まえがき
マイクロフォーサーズの利点の一つは「レンズ交換式のシステムとしては被写界深度が深い」点を挙げる事が出来る。
それを有利に利用するならば、どうしてもピントが浅くなりがちな望遠レンズやマクロレンズだ。
私は「被写界深度の調整」という分野に惹かれてマイクロフォーサーズが気になり始めたのが手を染めたキッカケ。特に「深度合成」「フォーカスブラケット」が利用できるオリンパスシステムに惹かれる事となった。
そんな訳で、E-M1を手に入れたら絶対これは試しておかねばらないと購入したのがこのレンズ『M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro』だ。
外観
レンズとキャップだけで、実はフードが別売りというオリンパスらしい一面も。(キタムラでちょうど美品のフード付きがあったので迷わずゲッツした)
テレ(中望遠)マクロなレンズはフルサイズ用でいうと三脚座が装着できるほどの大柄なレンズが多いが、このレンズはなんと185gという軽量でコンパクトなレンズに仕上がっている。
マイクロフォーサーズ規格の単焦点レンズの中にあっては大きく感じるかもしれないが、とても小さいのです。
このレンズはピントリングとフォーカスレンズが直接繋がっているわけではなく、電気的な信号を介してモーターで動作するバイワイヤ方式となっている。
この為、フォーカスリミッターは電気的に制御されているので面白い仕組みが搭載されている。
スイッチの種類は「0.18-0.4m(マクロ)」「0.18-無限(通常)」「0.4-無限(望遠)」の三種類に加えて、「1:1」というモードがある。
これは固定できるモードでは無く、リミッターをマクロモードにする前に合わせる事でピント位置を一気に最接写位置まで動かしてくれる機能。
これが便利で、通常撮影からマクロ撮影に移行する場合はピント位置が接写から外れておりマクロ域の被写体がボケボケで確認出来ない事が多い。そんな時に強制的にピント距離を移動させるのがこの機能だ。ピントが背景に持っていかれて、迷ってしまいなかなか手前に合ってくれないという場合にも有効。
マイクロフォーサーズでは珍しく距離指標も配置されているので確認し易い。
前述したとおり、電気的に動いているので電源オフ時は無限遠側で固定されるようになっている。その際はピントリングを回しても何の変化も起こらない。
フードを装着。これは逆さ付けにした状態では無く、『M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO』同様に引き出し式のフードになっている。
よって、順付けの格納状態から引っ張りだすだけで使用可能状態出来るので便利。
フードの全長はそこそこ長いので、このレンズの全長がさらに際立って見えてしまう。サイズ的な印象は『M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ』を想像して頂ければまさにそんな感じだ。
レンズは防塵防滴仕様になっているので、マウント周辺部にはしっかりとシールが施してある。
フォーカシングはインナーフォーカス式の為、前玉も後ろ玉も動かない。この為、水や塵が入り込む隙間はピントリングやリミッター等の可動部分程度であり、そこについてもシールが施してあるので耐候性は高い。
耐候性が高いというポイントは「レンズの状態が悪くなりにくい」と置き換えることも出来るので、リセールバリューが下がりにくい特性を持っていると思って間違いないだろう。
レンズフードが伸縮自在なのでC-PLフィルターを使いやすいのもグッドなポイントだ。ただただ別売りなのが悔やまれる。
オリンパス機よりもさらに小型のGM1Sに装着するとスーパーライトな2倍マクロカメラシステムとなる。以前に紹介したベルボンのV4ユニットに搭載した際に取り回しが良いので重宝している。細かいところにピントを合わせやすいのでパナソニック機は侮れない。
この場合手ぶれ補正が無いものの、そもそも三脚固定の為問題無。仮に手持ちで撮影する際も電子シャッターで超高速シャッターを使えるので便利。難点はRAW撮影できないくらいか…。
実写
換算120mmの中望遠マクロレンズながら、換算2倍の接写性能を誇るのでどこまで近寄っていけるマクロレンズになっている。
例えばキヤノンの100mmマクロをAPS-Cに装着したとしても撮影倍率はおよそ1.5倍。それを考えると2倍というのはとても寄っていけるマクロレンズだ。
特に花や昆虫などの小さい被写体をより大きく撮影するには便利。頑張れば水滴に写る被写体を撮影する事も出来そうだ。
なんとなく近寄って撮影するだけで、目で見た光景と違う世界へ誘ってくれるのがマクロレンズ。
センサーサイズが小さく、フルサイズに比べてボケが足りないと言われようがこのジャンルでは容赦無く背景は溶けてなくなってしまう。
かと言って、フルサイズほど被写界深度にシビアで無い為、絞り値の調整が楽。気軽にピントを合わせてパチリとするだけでOK。
防塵防滴仕様のため、小雨決行でカメラを持ち出す事が出来るのも便利なポイント。
片手で傘を持って、片手でカメラを操作できるライトウェイトな機動力はフルサイズでは真似できない。
ではセンサーサイズが小さい1600万画素のE-M1で解像力はどうなのか?というと、全くOKなレベル。「昆虫にここまで毛が生えていたんだ…」とびっくりする写真が撮れてしまう。
いくらフルサイズに比べて被写界深度が深いとはいえ、このピント域だと正直あまり変わらない。よって昆虫を撮影する場合には立体的に撮ると被写界深度内に収まらない場合が多いので、横から撮影すると全体的にピントを合わせる事が出来る。
ここまで小さい被写体を1600万画素でガッツリトリミング出来る。シャープネスを強めにかけたのでややザラっとした感じは受けるものの、調整次第で緩和出来る。
絞り開放のF2.8だとやはり被写界深度は浅いがそれでもフルサイズより深い。その上で、シャッタースピードを稼ぐことが出来るという点は小さいセンサーの有利なポイントだと感じる。
その恩恵は光量が十分にある晴天時ほど大きく、「これはデカいカメラいらんなぁ」と感じてしまう。逆に光量が少なくなってしまうと、高感度耐性や画素数の少なさから落ち込み方が早いのも特徴か。
マクロだけでなく、近景でも問題なく使える。前後のボケもナチュラルで綺麗なもの。
コントラストは強めで、後処理せずに立体感はしっかりと感じ取ることが出来る。
マクロ域の浅い被写界深度を補う方法として、フォーカスブラケット後にカメラ内で自動合成してくれる「深度合成」という機能が備わっている。
この機能は現在E-M1とSTYLUS TG-4 Toughのみの機能。特に深度合成できるレンズも限られており、『M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO』『M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO』『M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro』と言ったところ。
8枚も合成するので、基本的に被写体は動いていない事が前提となってしまう。しかし、その条件さえクリアしてしまえば奇妙に思えてしまうくらいピント域の広い写真が出来上がる。
アジサイを根城にするクモをパチリ。動いている被写体を合成するとややディテールが甘くなるものの、ピントが合っている部分は広がる。舞台を鮮明にするには深度合成をした方が分かりやすそうだ。
深度合成無しで撮影。
被写界深度は浅いので蜘蛛の頭部前後はすでにアウトフォーカスになってしまっている。
それでも等倍(フルサイズ換算で2倍)の接写性能があるとここまで寄ることが出来るのは面白い。
まとめ
個人的に『M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO』と『M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro』があるからこそマイクロフォーサーズを手放せない。
特にその真価はE-M1を使った深度合成やE-M5 MK2・PEN-Fのハイレゾショットでさらに活きてくる。
これだけ描写性能が良いマクロレンズがわずか4万円ちょいで手に入るのだからおススメの一品。SIGMAの『60mm F2.8 DN|Art』が1万円台で存在するが、「接写性能」「防塵防滴」「フォーカスリミッター」に価値を見いだせれば差額分は十分に満足出来るもの。
花や昆虫などの小さい被写体が多いのであれば尚おススメ。
Good
- コンパクト
- スライド式フード
- フォーカスリミッター
- 開放から使える解像力の高い描写
- F2.8と明るい中望遠レンズ
- 防塵防滴
Bad
- フードが別売り
- レンズキャップがやや外しにくい
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