キヤノン「EOS R10」の徹底レビュー第四弾を公開。今回はカメラの連写速度やバッファ性能、そして電子シャッターを使った際のローリングシャッターについてチェックしています。
EOS R10のレビュー一覧
- キヤノン EOS R10 徹底レビュー 完全版
- キヤノンEOS R10 徹底レビュー Vol.6 AF/MF編
- キヤノンEOS R10 徹底レビュー Vol.5 カスタマイズ編
- キヤノンEOS R10 徹底レビュー Vol.5 メニュー編
- キヤノンEOS R10 徹底レビュー Vol.4 ドライブ編
- キヤノンEOS R10 徹底レビュー Vol.3 ISO感度編
- キヤノンEOS R10 徹底レビュー Vol.2 ダイナミックレンジ編
- キヤノンEOS R10 徹底レビュー Vol.1 外観・操作編
- キヤノン EOS R10 ハンズオン 外観と起動時間やシャッター音の確認
連写・ドライブ
シャッター方式
EOS R10は前後メカニカルシャッターを搭載しており、状況に応じてメカニカルシャッター(前後メカ)と電子先幕(前が電子で後がメカ)を切り替えることが可能。また、前後メカニカルシャッターを使用しない「電子シャッター」も使用可能である。それぞれのシャッター方式に関する長所と短所は以下の通り。
- メカニカルシャッター
・シャッターショックの影響がある
・高速シャッター時の露出ムラが発生し辛い - 電子先幕シャッター
・シャッターショックの影響を抑えられる(先幕が無反動の電子式)
・高速シャッター時の露出ムラが発生する - 電子シャッター
・シャッターショックが発生しない
・高速シャッター時の露出ムラが発生しない
・1/4000秒以上の高速シャッターに対応
→Av/Fvモード 1/8000秒
→Tv/Mモード? 1/16000秒
・15fps以上の高速連続撮影に対応
・ダイナミックレンジが僅かに狭くなる
(ダイナミックレンジ編を参照)
このため、大口径レンズ使用時やシャッタースピード、連続撮影速度に応じて使用するシャッター方式を切り替えるのが好ましい。ニコンや富士フイルムと異なり、キヤノンはシャッター方式を自動的に切り替える「オート」機能を搭載していないので、素早く切り替えるためにはマイメニューに登録しておくのがおススメだ。
連写速度
電子 | 電子先幕 | メカ | |
高速連続撮影+ | 23fps | 15fps | 15fps |
高速連続撮影 | 15fps | 7.7fps | 6.3fps |
低速連続撮影 | 3.0fps |
メカニカルシャッターで最大15fps、電子シャッターで最大23fpsの連続撮影に対応している。電子シャッター使用時に20fpsを超える高速連続撮影は珍しくなくなってきたが、メカニカルシャッター使用時に最大15fpsを叩き出すカメラはこの価格帯に存在しない。非常にハイパフォーマンスなカメラだ。ただし、パフォーマンスを最大限活かすには条件が必要なので予め理解しておきたい。
バッファ・バッファクリア
連続撮影速度を活かすためにも重要なのが連続撮影枚数である。連続撮影が高速だとしても、撮影したデータを処理したり、SDカードに書き込むまで一時的に情報を保持できる容量が多く無ければ撮影速度を活かすことが出来ない。EOS R10の連続撮影枚数の仕様は以下の通りだ。
- JPEGラージ:約123枚(約460枚)
- HEIFラージ:約90枚(約190枚)
- RAW:約21枚(約29枚)
- RAW+JPEGラージ、RAW+HEIFラージ:約21枚(約23枚)
- ()内はSD UHS-II使用時
公称値通りだとすると、RAW出力時の23fps連続撮影時はバッファが1秒とちょっとで埋まってしまう。R10と同時に登場した「EOS R7」がRAW 59枚に対応していることを考えるとバッファは半分に近い。ただし、SD UHS-IIに対応しているのでUHS-I対応スロットと比べて高速バッファクリアが可能だ。このため、Z fcやX-S10など、競合他社のSD UHS-Iのみ対応しているカメラよりも長時間の連続撮影で撮ることができる枚数は多くなると予想できる。実際に5秒・10秒・20秒の連続撮影をテストした結果が以下の通りだ。
RAW+JPEG(SD UHS-II SONY Tough 32GB) | |||
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
メカ15コマ秒 | 41 | 68 | 97 |
電子23コマ秒 | 32 | 64 | 80 |
バッファを考えると良好な結果となった。高速連続撮影でバッファは5秒も持たずに詰まってしまうが、SD UHS-II対応カードを使用することにより高速バッファクリアで隙間時間はほとんど発生しない。
メカ15fpsより電子23fpsのほうがコマ数を稼げていない点に気がつく人もいるだろう。これは、バッファを使いきった直後に回復したぶんだけ撮影再開できるメカシャッターと、ある程度のまとまった枚数までバッファが回復しないと撮影が出来なくなる電子シャッターの違いである。理由は不明だが、電子シャッターでバッファを使いきると、ある一定までバッファが回復しないと次の撮影が不可となる。
C-RAW+JPEG(SD UHS-II SONY Tough 32GB) | |||
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
メカ15コマ秒 | 59 | 101 | 144 |
電子23コマ秒 | 52 | 81 | 125 |
圧縮RAWであるC-RAWを使用することで撮影枚数を増やすことが可能だ。やはり高速電子シャッターよりも15fpsメカニカルシャッターのほうが撮影枚数が多くなっているのは面白い傾向だ。
23fps RAWのみ | |||
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
RAW | 64 | 104 | 156 |
C-RAW | 91 | 153 | 199 |
どのような設定にしても、数秒以上の連続撮影ではSDカードの書き込み速度に依存する。このため、転送ファイルサイズは絶対的に小さいほうが有利だ。当然ながらJPEG出力のみ、RAW出力のみのほうが撮影枚数を稼ぐことが出来るのは言うまでもない。もしもRAW出力が必要で撮影枚数を稼ぎたいのであれば、JPEG出力をオフにすることをおススメする。
競合カメラとの比較
RAW+JPEG | 5秒 | 10秒 | 20秒 |
R10 15fps | 41 | 68 | 97 |
R7 15fps | 49 | 62 | 86 |
X-S10 20fps | 21 | 31 | 39 |
Z fc 11fps (RAWのみ) |
38 | 54 | 68 |
E-M1 III 20fps | 71 | 96 | 121 |
同価格帯のカメラで比較すると、RAWのファイルサイズやSD UHS-II対応の有無で撮影枚数には大きな違いが発生している。マイクロフォーサーズは特にOM SYSTEMがじわりじわりとSD UHS-II対応機種を増やしているが、APS-Cミラーレスは富士フイルム・ソニー・ニコンともに出遅れている感あり。EOS R10の存在感は大きい。
オートISO
EOS R10はR7と同じく自由度の高いオートISO設定が可能だ。焦点距離に応じて(手ぶれを抑える)シャッタースピードの下限が変化する自動設定があり、±2EVで調整が可能となっている。
さらに手動設定で1秒から1段刻みで1/4000秒まで下限を固定することも可能である。被写体ブレを抑えたい場合は自動設定よりも手動設定の活用がおススメだ。
ローリングシャッター
CMOSセンサー全体を一度に露光出来るのが理想的だが、現在は発熱やノイズなど、様々な問題から実現に至っていない。現在はイメージセンサーの上ラインから下ラインまで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的だ。言葉で説明しても難しいので、下部の動画で分かりやすい。
動画のように、コンシューマー向けのデジタルカメラは大部分がローリングシャッター方式を採用したイメージセンサーを使用している。海外企業で「PIXII」のようなカメラがグローバルシャッターを採用しているが、国産ミラーレスでこの方式を採用しているカメラは存在しない。(キヤノンの業務用向けカムコーダーくらい)
実際にこのカメラのローリングシャッターの影響を調べた結果が以下の通りだ。
ご覧のように扇風機の羽根が不自然な描写となってしまっている。ローリングシャッター方式では、このように高速移動する被写体を撮影する際に問題が発生する。影響の度合いはEOS R7よりも強く、X-S10と比べても強いが、Z fcほどではない。他のカメラではどのような影響があるのか?は以下の通り。
競合機種と比較して悪くない性能だが、とりわけて良くもない。2022年の最新モデルと考えると少し期待外れな部分もあるが、これ以上の性能を10万円ちょっとのカメラに求めるのは酷である。ちなみに蛍光灯は1秒間に120回点滅(西日本)を繰り返しており、毎秒120回の点滅中、撮像時に4回の点滅がフレームに写りこむ。単純計算でEOS R10の幕速は33msだ。
まとめ
EOS R10よりもドライブ性能が優れたカメラは数多いが、10万円前後の価格帯においてEOS R10は非常に優れたパフォーマンスである。メカニカルシャッターで15コマ秒の連続撮影速度を実現しているカメラは他に無い。電子シャッター時の連写速度はクラストップでは無いものの、クロップ無しで23コマ秒の連続撮影に対応している点は評価すべきポイントだ。
バッファは小さいが、SD UHS-II対応カードで高速書き込みに対応したAPS-Cミラーレスは数少ない。継続的な連続撮影で枚数を稼ぎたい場合はEOS R10が強力な選択肢となる。
ローリングシャッターの幕速は2022年の最新モデルとして褒められた性能では無いが、競合他社のカメラと比べて見劣りするわけでも無い。敢えて言えば、電子シャッター時の最速シャッタースピード「1/16000秒」やメカニカルシャッターでは対応していない「1/8000秒」を利用できるのがTvモード・Mモードに限定されるのが残念だ。高速電子シャッターは大口径レンズを絞り開放で使う際に露出を維持するのに役立つ(低速シャッターでは日中にNDフィルターが必要)ものの、絞りを調整したい場合はMモード限定となってしまう。将来的に富士フイルムのように1/32000秒まで全ての撮影モードで利用したいものである。
もう一つ欠点は、3種類のシャッター方式を手動で変更する必要があることだ。メカニカルシャッターでは低速シャッターでシャッターショックの影響が発生し、電子先幕では高速シャッターで露出ムラが発生、そして電子シャッターではローリングシャッターの影響を避けることが出来ない。せめてメカニカルと電子先幕の自動切換え機能が欲しいところである。
参考情報
購入早見表
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