DPReviewがCP+2023のけるニコンのインタビュー記事を公開しています。一眼レフからミラーレスへの推移、Z 9や望遠単焦点について、動画市場を意識していること、フルサイズZ fcなど。
DPReview:CP+ 2023: Nikon interview - 'Everybody can become a content creator'
カメラ業界について
- 2022年は世界経済が大きな影響を受けたが、ニコンも例外ではない。
- サプライチェーンの問題でネガティブな影響を受けたが、計画通りに進めることができ、大きな影響はない。
- 2023年においても注意が必要であり、お客様にマイナスの影響を与えないような努力を続けている。
- カメラ業界全体としては、特にミドルレンジからハイレンジに関して底打ちの傾向。当社の戦略はまさにそこだ。
- 静止画であれ動画であれ、誰もがコンテンツクリエイターになり得る。スマートフォンユーザーは、よりクオリティの高いものを求めて、周囲との差別化を図っていることがわかる。
- 若い世代を中心としたSNSのトレンドでは、動画の需要が非常に高い。
デジタル一眼レフカメラからミラーレス一眼への移行
- Zマウントの販売台数で言えば、非常に順調だ。
- 我々の評価では、デジタル一眼レフからの移行はスムーズで、期待通りだ。
- フラッグシップであるZ 9だけでなく、Z fcやZ 30を含めたラインナップ全体が要因となっている。
- 36本のレンズラインアップに加え、レンズメーカーとライセンス契約を結んでおり、着実に新製品を発表している。
- エントリーからプロフェッショナルまで、幅広いニーズに対応できるレンズが揃ったことで、ミラーレスの基盤を固めることができた。
- 一眼レフを愛用するユーザーも少なからずいらっしゃるので、一眼レフも引き続きサポートしていく。
他社と同じく「中・高価格帯」「動画撮影の需要」に焦点を当てている模様。少し前までは「ニコンは静止画」の印象が強かったものの、Z 9の登場で大きく変わったように見えます。今後はより動画志向の強いカメラやアクセサリが登場するのかもしれません。
どちらかと言えば静止画がメインとなる一眼レフもサポートを続けていくとのこと。これが新製品の開発に繋がる発言と期待しないほうが良いと思いますが、現行モデルの生産がいつまで続くのか気になるところ。ボディはともかく、レンズが徐々にディスコンとなっています。
Z 9の開発秘話
- 製品開発に携わったニコンの誰もが、D6を超えるカメラを設計するという高い目標を持っていた。
- このカメラの設計は、ゼロからスタートだ。白紙の状態から開発に取り掛かった。まさに土台となる基本的な機能やデザインは、最も時間と労力を必要とするプロセスだ。
- 新しいフラッグシップモデルということで、多くの仕様を決める必要がある。
- デザインは、作っては壊し、作っては壊し、同じことを何度も何度も何度も繰り返した。
- 現在に至るZ 9の高い評価は、一切の妥協を許さず、努力を続けた結果だと考えている。
Z 9についてプロの声
- 以下の点で革新的と言われている。
・メカニカルシャッターが非搭載
・リアルなファインダー
・被写体検出を組み込んだ全く新しい3Dトラッキング
・動画機能の強化(8K 60p RAWやAFなど)Z 9が動画に強いわけ
- プロやアマチュアに関わらず、あらゆるカテゴリーでハイブリッドユーザーが増加している。
- ミラーレスカメラ、特にZ 9で動画のスペックを強化することは非常に重要だ。
- 全く新しいエンジンと新しいセンサーを搭載し、フラッグシップにふさわしい動画機能を持たせたかった。
- ニコンはまだ静止画の会社だと思われている方も多い。
- 動画撮影者の方がどのようなスペックを求めているのか、アンケートやインタビューを何度も行った。
他のシステムからZ 9を動画用に使う人
- ニコンは一眼レフの時代から耐久性のあるカメラに定評がある。
- Z 9は過酷な環境でのドキュメンタリー撮影に適した耐久性を持っているというお客様の声も耳にする。
Z 9の動画機能は市場への本格参入となるか
- 映像市場での存在感を高めていくつもりだ。
- しかし、カメラボディの開発だけでは実現できない。動画撮影のニーズを考慮したレンズシステム、より充実したアクセサリーシステム、そしてその後の編集作業など、必要な要素は他にもある。
- NIKKOR Zレンズは、発売当初から静粛性やフォーカスブリージングを考慮したレンズだ。
- アクセサリーブランドとのパートナーシップを確立し、独自のグリップアクセサリー「MC-N10」を発売している。
- 動画市場はチャンスに満ちていると認識している。大きな市場であり、さまざまなニーズがある。
SNSを眺めていると、野生動物やスポーツなど静止画で利用する人に加え、動画撮影にも利用している人をちらほらと見るようになりました。一眼レフの時代からZ 9登場前のミラーレスでも動画を利用する人がいましたが、あくまでも静止画目的でカメラを購入した人が多かったと思います。しかし、Z 9は動画目的で購入する人が増加。目に見える変化があったように感じます。今後はキヤノンのように下位モデル・APS-Cの動画機能も強化していくのか気になるところですねえ。
Z 9 | |||
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手ごろな価格の望遠単焦点について
- 従来は高画質を求める声が多かった。
- 一方で、F値を多少犠牲にしても(特にカメラの高感度性能の向上により)、よりコンパクトなレンズが欲しい、しかも手頃な価格で、という声が明確にある。
- Fマウントの500mm F5.6 PFはこのタイプのレンズで、好評を博した。その反響と要望をもとに、Zマウントの800mmF6.3、400mmF4.5を開発した。
- これらのレンズは軽量でいろいろな場所に持ち運べるので、変化に富んだ被写体を撮影でき、より幅広いシーンで使用できると考えている。
コンパクトな望遠レンズを設計する上で、最も苦労したこと、トレードオフ
- 小型化を目指す上で、レンズの光学性能を犠牲にしたくはなかった。
- レンズの設計を綿密に検討し、レンズの配置や使用する素材の選定を最適化する必要があった。
- 製造工程でレンズを薄くする方法を検討したり、機構部品にマグネシウムやプラスチック成形品などの軽量素材を採用するなどの取り組みにより、製品の軽量化に貢献。
- 構造強度のシミュレーションを活用することで、部品の厚みや形状を最適化し、結果的に軽さを実現することができた。
これまでは100万円を超える高価格なレンズ群でしたが、カメラの高性能化でF値を抑えた小型軽量・低価格モデルの需要が高まっているようです。キヤノンのRF800mm F11 / RF600mm F11ほど極端ではなく、本格的なフォトグラファーにも受け入れられるデザインとなっているのが魅力的。もちろん万人向けの価格設定ではありませんが、それでも従来と比べると手が届きやすくなったなと。
NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S | |||
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NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S | |||
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Z fcについて
- 「持ち運びを楽しめるカメラ」「外観デザインだけでなく、撮影する時間も楽しめるカメラ」というのが、この製品の最初のコンセプトだ。
- 歴史あるニコンFM2をモチーフにしている。フィルム時代のユーザーやニコンファンにはたまらないと思う。
- そして、若い人たちにも楽しんでもらえるデザインにしようと考えた。
- フィルム時代を経験したことのない若いカメラマンが、これを持ち歩いて楽しんでいるという感想を聞くたびに、やりがいを感じる。
Z fc フルサイズについて
- Z fcの名前の「c」は、カジュアルを意味する。伝統を受け継ぐカメラで気軽に撮影を楽しんでほしいという思いがある。
- そのためには、小型であることと、価格が重要だ。その結果、APS-Cとなった。
- 今後もユーザーの声を聞きながら、さらに工夫していきたい。
- もちろん、ユーザーから「Z fcのフルサイズ版を出してほしい」という声も相当数寄せられている。
Z fcのコンセプトを考慮すると、このままフルサイズ化するのは難しそう。実際に私もZ fcを購入しましたが、ややプラスチッキーな筐体と外観がアンバランスと感じました。フルサイズ化すればなおさら、そう感じるかもしれません。とは言え、コンパクトなフルサイズ用レンズが増えてきたので、「Zf」の需要も高まっていると思われます。「カジュアルじゃない」Zfを見てみたいところ。
カメラのエルゴノミクスについて
- エルゴノミクスは写真撮影において非常に重要だ。
- プロのカメラマンが「瞬間」を撮影する必要性があるので、ボタンや機能のレイアウトも、肌になじむような感覚に設計する必要があり、とても大切である。
- 常にプロのフォトグラファーの声を取り入れてきた。製品を設計する上での指針となっている。
- プロのカメラマンに試作品を手にとってもらい、意見を聞くということがある。このプロセスは、可能性がある限り製品開発の後半まで続けた。
AI技術について
- AIが役立つのは、被写体検出やオートフォーカスだけではない。
- 露出やホワイトバランスのような、画像を撮影するのに役立ちそうな情報を、効果的な方法で定義してくれる。
- 被写体やシーンの自動検出を強化することで、撮影の自動化をさらに進め、現在では考えられないような撮影方法を実現し、想像を超えるような映像体験が可能となるかもしれない。
- 我々は、写真家がより構図やタイミングにこだわることができるよう、これからも技術開発に取り組んでいく。
この25年間で、写真にとって最も重要な変化は?
- フィルムからデジタルへの移行というのは、多くの人が同意するところだと思う。
- 1999年にD1を発売。当時、デジタル一眼レフは非常に高価だったが、D1は100万円を切る価格で人気を博した。
- デジタルに移行することで、映像を撮るという体験がガラリと変わった。
- デジタルになったことでハードルが下がり、誰でも気軽に楽しめるものになった。その延長線上に、スマートフォンで日常的に写真を撮るということがある。
他社と同じくフィルムからデジタルへの移行を挙げています。今後はAI技術や動画との融合が焦点となっていくのでしょうか。ネットワークの常時接続がもう少し簡単・高性能になると、クラウドの連携機能も劇的に強化されるかもしれませんね。