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タムロン 18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXD 徹底レビュー 解像力編

タムロン 18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXDのレビュー第二弾を公開。今回はα7R IVのAPS-Cクロップ(2600万画素)で恒例の解像力チャートを使用した解像性能を公開しています。

18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXDのレビュー一覧

まえがき

2021年9月に発売したタムロン製のミラーレス用高倍率ズームレンズ。APS-Cミラーレスとしては珍しい300mm至の超高倍率ズームであるうえ、簡易防滴、光学手ぶれ補正、防汚コート、0.5倍の最大撮影倍率などなど高機能なレンズに仕上がっている。

概要
レンズの仕様
マウント E/X 最短撮影距離 0.15-0.99m
フォーマット APS-C 最大撮影倍率 0.5-0.25倍
焦点距離 18-300mm フィルター径 67mm
レンズ構成 15群19枚 手ぶれ補正 対応
開放絞り F3.5-6.3 テレコン -
最小絞り F22-40 コーティング BBAR-G2・F
絞り羽根 7枚 (円形絞り)
サイズ・重量など
サイズ φ75.5mm×125.6mm 防塵防滴 簡易
重量 620g AF VXD
その他
付属品
フード・キャップ

同シリーズで3本目となるミラーレスAPS-C用のズームレンズ。ミラーレス用高倍率ズームとしては珍しい「光学16.6倍」の幅広いズームレンジを備え、フルサイズ判換算で450mmの長焦点まで利用できるのが魅力的。広角側は18mmなので、16mmや17mm始まりのレンズと比べると少し画角が狭い。しかし、最短撮影距離が短く、撮影倍率が0.5倍と非常に高い。

レンズサイズは従来の標準ズームや広角ズームより大きいものの、18mmから300mmをカバーしているレンズとしてはコンパクトと言えるかもしれない。開放F値は望遠側で「F6.3」と暗いものの、広角側は「F3.5」であり、F2.8との差は1段未満に抑えられている。18mm F3.5を使う限り、大口径ズームと「レンズの明るさ」に大きな差は無い。つまり低照度の撮影もそこそこいける。

オートフォーカスにはVXD駆動を採用。このクラスでリニアモーター駆動を採用するのは珍しく、高速かつ滑らかで精度の高いAFを期待できる。タムロンは既に複数のレンズでVXD駆動を実装済みであり、そのオートフォーカス性能には定評がある。このレンズも従来通りのパフォーマンスだと思われるが、望遠側の開放F値が暗く、低照度では性能が低下しやすい点に注意が必要。

価格のチェック

売り出し価格は7.5万円。APS-C用の高倍率ズームレンズとしては少し高めだが、300mmリーチの競合レンズが存在しないことから価格の比較しようがない。決して安くはないものの、必要であれば手が届く範囲の価格設定。

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解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:ILCE-RM4 APS-C (2600万画素)
  • 交換レンズ:18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXD
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 64 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

18mm

中央

絞り開放から非常に良好なピークの性能を発揮しており、絞っても改善しない。むしろ絞り開放をピークとして、絞るごとにパフォーマンスが低下する。被写界深度が必要なければ絞り開放を積極的に使用して問題なし。被写界深度が必要な場合は絞る必要があるものの、F8までは3000を超える良好な結果を得られる。

周辺

中央と同じく、絞り開放から非常に良好な結果を得ることができる。少なくとも光学10倍以上の高倍率ズームとは思えない優秀さ。ただし、細部をよく見ると、コントラストや色収差の補正は完璧と言えず、「単焦点並み」とは感じない場合もある。それでも高倍率ズームとしては間違いなく優れている。
やはり絞っても改善せず、F8までは良好な画質を維持している。

四隅

中央や周辺と比べると解像性能は低下するものの、極端な非点収差や色収差が無い良好な画質。特に広角レンズにおける接写時の結果としては単焦点レンズ並みの安定感と言っても過言ではない。中央や周辺と比べて、絞ると少し解像性能が向上する。フレーム端のパフォーマンスを底上げしたい場合はF5.6~F8を使うのがおススメ。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F3.5 3838 3700 2856
F4.0 3443 3494 2948
F5.6 3220 3317 2978
F8.0 2973 3162 3355
F11 3185 2961 2978
F16 2649 2849 2674
F22 2199 2100

35mm

中央

18mmほどの切れ味では無いが、絞り開放から良好な性能を発揮。絞っても大きく改善することは無いが、絞り値全域で安定した結果を得ることが出来る。F16までは概ね実用的な画質を維持するが、F16以降は回折の影響が特に強くなるので避けたほうが良い。

周辺

全体的な性能・傾向は中央とほぼ同じ。ピークの画質を求めなければ安定感があり、被写界深度に応じて絞り値を調整すればOK。やはりF16以降は回折の影響でガタっと画質が低下するので注意が必要。

四隅

中央や周辺とほぼ同じ画質。絞り値による変化は乏しく、安定した画質である反面、それ以上の切れ味は獲得することができない。とは言え、高倍率ズームのフレーム隅としては健闘している解像性能だと思う。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 3006 2840 2668
F5.6 2590 3065 2590
F8.0 2488 2845 2947
F11 2883 2668 2947
F16 2765 2465 2615
F22 2192 2040 2035
F25 2093 1865 1865

50mm

中央

35mmよりも良好で、18mmと同じく絞り開放がピークの画質。絞った際のパフォーマンス低下が早いものの、F8からF16までは安定感のある画質が得られる。

周辺

中央よりも絞り開放のパフォーマンスが低く、少し絞ると同程度になる。以降は最小絞りまで中央とほぼ同じ性能を維持。

四隅

中央や周辺と比べてピークの性能は少し低下するが、全体的に見れば遜色なく、高倍率ズームとしては評価できるパフォーマンスを発揮している。F16付近まで性能はほぼ一定で、それ以降は回折の影響により低下する。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.5 3247 2851 2537
F5.6 3065 3056 2668
F8.0 2646 2954 2744
F11 2597 2621 2744
F16 2571 2518 2440
F22 2234 2056 1985
F29 1844 1749 1715

70mm

中央

ズーム中間域だが、絞り開放の性能は広角側と遜色ない。開放F5から既にピークの性能に達しており、絞ると徐々に低下する。F8まで低下した後はF16まで性能を維持し、それ以上は回折影響が一気に強くなる。

周辺

全体的な傾向は中央とよく似ており、絞ると徐々に性能が低下する。抜群の性能とは言えないが、このカテゴリのレンズとしては間違いなく良好。

四隅

ぱっと見は安定しているものの、数値として確認すると中央や周辺よりも1グレード低い解像性能。全体的なパフォーマンスを均質化したいのであればF8~F11まで絞りたいところ。とは言え、そこまで解像性能が必要無い場合、絞り開放でも実用的な画質が得られる。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F5.0 3262 2815 2121
F5.6 3031 2997 2340
F8.0 2719 2845 2562
F11 2569 2567 2632
F16 2569 2415 2389
F22 2187 1965 2044
F32 1706 1665 1536

100mm

中央

70mmとほぼ同じ性能・傾向。100mmでこのパフォーマンスを持続しているのは大いに評価したいポイント。絞った際も50mmや70mmと同程度の結果を得ることが出来る。

周辺

絞り開放の性能が中央ほどでは無いものの、基本的にはほぼ同じ傾向。性能低下が見られず、快適に使える画質を維持している。

四隅

絞り開放の性能は70mmと同じだが、絞った際に大きな改善が見られなくなる。F16までは中央や周辺と比べて少し甘い画質と考えておいた方が良いだろう。それでも、極端な非点収差や色収差が目立たない、落ち着いた描写に見える。細部の解像性能・解像感が必要無ければ欠点とは感じない。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F5.6 3301 2809 2194
F8.0 2871 2740 1979
F11 2618 2565 2291
F16 2565 2290 2340
F22 2162 1994 1979
F32 1615 1550 1560

200mm

中央

200mm以前と比べると多少の性能低下が見られるものの、それでも良好な解像性能を発揮しているように見える。この焦点距離になると、軸上色収差の補正が完全とは言えず、中央付近でも僅かに色ずれが細部に発生し始める。絞ると色収差は改善するが、回折の影響で結果的に解像性能の数値は低下する。中央の性能をピークで維持したいのであれば、F値をF6.3~F8に抑えるのが良し。

周辺

200mmまでと比べると、性能がガタっと低下する。結果は隅と同程度まで低下し、絞っても改善する気配はない。被写体をシャープに写したいのであれば、フレーム中央に良さたほうが良いだろう。

四隅

周辺と比べて、画質の顕著な落ち込みは見られない。決して褒められた画質ではないが、高倍率ズームの望遠側としては健闘していると思う。見苦しい非点収差や色収差の影響が少ないのは正直に言って凄い。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 3005 2165 2096
F8.0 2820 2111 1901
F11 2240 1865 1846
F16 2162 1915 1755
F22 1979 1833 1682
F32 1706 1501 1353
F36 1352 1327 1357

300mm

中央

基本的に200mmと同程度の性能を維持しており、高倍率ズームの望遠端ながら顕著な性能低下は見られない。解像性能はF8まで維持され、それ以降は回折による影響で急速に低下する。

周辺

200mmと同じく、広角側や中間域と比べるとグレードが低い画質。ただし、極端な粗さは見られないので、画像処理でなんとかなるレベルかもしれない。

四隅

200mmと比べて、さらに解像性能が低下している。このズームレンズにおいて、最も性能が低下するポイント。逆に言えば、300mm隅の画質を許容できるのであれば、このズームレンズにおいて解像性能の欠点は無いと言ってもいい。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 3073 2167 1834
F8.0 2921 2216 1834
F11 2140 1970 1682
F16 1858 1822 1682
F22 2010 1575 1507
F32 1529 1450 1401
F40 1262 819 837

今回のおさらい

非常に良好な広角域と、良好な中間域と、良好な中央解像の望遠側を利用できる便利な高倍率ズーム。光学16.6倍の超高倍率ズームとしては非常に良好なパフォーマンスと感じる。明らかに欠点と言える部分は200~300mmの周辺・隅だけであり、そのような焦点距離でフレーム周辺部まで解像性能が必要な場面は多くないはず。また、描写が甘い部分でも、目立つ非点収差や色収差が少なく、画像処理次第では良好な画質と感じるかもしれない。

ズームレンジ全域で、中央解像のピークは絞り開放である。絞るとパフォーマンスは低下するが、基本的にF8までは良好な画質を期待でき、多少の低下を許容できるのであればF16まで使えそうな印象あり。色収差が目立つシーンは少ないので、被写界深度に問題がなければ絞り開放を積極的に使っていくのもありかもしれない。

F16まで絞れば、しっかりとした光条が発生するので、解像性能とバランスを取って光条を発生させたいのであればF16がおススメ。ズームレンズながら思いのほか綺麗な光条ができる。

最も周辺部の画質が低下する300mmを使用しても、実際に出力されるJPEGで極端な描写の甘さは見られない。十分満足のいく画質だと思う。一眼レフ時代の高倍率ズームに慣れている人ならば、描写の違いに驚くかもしれない。

購入早見表

18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXD Sony E
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18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXD Fuji X
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作例

オリジナルデータはFlickrにて

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