができたはずだ。しかし、それは実現しなかった。
- CFexpress 4.0規格を使用しないことで、カメラのバッファ(撮影したすべての写真をメモリに書き込む前に保存する場所)をクリアする速度にボトルネックを設けている。
- この規格が今年の8月に発表されたばかりだからだろうという意見もあるが、それは正しくない。メモリーカードメーカーとカメラメーカーは、規格の設定に直接関わっているのだ。メモリーカード・メーカーとカメラ・メーカーは、規格の設定に直接関わっているのだ。だからこそ、プログレード・デジタルのようなメモリーカード・メーカーは、新しいCFexpress 4.0規格のカードとリーダーをほとんどすぐにリリースすることができたのである。
- ソニーはずっと前からこの規格が登場することを知っていたが、それでもα9 IIIには搭載しなかった。また、CFexpress 4.0規格は完全な下位互換性があり、何の欠点もないため、ユーザーの立場からは搭載するデメリットがないことも注目に値する。
- ソニーはCFexpress 4.0がα9 IIIに搭載されなかった理由について説明を避けた。
CFexpress Type Aの使用について
- ソニーはまた、SDカードとカードスロットを共有できるほど小さいという利点はあるものの、PCIeバスレーンがニコンやキヤノンが使用しているCFepxress Type Bの半分であるCFexpress Type Aフォーマットを引き続き使用することを選択した。つまり、従来のCFexpress 2.0規格内でも、ソニーはすでに競合他社の半分の速度しかカードにデータを送ることができない。
- ソニーは、CFexpress Type Bカードを2枚カメラに装着できず、書き込み速度よりも冗長性を優先したかったため、CFexpress Type Aフォーマットを採用したと述べている。
- おそらく事実だろうが、それはソニーが自らカメラボディのサイズを選び、それを制限として指摘したからそうなったに過ぎない。誰もソニーに、より大きなカードに対応するためにボディサイズを少し大きくすることはできないとは言っていない。
ソニーの名誉のために言っておくと、α9 IIIのすべての写真機能はUHS-II SDカードで実現できるので、フォトグラファーは高価なCFexpress Type Aカードを使いたくなければ使う必要はない。この壁でロックされている唯一の機能は、S&Qや120pでの4Kなど、少なくとも特定のファイルフォーマットでの特定の動画機能だけだ。それと、SDカードではCFexpressカードに比べてカメラのバッファをクリアするのに時間がかかる。
新しいCFexpress規格が発表された直後、フォトグラファーは、CFexpress 4.0がもたらすスピードを利用するには新しいカメラハードウェアが必要だと言われた。
とのこと。
フルサイズセンサーを搭載したスチルカメラでは初となるグローバルシャッター搭載ミラーレスが登場。ローリングシャッター歪みやフリッカーを完璧に抑えることができ、フラッシュに全速同調も可能。さらに120fpsのRAW対応連続撮影やプリキャプチャ機能、クロップ無しの4K 120p対応などなど、静止画・動画ともに高性能なカメラに仕上がっています。
120fpsの高速連写に対応しているα9 IIIですが、PetaPixelはCFexpress Type Aがボトルネックになると指摘。120fpsで間髪おかずに撮影するシーンは少ないと思いますが、瞬間的に大量のコマ数が必要となる場合は気を付けたほうが良さそうです。CFexpress Type AもSD UHS-IIと比べると高速な書き込み速度に対応しているので、連写後に少し間を置くことができるなら、あまり困らないかもしれません。
ソニーが現在のボディサイズを維持しつつ、CFexpress Type B / Aスロット併用による高速性よりも、同対応のスロットを2つ配置する冗長性を重視した模様。PetaPixelは「ボディサイズを大きくする選択肢もあったはずだ」と言及していますが、ソニーαのコンセプトとは相いれなかったのかもしれません。個人的にはソニーの考えも一理あるのかなと。
とは言え、αシリーズのボディサイズは徐々に大きくなっているため、将来的にCFexpress Type B 2スロットを採用できる程度のサイズになったハイエンドモデルが登場する可能性はありそう。
一足先に120fps RAWに対応したOM SYSTEM OM-1 ユーザーとしての経験から言うと、バッファクリアも重要ですが、120fpsで大量に発生する連写時のカットを快適に管理する機能が欲しいところ。既にソニーは連写時のグループ化、連続再生に対応していますが、それだけでは足りない気がします。ピント位置を拡大しながら連続再生できるようになる機能などがあると良いなと。
連写速度の動的な調整について詳細は不明ですが気になる情報。完全自動なのか、調整機能をオフにできるのか、そして、どの程度の振れ幅があるのか気になるところ。
- 希望小売価格:オープン価格
- 発売予定日:2024年1月26日(金)
- 予約開始日:2023年11月16日(木)10時より
主な仕様
- イメージセンサー
・タイプ:積層型CMOS(GS対応)
・有効画素数:2460万画素
・ローパスフィルター:あり
・除塵ユニット:あり
・手振れ補正:5軸 8.0段分 協調手振れ補正対応 - プロセッサ:BIONZ XR
- ISO 250 - 25600 (拡張: 下限ISO 125、上限ISO 51200)
- CFexpress Type A / SD UHS-II デュアルカードスロット
- AFシステム:ファストハイブリッドAF
・測距点:759点
・測距輝度範囲:-5EV
・被写体認識:人、動物、鳥、昆虫、車、列車、飛行機
・その他:フォーカスエリア 2種追加 - ドライブ性能:
・メカニカルシャッター:
・電子シャッター:~1/80000秒
(連続撮影時は1/16000秒)
・フラッシュ同調速度:全速同調
・撮影速度:最高約120コマ/秒
・撮影枚数:RAW (非圧縮): 96枚 - ファインダー:944万ドット OLED 0.9倍 25mmアイポイント
- モニター:マルチアングル 210万ドット 3.2型
- フレームレート:STD 60fps / HI 120fps / HI+ 240fps
- 動画:
・4K:~ 120p 280Mbps クロップなし
・出力:XAVC S/ XAVC HS ALL-I対応 / HDMI RAW
・電子IS:対応
・連続撮影時間: - インターフェース:
・USB:SuperSpeed USB 10 Gbps (USB 3.2)
・ヘッドホン:3.5 mm
・マイク:3.5 mm
・HDMI:A
・LAN:1000BASE-T
・シンクロ:あり
・Wi-Fi:802.11a/b/g/n/ac 2x2 MIMO対応
・Bluetooth:5.0
・音声メモ専用のマイクをカメラ背面に搭載 - ストリーミング:~3840 x 2160 (15p / 30p)
- バッテリー
・タイプ:NP-FZ100
・撮影可能枚数:ファインダー使用時: 約410枚、液晶モニター使用時: 約520枚
・充電方法:USB給電・充電 PD対応 - サイズ:約136.1 x 96.9 x 82.9 mm
- 重量:約703 g
- 防塵防滴:対応
- ボディ材質:マグネシウム合金
- 付属品
・バッテリーチャージャー BC-QZ1
・電源コード
・ケーブルプロテクター
・ショルダーストラップ
・ボディキャップ
・アクセサリーシューキャップ
・アイピースカップ
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