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AstrHori AF 27mm F2.8 レンズレビュー 完全版

このページでは「AstrHori AF 27mm F2.8」のレビューを掲載しています。

AstrHori AF 27mm F2.8のレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 比較的安い
サイズ F2.8レンズとしては適度
重量 金属筐体のためやや重め
操作性 重めのフォーカスリングのみ
AF性能 適度
解像性能 安定感のある性能
ボケ 滑らかな後ボケ・口径食強
色収差 良好な補正状態
歪曲収差 穏やかな樽型
コマ収差・非点収差 穏やかな影響
周辺減光 F2.8で目立つ
逆光耐性 欠点ではない
満足度 コスパ良好だがライバルが強い

評価:

コスパ良好だがライバルが強い

いくつか注意点があるものの、2万円ちょっとで入手でき、ビルドクオリティや光学性能は良好なレンズ。価格を考慮すると概ね肯定的に評価できる性能です。欠点は手頃な価格でニコン純正のF1.7レンズが手に入ること。

Despite a few points to watch out for, this lens can be obtained for a little over 20,000 yen, and the build quality and optical performance are good. Considering the price, the performance can generally be evaluated positively. The downside is that you can get a genuine Nikon F1.7 lens at an affordable price.

まえがき

AstrHori 2本目となるAFレンズ。APS-Cに対応する27mmのコンパクトなレンズで、フルサイズ判換算で約40mm相当の画角をカバーしています。TTArtisanや7Artisansなど競合製品が多く、後発のAstrHoriが存在感を示すことができるのか気になるところ。

発売日 2024.11.16
初値 21,780円
レンズマウント Z
対応センサー APS-C
焦点距離 27mm
レンズ構成 5群6枚
開放絞り F2.8
最小絞り F16
絞り羽根 6枚
最短撮影距離 0.3m
最大撮影倍率 不明
フィルター径 39mm
手振れ補正 -
テレコン -
コーティング 不明
サイズ φ67×43mm
重量
防塵防滴 -
AF STM
絞りリング -
その他のコントロール -
付属品

レンズ構成はTTArtisanや7Artisans、Ulanziとよく似ているものの関連性は不明。4社がほど同じ光学系を採用しているのは面白いですね。スペック的には7Artisansに似ていますが、フィルター径は39mmと小さ目。対応マウントはニコンZマウントのみで、富士フイルムXやソニーEでは利用不可。

価格のチェック

販売価格は2万円前半。TTArtisanよりも少し安く、7Artisansより少し高い。「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」よりも安価ですが、純正品・F1.7の大口径である優位性を覆すほどか?というと微妙なところ。

AstrHori AF 27mm F2.8
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PERGEAR

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

AstrHoriらしく、重ね蓋で開閉するタイプで、黒を基調としたシンプルなデザイン。

レンズ本体のほか、ファームウェア更新用のUSBケーブルを同梱。レンズキャップはつまみ式。

外観

外装は金属製のしっかりとした作り。大口径Zマウントに対応するため、マウント側の直径が大きく、曲線的な筐体のデザインが特徴。

前玉・後玉

7ArtisansやTTArtisanと同じく、レンズは鏡筒内で前後する繰り出し式フォーカスを採用。全長の伸び縮みは無く、鏡筒内でフォーカシングが完結。レンズフードは同梱していませんが、周辺の鏡筒がその役割を果たしているように見えます。

フィルター径は39mmと小さく、選択肢が限られる点に注意。プロテクトフィルターは問題ないと思いますが、C-PLやNDフィルターが少なめ。

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金属製のレンズマウントは3本のビスで本体に固定。防塵防滴用のシーリングはありません。更新用USBポートはレンズ側面に配置。マウント付近は不要な光の反射を抑えるために黒塗りされています。ただし、マットな塗装ではなく、少し光沢のある塗装を使用。これが実写でどのように影響するのか気になるところ。

フォーカスリング

金属製のフォーカスリングを搭載。表面はローレット加工が施されていますが、グリップの向上に寄与するほど深い切込みではありません。滑りやすいうえ、リングの回転がかなり重い。素手ならともかく、手袋着用時は操作が難しい。

装着例

ニコン Z50IIに装着。小型軽量ボディの強みを活かすことができる、携帯性の良いレンズであることが分かります。ただし、「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」が同程度のサイズであることを考慮すると優位性があるとは言えません。金属鏡筒のため、比較して少し重いレンズである点も注意。
競合製品を考慮しないで言えば、悪くない組み合わせだと思います。

AF・MF

フォーカススピード

Z 8に装着。電光石火とは言えないものの、近距離から遠景まで快適と感じる動作速度。撮影距離の近い動体や低照度でないかぎり問題は感じません。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

スライドショーには JavaScript が必要です。

繰り出し式フォーカスらしく、ピント位置で画角が大きく変化します。特にフレーム周辺を使ってピント合わせをする場合、ピントを合わせたいエリアがフレーム上で移動しやすく、AFが迷いやすい。

精度

Z 8やZ50IIに大きな問題はありませんでした。

MF

前述したように、重めのフォーカスリングが扱い辛い。ただし、フォーカシングそのものは滑らかで、細部のピント合わせで苦労することはありません。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Z 8
  • 交換レンズ:AstrHori AF 27mm F2.8 Z
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

F2.8

TTArtisanや7Artisansと同じく、F2.8から安定感のある解像性能を発揮。少なくとも2000万画素の解像性能では中央から隅まで一貫した結果が得られます。「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」は近距離で周辺や隅の性能が低下するため、全体の一貫性を重視するならAstrHoriやTTArtisanなどがより良好。

F8.0

F2.8から実用的で、F8まで絞っても大きな変化はありません。よく見るとコントラストが改善していますが、無理にF8まで絞る必要性は低いように見えます。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2024.11.25:快晴 微風
  • カメラ:Z 8 DXクロップ
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Camera RAW Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・レンズ補正オフ
    ・ノイズ補正オフ

F2.8

中央から広い範囲で良好な結果が得られますが、フレーム隅のわずかな部分がややソフト。極端に画質が低下するわけではありませんが、隅までベストな結果を得たい時は絞ったほうが良いでしょう。

 

F8

F8まで絞ると中央から隅までシャープな結果を得ることが出来ます。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

実写でのテスト結果を見る限り、大きな影響はありません。近距離で増大しますが、アーカイブなど特殊な用途でない限り、近距離で平坦な像面が必要となることは少ない。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

良好な補正状態です。これ以上の追加補正は必要ないように見えます。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

ピント面前後に極わずかな色づき。これが実写で問題となるシーンは限られています。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

穏やかな樽型ですが、直線的な被写体をフレーム周囲に配置する場合は補正したい場合あり。TTArtisanや7Artisansのレンズプロファイルで修正可能。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

テスト環境

絞り開放で影響がわずかに残存。目くじらを立てるほどの欠点ではなく、実写では無視できる程度に抑えられています。

球面収差

良好な補正状態。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

輪郭が目立たない滑らかで柔らかい描写。軸上色収差による色づきが少なく、使い勝手が良好。

前ボケ

後ボケと比べると硬めですが、色収差の影響が少なく悪目立ちしていません。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

玉ボケの内側は滑らかですが、若干の縁取りと目立つ口径食があります。口径食は2段絞ると改善しますが、6枚の絞り羽根で角ばりやすい。

ボケ実写

至近距離

滑らかで綺麗なボケ。口径食は強いものの、近距離では問題が目立ちません。

近距離

撮影距離が長いと口径食が目立ち始めます。しかし色収差が極小で、縁どりが弱いので騒がしい描写ではありません。

中距離

撮影距離が長い場合でも健闘しています。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。「27mm F2.8」という性質上、ボケを得やすいレンズではありません。十分なボケを得るにはバストアップくらいまで近寄る必要があります。ボケ質はこれまで通り使い勝手が良好。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

近距離でも絞り開放でやや目立ちます。F4まで絞っても解消しないため、状況によっては現像ソフトなどで修正する必要があります。

無限遠

無限遠側ではさらに周辺減光が強まる。フラットなシーンではかなり目立つので補正必須。F4まで絞っても目立つ減光効果が残ります。

逆光耐性・光条

中央

TTArtisanや7Artisansと同じく、中国メーカーとしてはまずまず良好な結果。構成枚数が少ないシンプルな作りのためか、フレア・ゴーストはどちらも少なめ。

完璧とは言えないものの、フレアが過度に影響することは少ない。

光条

6枚偶数絞りのため、クロスフィルターのようにシャープで力強い光条が得られます。F8くらいまで分散する描写ですが、F11-F16まで絞れば先細りする見栄えの良い光条へ変化。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 低価格
  • 小型軽量
  • 金属製の頑丈な筐体
  • 近距離でも良好な解像性能
  • 色収差の補正状態が良好
  • 滑らかな後ボケ
  • 6枚羽根の光条

強みとなるのはF2.8から良好な解像性能と頑丈なビルドクオリティ。手頃な価格ながらしっかりとした作りで、欠点が少なく快適に利用可能。ニコン純正品が強力なライバルとなるものの、携帯性の高いレンズで日常的に利用することが出来ます。画角も適度で使いやすい。

悪かったところ

ココに注意

  • 防塵防滴非対応
  • F2.8と開放F値が大きい
  • フォーカスブリージングが大きい
  • 玉ボケが六角形で口径食が目立つ
  • 周辺減光が強い

価格設定を考慮すると許容範囲内と言える欠点が多い。TTArtisanや7Artisansと比べると逆光時のフレアは良く抑えられています。同じ光学系で同程度の筐体デザインだけに差が発生するのは謎。ただし、完璧ではないため、状況によっては同程度のフレアが発生します。

また、光学系が小型軽量のため、周辺減光や口径食が目立ちます。絞ると急速に改善しますが、四隅の玉ボケや光量を気にする場合は他の選択肢を考慮したほうが良いでしょう。

結論

満足度は85点。
いくつか注意点があるものの、2万円ちょっとで入手でき、ビルドクオリティや光学性能は良好なレンズ。価格を考慮すると概ね肯定的に評価できる性能です。欠点は手頃な価格でニコン純正のF1.7レンズが手に入ること。

購入するを悩んでいる人

NIKKOR Z DX 24mm f/1.7

ニコン純正の24mm F1.7 レンズ。AstrHoriと同程度のサイズで、価格は少し高い程度。インナーフォーカスかつ防塵防滴に配慮した設計のF1.7レンズと考えると差額分の価値はあります。欠点は全体的にプラスチック製の筐体で、近距離時に周辺や隅の解像性能が低下すること。とはいえ、迷うくらいであればニコン純正品を選んでおいたほうが良いでしょう。

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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