このページではキヤノンの一眼レフカメラ「EOS 90D」を一か月使って感じた「良いところ・悪いところ」についてレビューを掲載しています。
EOS 90Dの良いところ・悪いところ
Index
外観・操作性
基本はEOS 80Dと同じ
EOS 80Dから大きく変化の無い馴染みのある外観と操作性のカメラ。カメラサイズは元より、グリップの形状やボタンの役割・配置は非常に似ています。このためEOS 70Dや80Dと同じバッテリーグリップを使い回せるのは一つのメリットと言えるでしょう。乗り換えやすいポイント。
スティック型マルチコントローラー
新しくスティック型マルチコントローラーを搭載しているものの、機能的に大きな変化は無ありません。本当にマルチコントローラーが一つ増えたような感じです。それ以上でもそれ以下でもありません。
もともと光学ファインダー時の測距点は45点と(他社と比べて)比較的少なく、スティック型マルチコントローラーが無くても困らない人が多いはず。あればあったで便利に違いありませんが、測光タイマーで勝手に機能がオフとなるキヤノンの仕様では使い辛い印象(詳しくはレビュー:ボタンカスタマイズ編を参照)。
カスタマイズは従来通り
カスタマイズも相変わらずで、特に自由度が高くなっているEOSミラーレスシステムと比べると味気ない感じ。スティックとボタンのマルチコントローラーで機能を振り分けることが出来ないのはなんとかして欲しいところ。
描写性能
高解像3250万画素センサー
APS-Cとしては非常に高解像な3250万画素センサーを搭載。解像性能はフルサイズ「EOS 5D Mark IV」や「EOS R」よりも少し良好。ただし、センサーの解像性能を活かすレンズは限られており、特に絞り開放からシャープな描写を楽しむにはレンズを良く考える必要あり。
ノイズ耐性は80Dと似ているが…
ノイズ耐性は古い2400万画素センサーと同程度ですが、高画素化しているので結果的にイメージ全体のノイズはきめ細かくなり実用ISO感度が向上しているように見えます。ノイズリダクションは初期設定だと少し強めなので、高解像センサーを活かすなら効果を弱めたほうが良い感じ。
ダイナミックレンジはEOS 80Dと同様、競合他社の2400万画素センサーに近いパフォーマンスを発揮します。取り分け良くはないけど、悪くもない。
AF性能
光学ファインダーは少し改善
光学ファインダーは引き続き45点オールクロスセンサーを使用。
フォーカス精度はまずまず良好ですが、D500やD7 Mark IIと言ったスポーツカメラの位相差センサーと比べるとカバーエリアが狭く感じます。
新型測光センサーの導入とEOS iTR AFシステムの実装により、ファインダー使用時でも顔検出に対応。検出精度はまずまず良好なので、人よっては「良くなった」と感じるかもしれません。
見違えるほど進化したライブビューAF
EOS 90Dのハイライトは大きく進化したライブビューAF。従来通りデュアルピクセルCMOS AFですが、最新世代のアルゴリズムを実装。
カバーエリアが広がり、エリアモードの種類が増え、検出精度・追従性能・レスポンス・表示速度、どれを取っても最新世代のEOSミラーレスに引けを取りません。18-135USMと組み合わせれば並のミラーレス以上となるフォーカス性能を引き出すことが可能です。
連写・ドライブ性能
ミドルクラスでは最速10コマ秒連写
ついにスポーツ一眼レフカメラ「EOS 7D Mark II」や「D500」に並ぶ10コマ秒の連写速度を達成。ミドルクラスの一眼レフとしては最も高速連写が可能なカメラです。3250万画素と大きなファイルサイズのためか、連写時のバッファはそれほど大きく感じません。しかし、EOS 80Dと同程度のバッファは確保されているので、乗り換えであれば問題と感じることは無いでしょう。RAWで200コマの連続撮影枚数を達成しているニコンD500と比べると見劣りしますが、他所はよそ、内はウチ。
進化したライブビュー時のドライブ
さらにEOS 90Dはライブビュー使用時に11コマ秒の高速メカシャッターに対応。これ以上のメカシャッター連写を実現しているカメラはミラーレスを含めてそう多くありません。ただし、ライブビューのサーボAF時は7コマ秒まで連写速度が低下するので注意が必要です。
EOS一眼レフシステムで初めて完全電子シャッターに対応し、さらに1/16000秒の高速シャッタースピードを実装しているのは特筆すべきポイント。ただし、電子シャッター時の連写撮影に対応しておらず、ブラケットなど一部機能はメカシャッターに戻す必要があります。
機能性
ちょっと不満な点がぽつぽつと…
相変わらずの電子水準器
従来通り電子水準器は1軸かつファインダーで見づらく、ライブビュー時に「顔・追従優先モード」で表示できません。果たしてこれが改善される日は来るのでしょうか?
AFタブ無し
メニューシステムはEOSシステムらしい従来通りのデザインとなっています。80Dと同じく、「AF」タブは存在せず「C-Fn II」に大部分が格納されています。何回か呼び出して微調整したい項目があるので、マイメニューで再設定しやすくしておきたいところ。
ファインダーとライブビューでメニュー画面が変化する
ファインダーとライブビューでカメラ撮影機能が異なるため、それぞれに応じたメニュー項目が表示されます。このため、ファインダー時にはライブビュー専用設定項目を変更することが出来ません。その逆もしかり。
ダブルスタンダードな手ぶれ補正仕様
光学ファインダー時は露光時のみ手ぶれ補正が動作し、それ以外の時はボタンカスタマイズに「手ぶれ補正動作」を割り当てて使用しないとファインダー像が安定しません。
その一方、ライブビューは常時手ぶれ補正が動作し、常に像が安定した状態となっています。
分かって使えば混乱しませんが、これを理解していないと「おや?」と不思議に感じることでしょう。
良好なバッテリーライフ
バッテリーライフは日本公式だと1800枚となっていますが、CIPA準拠のパフォーマンスだと1300コマ程度となっています。それでも競合他社と比べてかなり良好な低消費電力と言うことが出来ます。実際、EOS 90Dを使っていて良好なバッテリーライフと感じます。ただし、ライブビューが使いやすくなっており、背面モニターでの撮影が多い場合は撮影枚数がグッと減ることでしょう。
価格
EOS 80Dの初値が12.5万円、そして実勢価格が8万円前後。80Dより間違いなく良いカメラに仕上がっているので、妥協できる値上がり幅。
「実勢価格8万円のEOS 80Dとどちらが良いか?」という場合、ライブビューや高画素を重視するなら90D、ファインダー重視なら80Dのコスパが光る、と言ったところ。
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ただし、ファインダー重視の場合はEOS 90Dと同価格帯までニコンD500が値下がりしているのが悩ましい。EFマウントのレンズ資産が無ければD500も検討すべし。とは言え、ニコン一眼レフのライブビューAFは本当に静物相手にしか使いものとならないので注意が必要。
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総評:最先端のハイブリッド一眼カメラ
満足度は85点。
光学ファインダーとライブビューを気軽に使い分けられる最先端ハイブリッドカメラ。ここまでライブビューのパフォーマンスが向上すると光学ファインダーの存在意義が問われそう。
ハイライトはやはり3250万画素センサーと最新ライブビューAFシステム。EOS 80Dと比べて画質は改善していると感じるうえ、ライブビューは目に見える違いがあります。
「EOS 90Dを買うだけの軍資金」で「一眼レフとしてより熟成したカメラ」や「より機能的なミラーレスカメラ」の選択肢が存在することは念頭に置いておきたい。前者はニコンD500、後者はX-T3やα6600、M6 Mark IIなど。これらと比較してEOS 90Dは部分的にちょっと苦しい。
光学ファインダーを捨てがたいが、ライブビュー機能を強化したい。既にEF-Sレンズ資産を持っている人などにおススメの1台。
Good
- 3250万画素APS-Cセンサー
- 競争力のある画質
- 馴染みのある45点位相差AF
- 非常に実用的なライブビューAF
- EOS iTR AFの導入
- 10コマ秒の追従連写速度
- レスポンスの良いタッチパネル
- CIPA準拠で1300枚のバッテリーライフ
- 既存のバッテリー・追加グリップに対応
- フル画角の4K動画+DPCMOS AF対応
Bad
- 3250万画素に耐えうるレンズが少ない
- ライブビューに適したレンズが少ない
- メニュー画面にAFタブが無い
- 大きな進化が無い位相差AFシステム
- シングルカードスロット
今回使用した機材
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