このページで「SG-image 50mm F1.8 Funtom Lens」をレビューしています。
おことわり
E&Iクリエイション株式会社より無償貸与の製品を使用しています。
レビューにあたり金銭の授受や内容への指示は全くなかったことを明記しておきます。
管理人の評価
思いのほか使いやすい50mmレンズ
最初は癖が強いだけのレンズと予想していたものの、思いのほか使いやすいレンズ。フォーカスリングや形状絞りリングは適度な抵抗と滑らかさで操作性が良く、少し絞った状態のゾナータイプの光学系は解像性能とボケ質の安定感が良好。
At first, I thought it would be a lens with a strong quirk, but it was unexpectedly easy to use. The focus ring and aperture ring have a good balance of resistance and smoothness, and the slightly narrowed zone-type optical system has good resolution performance and a stable bokeh quality.
レンズのおさらい
中国深圳の光学メーカー「SG-image」が製造した奇妙な50mm単焦点レンズ。絞り羽根を無くし、代わりにハートマークや星型の形状をしたフィルター(形状可変絞りと言われています)を搭載。リングを操作することで4種類の形状から好みのフィルター(絞り)を利用可能。点光源の形状を変化させ、面白い描写が期待できるレンズとなっています。場合によってシャープな光条も期待できる模様。
一般的な絞りを搭載していないため、F値は「F1.8」で固定。ただし、4種の形状可変絞りにより、常に絞った状態となるため、光量や被写界深度はF1.8よりも大きなF値に相当すると思われます。これを「50mm F1.8」と呼称してよいのか悩ましいところ。
主な仕様と参考リンク
発売日 | 2024.10.31 |
初値 | 2万5200円 |
レンズマウント | E / X / Z / MFT / RF / L |
対応センサー | フルサイズ |
焦点距離 | 50mm |
レンズ構成 | 5群7枚 |
F値 | F1.8 固定 |
絞り羽根 | 4枚(形状可変絞り) |
最短撮影距離 | 0.5m |
最大撮影倍率 | 不明 |
フィルター径 | 58mm |
手振れ補正 | - |
テレコン | - |
コーティング | 不明 |
サイズ | φ69×48mm |
重量 | 310g |
防塵防滴 | - |
AF | MF限定 |
絞りリング | あり |
その他のコントロール | - |
付属品 | レンズキャップ |
レンズ構成はゾナータイプのように見えますが5群構成と多め。MTFを見る限り高解像ではないことが明らかですが、周辺部までの落ち込みは少なめ。これが内蔵の絞りを利用した状態の結果なのか、絞りを外した状態の結果なのか記載はありません。
価格の確認
販売価格は2万円前半。MFレンズの55mm F1.8としてはやや高めですが、形状可変絞りを採用したレンズは他にありません。このようなレンズに2万円を出しても良いと思ったら検討する価値があると言えるでしょう。
SG-image 50mm F1.8 Funtom Lens | |||
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レビュー
外観
黒を基調としたシンプルなデザインの箱。中には発泡素材に覆われたレンズ本体が入っています。付属品は金属製のフロントキャップとプラスチック製リアキャップのみ。レンズフードはありません。
レンズ本体は大部分が金属製のしっかりとした作り。フォーカシングにより内筒が繰り出すタイプですが、がたつきはありません。
ピント距離指標は白色でメートル、黄色でフィートを表示。黄色をイメージカラーとしているのか各所に黄色を配色しています。
全長48mmとコンパクトながら重量は310gと重め。絶対的に重いわけではないものの、密度の高い重量感があります。ただし、フルサイズミラーレスカメラと組み合わせる場合にアンバランスとなるほどではありません。
凸タイプの前玉の周囲は58mm円形フィルターに対応するソケットを搭載。前玉はフッ素コーティングに対応していません。ダメージが心配な人はプロテクトフィルターを装着したほうが良いでしょう。
金属製レンズマウントは4本のビスで本体に固定。完全マニュアルレンズのため、電子接点はありません。カメラ側のみでレンズ情報を記録できる機種で撮影すると事後管理しやすい。
操作性
金属製のフォーカスリングを搭載。適度な抵抗感で滑らかに回転。僅かな力でも回し始めることができ、微調整に適したトルクは秀逸。MFを楽しめるリングと感じました。
フォーカスリングのストロークは0.5mの最短撮影距離から無限遠まで約100度。長すぎず、短すぎず、リングの操作性と相まって使いやすい。
4種類の形状可変絞りをレンズ前方のリングで切り替えることが出来ます。フォーカスリングと同じく、適度な抵抗感で滑らかに回転。それぞれ定位置でクリックストップが発生します。
形状可変絞りは「楕円」「ハート」「雪印」「星」の4種類。「絞り開放」の選択肢がないため、「F1.8」を利用することはできません。
カメラ装着例
今回はLマウント版をお借りしたので、LUMIX S9に装着。
オールドレンズの50mm F1.8と大きなサイズ差がなく、アダプター経由でないぶんコンパクト。カメラバッグの空いたスペースに押し込める大きさです。
レンズ装着時のバランスに問題はなく、フォーカスリングや絞りリングを快適に操作可能。
解像性能
使用した個体がやや片ボケ気味ですが、ピントが合った部分を見る限りではよく写ります。
絞った状態で撮影することになるため、中央はまずまず良好、周辺はそこそこ、隅も許容範囲内。いずれにせよ、高解像カメラで使うようなレンズではありませんが、細部にこだわらないのであれば実用的。
近距離でも中央ならば良好な結果が得られます。シャープでコントラストが良好。
ボケ
光学系の描写が見たかったので、比較的影響が小さな楕円形絞りで撮影。球面収差が残存する描写で、後ボケが柔らかく、前景が2線ボケの兆候あり。このレンズで前景を入れる機会は少ないと思うため、このバランスが良い結果を生み出すことになるはず。
実写でも同様の結果が得られました。特に近距離は滑らかな後ボケが得られるため、普通の50mmレンズとして使うこともやぶさかではありません。
騒がしくなりがちな背景も比較的マイルドな描写。マイルド過ぎて形状絞りの効果が薄らいでいるようにすら見えます。
形状絞りボケ
形状絞り用リングを操作することで、ボケの形状を変化させることが可能。
ひとまずサンプルを以下に掲載。
ご覧のように、一目見てボケの変化がわかります。形状が複雑な雪印は玉ボケ以外にも影響が強く、かなり癖のある結果が得られます。ハート形はかわいいですが、縦位置ではハートも横向きとなってしまう点に注意が必要です。最も無難に使うことができるのほ星型。
どれも静止画で利用することが可能ですが、動画撮影で使うとより面白い結果が得られるかもしれません。参考までにもう一つ作例を掲載。
普段使いに形状絞りは癖が強すぎる、と感じる場合は楕円形がおススメ。玉ボケが楕円となる以外はとても普通の写り。滑らかな後ボケも相まって使いやすい。
色収差
どの形状の絞りも「F1.8」より絞った状態となるため、F1.8より被写界深度は深め。絞った状態のため色収差は軽減していますがゼロではありません。光を通す穴が小さい「雪印」が最も被写界深度が深く、色収差が抑えられていますが大差なし。
実写で軸上色収差が問題と感じるシーンは多くありません。
球面収差・前後ボケ質の違い
同じ点光源を同じサイズで撮影した後ボケ・前ボケが以下の作例。
どの絞りも中口径の絞りとなるためか、球面収差は極端に残存していません。敢えて言えば、楕円形の絞りが最も目立ちます。面白いのは星型やハートで、後ボケと前ボケで形状が上下に反転しています。普通のレンズだと絞りが円形で目立ちませんが、形状絞りだとピント面の前後で像が反転していることを改めで実感。
やっかいな特性ですが、これを活用することも可能。とはいえ、反転が目立つのはハート型のみで、中口径の50mmで前景の玉ボケが大きくなるシーンはそう多くありません。意図的に状況を作り出さない限り発生することはないでしょう。
逆光耐性
安価なMFレンズとしては悪くない結果。良くもありませんが、壊滅的なフレアは防いでいます。絞りによって光源の形状が変化し、うっすらと発生しているフレアも形状絞りの形となっているのが面白い。最も絞った状態になる雪印の時にフレアが良く抑えられています。
光源を隅に移動させると、場合によって妙なフレアが発生します。
実写でフレアが大問題となることは少ない。雪印の絞りで光条が発生しないかテストしてみたものの、イルミネーションシーン以外では難しいかもしれません。
まとめ
最初は癖が強いだけのレンズと予想していたものの、思いのほか使いやすいレンズ。フォーカスリングや形状絞りリングは適度な抵抗と滑らかさで操作性が良く、少し絞った状態のゾナータイプの光学系は解像性能とボケ質の安定感が良好。
形状可変絞りを無理に活かす必要はなく、楕円絞りでF値固定の50mmを楽しむのも一つの手。絞りの選択という撮り手を悩ます問題が一つ減ることで、撮影に集中することが可能。携帯性の良いLUMIX S9と組み合わせることで、50mmスナップを楽しむことが出来ました。
現代の高解像センサーに耐えうる性能ではないものの、実写で必要十分と感じる程度のシャープネスとコントラストが得られます。フレアやゴーストも適度に抑制され、諸収差の補正状態も悪くありません。
同じ価格帯のライバルを差し置いて本レンズを選ぶ理由はあるか?
そもそも形状可変絞りの競合製品はありません。形状可変絞りが気になるのであれば本レンズの購入を検討する必要があります。
「同価格帯の50mm MFレンズ」という観点で考慮すると、競合製品の多くがダブルガウスタイプの光学系を採用しています。ゾナータイプの本レンズは光学系の希少性で検討する余地あり。とはいえ、MF50mm F1.8レンズとしてはやや高く、AFレンズも視野に入ってくるのが悩ましいところ。