シグマ「16mm F1.4 DC DN」富士フイルムXマウント用のレビュー第四弾を公開。今回は色収差や歪曲収差、コマ収差などを恒例の撮影方法でチェックしています。
16mm F1.4 DC DN X-mountのレビュー一覧
- シグマ 16mm F1.4 DC DN X-mount 徹底レビュー 完全版
- シグマ 16mm F1.4 DC DN X-mount 徹底レビュー Vol.5 ボケ編
- シグマ 16mm F1.4 DC DN X-mount 徹底レビュー Vol.4 諸収差編
- シグマ 16mm F1.4 DC DN X-mount 徹底レビュー Vol.2 解像チャート編
- シグマ 16mm F1.4 DC DN X-mount 徹底レビュー Vol.1 外観・AF編
Index
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
実写で確認
基本的にX-S10出力のRAWは純正現像ソフトやLightroomなどメジャーな社外製ソフトで倍率色収差が自動的に補正される。今回はRAW Therapeeを使用して自動補正が適用されないように現像したのが上に掲載した結果となる。御覧のように、倍率色収差は僅かながらハッキリと現れており、これは高コントラストな状況で実写にも影響がある。
幸いにも補正が簡単な収差であり、基本的に問題視する必要は無い。ただし、色収差を補正すると細部のコントラストが僅かに低下しているように見え、解像感の低下に繋がっているのは確か。と言っても影響は軽微で個人的には問題を感じない。ちなみに以下はLightroomで現像した結果である。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
実写で確認
完璧な補正状態とは言えず、F1.4やF2でいくらか残存している。特に絞り開放でコントラストが高い領域では目立つかもしれない。
球面収差
前後のボケ質には明確な違いがあり、球面収差の補正状態が完璧では無いことが分かる。後ボケは縁取りが弱く、前ボケは少し強めだ。このレンズは軸上色収差の影響が残っており、特にボケの縁取りが強い前ボケで色収差の影響が目立つ。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
実写で確認
倍率色収差と同じく、純正ソフトやメジャーな社外製ソフトでは歪曲収差が自動補正される。ここでも敢えて補正をオフにする方法で現像すると、陣笠状の歪みを伴る樽型歪曲が残っていることが分かる。それでもミラーレス用の広角レンズとしては影響が軽微であり、補正による極端な画質低下は無いと思われる。ただし、陣笠状のため手動での完璧な補正は難しい。
コマ収差・非点収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
コマ収差は絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、やはり光学的な補正が重要となる。
実写で確認
予想していたよりも収差の影響が強く、点像再現性が悪い。この影響はAPS-Cフレーム端のみならず、マイクロフォーサーズフレームにも影響があるほどだ。もしも夜景でこのレンズを使う場合は気を付けたいポイントとなる。幸いにもF2まで絞ると状況は大きく改善する。
まとめ
諸収差において注意すべき点があるとすればコマ収差や非点収差が起因していると思われる点像再現性だ。F1.4の大口径を活かした夜景・天体撮影に使いたいところだが、F1.4付近は点像再現性が悪く、特に点像を重視する場合は少し絞って使うことになる。一般的な遠景の撮影でもF2まで絞ったほうが安定した像が得られると感じるのはこの収差が影響しているのかもしれない。木漏れ日なども影響を受けるが、F2以上では目立たないので過度に心配する必要は無いだろう。
次に気を付けたいのは軸上色収差だ。幸いにも後ボケは縁取りが弱く柔らかい描写で、色収差が目立ちにくくなっている。逆に前ボケは縁取りが少し硬く、場合によって「パープルフリンジ」として目立つ可能性がある。そのような状況は少ないと思うが、特に逆光シーンでF1.4を使う場合は気を付けたほうが良い。
歪曲収差や倍率色収差もいくらか残っているが、自動補正が適用されるので実際に目にする機会は非常に少ない。それに元の状態も悪くなく、自動補正による画質への影響は最小限だ。過度に心配することは無いだろう。
全体的に見て、手ごろな価格の広角大口径レンズとしては良くまとまっている。点像再現性を重視する場合のみ対策や別の選択肢を検討する必要がある。