OM SYSTEM OM-3 のドライブのレビューを公開。バッファこそやや小さいものの、ハイエンドモデルと同等の超高速連写に対応。ただし欠点も継承しており、そろそろ連写時のカットをグループ化してほしいところ。
高速性能も問題点もハイエンドモデルと同じ
趣味性の高い外観に反して、ハイエンドモデル並みの高速連写に対応。バッファこそOM-1 Mark II 比で見劣りするものの、一般的な連写シーンでは充分なコマ数が得られると思います。ローリングシャッターは積層型CMOSセンサーとして少し遅いものの、それでも裏面照射型より優れた結果。プロキャプチャーモードを活用すると決定的瞬間も撮りやすい。
欠点は従来機と同じ。
SD UHS-II 使用でもバッファクリアに時間がかかること。特にプロキャプチャーモードを最大限で使用するとバッファクリアが長く、次の撮影が準備できるまで時間がかかります。また、高速連写は失敗カットがストレージを圧迫する原因となるため、管理しやすいグループ化機能を早期に実装してほしいところ。
まあ、OM-3で熱心な連続撮影をする人は少ないと思います。このような撮影スタイルを重視するのであればOM-1 Mark II を検討したほうが良いでしょう。いずれにせよ、前述の欠点はOM SYSTEM 全体の課題となっているので解決してほしい部分ですが…。
OM-3 のレビュー一覧
ドライブ
仕様の確認
シャッター
- 電子制御フォーカルプレーンシャッター
1/8000-60秒- 電子先幕シャッター
1/320-60秒- 電子シャッター
1/32000-60秒
他のOMシリーズと同じく、メカニカルシャッターで最大1/8000秒、電子シャッターで1/32000秒の高速シャッターを利用可能。シャッター方式の変更は他社と異なり、ドライブモードの設定変更で切り換えることが出来ます。
レリーズモードと撮影速度
- 〔連写〕: 約6コマ/秒(1 - 6コマ/秒に設定可)
- 〔低振動連写〕: 約5.5コマ/秒(1 - 6コマ/秒に設定可)
- 〔静音連写〕: 約20コマ/秒(5、10、15、20コマ/秒に設定可)
- 〔静音連写SH1〕: 約120コマ/秒(30、60、100、120コマ/秒に設定可)
- 〔静音連写SH2〕: 約50コマ/秒(12.5、16.7、25、50コマ/秒に設定可)
- 〔プロキャプチャー〕: 約20コマ/秒(5、10、15、20コマ/秒に設定可)
- 〔プロキャプチャーSH1〕: 約120コマ/秒(30、60、100、120コマ/秒に設定可)
- 〔プロキャプチャーSH2〕: 約50コマ/秒(12.5、16.7、25、50コマ/秒に設定可)
メカニカルシャッターは最速で6コマ秒と非力。遥かに低価格のOM-5で10コマ秒、E-P7ですら8.7コマ秒で撮影することができます。
その一方で電子シャッターはOM-1やOM-1 Mark IIと同じ。追従連写で50コマ秒、ピント固定で120コマ秒の超高速連写を実現。積層型CMOSセンサーを搭載しているのでローリングシャッターが気になるシーンは少なく、大部分の連続撮影は電子シャッターで問題ないと思われます。
メカニカルシャッターはどうしてもローリングシャッターの影響が気になる場合の最後の手段と言ったところ。
ブラックアウトフリーに対応しているのは「SH1」「SH2」のみで、通常の連写・静音連写では撮影コマ間にブラックアウトが発生します。
SH2 50コマ/秒 対応レンズ
- M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
- M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC 1.25x IS PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
追従50コマ秒の連写に対応しているのは一部のPROレンズのみ。それ以外のレンズを装着した場合は最大で「25コマ秒」にまで低下する点に注意が必要です。
連続撮影枚数
- 連写・最高速時 〔RAW〕: カード容量一杯まで
- 連写・最高速時 〔JPEG デフォルト〕: カード容量一杯まで
- 静音連写・最高速時 〔RAW〕:約151
- 静音連写・最高速時 〔JPEG デフォルト〕:約375
- 静音連写SH1・最高速時 〔RAW〕:約88
- 静音連写SH1・最高速時 〔JPEG デフォルト〕:約90
- 静音連写SH2・最高速時 〔RAW〕:約102
- 静音連写SH2・最高速時 〔JPEG デフォルト〕:約125
連続撮影時のバッファはOM-1 Mark IIと比べると少なめですが、OM-1に近い性能。高速連写を活かすには不十分かもしれませんが、一般的な撮影でバッファが不十分と感じる機会は少ないことでしょう。
カスタマイズ
連写設定
OMシリーズらしく、各ドライブモードの連続撮影速度を細かく調整可能。ブラックアウトフリーのSH2を使用した追従連写で12.5fpsまで連写速度を落とすことが出来るのは魅力的。
メカシャッター使用時は1秒1コマまで速度を落とすことも可能。レトロスタイルながら、幅広いスピードに対応しており、柔軟性の高い撮影が可能となっています。
プロキャプチャーモード
OMシリーズではお馴染みのプロキャプチャーモードも健在。他社でも同等の機能を導入するカメラが多くなってきたものの、プリ連写枚数を細かく調整できる機種は多くありません。連続撮影速度も調整できるため、「撮りすぎる」ことによるストレージの圧迫を予防することが出来ます。
低振動撮影
電子先幕シャッターのことですが、初期設定ではオフとなっています。オンにすると、通常のメカニカルシャッターモードが「低振動撮影」に置き換わります。ただし、動作するのは1/320秒まで。1/320秒よりも高速シャッター時は通常のシャッター方式に自動で切り替わります。
静音撮影設定
電子シャッターモード。「静音撮影」と命名されているため、初期設定ではシャッター音やフラッシュ、補助光などが禁止されています。
低感度画像処理
TruePic X 搭載モデルの新機能。あまり変わらないような気もしますが、連写重視であれば初期設定のまま、解像優先なら設定を変更する必要があります。
連写中手振れ補正
低感度画像処理の設定と同じく、優先すべき事項を設定することが出来ます。連写時に手振れ補正を優先するシーンは少ないと思われ、初期設定のままでいいと思います。
連写テスト
撮影環境
- OM SYSTEM OM-3
- M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II
- Mモード
- 25mm F1.8 / ISO 100 / 1/8000秒
- RAW / RAW+JPEG
- 電子シャッター
- 5/10/15秒の連続撮影で記録できた画像の数を計測
- ProGrade Digital COBALT SD UHS-II V90 32GB
- ノイズ低減・レンズ補正は全てオフ
- フリッカー低減 オフ
RAW
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
12.5コマ秒 | 63 | 126 | 188 |
25コマ秒 | 127 | 204 | 265 |
60コマ秒 | 142 | 203 | 264 |
120コマ秒 | 140 | 200 | 259 |
仕様通り、 RAWで80/120枚くらいまで速度低下のない連続撮影が利用可能となっています。バッファが詰まり始めるとSD UHS-IIの書き込み速度がボトルネックになる。最終的にどの撮影速度でも同程度の撮影枚数になると思われます。
と言っても、高速連写で10秒、20秒もシャッターを切り続ける機会はほとんど無いと思います。大部分の撮影では充分なバッファ。
プロキャプチャーモード利用時は最大で「70コマ」を瞬時に利用します。無制限(プリ70枚+連写制限無)で利用すると、次のプロキャプチャー撮影まで書き込みによる待ち時間が発生する点に注意が必要です。
RAW+JPEG
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
12.5コマ秒 | 63 | 115 | 132 |
RAW+JPEG出力時はバッファが詰まるタイミングが少し早くなります。その後は撮影速度が大幅に低下するため、撮影枚数重視であればRAWのみで撮影したほうが良いでしょう。
連写時のカットをグループ化できない
OM-1やOM-1 Mark II から指摘している問題点の一つ。
高速連写を得意とする機種ですが、撮影後の管理に手間がかかります。
高速連写が得意な他社機でよく見る「一連の連続撮影をグループ化」する機能がありません。このため、撮影に失敗したカットは1枚1枚を手動で削除する必要あり(RECボタンで選択削除は可能)。
特にプロキャプチャーモードは最大で70枚の失敗カットが一度に生成されてしまうため、これを現地で削除するのは現実的ではありません。
OM-3はメモリーカードスロットが一つしかないため、ストレージの圧迫は致命的。可能ならば、ファームウェアアップデートでグループ化で一括削除できる機能を追加してほしいところ。
ローリングシャッター
ローリングシャッターとは
イメージセンサー全体を一度に露光出来るのが理想的ですが、現在は発熱やノイズなど、様々な問題から(民生用カメラでは)ほぼ実現に至っていません。現在はイメージセンサーの上から下まで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的。言葉で説明しても難しいので、下部の動画を参考にしてください。
コンシューマー向けのデジタルカメラは大部分が動画のようなローリングシャッター方式を採用したイメージセンサーを使用。海外企業で「PIXII」、国産ミラーレスでこの方式を採用しているカメラは「α9 III」のみ。(もしくはキヤノンの業務用向けカムコーダーくらい)
実際にOM-3の電子シャッターを使用して、ローリングシャッター歪の影響を調べた結果が以下の通り。
実写で確認
積層型CMOSセンサー搭載モデルの中では読み出し速度が比較的遅め。フルサイズの積層型CMOS搭載モデル「Z 8」や「EOS R5 Mark II」よりも少し遅めで、歪みが発生しやすい。と言っても非積層型のOM-5と比べるとやや高速。
劇的な違いではないので、正直に言えばOM-5でも十分。これ以上の結果が必要な場合はメカニカルシャッターを利用する必要があります。
参考までに似たような環境でテストしたカメラのサンプルを掲載。OM-5の読み出し速度は「E-M1X」や「G9M2」とよく似ているはず。
- G9M2
まとめ
趣味性の高い外観に反して、ハイエンドモデル並みの高速連写に対応。バッファこそOM-1 Mark II 比で見劣りするものの、一般的な連写シーンでは充分なコマ数が得られると思います。ローリングシャッターは積層型CMOSセンサーとして少し遅いものの、それでも裏面照射型より優れた結果。プロキャプチャーモードを活用すると決定的瞬間も撮りやすい。
欠点は従来機と同じ。
SD UHS-II 使用でもバッファクリアに時間がかかること。特にプロキャプチャーモードを最大限で使用するとバッファクリアが長く、次の撮影が準備できるまで時間がかかります。また、高速連写は失敗カットがストレージを圧迫する原因となるため、管理しやすいグループ化機能を早期に実装してほしいところ。
まあ、OM-3で熱心な連続撮影をする人は少ないと思います。このような撮影スタイルを重視するのであればOM-1 Mark II を検討したほうが良いでしょう。いずれにせよ、前述の欠点はOM SYSTEM 全体の課題となっているので解決してほしい部分ですが…。
参考情報
購入早見表
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